エデンズダンガンロンパ 希望の生徒と絶望の楽園   作:M.T.

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(非)日常編②

探索を終えた俺達は、探索の結果を報告し合う事になった。

 

「それじゃあ早速ミーティングを始めようか。まずは赤刎君のグループから報告してくれるかな?」

 

「ああ。俺達はアミューズメント施設に行ったんだが、1階はゲームエリア、2階はカラオケエリア、3階から5階と屋上がスポーツエリアになってたぜ。」

 

「ゲームかぁ…」

 

「スポーツエリア!?何それ楽しそう!後で行ってみよーっと!」

 

一と速水が食いついてきた。

やっぱり、自分の才能に関係のある施設が開放されると嬉しいもんなのか。

 

「あ、それと5階にはプールと更衣室があったんだけど、更衣室にはパスポートが必要らしいんだ。異性の更衣室に入ったら、大浴場の時みたく蜂の巣にされるそうだ。」

 

「物騒ですね…」

 

「赤刎君、ありがとう。じゃあ次は僕達だね。僕達は多目的ホールを調べたんだけど、多目的って名前がついてるだけあってコンサートやライブ、演劇、あらゆるイベントができるような造りになってたんだ。」

 

「ちなみに、席が使い方に合わせて動くようになってるよ!」

 

「ふーん。」

 

「あとは、楽園を囲っとる壁がひとつ引っ込んで上から見たら台形になっとる事くらいやな。」

 

枯罰がマップを開きながら言った。

 

うん、大体全部の班が情報を共有したかな。

んじゃあ今回のミーティングでわかった情報をまとめとくか。

 

・今回開放されたのは研究室4つ、アミューズメント施設、多目的ホールの6つ。

・今回開放された研究室は、仕田原、弦野、筆染、宝条の4名

・アミューズメント施設は1階はゲームエリア、2階はカラオケエリア、3階から5階と屋上がスポーツエリアになっている。

・ゲームエリアには、プレイルームにあったゲーム機とは比べ物にならない程豊富な種類のゲーム機が並んでいた。

・カラオケエリアの部屋は1〜16号室が3人部屋、17、18、19号室が20人部屋、そして20号室が50人部屋になっており、ドリンクバーも置いてあった。

・スポーツエリアは多種多様なスポーツを楽しめる仕様になっており、5階には更衣室とプールがあった。

・更衣室は男子と女子に分かれており、開けるにはパスポートが必要。異性の更衣室に入ろうとした瞬間にマシンガンが発動する。

・多目的ホールはあらゆるイベントが開催できる仕様になっており、席は可動式。

 

「…とまあ、こんな所か。」

 

「そろそろお昼にしよーよぉ、ボクお腹すいたー!」

 

「そうですね。もういい時間ですし…自分、作ってきますね!」

 

「あ、だったらアタシも手伝うよ!」

 

数十分後、いつもの3人と速水が昼食を作って持ってきてくれた。

あんな事があってモノクマに動機を配られた後だけど、探索したし飯くらいはちゃんと食わないとな。

 

「うーん、美味しい!ありがとう仕田原ちゃん!」

 

「喜んでいただけて何よりです!」

 

「はわっ…」

 

仕田原がニコッと笑うと、一がドキッとした。

…一って、やっぱ仕田原の事好きなのかな。

そんな事を考えていると、隣の席の黒瀬が絡んできた。

 

「円くん、食べさせてあげるねー。はいあーん。」

 

「やめろ。自分で食える。」

 

厄介な事に、俺はコイツに気に入られてしまったらしい。

…まあ、そうしてるうちはコイツも人を殺さないだろうし、俺から離れようとしないからわざわざ監視しなくていいって事だけはありがたい事なんだけどよ。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

飯の後は自由時間となったので、俺は湊の研究室に行った。

 

「…。」

 

元々何も物がなくて寂しかった部屋が、湊がいない事で余計に寂しく感じられた。

たった9日間の付き合いだったけど、湊は大切な俺の親友だった。

アイツ、兄貴に殺されるとは夢にも思ってなかったんだろうな。

せっかく兄貴に会えたのに、あんな殺され方をするなんて…

 

