エデンズダンガンロンパ 希望の生徒と絶望の楽園 作:M.T.
(非)日常編①
「…。」
朝のアナウンスより早く起きてしまった。
時間を確認すると、まだ朝の5時だった。
昨日はよく眠れなかった。
…一晩経ってもまだ信じられない。
湊が死んだなんて…
やっと、本当の親友になれたと思ったのに。
そして、あの時の神崎の泣き叫ぶ声…
今でも頭から離れない。
本当に昨日、二人も仲間を失ってしまったのか…
「…まだ時間あるな。」
俺は、眠くはなかったがまだ時間があるのでベッドに潜り込んで瞼を閉じた。
◇◇◇
『おはようございます、オマエラ!!朝です!!7時になりました!!今日も元気に殺し合いましょう!!』
「…。」
モノクマの不快なモーニングコールが部屋中に鳴り響く。
…うるさいな。
だが今は怒る元気もない。
俺は、モノクマのアナウンスを聞き流しつつ支度をして食堂に向かった。
8時前、食堂に向かうと既に安生、聞谷、ジョン、一、速水、筆染、宝条の7人がいた。
「おはよう、みな………」
俺は、湊の席に向かって挨拶をした。
湊の席には花が置かれていた。
「…。」
ははっ、何やってんだよ俺。
湊ならもういないだろ。
「………おはよう、みんな。」
「おはよう、赤刎君。」
「Morning,マドカ。」
「ご機嫌よう。」
「おはよ。」
「お、おはよう…」
「おはよー…」
返してくれたのは宝条以外の6人か。
…と思いきや。
「お、おはよ…」
宝条も返してくれた。
「今日もいつもの3人が朝ご飯を作ってくれてるよ。」
「…そうか。」
黒瀬は…相変わらず遅刻か。
今はみんなアイツが殺人鬼だって知らないけど、いつかはバレるかもしれない。
その時はどうすればいいんだ…
「おはよぉー。」
噂をすれば影とはまさにこの事で、ちょうど黒瀬が来た。
「うーん、よく寝たぁー。」
黒瀬は、伸びをしながら当然のように俺の隣に座った。
他のみんなとは違い顔色が良く、本当に熟睡できたらしい。
するとその直後、3人が朝食を運んできた。
こんな状況でも飯を作ってくれるなんて、強いなアイツらは…
「飯できたで。机片せや。」
「「…。」」
一と宝条は、枯罰が運んできた飯を怪しいものを見るような目で見た。
「…おい。まさかウチの作った飯は食えへん言うんやないやろな?」
「「…。」」
「お二人とも、安心して下さい。枯罰さんは怪しい事は何もしてませんでしたよ。」
「それに殺したきゃとっくに何かやってるだろ。コイツは怪しいけど、作ってくれたもんはちゃんと食えよ。」
弦野の奴、いい事言うじゃねえか。
すっかりみんなに打ち解けたみたいだな。
「お二人とも、今は気分が優れないかもしれませんが栄養は摂ったほうがいいですよ?」
「…。」
「ゆめちゃんも、ご飯食べたら?元気になるよ。」
「…。」
仕田原と筆染が言うと、一と宝条は無言で頷いた。
良かった、とりあえず飯は食う気になってくれたみたいだ。
全員が集まっているので、朝食を食べ始めた。
すると、その最中だった。
「あのー、ボクみんなにお知らせがあるんですー。」
黒瀬がそう言うと、全員が黒瀬に注目した。
…おい、まさか秘密をバラす気じゃないだろうな?
