エデンズダンガンロンパ 希望の生徒と絶望の楽園 作:M.T.
楽園生活9日目。
『おはようございます、オマエラ!!朝です!!7時になりました!!今日も元気に殺し合いましょう!!』
今日もまた、モノクマの耳障りなモーニングコールで起こされた。
俺は、朝の準備を済ませて8時に間に合うように食堂に向かった。
◇◇◇
「おはよう。」
食堂には、安生、神崎、聞谷、湊、ジョン、速水、筆染がいた。
「おー、おはよ円!」
「Good morning!!」
「おはよう、赤刎君。」
「おっはー!!」
「おはよー。」
「ごきげんよう。」
6人は挨拶を返してくれた。
神崎は相変わらずかと思いきや。
「…フッ。よくぞ来たな、我が右腕よ。」
神崎が俺に視線を送りながら挨拶を返してくれた。
「…え?」
「あはは。神崎君、君にすっかり懐いちゃったみたいだね。」
「フン。」
「あれ?神崎、そういえばお前自分の飯作りに行かなくていいのか?」
「神崎さんは、本日は仕田原さん達が作ってくださるお食事を召し上がるそうですわ。」
「へー…」
神崎も、少しはみんなに対して心を開いたって事なのかな?
そんな事を考えながら待っていると、宝条、一、黒瀬の3人が来た。
全員が揃ったので、俺達は枯罰と仕田原と弦野が作ってくれた朝食を食べた。
その後は、仕田原が昨日作って冷やしておいたカボチャのプリンを振る舞ってくれた。
程よい甘さで美味しかったのだが、枯罰が無表情でプリンを頬張っていたのには少し笑ってしまった。
…前からちょっと思ってたけど、枯罰って甘いもの好きなのかな?
「メッチャ美味しいー!」
「ありがとうございます。皆さんに喜んでいただきたくて試作したんですけど、ご好評のようで何よりです。」
『うぷぷぷぷ、仕田原サン。そんなもの作る暇があるなら他にやる事あるんじゃないの?』
突然、あの耳障りな声が聞こえてきた。
そして、例のイロモノが現れた。
『とうっ!』
「ぎゃあっあっあああああああぁあああっ!!出たぁあああああああっ!!」
「いや、いい加減慣れろよ。」
虫を見つけたかのように跳び上がる一に、弦野が冷ややかな視線を送った。
「あーあ、またダサいのが現れた。ゆめ達いいところだったのにー。」
「モノクマってホント空気読まないよね。」
『ん?速水サン、空気は読むものじゃなくて吸うものだよ?』
「だよねー。それでクマちゃん、何の用?」
『んもうっ、察しが悪いなー。用件なんて一つに決まってるでしょ!!オマエラ、コロシアイはどうしたのさコロシアイは!!何か人が死ぬどころか弦野クンと神崎クンはみんなに馴染んでるしさ!!』
「…フン、くだらんな。それで俺達に殺し合いをさせるために動機を配りにきたのか?」
『そうそう…って、神崎クン!ボクのセリフ取らないでよ!!そうだよ、動機を配りに来たんだよ!!オマエラがコロシアイをしないから無言の圧力に押し潰されてこっちはもうドーキがドキドキ…』
「くだらん駄洒落はええから用件を3行でまとめて早う帰らんかい。」
『うわ枯罰サン、ボクの扱い方雑っ!!まあでもこれ以上グダグダするとみんな飽きちゃうからね。』
「ん?みんな?ねえ、みんなってどういう事?」
『あーもううるさいな!今のはナシ!ナシったらナシ!幸水に豊水に二十世紀!!とにかく、オマエラのパスポートに動機を送るからちゃんと目を通しといてね!』
「動機なぁ…今回は何なん?またウチらの不安煽って殺し合わせようっちゅう魂胆かいな?」
『イグザクトリー!!今回の動機は…『秘密』だよ!!』
「秘密?」
『うぷぷぷぷ、人は誰しも大なり小なり秘密を抱えてるものなんだよ。中にはとんでもない爆弾抱えてる人もいるんじゃない?今からオマエラにはそんな爆弾をプレゼントします!パスポートの動機アプリに通知が来てるはずだから、それを開いて確認してね!』
「秘密だって!?…あ、もしかしてアレかな…」
「でもさ、自分の秘密なんて知ってどうするの?誰にも言わなきゃ何も起こらないよね?」