机の中には、俺がプレゼントしたゲーム機が入っていた。

電源を入れると、俺とプレイした時のセーブデータが残っていた。

…あれがアイツとの最後の思い出になっちまったな。

 

「…。」

 

俺はふと頬を何かが伝っているのに気がつく。

…無理だよ。

湊の死を乗り越えるなんて事、俺にはできない。

 

「うっ、うぅっ…湊ぉ…俺、一体どうすればいいんだよぉ…!」

 

俺は、ゲーム機を抱えたままひたすら泣いた。

泣いたって今更どうにもならない事くらいわかってる。

それでも、今だけは泣き喚かずにはいられなかった。

 

 

 

「…。」

 

泣くだけ泣いて、ようやく落ち着いてきた。

今は無理でも、少しずつ前に進んでいこう。

アイツならこういう時、俺の背中を押してくれるだろうから。

…湊。俺達はお前の分まで生きるよ。

 

そう決意を固めた俺は、湊の研究室を後にした。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

湊の研究室を出た後、俺は神崎の研究室に行った。

アイツとも、短い間だったけど仲良くやってたしな。

湊を殺した事は絶対許せねぇけど、殺された仲間の弔いはしてやらないと。

 

「…。」

 

相変わらず、神崎の研究室は様々な分野の専門書や専用の道具が置かれており、それでいて高貴な雰囲気を醸し出していた。

…だが、どうも物足りない。

やっぱり、本人がいないとこんなに立派な部屋も暗く感じられるものなんだな。

そんな事を考えながら研究室の中を歩いていると、机の上に一冊の手帳が置かれている事に気がつく。

 

「…何だこれ?」

 

俺は、いかにも高そうな革製の手帳を手に取った。

…って、これ鍵かかってんじゃねぇか。

しかも4桁の番号って…携帯のロックじゃあるまいし。

俺は試しに神崎の誕生日を入力してみたが開かなかった。

まあこれで開くとは思ってなかったけどな。

 

するとふと、母親と幼児の神崎が一緒に映っている写真が目に留まった。

どうやら母親の誕生日の写真のようだ。

 

「ひょっとして…」

 

俺は、神崎の母親の誕生日を入力してみた。

すると、カチッと音が鳴って手帳の鍵が解けた。

…アイツ、やっぱり母親の誕生日を暗証番号にしてたのか。

 

俺は、早速手帳を読んだ。

中身は、ここに連れてこられてから気付いた事、そしてアイツなりのこのコロシアイ楽園生活についての考察などが事細かに書かれていた。

しばらくページを捲っていくと、白紙のページが続いた。

そして、最後のページには弱々しく小さな字で『死にたくない』と書かれていた。

 

「…。」

 

俺は、手帳を閉じて元の場所に戻した。

完璧な人間だと思ってたけど、コイツもまだ高校生だって事には変わりない。

きっといきなりコロシアイなんかさせられて、誰にも心を許す事ができなくて、どうしようもなく怖くて寂しかったんだ。

…俺がもっとアイツの事をわかってやれていたら、湊を殺さずに済む未来もあったのかな。

 

「…神崎。俺達はお前の分まで生きてみせるから、安らかに眠ってくれ。………それと、あの時は『殺してやる』なんて言っちまって悪かったよ。」

 

俺は、神崎の席に向かって別れを告げるとそのまま研究室を後にした。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

…まだ時間があるな。

これから何をしようか?

そうだ、せっかくメダル持ってるしプレイルームで消費してこよう。

俺は、早速プレイルームに行ってガチャを引いた。

出てきたのは、男物のシルバーアクセサリーだった。

アクセサリーかぁ…

俺、こういうの付けないしな。

後で誰かにあげるか。

俺は、プレイルームを後にして散歩に出かけた。

 

「…あ。」

 

すると、歩いている途中で弦野に会った。

 

「よ、弦野。」

 

「…オメー、こんな所で何してんの?」

 

「ああ、いや…プレイルームで遊んできたし、今度は散歩でもしようかなーって…」

 

「それ、暇っつー事か?」

 

