エデンズダンガンロンパ 希望の生徒と絶望の楽園 作:M.T.
俺と札木は、まだ話していない奴と話に行く事にした。
お、あそこに女の子が二人いるな。
まずはあの子達に自己紹介するか。
「ちょっといいか?俺は【超高校級の講師】赤刎円だ。」
「……………札木未来です。【超高校級のタロット占術師】。」
俺達が自己紹介すると、さっきの和服を着た黒髪ロングの美少女がニコッと微笑んだ。
うぉ、すげぇ美人…
「よろしくお願いしますね、赤刎さん、札木さん。わたくしは、【超高校級の香道家】
【超高校級の香道家】
「…………香道家?」
「あら、やはりご存知ありませんか。まあ、伝統芸能の中でも知名度が低いので…聞き慣れないかもしれませんね。香道とは伝統芸能の一種で、沈水香木と呼ばれる天然香木の香りを鑑賞する芸道ですわ。」
「まぁ…若干違うがわかりやすく言うと香水ソムリエの和風バージョンってとこだな。」
「…………。」
「まあ、ご存知でしたのね。赤刎さんは物知りですわね。」
「まぁなぁ。マイナーだが、茶道、華道、書道に次ぐ伝統芸能の一種だしな。」
聞谷香織。
伝統芸能で有名な歴史ある名家聞谷家のお嬢様で、本人も伝統芸能で食ってる奴なら知らない奴はいない程の有名人だ。
聞谷流っつー新しい流派を創流してて、香道以外にもあらゆる伝統芸能を嗜んでるんだよな。
「俺はちょっと興味あるから、後で話とか聞かせてくれよ。」
「ええ、是非。」
聞谷は、ニッコリとお上品に微笑んだ。
何かこう、動作の一つ一つが気品に溢れてるし…まさに大和撫子って感じだな。
流石はあの聞谷家のお嬢様だ。
それにしても…マジでお嬢様口調で話す奴、初めて会ったぞ。
「ねえ、次はあたしいいかな?」
そう言って話しかけてきたのは、黒いブレザーを着た赤髪セミロングの女の子だった。
お、今度は如何にも女子高生って感じの子だ。
目がクリっとしてるし、美少女だがどちらかと言えば可愛い系だな。
「あたしは
【超高校級の画家】
筆染絵麻…
確か、世界的な芸術家達も高く評価する高校生画家だったよな?
独特のタッチと独自で編み出した表現技法から、熱狂的なファンが多いとか…ファンからの寄付金でアトリエを建てて、弟子も何人かいるって聞いた事あるけど、まさかこんな可愛い子だったとは。
「お前、あの筆染絵麻か?」
「あ、赤刎君あたしの事知ってたんだ。」
「そりゃあまあ有名人だからな。流石に顔までは知らなかったけど。」
「あはは…あたし、絵を描いてる時は熱中しちゃって取材どころじゃなくなっちゃうからさ。インタビューとかは代理の人が受け答えしてたんだよね。」
「ああ、あの切れ長の目の人か。」
なるほどな、だからあれだけ有名人なのに顔は知られてなかったのか。
「あの筆染絵麻と同級生だなんて、なんか不思議な感覚だな。よろしくな、筆染。」
「…。」
俺は握手を求めようとするが、筆染はスケッチブックに何かを黙々と描いていた。
「…ん?筆染?聞こえてるか?おーい!」
俺が少し大きめの声で呼び掛けると、筆染はビクッと肩を跳ね上がらせた。
「へっ!?あっ、ご、ごめんね!?あたし、一旦イメージが降りてきたらすぐ描きたくなっちゃって…絵の事になるとホント周り見えなくなっちゃうんだ!ホントごめん!」
筆染は、あわあわと平謝りしてきた。
…何というか、この子はちょっと天然っぽいな。
決して悪気があるわけじゃないんだろうけど、一旦熱中すると周りが見えなくなるタイプなんだな。
俺達は、見るからに16人の中で一番図体がデカい男に声をかけた。
剃り込みの入った黒い短髪で白い道着に下駄といった格好だが、何より特徴的なのは筋骨隆々の身体と顎髭だ。
俺が言うのも何だが、コイツ本当に高校生か!?
「は、はじめまして…お、俺は赤刎円…【超高校級の講師】です…」
「…………【超高校級のタロット占術師】の札木未来です。」
「…………………。」
いや、怖い怖い怖い!!