俺は黒瀬が余計な事を言わないかハラハラしていたが、その心配が見事的中してしまった。
「ボク、殺人鬼なんだー。」
「…。」
「…。」
「…。」
俺と枯罰以外の全員の思考が停止する。
当然だ。
いきなり殺人鬼だなんてカミングアウトされたんだから。
「おいバカ!!今言う事じゃねぇだろ!!空気読めよ!!」
「…。」
「…。」
「…あっ。」
思わず口走ってしまった後で、俺は咄嗟に口を塞いだ。
「…え、何。知ってたの?」
「あ…ああ。俺は黒瀬の秘密を引いたからな。」
「ね、ねぇ。頭が追いつかないんだけど…ましろが殺人鬼ってどういう事なの!?」
「んー、そのまんまの意味だよー。ボクは人を殺すのが大好きなんだー。」
「何でそれを今になって言おうと思ったの?」
「なんとなく。あ、言っとくけどボクは爆弾魔じゃないからね?」
「ちょっと!何なの!?わけがわからないよ!!」
「だからボクは殺人鬼なんだってばー。」
「ひぃいいいいいっ!!!」
黒瀬が一の方に手を伸ばすと、一は席から飛び上がって尻餅をついた。
「こ、来ないで!!近づかないで!!殺さないで!!」
「ひどーい。まだ何もしてないじゃん。」
「まだって何よ!?これから何かする気!?」
「ぎくっ。」
「いやだああああああ!!!死にたくない死にたくない死にたくない!!誰か助けて!!お父さん!!お母さん!!ちーたん!!」
「落ち着いてくださいまし、一さん、宝条さん!黒瀬さんは別に何もしていませんわ!」
「そうだ!黒瀬は確かに自分で殺人鬼だって言ってる。実際人を殺した事もある。だけど、黒瀬がお前らに何かしたか!?」
「これから何かするかもしれないじゃん!!殺人鬼を信用しろっていうの!?無理に決まってるよね!?ボクからしてみれば殺人鬼の黒瀬さんや才能不明の枯罰さんを信用してる君達の方が異常だよ!!」
「そうよ!!ゆめ達に何もしてなくても過去に人を散々殺してるんでしょ!?枯罰だって同じ穴の狢かもしれないじゃない!!」
「でも、枯罰は毎日俺達のために飯作ったり裁判では俺をサポートしたりしてくれるいい奴だし、黒瀬は二度と人を殺さないって約束してくれたし普通に接してる分にはかなりマイペースなだけで悪い奴じゃないんだよ。」
「タマキもマシロもオレ達のgood friendだ!!They’ll never kill us!!」
「約束してくれた!?友達!?まさかそれが根拠だって言うんじゃないでしょうね!?」
「そうだ。それだけだ。」
「頭おかしいんじゃないの!?そうだ、誰かコイツを縛り付けるなりどこかに閉じ込めておくなりしてよ!!それからじゃないと安心できないわ!!」
「いや、流石にそれはやりすぎなんじゃ…」
「うるさい!!ゆめは絶対こんな奴信用しないんだから!!もういい、こんな所出てくわよ!!」
宝条が食堂を後にしようとした、その時だった。
『うぷぷぷ、なになにどうしたのオマエラ?ご機嫌斜め?』
突然、どこからかモノクマが現れた。
「ぎゃあああああああっ!!!」
「何なのよアンタ!!」
「Buzz off!!」
『えーひどいな。せっかく親切にプレゼントをしてあげようと思ったのに。』
「どうせ新しい場所に行けるようになったんやろ?」
『あーコラ枯罰サン!何で人が言おうとしてた事を先に言うかな!?そんなんだからモテないんだよ!?』
「余計なお世話や。」
「てか人じゃなくてクマね。」
いちいちそこ反応するなよ黒瀬…
『はいはいそうですよ!新しい場所にいけるようになりました!それと、今回はもう一つお知らせがあるよ!』
「お知らせ?」
「もしかして、あの変な笹の事?」
『ちょっとー!!変って何だよ変って!!こっちはオマエラが気に入ると思って置いたのにさ!綺麗でしょ?金ピカでいかにも金運上がりそうでしょ?』
「邪魔。」
「退けろや。」