『うぷぷ、誰がオマエラに自分の秘密を送るなんて言った?ボクはね、オマエラの秘密をバラバラに送ったんだよ!』
「は…はぁあああああああっ!!?」
「マジかよ。」
「いらん事しよるのぉ…」
『だって、そうでもしないとオマエラ殺し合ってくれないでしょ?』
「ふざけんじゃねぇぞオイ!!今すぐ消せ!!」
『は?消すわけないじゃん。バカなの?死ぬの?そんなに知られたくないなら殺しちゃえばいいじゃーん!』
「コイツ…!!」
「にゃはは、にゃるほどねー。でもさ、配られる事がわかってるんだったら見なきゃいいんじゃないの?」
「I see!オレは絶対見ないからな!!」
『あ、そうそう。1時間以内に見ないとオシオキだから。それと、明日になっても死人が出なかったらそれ全部ネットに流しちゃうよ。』
「はぁ!?ちょっ…やめてよ!そんな事したら生きていけなくなっちゃうじゃない!」
『だから、知られたくないなら殺しちゃえって言ってんじゃーん!』
「テメェ…」
『あ、そうそう。もう一個言いたい事があるんだった。今から、『パスポートの貸し出しを禁止する』っていうルールを追加するよ!』
モノクマがそう言った直後、パスポートのルールの欄に
ーーー
十四、パスポートの貸し出しを禁じます。
ーーー
という項目が追加された。
「はぁ?こないなルール追加しよって、どういうつもりなん?」
『うぷぷ、さぁね。それじゃ、ボクの方からは大体言い終えたのでこれで。バイバーイ。』
そう言って、モノクマは去っていった。
「クソッ、あの野郎…!!」
「ムキになんなや。それよりお前ら、秘密を見てもええけど本人にだけは絶対言うなや。」
「え、何で?秘密を知ったんだったら本人には言った方が良くない?」
「ド阿呆。ほいでソイツが逆上してお前に何かしても文句言えへんぞ。見え見えの地雷踏み抜いてどないすんねん。」
「いや…でも、俺達は一致団結したんだ!俺達の中にそれで誰かを殺すような奴はいない!!」
「はー、付き合ってられへん。もう勝手にせぇよ。殺されても知らんぞー。」
そう言って、枯罰は食堂から出て行ってしまった。
「俺もアイツと同じ意見だな。安心しろよ、俺は死にたくないから秘密をバラしたりなんかしねぇよ。じゃあな。」
「あっ…」
弦野も出て行ってしまった。
「…どうするよ?」
「オレはランカとsame opinionだな。誰が自分のweak point知ってんのかを知りたい奴もいるだろ?」
「そうだな。俺も速水ちゃんやジョンと同じ意見だ。俺だって、誰が俺の秘密抱えてんのかわかんねぇのは不安だしよ。」
「自分も伝えた方がいいと思いますね。」
「あたしも。あたしは、みんなの事信じてるから!」
「俺もお前らに賛成だ。誰が誰の秘密知ってんのかわからない状態だと、不安にかられて変な気を起こしちまうかもしれないからな。」
「僕は反対。枯罰さんの言う通り、あまり人を刺激するような事をするのは勧められないな。」
「そうですわね。わたくしも言うべきではないと思いますわ。」
「ゆめもそう思う!やっぱり、本人にも簡単に教えるべきじゃないと思うの。」
「ぼ、ボクも…し、死にたくないし…」
伝えた方がいい派は俺、湊、仕田原、ジョン、速水、筆染。
伝えない方がいい派は安生、聞谷、枯罰、弦野、一、宝条か。
見事に真っ二つに分かれたな…
「黒瀬ちゃんはどう思うの?」
「ボクはどっちでもいいよー。別に強制する事でもないしー。」
「神崎は…」
「興味ないな。」
中立派が神崎と黒瀬か。
まあ、アイツらは秘密の一つや二つで動揺するようなタマじゃないだろうしな。
「それじゃあ、枯罰さんと弦野君が行っちゃったし、今回のところはこれでお開きにしようか。あ、秘密は必ず個室の中で見るようにしてね。」
「ああ。」
その場で流れ解散となったので、俺はとりあえず部屋に戻って秘密を見ることにした。
◇◇◇
えーっと、パスポートの動機アプリに…あ、本当だ。
通知来てる。
…一体誰の秘密なんだ?
