エデンズダンガンロンパ 希望の生徒と絶望の楽園 作:M.T.
駅の中は、レンガ造りでこれまたレトロな雰囲気の建物だった。
にもかかわらず、最先端の防犯カメラが設置されている。
昔風なんだか今風なんだかどっちなんだとツッコみたくなったが、ここはあえて何も触れない事にした。
ステーションの改札口に着いた俺と札木。
すると、そこには14人の男女がいた。
「お、やっと揃ったか!」
「遅いよ〜!こんな所でじっとしてるなんて性に合わないんだけど!」
「…チッ、これ以上騒がしくなるのはまっぴら御免だぞ。」
「うぅううう…怖いよぉ…今度は何なのぉ…」
センター分けの少年、ショートヘアーの少女、執事っぽい服装をしたプラチナブロンドの青年、ボサボサの髪の少年が口を開く。
「えっと…君達も車両のモニターを見てここに来たのかな?」
車椅子に乗った少年が話しかけてきた。
「あ、えっと…まあ…アンタ達もそうなのか?」
俺が尋ねると、和服を着た少女が答える。
「ええ、そうですわ。…すみません、わたくし達も目が覚めたら列車の中にいて…ここがどこなのか、何故ここにいるのかわからないのです。」
そうなのか…俺達と同じだな。
すると今度は、背が高い女顔の青年が口を開く。
「…ま、わからん事だらけやけど、一つだけわかる事もあるで。ここに連れてこられたモンが全員希望ヶ峰の新入生で超高校級の才能を持っとるっちゅうこっちゃ。」
希望ヶ峰学園の新入生…?
って事は、ここにいる全員が俺の同級生なのか。
…よし、だいぶわかってきたぞ。
ここはホープステーションとかいう駅の中で、今期の希望ヶ峰の新入生だけがここに集められたって事か。
現状を把握したところで、黄緑のショートヘアーでジャージを着た女の子がこっちに来た。
「あれ?小学生がいんじゃん!アンタどしたの?迷子?」
「迷子じゃねぇよ!俺は男子高校生だっての!」
「嘘ぉ!!?」
「嘘じゃねぇ!俺は【超高校級の講師】赤刎円だ!!」
「え、超高校級!?アンタも!?」
「お前なぁ…まぁ、この見た目じゃそう思われても文句言えねぇけどよ。で、お前は誰なんだ?」
「たはは、ごめんごめん。ビックリしちゃって言うの忘れてた。アタシは【超高校級のランナー】
【超高校級のランナー】
速水蘭華!?
確か、ありとあらゆる女子陸上競技の全国大会に出場して次々と大会新記録を叩き出し、走る種目では男子の記録をも大幅に抜いたっていう…
テレビのインタビューで見た事あるけど、やっぱ生で見ると全然違うな〜…!
「ああ、よろしくな速水。」
「うん、よろしく!!そっちの子は?」
「………札木未来。【超高校級のタロット占術師】。」
「よろしくね!!」
速水は、屈託のない笑みを浮かべて俺達二人と握手を交わした。
…何かこう、全く人見知りとかしないタイプなんだな。
「なあ、速水ちゃんが自己紹介終わったみたいだし、次は俺が言ってもいいだろ!?なあなあ!?」
お、今度はさっき最初に反応したアッシュブロンドのセンター分けの奴か。
学ラン着てるし、いかにも学生って感じだな。
すげぇ自己主張が激しいが、コイツは一体どんな才能を持ってんだ?
さっきからものすごく話しかけてくれってオーラ出しまくってるし、コイツに自己紹介しておくか。
「俺は赤刎円。【超高校級の講師】だ。こう見えてれっきとした男子高校生だ。ちなみに『ばね』の字は羽毛の羽じゃなくて首を刎ねるの刎な。で、こっちは…」
「……… 札木未来。【超高校級のタロット占術師】です。」
「へぇ、赤刎に札木ちゃんか!俺は
【超高校級の幸運】
才能溢れる生徒のみが本科への入学を許される希望ヶ峰学園だが、たった一人だけ超高校級の才能を持たない生徒が入学できる制度がある。
毎年平均的な高校生の中から一人が抽選で選ばれ、その選ばれた生徒は【超高校級の幸運】と呼ばれるというわけだ。
今年はコイツが選ばれたのか。
…何というか、こう…ものすごく自信満々だな。
普通、抽選で入ってきた奴がここまで自分を前面に出してアピールするか?
…まあ、前向きなのはいい事だけどよ。
「ん?どうかしたか?」
「あ…いや…何かお前、すげぇ元気だなーって思って…」
「当たり前だろ!だって、俺は希望ヶ峰学園に選ばれたんだぜ!?んなモンテンション上がるに決まってんだろーが!!」
「そ、そっか…」
「…ところでよ。」
「ん?」
漕前は俺の視線に合わせて屈むと、肩を組んできた。
そして、ニヤニヤしながら小声で話しかけてくる。
「速水ちゃんって、すげぇいい身体してると思わねぇか?」
「…はぁ!?」
「やっぱスポーツやってるだけあっていい身体してるよなぁ!見ろよあの巨乳!お前もあの乳に釘付けになってんだろ?なあおい、本当の事言えよ〜。」
「…そ、そうだな。」
コイツ、煩悩まみれじゃねぇか。
何だよ、さっきまでちょっと自信満々でかっこいいって思ってたのに台無しだよ。
…まぁ確かに、気持ちはわからんでもないが。
正直ああいう健康的な女は嫌いじゃない。大好きだ。
「………。」
俺と漕前がニヤニヤしていると、札木がものすごく冷めた目つきでこっちを見てきた。
ちょっ、札木さん!?クラスメイト相手にそんな目しないでくれませんかね!?