「そうなるわな。」

 

「…まあ、俺も別に大事な用事があったかっつーとそうじゃねぇんだけどよ。」

 

弦野は、両手をポケットに突っ込んで視線を右にずらした。

 

「あ、そうだ。」

 

俺は、ふとさっきガチャで当てたアクセサリーの事を思い出した。

 

「これ、お前にやるよ。」

 

「は?何で俺に?」

 

「俺、こういうのつけねぇし、どうせなら誰かが持ってた方がいいかなって思って。…好きじゃなかったか?」

 

「いや、別にそうは言ってねえけどよ…お前がプレゼントしてくるとは思わなかったから…えっと、その…ありがとよ。」

 

弦野は、少しキョドった様子でアクセサリーを受け取った。

別に喜んでないわけじゃないんだけど、なんかぎこちない感じだな。

…もしかして、人に優しくされるのに慣れてないのかな?

 

「用事はそれだけ。じゃあな。」

 

「待てよ。」

 

俺が手を振ってその場を去ろうとすると、弦野に呼び止められた。

 

「…その、さ。人に物貰ったら礼をすんのが筋ってもんだろ?お前、何か欲しいものとかねぇの?」

 

「…。」

 

俺は、思わず目をパッチリと大きく開いて何度も瞬きをした。

弦野から礼なんて言葉が出てくるとは思わなかったから、意外だった。

 

「…何だよそのツラは。」

 

「あ、いや、別に…」

 

「で?何が欲しいんだよ。」

 

「そう言われてもなぁ。別に見返りが欲しくてプレゼントしたわけじゃねぇし。…あ、そうだ。だったらさ、これからちょっと話さないか?お前とはあんまり話す機会なかっただろ?」

 

「…。」

 

「あ、もしかして話すの嫌い?」

 

「んな事はねぇよ。俺も暇してたとこだし、お前がそれでいいっつーなら付き合ってやってもいいぜ。」

 

そう言って、弦野は俺を研究室に案内してくれた。

第一印象で自己中な奴だと決めつけてたけど、案外話は通じる奴なんだな。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

「まあ見ての通りつまんねー所だけどよ。ゆっくりしてけよ。」

 

「おっす、お邪魔しまーす。」

 

すると、研究室に入った途端弦野が何やら準備をし始めた。

 

「ん?お前、何してんの?」

 

「あ?客来たら茶出すのは常識だろ。」

 

お、おう…

まさかあの弦野の口から常識なんて言葉が出てくるとは…

そういえばテレビでは普通に受け応えしてたし、根は案外常識人なのかもしれない。

 

「…なあ、弦野。」

 

「何だよ。」

 

「何で急に協力的になったんだ?協力してくれるのはいい事なんだけどさ。」

 

「…別に。いつまでも意地張ってんのもダセェなって思っただけだ。ほら、茶淹れたぞ。」

 

「サンキュ。」

 

俺は、弦野に淹れてもらった紅茶を飲んで一息ついた。

そして、何から話そうか話題を探っていると、ふとずっと気になっていた事が脳裏を掠める。

 

「…なあ、弦野。ずっと前から聞こうと思ってた事なんだけどさ。お前、何で急にヴァイオリン辞めちまったんだ?」

 

俺が思い切って聞くと、弦野はあからさまに嫌そうな顔をした。

 

「オメー…よりによってそれ聞くのかよ。」

 

「あ、悪い…」

 

「冗談だよ。俺も、どうせならもう打ち明けちまってもいいかなって思ってた頃だし。」

 

 

 

弦野は、ゆっくりと静かに話し始めた。

 

「…知っての通り、俺の家は代々続く音楽界の名家でな。多くの著名な音楽関係者を輩出してきたんだよ。その中には、希望ヶ峰にスカウトされた事のある逸材も何人かいた。俺も、物心ついた時から当然のように楽器をやらされてたんだ。片っ端からありとあらゆる楽器を弾かされたけど、その中でも一番才能があったのがヴァイオリンだったってわけだ。」

 

「なるほどな。だから【超高校級のヴァイオリニスト】になったのか。」

 

