エデンズダンガンロンパ 希望の生徒と絶望の楽園   作:M.T.

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(非)日常編③

楽園生活11日目。

 

『おはようございます、オマエラ!!朝です!!7時になりました!!今日も元気に殺し合いましょう!!』

 

今日もまた、モノクマの耳障りなモーニングコールで起こされた。

俺は、朝の準備を済ませて8時に間に合うように食堂に向かった。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

食堂には既に安生、聞谷、速水、筆染が来ていた。

そして何より気になる事がひとつあった。

 

「あれ?」

 

何と笹に飾ってあった短冊が全部無くなっていたのだ。

 

「おい、ここに飾ってあった短冊は?」

 

「え?知らないよ?」

 

「僕が来た時には既に無かったんだ。」

 

「んー…となると…」

 

昨日飾った短冊を全部回収するなんて事をする奴は一人…もとい一匹しか思い浮かばなかった。

 

「…見てるんだろ?出てこいよ。」

 

『えー、なになにー?』

 

俺が呼ぶと、モノクマがどこからか現れる。

 

「うわ…またウザいのが出てきたよ…」

 

「速水さん、いちいち反応したら負けだよ。」

 

『ちょっとー!呼び出しておいて何ですかその態度は!で、何の用?』

 

「ここに飾ってあった短冊を回収したの、お前だよな?」

 

『そうだよ!だって、いつ殺人が起きてもいいように飾ってある短冊には目を通しておかないとダメでしょ?願い事の確認作業やら準備やら色々しなきゃいけないから、夜時間中にまとめて回収してチェックしてるんだ!』

 

「そうかよ。」

 

『ちなみに、飾ってあった短冊は全部条件を満たしてたよ。コロシアイができるよ!やったね赤刎クン!』

 

「うるさい消えろ!」

 

「アタシ達は絶対コロシアイなんかしないんだから!!」

 

『えー、それだと画面の向こう側のみんなが飽きちゃうんだけどなー。』

 

ん?

コイツ、何変な事を言ってるんだ?

 

『まあいいや、説明はしたし今回は大人しく退いてあげるよ。それじゃ頑張ってねー。』

 

モノクマは、説明し終わるとそそくさと帰っていった。

するとちょうどそこへ黒瀬、一、宝条の3人が来た。

 

「あれ…?みんな、どうしたの?何の騒ぎ?」

 

「クマさんがここにいらしたんですの。わたくし達に説明をなさってお帰りになりましたわ。」

 

「く、クマってまさかモノクマの事!?アイツ、マジで食堂に現れるのやめてよね!!」

 

「まさかまたボク達にコロシアイをさせに来たんじゃ…終わった!ボクはここで死ぬんだ!!」

 

宝条と一がパニックを起こしてしまった。

…モノクマが来たって言っただけなんだけどな。

 

「ねえみんな、クマちゃんは何を説明しに来たの?」

 

「ああ、えっと…確か、夜時間中に短冊を回収したって言ってた。それ以外は何も言ってなかったよ。」

 

「ふーん。」

 

するとそこへ、枯罰、仕田原、ジョン、弦野の4人が朝食を作って持ってきてくれた。

朝食の後は軽めのミーティングを済ませ、その後は各自自由行動の時間となった。

まずはどこに行こうか?

…そうだ、今回はまだ行ってない多目的ホールに行ってみよう。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

俺は、多目的ホールに行って探索を行う事にした。

席は一階席と二階席があって、ホール内にある機械で動かせるようになっていた。

入り口付近には控室があり、そこには様々な小道具があり小窓から外の様子が見えるようになっていた。

…おっと、部屋にメダルが落ちてるな。

後でガチャが引けるから拾っておこう。

 

「…ん?」

 

俺が控室から出ると、何やらピアノの音が聴こえてきた。

聴いていて惹きつけられる音色だ。

クラスメイトの中で音楽系の才能を持ってるのは弦野だけだけど、アイツピアノも弾けたのか?