『うわ弦野クン枯罰サンひっど!!もういいよ!オマエラのお願いを叶えてあげようと思ったけどやっぱりやーめた!!』
「お願い?お願いってどういう事?」
『笹の葉といえば七夕!七夕といえばお願い事だよね!そういうわけで、オマエラにはこの短冊を配ります!』
そう言って、モノクマは全員に二つ折りの細長い厚紙を渡した。
『そこに願い事を書いて笹に飾ったら願い事が叶うよ!中にはどんな願い事をしたのか知られたくない人もいるだろうし、プライバシーに配慮して折り畳んで糊付けできるタイプの短冊にしておいたよ!ボクってば優しいよね?』
「うさんくさ…」
『ちょっと誰ですか今うさんくさって言ったの!その短冊に願い事を書いて笹に飾ったら本当に願い事が叶うんだよ!…ただし、叶えられるのは全員で一つだけだけどね。』
「全員で一つ…?」
「それってまさか…」
『そうです!叶えられるのは、誰かを殺し学級裁判で勝ち抜いたクロの願い事だけです!』
「なっ…!!」
「ほら!!やっぱり碌でもないじゃん!!」
みんなが騒いでいる中、黒瀬は笹をまじまじと見つめて唐突にモノクマに尋ねる。
「あのさー。仮にクロが他の15人を生き返らせてってお願いしたら、それって叶ったりするの?」
『もちろん!どんな願いでも叶うからね!』
「えーほんとー?七つ玉を集めたわけでもないのにさー。」
『叶うんだよねーそれが!殺されたみんなも破壊された地上もこのゴールデン笹でもとに戻れるんだよ!』
「ふーん。」
「何故か笹だけ日本語…」
筆染、今それツッコむ事じゃないと思うぞ。
『ちなみに、殺人を犯す前にちゃんと配った短冊に願い事とフルネームを書いて笹に飾ってないとお願いは無効だからね?』
「ふざけるな!こんなモンでmurderなんか起こるか!!」
『うぷぷぷぷ…いや、これだけで絶対釣れるよ。あ、そうそう。それと今回からもう一つルールを追加するよ!一人のクロが殺せるのは二人までだよ!』
モノクマがそう言った直後、パスポートにルールが追加された。
ーーー
十五、同一のクロが殺せるのは二人までです。
ーーー
「どうして今更こんなルールを?」
『だって自分以外全員殺すーなんて事されたらつまんないじゃん?』
「もし三人以上殺したらどうなるの?」
『三人目を殺した時点でオシオキです。それじゃバイバーイ!』
要件を伝え終わると、モノクマは去っていった。
「クソッ、あの野郎…!」
「ホントいらん事しかせぇへんのぉアイツ。」
「はいはーい、ボクからていあーん。」
突然、黒瀬が手を挙げて発言した。
「あのさー、こういうのはどう?誰か一人が短冊に『他の15人を生き返らせて』って願い事を書いて、誰かを殺してみんな裁判でわざと間違えるの。そうすれば全部解決じゃない?」
「な…!!何言ってんの!?」
「ほら見なさいよ!!やっぱりコイツ頭おかしいじゃないの!!だから監禁しろって言ってんのよ!!」
「もちろん誰かに殺される一人はボクでいいよ。だって後で生き返れるんだもん。ねえ、いいアイディアだと思わない?」
「ふざけんじゃねぇ!!俺達にオシオキを受けろっていうのか!?」
「だからー、後で生き返れるんだってばー。」
「でもオシオキはやだ!!」
「…黒瀬。」
「あー、円くん。円くんはいい作戦だと思うでしょー?」
「俺はお前の作戦には賛同できない。後で生き返れるとかそういう問題じゃないだろ。」
「なんでー?未来ちゃんも、闘十郎くんも、湊くんも、帝くんも、みんな戻ってくるんだよ?」
「お前、命を何だと思ってるんだ!!!」
俺は黒瀬を大声で怒鳴りつけ、肩で息をするほど呼吸が乱れた。
札木や湊の事を軽く扱われた気がして、黙っていられなかった。
だが黒瀬は全く悪びれる様子を見せずに首をコテンと傾げた。
「ごめんね?円くんが何でそんなに怒るのかわかんないや。」
「………はぁ。お前に言っても無駄だったな。」