その顔で無言が一番怖い!!頼むから何か喋ってくれ!!
すると、男はゆっくりと口を開いた。
「………赤刎に札木か。」
「…うん。………君は?」
札木の奴、こんな怖い奴とよく平気で話せるよな…
「…
【超高校級の武闘家】
武本闘十郎…
確か、ありとあらゆる武道を制覇し、中学に上がる前に達人を打ち負かして道場破りを達成したんだっけか。特にタイマンでの取っ組み合いなら無敵ともいわれ、熊を素手で投げたとか、大岩を拳で砕いたとか、人間離れした伝説が生まれる程らしい。
「お前か。道場破りで有名なあの…」
「…それは違うぞ。」
「…え?」
「…噂が一人歩きしているようだな。俺はあくまで武道の達人に教えを乞い、その過程で組手をしただけだ。俺は、唐突に現れて問答無用で他流の師範代を奇襲するような真似はしない。」
「そ、そうだったのか。」
「…それに、俺より強い奴はごまんといる。俺は、まだまだ強くならなければならない。」
「おいおい、まだ強くなる気か?」
「武の道に終わりはない。対戦相手が居なくなったら、次は己との闘いだ。…いや、武道そのものが己との闘いというべきだろう。」
「………そっか、よろしくね。武本くん。」
「…………………………。」
札木は、そう言って一歩前に出た。
すると、武本は顔を真っ赤にして黙り込んでしまった。
…あ、コイツもしかして女に耐性がないパターン?
もしそうならずっと恥ずかしい思いさせるのもアレだし、そろそろお暇するか。
「じゃあ自己紹介は済んだし、そろそろ次の奴行くか。」
「……え、でも………」
「他の奴もいるし、巻きでいった方がいいだろ?」
「………うん。」
完全にさっき漕前やジョンと盛り上がった事を棚上げしたわけだが、札木はコクリと頷くと俺についてきてくれた。
札木、お前はホントいい奴だよ。
別れ際に武本の方をチラッと見ると、武本はさっきまでの調子に戻っていた。
…良かった、どうやら今ので正解だったらしい。
メチャクチャ怖い見た目してるし、引っ込み思案だってのはすげぇ意外だったな。
ドンッ
「わっ」
俺は、突然何かにぶつかった。
するとその直後…
「大変申し訳ございませんでしたぁあああああああ!!!」
「…え?」
いきなり、エプロンと三角巾を身につけた水色髪で瓶底メガネの女の子が土下座してきた。
「今のは完っ全に自分の前方不注意でした!誠に申し訳ございませんでした!!ホントに何でもしますんで、どうかお許しを!!」
「いや、前見てなかったのは俺も一緒だし、何もそんなに謝らなくても…」
「いえ!!今のは100%自分の過失です!!」
な…なんつー卑屈な…
「わ、わかったから顔上げろ。初対面の相手にいきなり土下座される方が逆に怖いよ。」
「ご、ごめんなさい…」
やれやれ、やっと落ち着いた。
「んじゃ、自己紹介な。俺は【超高校級の講師】赤刎円だ。」
「……………札木未来です。【超高校級のタロット占術師】。」
「へぇ、赤刎さんに札木さんですか!自分は【超高校級の家政婦】として入学する事になった、
【超高校級の家政婦】
仕田原奉子…
確か高校生の身でありながら家事全般何でも熟せる家政婦だったよな?
資産家やセレブがこぞって雇うから来年まで仕事の予定が埋まってて、年単位で待たないと雇えない程だって聞いた事あるけど…
「仕田原は家事が得意なんだよな?」
「はい!料理や洗濯から送迎や子守りまで、幅広くお応えしますよ!…まあ、家の手伝い以外はホント何の役にも立たないんですけどね。」
いや、十分有能すぎるだろ。
俺なんか家事はからっきしで部屋とかすぐにゴミ屋敷になっちまうから、家事ができるのは普通にすごいと思うけどな。
「いやぁ…それにしても、お二人とも本当に整ったお顔されてますよねぇ。羨ましい限りです。」
「そうか?俺は仕田原も悪くない顔してると思うぞ。」
「へっ、ご、ご冗談を!こんな不細工のどこがいいんですか!」
いや、不細工って…
俺は事実を言っただけなんだが。
瓶底メガネでわかりにくいけどよく見たらパッチリした綺麗な目してるし、顔のパーツもバランス取れてるし、正直今時の女子高生ミスコンに出てるような子達より美人なんだよな。
メガネ外して化粧とかすれば一番綺麗に化けるんじゃないか?