俺は、嫌な予感がしつつもアプリを開いた。
そこには…
『【超高校級の脚本家】黒瀬ましろサンの秘密!
黒瀬ましろサンは人を殺した事があります!』
…え?
俺は、その内容を理解できなかった。
理解しようとしても、頭が受け付けなかった。
俺は思考停止したまま、気がつくと数十分が過ぎていた。
「そんな…う、そ…だよな?黒瀬が…殺人犯…?」
確かに、アイツは一癖も二癖もあるメンバーの中でも一番何を考えてるのかわからない奴だ。
でも、だからって人殺しなんて…
いや、こんなの絶対モノクマの捏造に決まってる。
あのふわふわした小動物みたいな黒瀬が殺人犯なわけがない。
…そうだ、本人に確認してみよう。
それでアイツが否定してくれれば、全部丸く収まるんだ。
いつものノリで聞けば、アイツなら笑って『違う』と言ってくれるはずだ。
俺は、不安を抱きつつも黒瀬の元へ向かった。
「黒瀬。」
「んー、何かご用ですかー。」
ホテルの外に出て黒瀬を探していると、ミュージアムエリアに黒瀬がいた。
黒瀬は、何故か本物そっくりの人工のエイを捕まえていた。
「…お前、何してんの?」
「毒エイ捕まえたから部屋で飼うのー。」
『飼うのー』じゃねぇよ。
まずどうやって捕まえたんだよ。
「いやそれ偽物だから。つか早く元の場所に戻してこいよ。」
「はーい。」
黒瀬は、意外にも大人しく水族館に戻っていった。
ホント何考えてんのかわかんねぇな…
しばらくすると、黒瀬が水族館から出てきた。
「おまたー。」
黒瀬は、パタパタと足音を鳴らして俺の前に来た。
「それで、お話があるからボクに話しかけてきたんだよね?」
「ああ。大事な話だ。できれば聞かれる心配がない所で話したいんだけど…」
「えー何ー?もしかして、昨日のパンツのお礼?」
「違う。もっと大事な話だ。」
「ふーん。まあいいや。とりあえずボクのお部屋で話そっかー。」
黒瀬は、俺の手を引いて部屋へと向かった。
◇◇◇
「ここがボクのお部屋ですー。」
…うわ。
女の子の部屋に対してあんまりこういう事言いたくないけど、何かこう…いかにもって感じだな。
部屋中ピンクで、綿が飛び出たぬいぐるみが散乱しててものすごく不気味だ。
「ちょっと待っててねー。ジュース持ってくるから。そこ座っていいよー。」
「あ、サンキュ。」
俺は、アンティーク調の椅子に座って黒瀬がキッチンから出てくるのを待った。
しばらくして、ジュースの入ったグラスをお盆に乗せた黒瀬が来た。
「お待ちどーさまー。」
…うげ。
何だこのジュース。
白と黒が混じり合ってて毒々しいな…
なんかドロッとしてるし、変な匂いがするんだけど…
まさかとは思うけど、危ない物とか入ってないよな?
