エデンズダンガンロンパ 希望の生徒と絶望の楽園 作:M.T.
楽園生活8日目。
『おはようございます、オマエラ!!朝です!!7時になりました!!今日も元気に殺し合いましょう!!』
今日もまた、モノクマの耳障りなモーニングコールで起こされた。
俺は、朝の準備を済ませて8時に間に合うように食堂に向かった。
◇◇◇
俺は、食堂の扉を開けて中に入る。
するとその直後…
「…えっ?」
俺は、信じがたい光景に思わず目を見開いた。
「何だよ。朝っぱらから間抜けな顔しやがって。」
弦野が鬱陶しそうに俺の方を見てきた。
「つ、弦野!?なんでここに!?」
「いちゃ悪りいのかよ。」
「いや、全然悪かねーよ!でも、今まで全然来なかったのに何で急に来たのかなーって…」
「弦野君も、今日からはあたし達と一緒にご飯食べる事になったんだよ。」
「へー、そうなんだー………へ!?」
俺は、思わず弦野の方を二度見した。
「…チッ。コイツが飯くらいはちゃんと食えってしつこいからな。」
「はいはい。」
「…今まで悪かったな。」
「ん?何か言ったか?」
「…何でもねえよクソ。」
弦野が呆れ返った目で隣にいた筆染を指差すと、筆染は二つ返事を返した。
…弦野の奴、筆染に対してちょっとは心を開いたみたいだな。
昨日の激甘おにぎりも文句ひとつ言わず全部食べてたし、ひょっとして筆染の事…?
俺がみんなと一緒に朝食の準備を手伝いっていると、一と黒瀬が来た。
二人とも弦野が来ている事に驚いて俺と同じようなリアクションをし、弦野に鬱陶しがられた。
「じゃあみんな揃ったみたいだし朝ご飯にしよっか。」
「さんせー。アタシもうお腹ペコペコだよー。」
「それじゃ、いただきまーす。」
俺達は、仕田原達が作ってくれた料理を食べた。
相変わらずどの料理も美味かった。
やっと14人全員揃っての食事という事もあってか、いつもより美味く感じられる。
「…。」
「あれ?弦野君、食べ方綺麗だね。」
「何だその言い方は。俺には汚く食うイメージしかねぇのかよ。」
「いや、そうは言ってないじゃん。ただ、食べ方が上品だなーって思っただけだよ。」
「…家で散々躾けられたからな。」
あー…そういえば弦野の奴、有名な音楽家を輩出してる名家の御曹司だったな。
筆染の言う通り、確かに箸の持ち方とか綺麗だし音とかほとんど立ててないな。
…やっぱ育ちがいい奴って食べ方に現れるんだな。
すると、仕田原がニヤニヤしながら俺達の様子を窺ってきた。
「それで、どうですか?皆さん。今日の朝ご飯のお味は?」
「めっちゃ美味しいよ!」
「どのお料理も美味しいですわ。」
「そうですか。ふふっ、良かったですね。弦野さん。」
「…え?」
枯罰と仕田原以外は一斉に弦野の方を見た。
「今日の朝食作りは弦野さんも手伝って下さったんですよ。煮物と卵焼きは弦野さんが作ったんです。」
「マジで!?えっ、弦野おまっ…えっ!?」
「料理できたんだ…なんか意外…」
「あぁ?テメェ何か言ったか。」
「ひっ!な、何でもないです…」
「チッ…家出してからは一人で生きていかなきゃいけなかったからな。身の回りの事は全部自分でやってたんだよ。」
「ふーん…」
まさか弦野も料理できたとはな。
ってか意外と料理できる奴多くね?
安生も、バリアフリー対応してる所でなら普通に料理できるらしいし。
「そうだったんだ。すっごく美味しいよ弦野君!また作ってくれる?」
「…こっから出たら毎日作ってやるよ。」
『…え?』
弦野の発言に、全員がピシャリと固まった。
今のって、完全にプロポーズだよな…?