そう思って舞台の方に目を向けると、ピアノを弾いているシルエットが見える。

そのシルエットの正体は、予想外の人物だった。

 

「…枯罰?」

 

俺が声をかけると、枯罰は演奏の手を止めて俺の方を向いた。

 

「おう。お前か。何の用かいな?」

 

「ここの探索をしようとしてたところなんだ。今の演奏、良かったぞ。」

 

「別に。こんなん一般教養やわ。バ神崎と弦野の方が良う弾きよるやろ。」

 

枯罰は相変わらずクールだな。

それにしてもバ神崎って…

コイツ、神崎の事そんな呼び方してたのか。

 

「いや、でも十分コンサートとかで弾ける出来だったと思うぞ。頭は良いし、武道も料理も楽器もできるし、お前ってホント何でもできるんだな。もしかして【超高校級の万能人】とかなんじゃねぇの?」

 

「バ神崎と被るやろ。不正解や。」

 

「あ、そうなんだ…なぁ、そろそろ教えてくれてもいいんじゃないか?お前の才能。」

 

「教えん言うとるやろがド阿呆。…どのみちウチが言わんでもそのうち明るみになるやろしなぁ。」

 

「どういう事だ?」

 

「ウチの秘密を引いた奴がおるんや。ソイツが見たウチの秘密は、ウチの才能やった。」

 

「お前がそれを知ってるって事は…」

 

「ああ。ソイツはわざわざご丁寧な事にウチに報告してきよったんや。一応バラしたらどつく言うて釘刺しといたけど、アイツ口が堅いタイプやないし気まぐれでポロッと言うてまうかもな。」

 

…枯罰の秘密を知ってる奴、か。

口が軽くて、尚且つ枯罰に真っ正面から堂々と秘密を報告しに行ける図太さを持つ奴…

こんな奴、一人しかいないな。

…最悪だ。

まさか黒瀬が枯罰の弱みを握っていたなんて。

本当に黒瀬が枯罰の秘密を引いたんだとすれば、今の状況は相当ヤバい。

もし黒瀬が枯罰の秘密をバラしでもして、二人が殺し合うような事にでもなれば…

流石に枯罰なら殺される事はないと思うけど、黒瀬は殺人鬼だしな。

少なくとも二人のうちのどっちかはタダじゃ済まない筈だ。

どうしたものか…

 

そんな事を考えていると、枯罰が徐に口を開いた。

 

「…一つ、頼んでええか?」

 

「何だ?」

 

「ウチの弱みを握っとるド阿呆のせいでウチの才能が明るみになったとして、お前がそれでウチを嫌おうがどないしようが構わへん。せやけど、明るみになったウチの正体は真実として受け止めてくれへんか?」

 

「安心しろ。お前の才能が何であれ、お前はお前だ。それ以上でも以下でもない。才能がわかったくらいでお前を嫌いになったりしないさ。」

 

「…ええよ別に。受け止めてくれるだけでええ。」

 

「…。」

 

そう言う枯罰の表情は、いつになく微笑んではいたが目はどこか悲しげだった。

…人には言えない才能を持ってるって事か。

もしそうなら、俺が枯罰を仲間として信頼してやれば、枯罰も少しは救われるかもしれない。

札木や武本、湊や神崎を救ってやれなかった分、コイツの事は救ってやりたい。

 

「…枯罰。俺は、何があってもお前の事は信じてるからな。」

 

「昨日話を盗み聞きして失礼な勘違いしとった奴が言うても説得力ゼロやわ。」

 

「う…それは一旦置いといて…」

 

「ジェスチャーが古いでお前。昭和生まれか。」

 

「うっせぇ!」

 

「そういやさ、お前何でここでピアノ弾いてたの?」

 

「何となく、やな。…それとも何や?ウチが弾いとったら悪いんか?」

 

「いや、別にそうは言ってないだろ。…あ、じゃあさ。さっき弾いてた曲は何て曲なんだ?」

 

「ドビュッシーの前奏曲集第2巻第12曲『花火』。」

 

「へぇ。難しいのか?」

 

「…まあ、かなり難しい部類に入るやろな。まずお前には弾けへん。」

 