でも、ここで拒否るのも悪いしな…
不安を抱きつつジュースを飲んだが、なんと予想に反してものすごく美味かった。
やっぱ見た目で判断して食わず嫌いするのは良くないな。
「お、美味いなこれ。」
「えへへー、でしょでしょー。それで円くん、ボクの秘密って何だったの?」
「ぶふぉあっ!?」
俺は、思わず口に含んでいたジュースを吹き出した。
…え!?何で知ってんの!?
まだ言ってなかったよね!?
「あ、コラ!円くん、こぼしちゃダメ!」
「わ、悪い…じゃなくて!え、何で知ってんの?」
「んーにゃ、知ってたわけじゃないよー。察しただけー。このタイミングで大事な話っていったらそれしかないでしょ?」
「確かに…」
「で、わざわざボクに秘密を教えに来てくれたんだ?」
「ああ…」
俺は、覚悟を決めて黒瀬に正直に打ち明ける事にした。
「…俺が見たお前の秘密、それは『お前が人を殺した事がある』というものだった。」
「ふーん。で?」
黒瀬は、肯定も否定もせずストローでジュースを啜った。
あまりにも反応を示さないものだから内心かなり混乱したが、俺は話を続けた。
「俺はこんなもの信じてない。…なあ、嘘だよな?モノクマの捏造なんだよな?だって、お前が殺人なんか…
「ん?本当だよ?」
「そっか、良かっ……………え?」
…………今、何て?
「キミが見た秘密は、本当の事なんだよ。ほら、ボクが認めたんだからキミも認めなよ。」
「そ、そんな…あ、わ、わかったぞ!きっと、何か事情があったんだな!正当防衛だったとか、何かのはずみでとか…
「なんとなくだよ。」
「………えっ?」
「特に理由とかないんだけど、なんとなーく人を殺したくなっちゃうんだよね。別に何の理由もないのに蟻潰すちっちゃい子とかいるじゃん?それと同じだよ。」
「お、お前…何言って…」
「そうそう。おまわりさんに捕まるのが嫌だから黙ってたけど、ボクね、新しい脚本は必ず人を殺した直後に書くんだー。だってその方が面白い話書けそうだし。」
意味がわからない。
コイツは一体何を言ってるんだ?
「ふっ…ふざけんな!!お前それ…本気で言ってんのか!?」
「本気と書いてマジですよー。外にいる時は適当に誰か殺してたけど、最近はあんまり殺せてないから退屈なんだよねー。」
「…えっ」
その直後だった。
「!?」
突然、黒瀬が俺に飛びついてきたかと思うと、馬乗りになって両手で俺の首を掴んできた。
「がぇっ!?ごぉっ…く、黒瀬…おま、何を…?」
「へへへー。ごめんね円くん。ボク、キミがあまりにも可愛いから我慢できなくなっちゃったんだー。」
「あがっ…ぐ、ぐるじ…」
「ふふっ、ねえ円くん。人ってねー、こうやって頸動脈と気管を圧迫してあげると簡単に死んじゃうんだよー?」
「ごぉっ………や、め………」
「心配しないで?キミは、これからボクの最高傑作として世に知れ渡るんだから。」
苦しい。
息ができない。
意識が少しずつ薄れていく。
だが、黒瀬はお構いなしに俺の首を絞める力を強くした。
「はぁっ…んぅっ……気持ちいいよぉ…円くん…ボク、お腹の下の方がキュンってなって…すごくイイの…お願い、もっとボクを気持ちよくして…♡」
黒瀬は、俺の首を絞めながら顔を赤らめて目や口を緩ませていた。
嘘だろオイ…!?
今更だけど、コイツマジでヤバい!!