「ああ。…この頃はまだ良かったよ。俺もやり始めたばっかだったし、純粋に楽器を弾くのが楽しかった。だけど、俺がある日たまたま気まぐれで親父の部屋にあった楽譜を持ち出して弾いてたら、それを聴いてた家族の奴等が目の色を変えやがったんだ。」

 

「それってまさか…」

 

「ああ。その時俺が弾いた曲は、親父が高校生の頃優勝を逃したコンクールの課題曲だったんだよ。当時の親父が弾けなかった曲をまだ4歳だった俺が弾いた事で、奴等が俺の才能に目をつけたんだ。」

 

そこからは、だんだん弦野の声が暗くなっていった。

 

「…そっから先は思い出したくもない地獄みてぇな毎日だったよ。家族全員が俺を弦野家の次期当主に、史上最高のヴァイオリニストに育て上げるんだってお熱になっちまってよ。少しでも間違えたり文句を言ったりしたら気絶するまで引っ叩かれるわ、熱出して寝込もうもんなら無理矢理裸にさせられて頭から氷水ぶっかけられるわ、散々だったよ。大好きだった演奏も、いつのまにか嫌いになっちまった。でも、どんな仕打ちよりも何よりも、まだ小さかった俺にとっては俺のせいで家族が狂っていくのが一番怖かった。俺を産んだババアはヒス起こして八つ当たりしてくるし、親父は自分が叶えられなかった夢を俺に叶えさせようと必死だし、家族揃って頭イカれてんだよアイツら。」

 

…ひどい話だな。

 

「小学校は推薦で私立の名門校に行ったんだけど、授業時間以外はババアがわざわざ学校に来て練習をさせてたから友達と遊んだりなんかできなかったし、学校のイベントも参加させてもらえなかった。クラスの奴等もそれをわかってたから俺と仲良くしようとしなかったしな。先公に家で受けてる仕打ちを相談した事もあったけど、全然真面目に話を聞いてくれなくて、あろう事か親父に俺が相談してきた事をチクったんだ。アイツら、親父に金で買収されてたんだよ。」

 

なんて奴らだ、許せねぇ…!

 

「…でも、俺がちゃんと完璧な演奏をすればその時だけは優しくしてもらえたから、まだ続けられたんだ。」

 

「え、って事は何かきっかけがあるのか?」

 

「ああ。高校に上がってすぐの話だ。この頃には俺が親の言う通りちゃんとどのコンクールやコンサートでも結果を出してきたから、親の監視が少し緩くなってたから、俺は外の空気を吸いに外に出たんだ。そしたら、帰り道で不良に絡まれてよ。金でも強請られんのかと思ったら、俺が親父に殴られてボロボロになってたのを心配してくれたんだ。俺は相談するならこの人しかいないと思って、今までされてきた事を全部愚痴ったよ。そしたら、その人は俺を仲間の所に連れてってくれたんだ。その人の仲間達も不良だったけどみんないい奴らで、俺を色んな所に連れてってくれたり俺の知らねぇような事を色々教えてくれたりした。俺は、友達と一緒に遊んだりした事なかったから、夢が叶ったみたいで嬉しかったし楽しかった。…だけど、そう長くは続かなかった。」

 

「…え?」

 

「仲間全員、交通事故に巻き込まれて死んだんだよ。しかもそれは、俺の家族が仕組んだ事だった。」

 

「なっ…!!」

 

「その時、やっと気付いたんだ。コイツらは家のためなら何でもする奴等なんだって。今でも、演奏しようとすると思い出すんだよ。仲間が死んだ事、親父が俺に向けた顔…それが頭の中でチラついて手の震えが止まらなくなるんだ。」

 

なんてひどい話だ…

息子がちょっと友達と遊んだだけでその友達を殺すなんて…

弦野の奴、仲間を親に殺されたのがショックでヴァイオリンを弾けなくなっちまったのか。

 

「その後俺は、仲間を殺した奴等の言いなりになるのが嫌で家を飛び出した。誰も頼れなかったから、俺は一人で生きていく事にしたんだ。」

 

「…そっか、ありがとな。話してくれて。」

 