すると弦野は、ハッとした表情をして顔がみるみる赤くなっていく。
「あっ…いや、今のはその…」
俺達は、ニヤニヤしながら弦野と筆染を見た。
「はいカップル成立ー!!一組様新婚旅行へご案内ー!!」
「ヒューヒュー!!」
「いよっ、ニクいね色男ー!!」
「うっ、うるせぇええっ!!テメェらマジでふざけんじゃねぇぞ!!」
「あらあらうふふ。」
「聞谷テメェ何笑ってんだ!!」
俺達が全力で冷やかすと弦野はムキになって声を荒げ、筆染は耳まで真っ赤にして顔を両手で覆い隠していた。
「ちょっ…やめてよみんな…!枯罰ちゃんからも何か言ってよぉ…!」
「せやなぁ。お前ら大概にせぇよ。夫婦の仲を冷やかすんは野暮やろ。」
「ちょっと!枯罰ちゃんの裏切り者ー!!」
「…くくく。絵描き、これからはお前の事だけは特別に名前で呼んでやろう。俺の寛大さに感謝しろ、
「神崎君まで!?」
「律くーん、精力剤と避妊具なら診療所に置いてあるよー。頑張ってねー。」
「黙れ黒瀬テメェはっ倒すぞ!!」
黒瀬が左手で作った輪の中に右手の人差し指を突っ込みながら下ネタをブッ込むと、弦野は顔を真っ赤にして怒鳴り散らした。
俺達は、安生がニッコリ笑いながら『静かにしようね』と言うまでこれでもかという程弦野と筆染を冷やかし倒した。
こういう事に乗りそうなイメージが全くない神崎と枯罰までノリノリで小学生レベルの冷やかしをしていたのには少し驚いた。
こうして俺達は楽しい朝食の時間を過ごし、軽めのミーティングをした後自由探索の時間となった。
さて。
せっかくの自由時間だし、探索でもしようかな?
俺は、とりあえずまだ行ってないミュージアムエリアに行ってみることにした。
◇◇◇
俺は、早速博物館に行ってみる事にした。
入った途端に恐竜の骨格標本が待ち構えていたのは流石に度肝を抜かされた。
博物館の中には様々な歴史的な資料や模型などが置かれており、その中には歴史的価値が高いものの模型も展示されていた。
「こういうの、宝条が好きそうだな…」
「あら。今ゆめの話した?」
「うぉっ!?」
突然声をかけられたものだから、俺はビックリして思わず跳び上がってしまった。
すると、宝条は俺にジト目を向けてきた。
「…何よ。女の子の顔を見て跳び上がるなんて失礼な男ね。」
「ああ、いや…悪い…いきなり話しかけられたからビックリして…宝条はここで何をしてるんだ?」
「見てわかんないの?展示されてるもの見てるのよ。邪魔しないで。」
「あ、スイマセン…」
怒られてしまった。
宝条って、展示物見てる時はすげー真面目になるんだな。
「…なあ、宝条。」
「何よ?」
「お前さ、ちょっと変わったよな。前は何かこう…わがままだったのに、丸くなったっていうか…」
「…アンタってホント失礼ね。」
「す、すまん…」
「はぁ…一回目の裁判で、あのクマは本気なんだって思い知ったの。ゆめはこんな所で殺されるとか絶対嫌だから、生き残るためならアンタ達に協力してやろうって思ったのよね。どのみち、家事とか全然出来ないから一人じゃ生きていけないし。」
「そっか…」
皮肉な話だけど、札木と武本の死を乗り越えて成長したって事か。
すると、今度は宝条の方から話しかけてきた。
「ねぇ。」
「ん?」
宝条は、わざと俺の顔を見ないようにしながら言った。
「…裁判で、事件の真相を暴いてくれてありがと。」
「いや、俺は感謝されるような事はしてないよ。みんなが集めてくれた証拠や証言を整理しただけで…」
「ゆめは、仕田原が犯人じゃないって知ってたのに言い出せなかった。本当の事を言ってランドリールームでの事がバレるのが嫌だったの。でも、アンタのおかげでゆめは生き残れた。」
「…あ。そういえばされお前、俺にだけは仕田原のアリバイを教えてくれたよな?何でだ?」
「別に。あの中だったら一番言っても問題なさそうなのがアンタだって思っただけよ。」
「え?」
「言ったでしょ?私、審美眼だけは自信があるの。誰なら信用できそうとか、そういうのは目を見ればわかるのよ。」