コイツを何とかしないと、このままじゃ…死…
「なーんてね♪」
黒瀬は、ニコッと笑うと突然俺の首を絞める手を離して俺を解放した。
「ゲホッ、ゲホッ!!」
し、死ぬかと思った…
「にゃはは、冗談だよ。こんなに可愛い円くんを殺すわけないじゃん。ただ、どんな反応するのか見たくてからかってみただけ。」
「ふ…ふざけんなよマジで…こっちは死にかけたんだぞ…」
「ごめんね。でももうしないから許して?」
黒瀬は、瞳を潤ませてコテンと首を傾げる。
俺は、深くため息をついて一番気になってる事を確認した。
「…お前は、ここで人を殺す気は無いんだな?」
「ないよー。ボクはここの生活が気に入ってるし、オシオキか失楽園で退場なんてもったいない事したくないからねー。それにボクはみんなの事が大好きだから、いくら人を殺すのが気持ち良くてもみんなを殺したりなんかしないよー。」
「だったら、もう殺人はしないって約束できるか?」
「うんー。約束するー。そうだ、せっかくだし指切りしよーよ。」
黒瀬が小指を出してきたので、俺も小指を出す。
曲げた小指を互いに引っ掛けると黒瀬が歌い始めた。
こんな遊びで殺人を防げるなら安いものだ。
「ゆーびきーりげーんまーんうーそつーいたーらはーりせーんぼーんのーますっ♪ゆびきった!」
俺と黒瀬は口約束を交わした。
気がつくともう12時前になっていたので、とりあえず食堂に向かう事にした。
「黒瀬、これからは一緒に行動してもいいか?」
「なあにー?円くんってば、ボクの事口説いてるのー?やーん嬉しいー♪」
「違う。お前は人を殺さないかもしれんが、万が一誰かが変な気を起こして事件が起きちまった時、お前が一人でうろついてたら誰も裁判でお前の事を守れないだろ?俺がバラさなくても、どこかからお前が殺人鬼だって秘密が漏れちまったら真っ先に疑われるだろうしな。」
「へへへー、円くんは優しいんだねー。もちろんいいよー。」
とりあえず、俺が近くにいれば安心だろ。
コイツも俺に見られてるのに人を殺すほどバカじゃない筈だ。
「それじゃいきましょー。」
俺は、黒瀬と一緒に手を繋いで食堂に向かった。
◇◇◇
食堂には、全員集まってはいたが暗い面持ちだった。
無理はない。モノクマのせいで、人の爆弾を抱える事になってしまったのだから。
それにしても…誰も秘密を教えにこないって事は、俺の秘密を引いたのは伝えない派の6人のうちの誰かだったって事か。
「おい、マドカ…オマエ、neckにbruiseついてるぞ…どうしたんだそれ?」
「ホントだ、首を絞められたみたいな痕が…」
「ああ、これか。えーっと…」
黒瀬に殺されかけたなんて言わない方がいいしな。
何て言い訳しようか…
そんな事を考えていると、黒瀬がテーブルにちょこんと座って言った。
「それはねー。ボク、円くんと失神ゲームして遊んでたんだけどねー。ちょっとやりすぎて痕になっちゃったの。」
「なっ…黒瀬さん!!それで赤刎君が死んじゃったらどうするつもりだったの!?そんな危険な遊びやっちゃダメだよ!!」
「そうだよ、アンタ不謹慎すぎ!!」
「ごめんなさーい。」
黒瀬は、見るからにシュンとするフリをした。
「赤刎君も、そんな遊びに付き合っちゃダメだよ!わかった!?」
「お、おう…」
良かった、この場は何とか誤魔化せたみたいだ。
流石にこんな状況で失神ゲームやってたってかなり無理のある言い訳だけど、黒瀬が殺人鬼だって堂々と言うわけにもいかないしな。
…でも、明日になればネットで全部バラ撒かれる。
多分、全員が全員の秘密を知る事になる。
黒瀬が殺人鬼だってわかったら、きっとみんな今まで通りではいられなくなる。
…いや、その前に自分の抱えている秘密が知れ渡ったら二度と日の当たる場所で生きていけなくなってしまうだろう。
もしそうなったら、俺は覚悟を決められるのだろうか。
「はいはーい、もうこの件に関してはおっしまーい!円くんも許してくれてるし、もういいでしょ?」
「いいわけないよ。君、反省してるの?」
「安生、ホントにもういいから。黒瀬ももうしないって約束してくれたしな。」
黒瀬の奴、俺と約束したとはいえ下手に刺激したら何するかわかんないからな。