「お前が聞いてきたからだろが。」

 

「そういやそうだったな。」

 

弦野がジト目を向けてきたので、俺は笑って返した。

そういえば、コイツと面と向かって話すのは初めてだったな。

 

「俺もこんな所で死にたくねぇし、俺達にコロシアイをさせてる奴を許せねぇ。散々好き勝手やった後で都合が良すぎるかもしれねぇけど、協力させてくれ。」

 

「都合よくなんかねぇよ!俺はお前が協力してくれて心強い。絶対みんなで脱出しような、弦野!」

 

「…おう。」

 

弦野が右手を出してきたので、俺は力強く握り返した。

 

「…ところでさ。お前、筆染の事好きだろ?」

 

「はぁ!?何言ってんだオメー!!せっかくいい雰囲気になってたのに台無しじゃねぇかよ!!」

 

弦野は、ムキになって顔を真っ赤にした。

おやおや。この反応は図星ですな。

 

「そんなに好きなら告っちゃえよ〜。」

 

「べっ、別に好きじゃねーし!!アイツに借りを作ったままだと気持ち悪いだけだよ!!」

 

「えー、あっちはぜってーお前の事好きだぜ?」

 

「はぁ!?」

 

「…あれ?お前、もしかして気づいてなかったの?」

 

「わかるわけねぇだろそんなの!!俺、高校に上がるまでは家に縛り付けられてたんだぜ!?」

 

そういやそんな事言ってたな。

道理で女子との接し方に慣れてないわけだ。

よし、ここはクラスメイトとして背中を押してやるとしますか!

 

「だったらさ、まずは美術館とか、アミューズメント施設とか、アイツが好きそうな場所に誘ってみたらどうだ?それでまずは特に当たり障りのない話とかしながら一緒に遊んで、楽しくなってきたところでちょっとずついい感じに持ってくんだよ。」

 

「…オメー、やけにそういう事に詳しいんだな。まさか、その見た目で遊びまくってたりとか…」

 

「ははっ、ないない。職業柄生徒の悩み相談とかも請け負ってるんだよ。」

 

俺は、その後も弦野と恋バナや学校の話をした。

ずっと普通の高校生活に憧れていたからなのか、弦野は珍しく笑っていた。

 

「お、そろそろいい時間だな。んじゃ、小腹も空いてきたしそろそろ食堂行くか?」

 

「そうだな。」

 

少し小腹が空いてきたので、俺達は食堂に向かった。

弦野が協力するって言ってくれたし、これでやっとみんなの団結力が強まった気がした。

もうコロシアイなんて起こさせない。

俺達は、12人全員でここから出るんだ!

 

《弦野律との親密度が上がった!》

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

「あれ?」

 

食堂に着くと、聞谷、黒瀬、筆染の3人が何かをしていた。

 

「ふふー、円くん律くんいらっしゃーい♪」

 

「何してんだお前ら?」

 

「ん?ああ、短冊に願い事書いてるの。」

 

「短冊?ああ、今朝モノクマに配られたやつか。」

 

「…テメェら、まさかそれ使って人殺して願いを叶えようとか考えてねぇよな?」

 

「おい、やめろって!」

 

「いやいや、違う違う!そういうんじゃないよ!」

 

「そうですわ!わたくし達は皆さんを殺したりなど致しませんわ!」

 

「だったら何で短冊に願い事書いてんだよ。」

 

「願掛けだよ。何もしないよりは願い事が叶いそうでしょ?」

 

「はっ、くっだらね。」

 

「もうっ、そんな言い方ないじゃん!信じる者は救われるんだよ!」

 

「そういうもんかねぇ…お前はどんな事書いたんだ?」

 

「もちろん、『みんなで一緒に外に出られますように』って書いたよ!」

 

「黒瀬も何か書いてるのか。」

 

「うん。んーとね、まーどーかーくーんーはー、ボークーのー、にーくーどーれー…」

 

「オァアアアアアアアアア!!!」

 

俺は、思わず黒瀬から短冊を奪い取った。

 

「何書いてんだお前は!!」

 

「だって、願い事を書けって…」

 

「もっと健全な事書くんだよ普通は!!」

 

「健全って何ー?ボク、よくわかんなーい。」

 

「じゃあお前は何も書くな!!」

 

「ぶーっ…」

 

ったく…油断も隙もありゃしねーぜ。

 

「赤刎さんも何か書きませんか?」

 

「え、俺?そうだな…じゃあ俺も書くか。」

 

書くとは言ったものの…何を書こうかな。

やっぱ背が伸びますようにって書くか。

…ってバカ!!