黒瀬にまともさを求めた俺がバカだった。
そう思った途端、さっきまで激昂してたのが嘘のように冷静になった。
「へへー、怒った円くんも可愛いねぇ。ほっぺにちゅーしちゃうぞー。」
「やめろ。」
俺は、絡んでくる黒瀬を払い除けた。
「…まあ、今はこの件は保留にしておこうか。それより新しいエリアが開放されたんだし探索はしようよ。」
「せやなぁ。今回開放されたんは…多目的ホールとアミューズメント施設、それから研究室が4つやな。」
「班分けはどうする?」
「ボクは円くんと同じ班がいいなー。」
「ゆめ、コイツと同じ班だけは絶対イヤ!!」
「ボクも嫌だ!!殺人鬼と一緒になんていられないよ!!」
「ほな、お前らはウチと同じ班になるけどええんか?」
「…えっ!!?」
「当たり前やろ。ウチは疑われとるみたいやし、怪しい奴二人が同じ班で行動するわけないやんか。」
「う…で、でもやっぱあんな殺人鬼よりはアンタの方がマシだわ!」
「ボクも…どっちか選ばなきゃいけないなら枯罰さんかな…」
「あたしどっちでもいいよー。」
「…コイツがどっちでもいいなら、俺もどっちでもいい。」
結局話し合いの結果、アミューズメント施設を俺、聞谷、黒瀬、ジョン、筆染、弦野。多目的ホールを安生、枯罰、仕田原、一、速水、宝条が担当する事になった。
「わーい。ふかふかものですがよろしくお願いしますー。」
不束者だろ。
何だよふかふかものって。
毛布かよ。
「それを言うなら不束者だよね。」
筆染が代わりに突っ込んだ。
誰にでも裏表なく接するから、コイツの存在はありがたい。
「それじゃ行きましょ行きましょー。」
黒瀬が俺の手を引っ張ったので、全員アミューズメント施設に向かう事になった。
「ここ…ですわよね。」
「うわ、高いねー。」
目の前には、白と黒の二色に分かれた建物が聳え立っていた。
「んーと、中にはプールとかジムとか色々あるみたいね。あ、カラオケボックスもあるんだって!」
「カラ…何ですのそれは?」
「「「「…………え?」」」」
「ふにゃ?」
俺達5人は、一斉に聞谷の方を見た。
「…お前、もしかしてカラオケ知らねぇの?」
「ですから、そのからおけとは何ですの?意地悪しないで教えて下さいまし!」
嘘だろオイ。
カラオケも知らなかったのか。
動物園を知らなかった時点で箱入りのお嬢様だとは思ってたけど、まさかここまでとは。
聞谷家では一体どんな教育をしてるんだ…
「…チッ。えぇっとな。」
弦野は、面倒臭そうに頭を掻きつつも説明した。
「そういや、ジョンはカラオケボックスとか行った事あるのか?向こうじゃマイナーなんだろ?」
「何回か行った事あるぜ。オレはJapanに何回も来てるからな!」
そういえば、ジョンは日本文化とか好きなんだったな。
道理で詳しいわけだ。
「それじゃ早速行くか?」
「さんせー!!」
俺達6人は、建物に入って探索を始めた。
1階はゲームエリア、2階はカラオケエリア、3階から5階と屋上がスポーツエリアになっていた。
俺達はまずゲームエリアに向かった。
ゲームエリアには数えきれない程のあらゆる種類のゲーム機が並んでいた。
「うお、すげーな。さすがワンフロア丸ごと使ってるだけあるわ。」
「Wonderful!!VRまであるのか!!」
「一君とか絶対好きそうだよね。」
「すごいですわね!わたくし、こんな所初めてですわ!!」
聞谷の奴、テンション上がってるな。
普段はおっとりした感じだから、はしゃいだりするのは正直意外だ。
「よーし遊んじゃうぞー!」
「待て。探索が先だろ。」
「ぶー。」
早速ゲーム機の方へ突っ走っていく黒瀬の襟首を弦野が掴んで引っ張り上げると、黒瀬は頬を膨らませて唇を尖らせる。
一通りゲームエリアの探索を終えた俺達は、2階のカラオケエリアに向かった。