ここは穏便に済んだ方が俺も有難い。
心配性なのか安生は最後まで食い下がったが、やられた張本人の俺が言ったという事もあって俺が黒瀬を許すように言うとそれ以上は何も言わなかった。
結局、黒瀬の事は俺が許したという事で不問になった。
「それじゃー、ご飯にしましょー。ボクお腹ペコペコだよぉー。」
黒瀬は、カチャカチャと食器を鳴らしてみんなを急かした。
全員で仕田原達3人が用意してくれた昼食を食べる。
その後は自由探索の時間になったので、俺は黒瀬と一緒に大浴場に行く事にした。
「じゃあボクはお風呂に入ってくるので、円くんは探索しててくださーい。」
…風呂場までは流石に一緒にいられないからな。
アイツが出てくるまで俺は大浴場の周辺の探索でもするか。
俺は、大浴場の外にあるブレーカーを調べてみた。
特に変わったところはないな。
「はぁー、気持ちよかったですー。」
数十分後、黒瀬が温泉から出てきた。
真っ白な肌がほんのり赤みを帯びていて、温泉を堪能できたのがわかった。
「次はプレイルームでゲームでもしないー?」
俺は、黒瀬に引っ張られてプレイルームに向かった。
黒瀬は、テーブルに置いてあったトランプを手に取ってシャッフルした。
「トランプあるしババ抜きでもするー?ボクね、ババ抜き得意なんだー。」
「…一回だけだぞ。」
「わーい♪じゃあさっそくやりましょー。」
俺と黒瀬は、ババ抜きで勝負をする事になった。
「はい、ボクの勝ちー。」
「くっ…も、もう一回だ!」
「しょうがないなぁー。」
結局、2時間ほどブッ通しで何回か勝負したが一回も勝てなかった。
『顔に出すぎ』と笑われたが、そんなに顔に出てたかな?
すると、唐突に黒瀬がパスポートを開いた。
「あ、チャット来てる。」
「ん?」
「湊くんからだー。んーと、プラネタリウムで催し物をしたいから30分頃を目安に集まってくれって。」
「湊から?俺の方にはチャット来てないんだけど…」
「忘れられてるのかもねー。チャット送ってみたら?」
「そうだな…」
忘れられてる…?
でも、湊が俺を忘れるとは思えないんだけど…
もしかして、俺は歓迎されてないのかな?
俺は、少し不審に思いつつも湊にチャットを送った。
《プラネタリウムで出し物するんだって?俺も行っていいか?》
すると、すぐに返信が返ってきた。
《もちろんいいぞ!赤刎だったら大歓迎だ!ぜひ来てくれ!》
よかった、俺の事は歓迎してないわけじゃないんだな。
「それじゃあそろそろ行くか。」
「そうだねぇ。」
俺達は、湊が出し物をするというのでプラネタリウムに向かった。
◇◇◇
5分前にプラネタリウムに行くと、聞谷、枯罰、仕田原、ジョン、弦野、速水、宝条がいた。
「お前らも湊に招待されてたのか?」
「はい!なんでも漕前さんが、秘密なんて送られて皆さん気が滅入っているだろうからと自分達を招待して下さったんですよ!」
「ゆめ達にチャットが送られてきたの。漕前くんって〜、ホント優しいわよね〜。」
宝条…またキャラ作ってる…
「オレとリツはカオリとランカにinviteされたから来たんだ。」
「ああ。コイツらによかったら一緒にどうかって誘われてな。ちょうど暇してたとこだし来てやったんだよ。」
あれ?ジョンと弦野にもチャットが送られてないのか。
「安生さんと一さんもお招きしたのですけれど、チャットが来ていないのに行くのは迷惑ではないかと断られてしまいましたの。」
「帝に至っては『興味ない』ってさー。」
安生達もチャットを受け取ってなかったのか。
だからこの場にいないんだな。
「ミナトのヤツ、何でオレにはchatをsendしてくれなかったんだ?」
「…まぁ誘われたメンバーから察するに、女子にしか知らせとらんっちゅう事やろな。」
「ケッ、あのスケベ野郎の事だ。如何わしい出し物でもするつもりだったんじゃねぇの?」
「ちょっと、律!湊がそんな事するわけないでしょ!…確かに湊はエッチだけど!」
「そうですわよ!いくら漕前さんが不埒者だからといって、その言い方はあんまりですわ!」
速水、聞谷。フォローになってないぞ。
…ん?女子?