「Hey、オマエら!エロい話してんのか?だったらオレも混ぜろよ!」
今度は、タンクトップと迷彩柄のカーゴパンツを身につけた、焦げ茶のコーンロウの奴が話しかけてきた。
外国人か。…見たところ北米出身っぽいが?
「ジョン!お前も混ざれ!今な、速水ちゃんがメチャクチャエロい身体してるって事について話し合ってたんだよ!」
声がデカいなぁ。絶対本人に聞こえてるぞコレ。
「Oh,ソイツはオレもagreeだぜ!確かにランカのbazongasはtubularだよな!」
…ん、要は速水の爆乳がマブいって言ってんのか。
やっぱコイツも煩悩まみれかよ。
幸い、意味がわかってないっぽい速水はキョトンとしてるだけだが…
うわぁ、さっきから札木がものすごい目で見てくるんだけど。
なんかこのまま話続けてると周りの奴…特に札木からの印象最悪だし、そろそろ話題変えねぇと。
「えっと、ちょっといいか?俺は赤刎円。【超高校級の講師】だ。苗字は赤に首を刎ねるの刎で赤刎、名前は円って書いてまどかって読むんだ。よろしくな。」
「……………札木未来。【超高校級のタロット占術師】。」
「Oh,マドカにミライか!確かJapaneseでcircleとfutureって意味だよな?Japanese names are so cool!」
すっかり上機嫌になったところで、英語混じりの奴が自己紹介を始める。
「オレは【超高校級のadventurer】、つまり冒険家として入学したJonathan Walkerだ!オレの事は気軽にJohnって呼んでくれよ!」
【超高校級の冒険家】ジョナサン・ウォーカー
ジョナサン・ウォーカー…ああ、あの有名な冒険家か!
確か遺跡や新種の生物の調査のために世界中を転々としてて、誰も近寄らないような死地や秘境地にも単身で乗り込んでいくっつーなかなかクレイジーな奴だ。
ブログもやってるんだがそれが世界中で翻訳されて親しまれる程の大人気で、そっちでもそこそこ稼いでるんだよな。
オレも実はジョンのブログの隠れファンで、一度英語の授業でブログを紹介した事がある。
「俺、お前のブログ読んでるぞ。毎回面白え記事書いてくれるから飽きねえんだよな!」
「俺も俺も!面白えよなあれ!」
「マドカとミナトはオレのfanなのか!いつもオレのblogを読んでくれてありがとな!」
俺は、漕前やジョンと一緒に盛り上がった。
コイツら、ノリが良くて正直一緒にいると楽しいんだよな。
「あのー…そろそろいいかな?」
俺達が盛り上がっていると、さっき俺に声をかけてきた、後ろから車椅子に乗ってメガネをかけた緑っぽい黒髪の奴が話しかけてきた。
「話の腰折っちゃってごめんね。でも、僕を含めてあとまだ11人いるからさ。」
「あ…そうだよな。悪い。俺達だけで盛り上がっちまって。」
札木もさっきから話題についてこれなくて困ってるし…何か悪い事しちまったかな?
「札木もごめんな?」
「…………。」
「んじゃ、改めて自己紹介。俺は【超高校級の講師】の赤刎円だ。」
「………【超高校級のタロット占術師】の札木未来です。」
「よろしくね、赤刎君に札木さん。僕は
【超高校級のカウンセラー】
安生心… 確か、まだ高校生なのに医者顔負けの医療知識と技術を持つ天才少年か。
本当は【超高校級の医者】としてスカウトされる予定だったが、身体の弱さを理由に精神科医を目指してカウンセリング教室を開いた事から【超高校級のカウンセラー】としてスカウトされる事になったそうだ。
安生の治療を受けた人は、どんなに重度な精神疾患でも普通に日常生活が送れるレベルにまで回復するらしい。
「知ってるよ、カウンセリング教室やってるんだろ?」
「よく知ってるね。…へへへ、僕なんてまだまだだけどね。」
「いや、その歳で名医顔負けの医療技術持ってんのは十分すげぇだろ。」
「ありがとう。二人とも、嫌な事があったら何でも僕に言ってね。僕でよかったらいつでも相談に乗るよ。」
「おう、頼りにしてるぜ。」
「……………。」
俺はニカッと笑い、札木もコクリと頷いた。
安生は、カウンセラーやってるってだけあって優しい性格なんだな。
何かあったら安生に相談してみるのもいいかもな。
っと、これで自己紹介してないのはあと10人か。
随分と話し込んじまったし、巻きでいくか。
「次行くぞ、札木。」
「…………。」
俺が次の奴の所に歩いて行こうとすると、札木はコクリと頷いて俺の後をついていった。