まずはシスターや弟妹達の心配をするとこだろ!!

よし、みんなが無事でいますようにって書くか。

いや、でもそれだとまるでみんなが無事じゃないのが前提みたいで何か嫌だな…

 

…あ。

そうだ。

 

俺は、願い事を書いて短冊を金の笹に飾った。

 

「あら、もう書き終わったんですの?」

 

「まあな。」

 

「円くんはー、何て書いたの?」

 

「筆染と同じような事だよ。」

 

「ふーん。ボクはキミの隣に飾ろーっと。」

 

「…お前、まさかさっき書いたやつを飾るんじゃないだろうな。」

 

「そぉだけど?」

 

「お前さぁ…自重するって事知らねぇの?」

 

「自重って何?自粛なら知ってるんだけどなー。みんな自粛自粛うるさいよね。」

 

何言ってんだコイツ。

 

「別にいいじゃん。どうせ誰かを殺して裁判で生き残らないと叶えてもらえないんだしさ。」

 

「叶う叶わないの話じゃなくて、気持ちの話だっての。下心丸出しの願い事書いた短冊飾られるとか普通に嫌だ。」

 

「むぅ…」

 

黒瀬は、頬を膨らませてジト目で俺の方を見た。

いや、不機嫌になりそうなのはこっちだから。

5人で短冊に願い事を書きながら話をしていると、他の奴等が食堂に集まってきた。

 

「おーっす、円達じゃん。」

 

「Hey,マドカ。What are you doing?」

 

「ああ、えーっとな…」

 

「ぎゃああああああああっ!!?」

 

突然、一が叫び声を上げて尻餅をついた。

 

「?どうした一。」

 

「な、何で短冊がこんなに飾られてるの!?まさか、殺人をしようとしてる人がこんなに…ひぃいいいいいっ!!!誰か助けて!!!」

 

「いや、違うよ一。せっかく笹と短冊があるんだし、ここにいる5人で願掛けしないかって話になったんだ。」

 

「が…願掛け?」

 

「うん!あたし、ここにいるみんなで一緒に外に出たいって思ってるからさ。それを書いて笹に飾ったんだよね。ほら、実際に願い事を書いて飾った方が叶いそうな気がするでしょ?」

 

「…確かにね。言霊ってものがあるくらいだし、確かに短冊っていう目に見える形にした方が叶いそうな気はするよね。」

 

「でしょでしょ!?」

 

「な、なぁんだ…ま、紛らわしい事しないでよぉお…!」

 

一もようやく落ち着いたのか、ゆっくりと立ち上がった。

 

「それでは、皆さん集まった事ですし夕食にしましょうかね。」

 

「そうだな。」

 

仕田原達が作ってくれた飯は、相変わらず美味かった。

夕飯の後は簡単なミーティングをしてその日は解散となったので、俺は温泉に入った。

 

「あー、いい湯だったー…」

 

それじゃあそろそろ部屋に…

あれっ?

俺のパスポートが無い!?

 

…あ、そういえば食堂に置きっぱだったかも…

すぐに取りに戻ろう。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

パスポートを取りに急いで食堂に行くと、やはり俺の席にパスポートが置き去りになっていた。

 

「あー、良かった。やっぱり置きっぱなしだったか。」

 

俺は、パスポートを持って部屋に戻ろうとした。

すると、ふと食堂に飾ってあった笹が目に留まる。

 

「…?」

 

1、2、3、4、5、6…

 

あれ?

短冊が増えてる?

おかしいな…短冊を書いてたのは確か俺を含めて5人だったよな?