「あれ?そういや筆染は?」
「あー、絵麻ね。さっき確認のチャット送ったんだけど、既読にならないんだよね。もしかして忘れてんのかな?」
「まあ、筆染さんですから…可能性はありますわよね。」
「どーする?」
「んー…でももうすぐ始まっちゃうし、来るのを期待するしかないか。」
「…ん?」
突然、弦野がドアの方を振り向いた。
「どうした?」
「…何でもねぇよ。」
「?そうか。」
結局、筆染と言い出しっぺの湊が来ないまま5分が過ぎた。
すると、その時だった。
「あ。」
突然、黒瀬のパスポートにチャットが届いた。
「湊くんからだー。」
そう言って、黒瀬はパスポートを全員に見せた。
《ワリ!準備で手間取っちまって遅れそうだわ!あと5分待って!》
それを見た枯罰、弦野、宝条の3人は呆れ返った。
「…はぁー、あんのド阿呆。」
「時間計算できねぇのかあのバカは。」
「ったく…レディを待たせるなんて男としてどうなのよ。」
「まあまあ…あと5分で来ると仰ってますし、もう少し待ちましょうよ。」
だが、湊も筆染も来ないまま15分が過ぎた。
「ちょっと!!どうなってんのよ!?全然来ないんだけど!?」
「阿呆らし。もう帰ろか。」
「チッ…付き合ってやった俺がバカだった。」
とうとう痺れを切らした枯罰、弦野、宝条の3人がプラネタリウムを出ようとした、その時だった。
ピーンポーンパーンポーン
『死体が発見されました!住民の皆さんは、至急大浴場にお集まり下さい!』
「し、死体ですって!?」
「なになに!?何なの!?」
「パニクっとる場合ちゃうやろ。行くで。」
「ああ…!」
俺達9人は、急いで大浴場に向かった。
◇◇◇
俺達が大浴場に着くと、そこには筆染、一、安生、神崎の4人が既に女湯の前に集まっていた。
「あっ…ああああぁあああああ…」
「帰る帰る帰る帰る帰る帰る帰る帰る帰る帰る帰る帰る帰る帰る帰る帰る…」
「…何て事を…!」
「………下衆が。」
筆染と一はパニックを起こし、安生と神崎は犯人に対して憤りを覚えていた。
俺は、恐る恐る女湯の方に視線を向けた。
そこには…
【超高校級の幸運】漕前湊が血塗れの姿で息絶えていた。
ー生存者ー
【超高校級の講師】赤刎円
【超高校級のカウンセラー】安生心
【超高校級の天才】神崎帝
【超高校級の香道家】聞谷香織
【超高校級の脚本家】黒瀬ましろ
【超高校級の???】枯罰環
【超高校級の家政婦】仕田原奉子
【超高校級の冒険家】ジョナサン・ウォーカー
【超高校級のヴァイオリニスト】弦野律
【超高校級のソフトウェア開発者】一千歳
【超高校級のランナー】速水蘭華
【超高校級の画家】筆染絵麻
【超高校級の収集家】宝条夢乃
ー以上13名ー