あれ?宝条、今『私』って言ったよな。
「とにかく、アンタには期待してるから。わかった?坊や。」
そう言って、宝条は奥の展示コーナーへと歩いて行った。
…宝条の本性ってあんな感じだったんだな。
俺も特に目ぼしいものはなかったし、次は美術館に行ってみるか。
◇◇◇
美術館には絵や彫刻、陶芸品など様々な芸術作品が置かれていた。
どれも有名な芸術家の作品の贋作だけど、眺めてる分には十分楽しめる仕様になっていた。
「あ。」
俺は、美術館で絵を見ているジョンを見つけたので声をかけた。
「ジョン、何してるんだ?」
「Oh,マドカ!Good timing!Come on!」
「?」
俺は、ジョンに連れられて絵画の前に立った。
ジョンが俺に見せてきたのは、白いキャンバスに赤いインクが飛び散った絵だった。
「これ、エマに勧められたpaintingなんだけどよ。どう見てもこれnosebleedがはねた絵にしか見えねーよな。」
「ああ。それ確か本物は数千万以上の価値がある絵じゃなかったっけ?」
「This!?これのどこにそんなvalueがあるんだか…It‘s all Greek to me.」
「わかる。俺も芸術に関してはさっぱりだからよ。何でそんなにこれが価値あんのかわかんねーよな。こういう時筆染がいればこういう絵とか見てて楽しいんだろうけど。」
俺達は、美術館で作品についての感想を語り合った。
完全に素人同士の会話なので筆染が聞いてたら怒られそうな適当な会話しか出来なかったが、ジョンと二人で話しながら絵を見るのは楽しかった。
機会があればまた美術館に来てみようかな。
今度は筆染と一緒に行って絵の事とか色々教えてもらうか。
そんな事を考えながら、俺は記念館に向かった。
◇◇◇
記念館には、歴史上の人物に関する史料が並んでいた。
歴史を学ぶのにはいい場所かもしれない。
…おっと、展示台の裏側にメダルが落ちてるな。
後で使うだろうし拾っておこう。
俺がメダルを回収して史料を見ていた、その時だった。
「円くーん。お一人ですかー?」
げっ、黒瀬…
正直コイツは苦手だ。
もちろん俺を人形扱いしてくるからっていうのもあるが、コイツは何考えてるんだか全く読めない。
でも、ここであからさまに避けたら不自然だしな…
俺は、仕方なく黒瀬と話をする事にした。
「黒瀬か。お前もここの展示を見に来たのか?」
「まあねー。ボク、歴史とか好きだからさー。記念館とかよく行くんだよねー。」
歴女だったのか。
それは初耳だな。
「円くんもこういう所にはよく行ったりするのー?」
「いや。むしろあんまり行く機会がないから寄ってみたんだよ。」
「そっかー。じゃあさー。一緒に回ろーよ。ボクが見方とか色々教えてあげるねー。」
「え?いや、でも…」
俺が戸惑っていると、いつの間にか黒瀬は俺の手をしっかり握っていた。
「…ん?何してんの?」
「へへー、迷子対策ー。」
いや、迷子って…
俺の事何だと思ってるんだ。
「そいじゃーれっつらごーごー。」
黒瀬は、猫耳のような癖っ毛をパタパタさせながら強引に俺の手を引いて館内を歩いた。
小柄な身体からは想像もつかない程の怪力で手を握られて引っ張られてるからメチャクチャ痛い。
振り解こうにも黒瀬の万力のような握力のせいで振り解けないので、諦めて一緒に展示物を見て回る事にした。
だが、一緒に回ってる最中に時々史料の見所とか教えてくれたりして、案外ためになった。
…まあ、そういうちゃんとした会話は1割であとの9割はお察しの通りだったんだけどな。
「やー、楽しかったー。やっぱり円くんと一緒にいると楽しいなー。」
「そ、そうか…」
「あ、そうだ。円くんに渡したいものがあるんだった。」
「渡したいもの?」
「はいこれ。円くんが可愛いので特別にプレゼントしちゃいますっ!」
そう言って、猫耳ゴリラ…もとい黒瀬はくしゃくしゃに丸めた白い布を渡してきた。
触ってみると、柔らかくて少し生温かい。
「何だこれ?」
「ボクの脱ぎたての生パンツ。」
「はぁ!!?」
え!?