「な…聞き捨てならない事を…!」

 

「だってお前、大して弾けへんやろ?」

 

「そんな事ねぇよ!一応孤児院ではピアノ弾いてたし!…でも、不思議な事に孤児院のピアノじゃないと弾けないんだよな。」

 

「…ドレミシールでも貼ってあったんか?」

 

「何でわかった!?」

 

「ド阿呆。お前は一生ドレミシール貼って弾いとれ。」

 

「ぐぬぬ…」

 

枯罰はそう言い捨ててどこかに行ってしまった。

せっかくコイツの事は最後まで信じてやろうと決めたのに、何か腹立つな。

俺は、昼食の時間になるまで多目的ホールに残って探索をする事にした。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

昼食の後は自由時間になったので、俺は早速プレイルームに行ってガチャを引いた。

出てきたのは、見るからに高級そうな万年筆だった。

万年筆か…

自分では使う機会無いし、誰かにあげるとするか。

 

俺が考え事をしていると、筆染がプレイルームに入ってくる。

 

「あれ?赤刎君じゃん!赤刎君もここに遊びに来たの?」

 

「まあな。」

 

「あ、もしかしてそのガチャやってたの?」

 

「ああ。」

 

「あたし、それ全然良いの出ないんだよねー。赤刎君は何かいい景品出てきた?」

 

「んーと…出てきたのはこの万年筆くらいかな。」

 

「え!!?」

 

俺が万年筆を見せた途端、筆染が目の色を変えて飛びついてくる。

 

「えっ、嘘!!?そんな高級品が入ってたの!!?ちょっ…ねえ、赤刎君!!あの、厚かましいお願いではあるんだけど…それ、譲ってくれない!?絶対今度こそいい景品出してお返しするから!!この通り!!一生のお願い!!」

 

「…いや、普通にやるよ?お前が使った方がこの筆も喜ぶだろうしな。」

 

「ありがとう赤刎君!!いよっしゃああああああ!!正義は勝つんや!!!」

 

筆染は、いきなりハイテンションになってガッツポーズをした。

よくわからんが、喜んでくれたみたいだ。

 

「赤刎君!このお礼は絶対するね!何か欲しいものとかある?」

 

「いや、別にねえけど…あ、そうだ。じゃあ、お礼の代わりにちょっと話さないか?」

 

「ふぇ?そんな事でいいの?」

 

「俺は、プレゼントよりもクラスメイトと仲良くなれる方が嬉しいんだよ。」

 

「そういう事なら、もちろんいいよ!あたしの研究室来る?」

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

俺は、筆染に案内されて研究室の中に入った。

その途端、すぐに目を疑う事になる。

 

「!?」

 

何と探索に来た時は白かった壁に、目の前に美しい風景が広がっているように見える絵が描かれていたのだ。

 

「…なぁ。これってまさか、お前が…」

 

「ん?ああ、それね。せっかくなら彩りがほしくて描いてみたの。あ、そこまだ塗ったばっかりだから気をつけてね。」

 

あっぶね!!

うっかり手をついちまうとこだったよ!!

…それにしても、さすがは【超高校級の画家】だな。

たった一晩で壁画を描いちまうなんて…

一瞬異世界にでも迷い込んだのかと思ったぞ。

 

「…さて、と。何から話す?」

 

「ああ…えっと…じゃあ、お前は何で【超高校級の画家】に?」

 

「んー…強いて言うなら絵がすっごく好きだからかな。あたし、父親が画家で母親がイラストレーターなんだよね。だから、物心ついた時から自然と絵に触れてきたの。それでお父さんとお母さんが絵を描いてるのを見てあたしも真似して描いてたら、それがいつの間にか楽しくなっちゃったんだよね。」

 

「なるほどな。好きなもので才能を発揮するのって凄くないか?」

 

「やだなあ、あたしは楽しくてやってただけだし、お父さんとお母さんに比べればあたしなんてまだまだだよ!」

 

「お父さんとお母さんの事が大好きなんだな。」

 