ワンフロア丸ごとカラオケボックスになっていて、クラブのような部屋が1部屋、大きい部屋が3部屋、小さい部屋が16部屋の計20部屋だった。
大きい部屋は20人程入れる広さで、小さい部屋はせいぜい3人入れる程度の広さ、そして一番広い20号室は50人は優に入れる広さになっていた。
普通のカラオケボックスとほとんど変わらないが、大きな部屋には一つずつ、20号室は三つロッカーがあった。
人が一人か頑張れば二人くらいは入りそうだな。
近くにはドリンクバーもあり、全員の好きな飲み物が出るようになっていた。
黒瀬にご馳走してもらった不気味な白黒ジュースもあった。
…アレ、モノモノジュースって名前だったのか。
「わあ、ここがカラオケボックスですのね!!」
聞谷は、本来の目的をすっかり忘れてキャッキャとはしゃいでいた。
「マドカ、何かヤマトナデシコがcute voice出してるのって良いよな。『ギャップモエ』ってヤツだな。」
「わかる。」
ジョンが肩を組んできたので、俺はサムズアップをして同意した。
「確かに聞谷がここまではしゃぐのってレアな光景だよな。」
「え、そう?聞谷ちゃんってああいう子だよ?」
おおう…
知ってたのか。
そういや筆染は聞谷と仲が良かったな。
「んーにゃあ、この階の探索はこんなところですかねー。そろそろ上の階行く?」
「そうだな。おい聞谷。行くぞ。」
「へぁっ!?は、はい!」
『へぁ』って…
普段の聞谷からは絶対聞けない声だな。
カラオケエリアの探索を終えた俺達は、スポーツエリアの探索をした。
スポーツエリアは様々なスポーツが楽しめる仕様になっていた。
「ここもすごいねぇ。へー、ボウリングもあるんだ。」
「速水ちゃんが喜びそうだよね。」
「オレも後でtrainingしに来ようかな。マドカも来いよ。オマエは鍛えた方がいいぞ。」
余計なお世話だ。
「見て見て円くん。セグウェイあるよー。あーでも円くんはちっちゃいから乗れないねー。」
嫌がらせかよ。
「あーもういいから!それよりプールあるらしいから行ってみようぜ。」
「ぷぷぷー誤魔化したー。」
ジョンと黒瀬にいじられて頭に来たので、俺は強引にプールの探索に進んだ。
プールがある5階に着くと、目の前に青い扉と赤い扉が見えた。
青い扉には男子マークが、赤い扉には女子マークが描かれている。
マップで確認すると、どうやらここは更衣室のようだ。
ドアの横には、ICカードリーダーのようなものが設置されている。
「これって…」
『そこにパスポートを翳して入るんだよ!』
「うわ!?」
突然後ろからモノクマが現れた。
『ちょっと、そんなにビックリする事ないじゃん!プンプン!』
「怒ってる時プンプンっていう人初めて見た…」
「そもそも人じゃねぇだろ。」
『あのー、いいですか?この更衣室は、パスポートを使って鍵を開けるんだよ。それと、男子の更衣室には男子のパスポートが、女子の更衣室には女子のパスポートが必要だからね。異性の更衣室に入ろうとした瞬間にマシンガンで蜂の巣だよ。』
冗談…ではないだろうな。
実際、湊も死体ではあったが女湯に入った途端に蜂の巣にされたんだ。
すると、パスポートにルールが追加される。
ーーー
十六、異性の更衣室に入る事を禁じます。
ーーー
「えー、じゃあ男子更衣室には入れないって事?無念至極なり〜。」
「「「「「えっ?」」」」」
黒瀬がサラッとセクハラ発言をしたので思わず俺達5人は引いてしまった。
『そうなるね。多感なお年頃のオマエラの事だから、どうせ隠れてコソコソシコシコチョメチョメしようとか思ってるんでしょ?そんな事したらR-18になって制限かかっちゃうからね!』
診療所に変な物を置いていた奴がよく言うよ。
『それじゃコロシアイ生活をゆっくり楽しんでいってねー!』
要件だけ伝え終わるとモノクマは去っていった。
「やっと行ったな。」
「塩撒いとくか?」