待って、ドユコト!?
「何でパンツ!?意味わかんねぇんだけど!!え、待って。って事は…」
「うん。今スカートの下何も履いてないよー。」
嘘でしょ!?
「お尻がスースーするー。」
でしょうね!!
付き合ってもない同級生にパンツをプレゼントするとか何考えてんの!?
「いや何してんだよ!!履けよ!!これ返すからさ!!」
「返品は不可でございますので、悪しからずー。」
そう言って、黒瀬はペコリと頭を下げると女子とは思えない駿足でどこかへ走り去ってしまった。
記念館には、白いスキャンティを持った俺だけがポツンと立っていた。
「…。」
…いや、どういう状況だよこれ。
黒瀬にパンツ押し付けられたんだけど。
アイツにはたまにゾッとさせられるけど、まさかここまで痴女だったとは…
どうするか…とりあえず、ビニール袋にでも入れとくか。
ちょうど12時になったので、俺は記念館を後にしてホテルへ戻った。
◇◇◇
食堂に集合して昼食を摂った後は、再びミュージアムエリアの探索をする事にした。
ちなみにさっき貰ったパンツはというと、とりあえず個室の机の引き出しに入れておきました。
…んーと、博物館と美術館と記念館に行ったから、次は動物館に行くか。
◇◇◇
動物館には、本物そっくりの動物の模型が入った檻が並んでおり、干し草や動物が遊ぶためのタイヤやドラム缶などが置かれていた。
「あれ?」
俺は、キリンの檻の前に立っている聞谷を見つけた。
「よ。」
「あら赤刎さん。ご機嫌よう。」
「おう。聞谷も動物を見に来たのか?」
「ええ。…あの、動物館というくらいですからわたくしてっきり本物の動物がいるのかと思っておりましたの。」
「いや、普通はいるんだよ。…あれ?もしかして聞谷って、動物園に行った事無い?」
俺が尋ねると、聞谷は羞恥で顔を赤くする。
「え、ええ…わたくし、幼い頃から俗世とは隔離された環境で過ごしておりましたので…その、こういった場所に訪れるのは初めてですの。」
おうふ…そこまでお嬢様だったとは。
恐れ入ったぜ。
「…あの、赤刎さん。こちらのお首の長い動物は何と仰るんですの?」
「ああ、あれはキリン。」
「では、あちらのお鼻の長い動物は?」
「ゾウ。」
「では、あちらの髪の長い大きな猫のような動物は…」
「ライオン。」
…マジかい。
いくら動物園に行った事ないからって、流石に動物を知らなさすぎだろ。
聞谷が動物について知りたいと言うので、俺は一緒に動物館を回って聞かれるたびに説明をしてやった。
その度に俺は聞谷の箱入りっぷりに驚かされるのだった。
聞谷と一緒に動物館を一周した後、俺は植物館に向かった。
◇◇◇
植物館には、数多くの本物そっくりの人工植物が並んでいた。
「お。」
俺は、植物館を歩き回っていた仕田原を見つけたので声をかけた。
「よ。」
「あ、赤刎さん!」
「仕田原は植物とか興味あるのか?」
「ええ、まあ…一応庭仕事とか畑仕事とかも請け負ってるので。」
「へぇー…え?畑仕事?」
「はい。食べ物の素材に拘って畑を持っていらっしゃる方のもとへ伺う事もあるので、そういう時は畑仕事を任されるんですよ。」
マジか。
それもう家政婦の域超えてないか?