「大好きだよ。お父さんとお母さんの絵があんまり売れなくて、あたしが画家として成功するまでは貧乏だったんだけど、あたしはお父さんとお母さんが好きだし二人が描いた絵も好きなんだ。…あたしのせいであんな事になっちゃったんだけどね。」

 

「あんな事って?」

 

「あたしが小学生の頃ね。お父さんがあたしの絵を気に入って、せっかくだからSNSに上げてみんなに見てもらわないかって言ってきたの。あたしはみんなにあたしの絵を見てもらえるのが純粋に嬉しかったし、お父さんとお母さんに喜んでもらいたかったから、お父さんのアカウントで描いた絵を投稿する事にしたんだ。あ、もちろんちゃんとあたしが描いた絵だって一言添えてたよ?そしたら、そのつぶやきがものすごい勢いで拡散されて当時ネットニュースにまでなったんだよね。」

 

「すごいな。その頃から才能を発揮してたのか。」

 

「まあ、あたしは楽しくて描いてただけなんだけどね。…でもね。それを面白く思わない人もいたの。」

 

「…え?」

 

「あたしの絵がネットニュースになってから数ヶ月が経った頃だった。その時お母さんは出勤中で、あたしはお父さんと二人で出掛けてたんだ。そしたらいきなり後ろから襲われて、あたしを庇ったお父さんは頭を殴られて救急搬送されたの。あたしはお父さんが庇ってくれたから無事だったけど、お父さんは1週間目を覚まさないままだった。ちなみに犯人はその後その場にいた人が通報してくれたおかげですぐ逮捕されたんだけど、その人お父さんの大学時代の同級生だったんだよね。『せっかく同級生を蹴落として一流の芸術家になれたのに、ソイツの娘が出しゃばったせいで自分は見向きもされなくなって落ちぶれる羽目になったから復讐してやった』ってさ。当然の報いじゃんって話だよね。」

 

「ひでえ話だな…」

 

「うん。でもね、それだけじゃなかったんだ。お父さんはその後結局目を覚ましたんだけど、殴られた後遺症で目が見えなくなっちゃったの。お父さんの目が見えなくなったのを知ったお母さんは気が触れて施設に行く事になって、あたしとお父さんはおばあちゃんの家で暮らす事になったの。あたしは、お父さんがあの時の事を後悔してるんじゃないかって思ってた。あたしを庇ったりしなければ、お父さんだって大好きな絵を続けられたんだもん。でもね、お父さんは『絵麻を守れたから後悔なんてしてない』って言ってくれたの。」

 

「そっか。いいお父さんに恵まれたな。」

 

「うん。だからね、あたしは画家になろうって決めたの。画家として売れまくって、お父さんが叶えられなかった夢を叶えるんだ。それでお父さんのおかげで立派になったよって教えてあげるの。そうすればお母さんも正気に戻ってくれるかもしれない。そしたら、あの頃の日常もきっと戻ってくる。それがあたしが【超高校級の画家】になった理由だよ。」

 

「なるほどな。ありがとな、話してくれて。」

 

「えへへ…ちょっと暗い話になっちゃったかな。何か別のお話する?」

 

「そうだな…あ、そういや筆染って弦野の事好きなの?」

 

「へぁっ!!?質問がストレートすぎるよ赤刎君!!」

 

「お、ナイスツッコミ。」

 

「えへへ、ありがとう…じゃなくて!!えっ、何でそんな事聞いてくんの!?」

 

「で、どうなんだ?」

 

「そ、そりゃあ…す、好き…だけど………」

 

「ふーん。何で?」

 

「えっと…弦野君の演奏が好きだから…それに、優しくてかっこいいし…でも、そんな風に思ってるのあたしだけなんだろうなぁ。」

 

「そうか?あっちも絶対お前の事好きだと思うぜ?」

 

「えぇっ!!?ちょっ、ちょっと!!適当な事言わないでよー!!」

 

口ではそう言っているが、顔がニヤけてるし見るからに嬉しそうだな。

 

「もー、さっきまで真面目な話してたのにー!」

 