「撒くのはどうかと…そうですわ、盛り塩を置きましょう。」
「いいなそれ。」
「あー…盛り塩はいいが、まずは探索をしないか?まだプールも見てないしな。」
「そぉだねー。」
俺、ジョン、弦野が男子更衣室を、聞谷、黒瀬、筆染が女子更衣室を調べる事になった。
中には着替えを入れるためのロッカー、トレーニング器具、冷蔵庫などがあった。
冷蔵庫には、経口補水液が8人分入っている。
壁にはモノクマの気色悪いグラビア写真が貼られていた。
「Ugh…」
「あの野郎、汚物を貼り付けてんじゃねぇよ。」
「同感だ。目障りだし捨てるか。」
そんな会話をしつつ奥の扉を開けると、その先はプールになっていた。
飛び込み台やウォータースライダー、波の出るプールまであった。
「Wow,コイツはたまげたぜ。」
「すごいな…」
プールをしばらく探索していると、更衣室から女子3人が出てきた。
「あら、皆さん。もう探索はお済みでしたのね。」
「ああ。男子更衣室には、ロッカーとトレーニング器具、あとは冷蔵庫の中にドリンクが入ってたぜ。」
「あ、何だ。そっちも同じ感じだったんだね。女子更衣室にも多分男子更衣室と同じ物しか置いてなかったと思うよ?…あと、モノクマの男性アイドルユニットの写真ならあったけど。」
「うわ、想像しただけで気色悪いな。」
女子の方はアイドルの写真だったのか。
モノクマの奴、いちいち気持ち悪い事しやがって。
「どうする?建物の探索は終わったし、そろそろ研究室の探索する?」
「んー。」
アミューズメント施設の探索を終えた俺達は、近くにあった建物を見つけた。
クラシック調の外見の建物で、重厚感のある扉にはヴァイオリンの絵が描かれている。
「あら、ここは…」
「あー、多分俺の研究室だわ。」
弦野の研究室か。
「入っていいか?」
「好きにしろよ。」
よっしゃ、本人のお赦しが出たし入るぞー!
早速中に入ると、壁や天井に無数の穴が空いており少し薄暗かった。
演奏に必要な道具は一通り揃っており、楽譜や音楽に関する本が並べられた本棚もあった。
「なんか音楽室みたーい。」
「え、嘘でしょ!?ストラディヴァリウスがあるじゃん!!」
「What’s it?」
「確か、数億から数十億の値打ちがある超高級ヴァイオリンじゃなかったっけ?すごいねー、そんな物まで置いてあるんだー。」
「…それ、多分俺の。」
「えっ?」
「それ、俺が使ってたやつなんだよ。何でこんな所にあるのかは知らねーけど。」
「No way…」
「さすが超高校級…」
すると弦野はため息をついて研究室のドアを開けた。
「もう行こうぜ。」
「え、もういいのか?」
「別に好きでやってたわけじゃねーしな。次行くぞ次。」
随分と雑だな。
まあでも本人が言ってるんだし長居する理由はないか。
俺達は、弦野の研究室を後にして次の研究室に向かった。
次に見えてきたのは、真っ白な壁でシンプルな造形の建物だった。
木製の扉にはパレットの絵が描かれている。
ここは…多分【超高校級の画家】の研究室だな。
「あ、次はあたしの研究室だね!早速中入ろー!」
筆染は、上機嫌で俺達を研究室に招き入れた。
研究室の中はアトリエになっており、絵を描くのに必要な道具が一通り揃っていた。
部屋に入ってから気付いたのだが、どうやらこの研究室そのものがキャンバスとして使えるらしい。
なるほど、だから外の壁も真っ白だったのか。
研究室に入った途端、筆染は目をキラキラと輝かせ早速画材を愛でるように手に取った。
「わぁ!!あたしのお気に入りの筆がある!!それに高級な絵の具も!!あ、これは欲しかったけど高すぎて結局買えなかったやつ!!」
筆染は、完全に自分の世界に入ってはしゃいでいた。
「あのー…筆染?」
「ここホント最高!!一生いてもいい!!」
「えーっと…」
このはしゃぎっぷり…
弦野とは正反対だな。
「…おい。」