「あのさ。話変わるんだけど、仕田原って得意料理とかあるの?」
「えーっと…全部一から作るカレーとかですかね。」
「えっ、一からって…まさか野菜とか育てるところから?」
「ええ、そうですよ。流石にスパイスの原料は市販のものを買いますけど、調合は自分でやります。天候や体調によって味が左右されるのが難点ですが、その時にしか味わえない味が楽しめるんですよ。」
メチャクチャ凝ってるじゃねーか!!
…うわ、話聞いてたら食べたくなってきたぞ。
俺は、仕田原と一緒に喋りながら植物館を一周した。
仕田原には植物のちょっとした知識などを教わり、つくづく勉強になるなぁと感じた。
俺は仕田原と別れた後、その足で水族館に向かった。
◇◇◇
水族館には巨大な水槽があり、中には本物の魚に似せた人工魚が泳いでいた。
熱帯魚コーナーには色とりどりの人工魚が泳いでいて幻想的な光景を生み出していた。
「あ。」
俺は、人工イルカが泳いでいる水槽の前に立っている速水を見つけたので声をかけた。
「よ、速水。」
「おーっす、円ー。アンタも魚見に来たの?」
「まあな。ここの探索はまだだったし。」
「ふーん…」
「速水も探索中?」
「いや、アタシは普通に見に来ただけ。」
「そっか。あのさ、速水って水族館とかよく行くのか?」
「たまにね。アタシ、イルカショー好きなんだ。水族館があるって聞いて見られるかもってちょっと期待してたんだよね。」
「へー…」
俺は、速水と喋りながら一緒に水族館を回る事にした。
「こっちの水槽は…チンアナゴだってさ。」
「うわ顔出してる!可愛い〜!写メ撮っちゃお!」
「あっちはホオジロザメだって。」
「すごい迫力!!ジョーズじゃん!!」
俺達は、遠足に来た学生みたいにはしゃいで写真を撮ったり感想を言い合ったりした。
速水と別れた後、俺はプラネタリウムに向かった。
◇◇◇
ここで最後か…
俺は、プラネタリウムに入り近くのソファに座った。
背もたれに身を任せるようにして見上げると、天井には無数の美しい星が散りばめられていた。
「はぁー…まるで本物の星空だな。ここまで忠実に再現できるもんなのか。」
俺がそう呟いた直後だった。
「あれ…?赤刎君…いたの?」
右隣から声が聞こえた。
薄暗くて顔が見えないが、この声は…
「一か?」
「うん。あのさ…ビックリするから入るなら入るって言ってよ…」
「悪い。お前がいると思わなかったから…一はプラネタリウム好きなのか?」
「うーん…普通かな。むしろこれを動かしてる機械の方に興味があったから調べてたんだけど、ついでに星でも見よっかなーって…」
「…お前、暗いの苦手じゃなかったか?」
「ひっ…ちょっとぉ、言わないでよぉ…!言われた途端怖くなっちゃったじゃん!せっかく星を見て紛らわそうとしてたのに…!」
「あ、悪い。」
俺は、一と一緒にプラネタリウムを鑑賞して時間を過ごす事にした。
一と別れた後は、ミュージアムエリアを後にして別の場所の探索をしに楽園内を歩き回った。
◇◇◇
さて、ミュージアムエリアの探索も終わったし、これから何をしよう?
…そうだ、さっきメダルを拾ったんだった。
ガチャが引けるし、プレイルームに行こう。
プレイルームに行った俺は、拾ったメダルでガチャを引いた。
出てきたのは綺麗に磨かれた高級そうな金色の懐中時計だった。
懐中時計か…
誰かにあげたら喜ぶかな?