誰かが飾ったって事か…

ソイツも、俺達と同じように願い事を書いてモチベーションを保とうとしてたのかな?

それだけならいいんだが…

 

俺は、少し不安を抱きつつも食堂を後にした。

すると、廊下の奥から誰かの声が聞こえる。

この声は…枯罰?

俺は、何かあったのかと思って様子を見に行く事にした。

 

「………が………たやと?」

 

俺は、枯罰の話の内容が聞き取れるほど近づくと、無意識に物陰に隠れてしまった。

何故隠れたのかは自分でもわからない。

ただ、気がつくと隠れて息を殺していた。

 

「お前なぁ…そないな事でウチ呼んだんか?」

 

ん?誰かと話してるのか?

相手の声は聞こえないが…

もしかして、呼び出された…?

 

「ったく…それぐらい自分でやれや。汚れんの嫌やし、後始末が地味にめんどいねんぞ?」

 

何の話をしてるんだ?

 

「はぁ?怖い?阿呆ぬかせ。んなモン今更や。あぁ?…はぁ。もう、わかったわかった。ウチが殺しとくわ。」

 

 

 

…!!?

 

え!?

おい、今ハッキリと『殺す』って言ったよな…!?

まさか、そんな…枯罰が…殺人を…?

 

 

 

「おい。」

 

「!」

 

突然、枯罰が話を遮った。

一歩ずつこっちに近づいている。

まずいまずいまずい…!!

このままじゃ見つか…

 

 

 

「何しとんねん。」

 

枯罰は、横からひょいと顔を出した。

 

「ッーーーーー!!?」

 

俺は、思わずその場で尻餅をついた。

マズい、聞いてたのがバレた…!?

誰か助けを呼ばなきゃ、このままじゃ…

 

 

 

「ちょっと、何なの?」

 

…え?宝条?

 

「コイツが迷子になったみたいでのぉ。ここら辺ウロチョロしとったんや。」

 

「あっ…あの…お前ら、何の話してたんだ?」

 

「話?ああ、コイツが部屋の前に虫が出たってギャンギャン騒いでのぉ。退治するためにウチが呼ばれたっちゅうわけや。お前も、虫退治ぐらい自分でせぇよって思うやろ?」

 

「む、虫…」

 

何だ、そういう事だったのか…

良かったぁ。

物騒な単語が聞こえたから何事かと思ったぜ。

 

「…なぁ。」

 

「何や。」

 

「お前ら、笹に短冊飾ったりしてないよな?」

 

俺は、誰が飾ったのか気になったので率直に聞いてみた。

すると、二人とも不思議そうな表情を浮かべて首を傾げた。

 

「してへんよ。ウチ、神頼みとか苦手やしなぁ。」

 

「ゆめも知らないわよ。」

 

二人とも心当たりがないのか。

…じゃあ一体誰が飾ったんだ?

 

「そ、そうか…ならいいんだ。」

 

「ほな早う部屋戻れや。子供はもう寝る時間や。よう寝んと背ぇ伸びんぞ。」

 

「んなあっ…!!失礼だなお前!!言っとくけど、俺はお前より歳上だからな!?」

 

ったく…自分が背高いからってバカにしやがって。ムカつくなぁ。

まあでも用事があったかというとそういうわけじゃないし、今から犯人探しをする時間も必要もないし部屋には戻るか。

こうして、楽園生活の11日目が終わったのだった。

 

 

 

 

 

 


 

 

 

ー生存者ー

 

【超高校級の講師】赤刎円

 

【超高校級のカウンセラー】安生心

 

【超高校級の香道家】聞谷香織

 

【超高校級の脚本家】黒瀬ましろ

 

【超高校級の???】枯罰環

 

【超高校級の家政婦】仕田原奉子

 

【超高校級の冒険家】ジョナサン・ウォーカー

 

【超高校級のヴァイオリニスト】弦野律

 

【超高校級のソフトウェア開発者】一千歳

 

【超高校級のランナー】速水蘭華

 

【超高校級の画家】筆染絵麻

 

【超高校級の収集家】宝条夢乃

 

ー以上12名ー

 

 

 

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