「悪い悪い。」

 

俺は、ふと16人分のデッサンが描かれたスケッチブックが目に留まる。

 

「あれ?これ何だ?」

 

「あー!ダメダメ!!」

 

筆染は、いきなりスケッチブックをひったくった。

 

「え?」

 

「これは、完成してからのお楽しみ!出来上がったらみんなに見せるの!」

 

「そっか…」

 

見たかったな。

でも、完成したら見られるんだな。

楽しみだ。

 

「赤刎君!お話聞いてくれてありがとね!」

 

「おう。また絵見せてくれよ。」

 

「もちろん!」

 

俺は、筆染と少し話をして研究室を後にした。

 

《筆染絵麻との親密度が上がった!》

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

さて。

まだ時間があるし、アミューズメント施設に行ってみよう。

俺は、アミューズメント施設へと足を運んだ。

 

 

 

「おっ。」

 

1階のゲームエリアには、仕田原と一がいた。

 

「お前ら何やってるんだ?」

 

「ああ…えっとね…仕田原さんとゲームやってたんだ…」

 

「一さん、とてもゲームが上手いんですよ!しかも機械音痴の自分なんかにも操作方法を丁寧に教えて下さったんです!」

 

「へえ、そうだったのか。」

 

ゲームねぇ…

そういやこの前も湊と一緒にゲームやってたな。

 

「なあ、せっかくだし一緒にプレイしてみないか?」

 

「あ、えっと…」

 

「え、でも自分迷惑になりませんかね!?」

 

「一とは一緒にプレイしたのに俺は迷惑なのか?」

 

「いえいえ、決してそのような事は!!」

 

仕田原の奴、相変わらずだな。

 

「それじゃあ向こうに3人でプレイできるゲームがあるからやってみようよ。」

 

「そうだな。」

 

3人でプレイできるアクションゲームがあったので、早速プレイしてみる事にした。

VRゴーグルを付けて遊ぶから臨場感がハンパないな。

 

「赤刎君って、ゲーム得意?」

 

「まあ…普通かな。」

 

「それじゃあ、仕田原さんがいるし一番簡単なのにしようか。」

 

「すみません。自分、愚図なのでお二人に迷惑かけてしまうかもしれないです。」

 

「まだプレイしてないのにそんな事言うなよ。困ったら俺と一でサポートしてくからさ。」

 

「じ、自分なんかがお二人にサポートしていただいてよろしいんですか!?」

 

「遠慮すんなって。」

 

「それじゃあ早速プレイしてみようよ!」

 

一の奴、いつになく張り切ってるな。

 

(ここで活躍して、仕田原さんにいい所見せるんだ!)

 

…何か別の方面でやる気出してるような気がするけど、まあいいか。

 

「それじゃあまずキャラクターと装備を決めてっと。」

 

…あれ?

仕田原がいないな。

もしかして…

 

俺は一度セーブしてからゴーグルを外した。

 

「すいません、自分こういうの初めてで…どうやって始めたらいいんですかね?」

 

「まずは横のボタンを押して装着するんだ。マイクはオンになってるから、困った事があったらその都度教えてね。」

 

そこからか。

…まあ、ゲーム慣れしてないなら仕方ないな。

家事を完璧にこなせる仕田原にこんな弱点があったとは。

 

「あの、キャラクターとか装備とかはどうしたらいいですか?」

 

「選ぶ時は視線を動かして選択、決まったら決定ボタンを押す。」

 

「どの装備がいいとかありますか?」

 

「んー…初心者ならこのキャラクターとマシンガンを組み合わせるのがオススメかな。照準を合わせてボタンを長押しするだけだから簡単に操作できるよ。」

 

「なるほどな。俺は仕田原のサポートに回るつもりだしライフルにしようと思ってるんだが、一はどうするんだ?」

 

「ボク?ボクはナイフにしようと思ってるんだ。」

 

「え?ナイフ?意外だな。地味じゃないか?」

 

「そう?扱いやすいし小回り利くしリロードしなくていいから便利だよ?」

 