適当に楽園内を散策していると、途中で神崎に会った。
「あ、神崎。」
「…フン、貴様か。何の用だ子供。」
「あのさ、せっかくだし一緒に話でもしないか?お前にちょっと興味あるし、渡したいものもあるしよ。」
「ほう。俺に貢物とな?」
貢物って…
ただのプレゼントなんだけど…
「フッ、そんな事を言ってきたのは貴様が初めてだぞ。俺は今機嫌がいい。丁度一人で退屈していた所だし、遊戯にでも興じてみるか?」
あ、機嫌が良くなった。
せっかく一緒に行動する気になったのに誰にも構ってもらえないから退屈してたのかな?
孤立しててちょっと心配だったし、この機会に仲良くなってみるのも一つの手かもしれない。
俺は、神崎と一緒に過ごす事にした。
◇◇◇
俺は、神崎に連れられて研究室まで来た。
「ようこそ我が城へ。」
我が城って…
コイツ、なんだかんだで楽園生活に馴染んでるよな。
案外根はノリのいい奴なのかもしれない。
しっかし…ホントに色んなものが置いてあるなここ。
神崎がここまで多趣味だったとは。
「座れ。」
「え?」
「聞こえなかったか?座れと言っているのだ。」
「あ、ハイ…」
俺は、見るからに高級そうな椅子に座った。
命令口調なのが少し気になるが、どうやら客をもてなそうというコイツなりの気遣いらしい。
「それで子供。俺に貢物があると言っていたな。」
「ああ。これ…なんだけどさ。お前なら気に入るんじゃないかなーって。」
俺は、ポケットから懐中時計を取り出してプレゼントした。
すると、神崎は目の色を変えて時計を見た。
「貴様…それをどこで手に入れた?」
「ああ、プレイルームのガチャでちょっとな。え、そんなにいいものなのか?これ。」
「それは俺が愛用しているブランド品の一つだ。中でもそれは正確さが売りの懐中時計で、千年で一秒以下の誤差しか生じないと言われているのだ。まさに完璧な俺に相応しい品だとは思わんか?」
「は、はあ…」
「フッ、貴様がどうしてもそれを俺に貢ぎたいというのなら受け取ってやらん事もないぞ。」
「ど、どうも…」
ものすごく上から目線だが、どうやら気に入ってくれたらしい。
プレゼントしたものを喜ばれるのは素直に嬉しいな。
だが、神崎は懐中時計を受け取るなりしつこいぐらいハンカチで拭き始めた。
「一応受け取ってはやるが、何を触った手で渡されたのかわからないからな。」
いや、そりゃそうだけど…
拭きすぎじゃね?
流石に傷つくんだけど。
しばらくして、ようやく満足したのか神崎は時計を拭く手を止めた。
「…時に子供。」
「ん?」
「俺は退屈だ。どうだ、共に遊戯にでも興じてみないか?」
そう言って、神崎はチェス盤をデスクの上に置いた。
「ここに置いてあったのはいいが、一人だと使えないしな。丁度興じる相手が欲しかったのだよ。」
そう言って、神崎は駒を盤上に並べ始めた。
コイツ、やっぱり誰にも構ってもらえなくて寂しかったんだな。
「チェスのルールはわかるか?」
「まあ、一応…孤児院でもよくやってたしな。」
「フッ、十分だ。では俺は黒にするがそれでいいか?」
「…俺に負ける気はねぇと?」
「当然だ。では始めようか。」
「クッソー、負けねぇからな。」
数分後。
「チェックメイト。」
…えっ?
あ、あれ?
何かいつの間にか詰んでるんだけど…
「ま、負けました…」
「フッ。貴様、強いな。俺を相手に10手以上勝負が続いたのは貴様が初めてだ。では次はオセロをやるか。貴様が後手でいいな?」
「お、おう…」
舐めやがって…
今度こそ負けねーからな。
数分後。
「くくく、どうした?もう終わりか?」
え、待って。
黒っ!!
盤上がここまで黒くなる光景を見た事がないんだが。
オセロってこんな一方的に惨敗するもんだっけ?
もうこれオセロじゃなくてオレオ並べだろ!!