「はっ!!」
弦野が筆染の肩に手を置くと、筆染は肩を跳ね上がらせる。
そして周りを見渡しようやく我に返ったのか羞恥で顔を真っ赤にしていた。
「え、えー、この度は大変お見苦しい所を…」
「まあ…それだけ絵が好きなのはいい事なんじゃねえの?」
「赤刎君!」
あ、表情が明るくなった。
筆染はホント素直だな。
「それじゃあ、そろそろ行こっか。」
「あれ?もういいのか?」
「これ以上いると一生出られなくなっちゃいそうなんで…」
「ああ、なるほど。」
俺達は、筆染が熱中する前に研究室を後にする事にした。
探索が終わったのでホテルに向かう方向に歩いていると、今度はキラキラと輝くメルヘンチックな建物が見えてきた。
「うお、何だここは。」
「Huh!?This window,crystalで出来てるぞ!」
真っ白なアンティーク調の扉には、宝箱の絵が描かれている。
ここはもしかして…
「ゆめちゃんの研究室かな?」
「多分ねー。たのもーっ!!」
「あ、おいバカ!!」
黒瀬は、俺の制止を聞かず勢いよく扉を開けた。
次の瞬間。
「ちょっと!!ノックくらいしなさいよ!!」
宝条がものすごい形相で睨んできた。
「わ、ごめんなさーい!」
「って!?黒瀬じゃないの!!アンタ何しに来たのよ!!出て行きなさいよ!!」
「えー?」
「他の5人は入っていいわ。でも黒瀬!!アンタはダメよ!!」
「ぶー、ゆめちゃんのいけずぅー。」
「待て。だったら俺も外に残る。」
「弦野?」
「黒瀬を一人にするのはお前ら的に不安なんだろ?俺は宝条の研究室に興味ねぇし。」
「ちょっとそれどういう意味よ!!」
弦野が黒瀬を外に連れて行き、研究室の中には宝条と俺達4人だけが残った。
外装同様メルヘンチックな部屋の中には宝石やら骨董品やら、値打ちのありそうなお宝がショーケースの中に入れられていた。
中には名刀やミイラなどもある。
「うわっ!?」
俺は、思わずケースを見て跳び上がった。
中には、眼球がホルマリン漬けにされた瓶が入っていたのだ。
「め、目玉!?」
「ああ、それは『オパール・アイ』よ。19世紀のノヴォセリックにいた舞台女優の瞳でね、光の加減によってその時にしか見られない色彩に変わる美しい瞳を持っていた事からその名前がついたのよ。」
「詳しいんだな。」
「ゆめが集めたお宝だもの。」
「へぇ…」
あれ?
何で宝条が集めたお宝がこんな所にあるんだ?
宝条の研究室を一通り見終わったので、俺達は次の建物に向かった。
今度はどこにでもある一軒家で、扉にエプロンの絵が描かれている。
「今度はトモコのlaboratoryだな!」
「一応ノックするか。」
俺が扉を三回叩くと、その直後扉が開く。
出てきたのは仕田原だった。
「あら、赤刎さん達ですか。もう探索が終わったんですか?」
「まあな。お前らは?」
「安生さんと一さんは研究室の中にいらっしゃいますよ。枯罰さんと速水さんは調べたい事があるそうなのでここにはいらっしゃいませんね。」
「そうなのか。」
「今お茶を淹れたんですけどね、皆さんもどうです?」
「お、じゃあ頂こうかな。」
俺達は、仕田原に研究室の中に入れてもらった。
中は普通の家になっていて、家事の道具が揃っている。
家政婦だから家みたいな研究室なのか。
俺達は、仕田原に淹れてもらったお茶を飲んでからホテルに向かった。
ー生存者ー
【超高校級の講師】赤刎円
【超高校級のカウンセラー】安生心
【超高校級の香道家】聞谷香織
【超高校級の脚本家】黒瀬ましろ
【超高校級の???】枯罰環
【超高校級の家政婦】仕田原奉子
【超高校級の冒険家】ジョナサン・ウォーカー
【超高校級のヴァイオリニスト】弦野律
【超高校級のソフトウェア開発者】一千歳
【超高校級のランナー】速水蘭華
【超高校級の画家】筆染絵麻
【超高校級の収集家】宝条夢乃
ー以上12名ー