「な、なるほど…」

 

「それじゃあ早速プレイしていこうか。仕田原さん、敵が現れたら照準を合わせて右手の人差し指のボタンを長押しするんだ。頭を狙った方がいいよ。」

 

「しょ、照準ってどう合わせるんですか?」

 

「手を動かすとそれに合わせてカーソルが動くから、カーソルを敵に合わせるんだ。」

 

「ええと…これで、えいっ!やった!倒せました!」

 

「うん、その調子でどんどん敵を倒すんだ。倒した数に応じてスコアが加算されていくから、ハイスコアを目指してどんどん倒していこう。」

 

一の奴、何か生き生きしてるな。

もしかしてネト充とかいうやつか?

 

「あ、また敵が現れました!今度は多いですね…でもこれで、えいっ!」

 

「あ、あれ?何か右側のバーが赤色になってるんですけど!?」

 

「そろそろ弾切れだから早くリロードしろって事だよ。」

 

「り、リロード?どうやるんですか!?あっ、もう弾切れです!」

 

「右手の中指のボタンを押すとマガジンが出てくるから、ボタンを押しながら手を動かして同じ形の枠の中に填めるんだ。」

 

「ええっと…あっ、落としちゃいました!」

 

「途中でボタンを離したからだよ。もう一回中指のボタンを長押ししてやってみて。」

 

「ええっと…」

 

かなり苦戦してるみたいだな。

一も仕田原につきっきりだし、仕田原がリロードしてる間は俺が敵を減らしとくか。

 

「あっ!できました!」

 

するとその直後、仕田原に複数の敵が襲いかかってくる。

 

「わっ!えっと…」

 

「クソッ、敵が多くて撃ち切れねぇ…!」

 

 

 

ザシュザシュザシュッ

 

『が…え…』

 

次の瞬間、敵は首を斬られてその場に崩れ落ちた。

そこには、ナイフを持って凛々しい表情を浮かべている一がいた。

 

「仕田原さんはボクが守る。」

 

(決まった…!)

 

目に留まらぬ速度で敵を倒した一はドヤ顔とダサかっこいいポーズをキメていた。

その後も、主に一の活躍によってどんどん敵を殲滅していった。

…のはいいのだが。

 

「はははははははは!!!どうした!?もう終わりか!?」

 

一は、高笑いしながらあり得ない動きで敵を斬り殺していた。

リアリティを出すためなのかキル数に応じてキャラが返り血を浴びていくという仕様になっており、一が返り血を浴びながら上機嫌で敵を肉塊にしていく様子はもはやホラーだった。

これには、当然のように仕田原も引いていた。

 

「…一さん、すごいですね。色んな意味で。」

 

「もはやどっちが敵なのかわかんねぇよ。」

 

「はははははははは、雑魚!雑魚!!雑魚!!!もっと強い奴を連れて来い!!」

 

ひぇぇぇぇ…

顔の7割が口になるぐらい大口開けて笑ってる…

完全に別人になっちまってるよ。

これ以上一がバーサーカー化するのもアレだし、一旦ログアウトするか。

 

「…そろそろ抜けようか。」

 

「そうですね。えっと、どうやってやめるんですか?」

 

「このボタンを押してセーブしてから終了ボタンを押してゴーグルを外す。」

 

「なるほどなるほど。あ、できました。」

 

俺達は、荒れ狂う一を何とか鎮めてゲームを中断した。

 

 

 

「…ごめん、仕田原さん。」

 

一は、仕田原の前で土下座していた。

 

「いえ、そんな!一さんは悪くないですよ!!自分のような愚図を楽しませようとしてくださったんですから!!頭を上げてください!!」

 

「ボク、ゲームやると性格変わっちゃうんだよね…」

 

いや、性格というより…第二人格とか何かに取り憑かれてるとかそっち系だったような気が…

 

「調子乗らないように気をつけなきゃって思ってたんだけど、気付いたら周りが血の海になっちゃってて…」

 

やっぱり何かに取り憑かれてるじゃねぇか。

 