「負けました…」
「フッ。」
クッソー…絶対何かで勝ちたいな…
俺は様々なジャンルで神崎と勝負をしたが、結果はボロ負けだった。
「ぐぅううううっ…!」
「くっくっく…はぁーっはっは!!俺の前にひれ伏せ雑魚め!!」
「くっ…」
ホントコイツ何でもできるんだな。
これが【超高校級の天才】の実力か…
「お前ってホント完璧超人だよな。何食ったらそんな風になるんだよ。」
「フッ。知りたいか?俺の神話を…」
うわ、過去の事を神話って言ってるよ。
まあ元々それが知りたくて話しかけたわけだし、聞くか。
「遡る事18年前…神崎財閥のトップ神崎皇一と製薬会社の社長令嬢神崎琴奈の間に男児が生誕した。それがこの俺だ。」
え、そっから?
「俺は幼少の頃から才覚を発揮してな。特に何の努力もせず周りを凌駕する結果を叩き出してきた。小学生の頃に名門大学の首席卒業生の論文を解読し、中学生の頃に陸上の全国大会の代表選手に選ばれた。最近は会社を立ち上げ業績は鰻登り…といったところか。」
「バケモンじゃねぇか。実家が財閥でしかもそんなにすげー才能があるんだったら、人生で苦労とか経験した事ねぇんじゃねぇの?」
「…そうでもないさ。俺は、あまりにも抜きん出すぎて何をやっても退屈なのだよ。俺と互角以上に渡り合えるのは、その分野で世界屈指の者だけ…周りとのレベルがかけ離れすぎて他の者達を虫螻としか思えぬのだ。」
ひどい言いようだなオイ。
「…あのさ。こういう事あんまり言いたくないんだけど…お前、同年代の友達いないだろ?」
「……………。」
あらら。
この反応は図星ですか。
「…天から全てを与えられたはずの俺が、与えられたもののせいで本当に欲しいものを手に入れられない。実に皮肉な話だとは思わんか?」
「あ、まあ…」
「…それに、本当に愛する人にも愛想を尽かされたしな。」
「え?」
「俺には、凡人の中でもただ一人だけ愛する女性がいた。その人は事情があって遠くに住んでいるのだが、電話で会社を立ち上げた話をして俺がいかに凡愚共を導く器として相応しくなったかを教えたのだ。…だが、『私は前のあなたの方が好きだった』と言われそれ以降疎遠になったのだよ。」
愛する人、か。
神崎にも恋人とかいたんだな。
でも、向こうの想いが冷めて別れ話を切り出されたってわけか。
「…そっか、お前も色々大変だったんだな。ありがとう。色々と話してくれて。」
「フッ。貴様、あくまで俺と対等でいようというのか。」
「まあ…一緒にここに連れて来られた仲だしな。」
「フン。貴様のその格上相手に物怖じしない態度、嫌いじゃないぞ。貴様は特別に俺の右腕にしてやろう。」
「は、はあ…」
右腕って…
上から目線だなオイ。
でも、気に入られただけ良しとするか。
「おっと、もうこんな時間か。そろそろ愚民共が集まっている時間だし、俺達も行くか。」
「…だな。」
俺と神崎は、研究室を後にして食堂に向かった。
《神崎帝との親密度が上がった!》
夕食の後は軽めのミーティングを済ませ、その後温泉でまったりしてから部屋に戻った。
こうして、合宿生活の8日目が終わったのだった。
ー生存者ー
【超高校級の講師】赤刎円
【超高校級のカウンセラー】安生心
【超高校級の天才】神崎帝
【超高校級の香道家】聞谷香織
【超高校級の脚本家】黒瀬ましろ
【超高校級の幸運】漕前湊
【超高校級の???】枯罰環
【超高校級の家政婦】仕田原奉子
【超高校級の冒険家】ジョナサン・ウォーカー
【超高校級のヴァイオリニスト】弦野律
【超高校級のソフトウェア開発者】一千歳
【超高校級のランナー】速水蘭華
【超高校級の画家】筆染絵麻
【超高校級の収集家】宝条夢乃
ー以上14名ー
パンツハンターネタ挟んでみました。