…まあ、その前に卑屈すぎる所を直せればだけどな。
「自分、家事だけは得意なんでお役に立てる事があったら何でも言ってください!」
「おう、頼りにしてるぜ。」
俺は、ニカッと笑って右手の親指を立てた。
…と、これであと6人か。
そろそろ次行った方が良さそうだな。
俺と札木は、まだ話してない奴の所に行くことにした。
次に声をかけたのは、鏡の前で前髪を整えている女の子だった。
その子は甘ロリファッションに身を包んでいて、ピンク色の髪をツインテールにしている。
「なあ、まだ自己紹介してないよな?」
俺が声をかけると、女の子はキッと睨んできた。
「ちょっとぉ、今髪整えてんだから邪魔しないでよ!見てわかんないの!?」
うわぁ…すごい剣幕で捲し立ててくるなぁ。
「…………あの、自己紹介………」
「ちょっと待ちなさいよ。あとちょっとで終わるから。ったく…ここホントジメジメしてるわね。おかげでせっかくセットした前髪が台無しじゃないのよぉ。」
札木がボソッと呟くと、女の子は適当に聞き流してぶつくさと文句を垂れながら髪のセットを続けた。
…なんつうか、ワガママな子だな。
人が話しかけてんだから手を止めて欲しいんだが。
「…よし、こんなもんかな。…で、何なのよアンタ達。」
髪のセットが終わった女の子は、ようやく俺達に話しかけてきた。
人を待たせておいて『何なのよ』は如何なものではなかろうか。
「えっと…俺は【超高校級の講師】赤刎円だ。」
「………札木未来。【超高校級のタロット占術師】。」
「あっそ。」
あっそって…
さっきから言い方がキツいな。
「お前は?」
「…はぁ、しょうがないわねぇ。
【超高校級の収集家】
宝条夢乃…
確か、世界でも有名なコレクターだった筈だ。世界で最も美しいと言われる赤いダイヤモンドや、既に全て焚書されて世に出回ってないと言われている幻の書物などを持っており、コレクションの総額は1000億を軽く超えると言われているらしい。
闇のルートを使って収集しているとかいう黒い噂も絶えないから、どっかのヤバい組の娘か何かかと思っていたが、まさかこんないt…個性的な子だったとは。
「確か、宝条は巨大レッドダイヤモンドを持ってるんだよな?」
「…だっさ。」
「…え?」
「その『宝条』って呼び方、ダサいから今すぐやめて。ゆめの事はゆめって呼びなさいよ。」
「…なぁ、もしかしてその『ゆめ』って自分の事か?」
「そうよ。だってそっちの方が響きが可愛いんだも〜ん。だからゆめはぁ〜、みんなにゆめって呼んでもらいたいの。ってか、みんなにゆめって呼ばれないと気が済まないのよ。」
うわぁ…
何だこの女…今更だが、メチャクチャ痛いな。
え、これそういうキャラだよな?素じゃないよな?
素だとしたらかなりヤバいぞ。
「…そうか。これからよろしくな、宝条。」
「だ、か、らぁ!!ゆめって呼べって何回言ったらわかんの!?キーッ、湿気は多いしどいつもこいつもバカばっかりだしホンット最悪!!もうお家帰りたい!!」
何か知らんがいきなりヒステリー起こしたぞコイツ。
コイツあれか。
自分の思い通りに事が進まないと気が済まないタイプか。
うーん…コイツとはあんまり関わらない方が得策だな。
「………赤刎くん…もう行こうよ。」
札木は、俺の肩に手を置いて提案してきた。
「そうだな。まだ5人いるし次行くか。」
「あっ!!ちょっとぉ!逃げる気!?待ちなさいよ!」
俺達は、荒れる宝条からそそくさと逃げた。
「はぁ…」
「……… 赤刎くん…大丈夫…?」
「ああ…」
自己紹介だけでここまで疲れるとはな。
さすが希望ヶ峰の新入生、どいつもこいつもキャラ濃すぎだろ。
…次はまともな奴だとありがたいんだがな。