「せっかく仕田原さんにゲームを楽しんでもらうためにプレイしたのに、ホントごめん…」

 

「いえいえ!!一さんは自分なんかにも優しく教えて下さって、本当に助かったんですよ!!…あの、大変烏滸がましいお願いではあるのですが、また一緒にゲームをしていただけませんか?」

 

「ふへぁ!?」

 

突然、一は耳まで真っ赤になり頭からボンっと煙を出して倒れてしまった。

 

「あれ!?一さん!?もしかして、自分のような鈍間が身の程知らずなお願いをしてしまったせいで気分を害されたのでしょうか!?」

 

「いや、多分そういうわけじゃないと思うけど…」

 

どうやら仕田原に一緒にゲームをプレイしたいと言われたので緊張してしまったらしい。

まあ、捉えようによってはデートに誘われたとも取れるからな。

一にはまだ早かったか。

 

俺は、とりあえず一を涼しい所に休ませてスポーツエリアに向かった。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

スポーツエリアには、ジョンと速水がいた。

二人は、ジムで日課のトレーニングをしていた。

 

「お、円じゃん!どーしたの?」

 

「いや…ちょっと探索でもしようかと思ってここに来たんだ。」

 

「I see.マドカ、オマエも一緒にtrainingしないか!?」

 

ジョンは、ニカッと笑ってダンベルを俺の方に差し出してきた。

…これを持てと?

ハイ無理ですね。

 

「いや…遠慮しとくよ。」

 

「オマエはもっと鍛えた方がいいぞ!ほら、やってみろって!」

 

余計なお世話だ。

俺はお前らのような体脂肪率一桁のマッスルエリートじゃないんだよ。

 

「A sound mind in a sound body!」

 

健全なる精神は健全なる肉体に宿るってか。

だからって俺は別にガチムキになりたいわけじゃないんだが…

まあでも、確かに少しは鍛えた方が背も伸びるのかもしれない。

 

よし。

 

俺は、ダンベルを握って持ち上げようとする。

だが…

 

「…うっ!?」

 

痛ってぇええええええええ!!!

痛った!!え、待って!?

今、腕がビキっていったんだけど!?

うわ待って腕が全然上がらねぇ!!

 

「ッ〜!!」

 

「ちょっ…円、大丈夫!?」

 

「ココロを呼んだ方がいいな。」

 

ジョンがチャットで安生を呼んでくれた。

 

「どうしたの?」

 

「心!円がね、ダンベルを持ち上げようとしたら腕が痛いって言い出したの!何とかならない!?」

 

「…なるほどね。赤刎君。ちょっと腕を診せて?」

 

安生は、俺の痛めた腕を診察してくれた。

 

「うん、筋肉痛だね。この症状なら、患部を温めて軽くストレッチしたら良くなるよ。」

 

「あ、ありがとう…」

 

「どういたしまして。でも、運動し慣れてないのに急に重い物持ったりしたらダメだよ?」

 

「き、肝に銘じておきます…」

 

安生のおかげで助かった。

準備運動しないでいきなり重い物持つとこうなるって事だな。

その後安生のアドバイス通りにしたら、思ったより早く回復した。

この調子なら明日には全快になってるかな。

 

その後は夕食の時間になり、俺は夕食を食べた後温泉に入って部屋に戻った。

こうして、楽園生活の11日目が終わったのだった。

 

 

 

 

 


 

 

 

ー生存者ー

 

【超高校級の講師】赤刎円

 

【超高校級のカウンセラー】安生心

 

【超高校級の香道家】聞谷香織

 

【超高校級の脚本家】黒瀬ましろ

 

【超高校級の???】枯罰環

 

【超高校級の家政婦】仕田原奉子

 

【超高校級の冒険家】ジョナサン・ウォーカー

 

【超高校級のヴァイオリニスト】弦野律

 

【超高校級のソフトウェア開発者】一千歳

 

【超高校級のランナー】速水蘭華

 

【超高校級の画家】筆染絵麻

 

【超高校級の収集家】宝条夢乃

 

ー以上12名ー

 

 

 

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