エデンズダンガンロンパ 希望の生徒と絶望の楽園   作:M.T.

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Chapter.4 後ろの正面だあれ?
(非)日常編①


楽園生活15日目。

ここに来てもう2週間が経とうとしている。

たった2週間で、7人も命を落としてしまった。

未来に絶望し、武本に命を譲った札木。

家族のために札木を手にかけた武本。

生き別れの兄に会えたと思った矢先にその兄に殺された湊。

嫉妬から実の弟を手にかけてしまった神崎。

筆染を殺そうとして運悪く命を落とした宝条。

運悪く宝条を殺し、仕田原に殺された筆染。

ずっと俺達を欺き続け、最後は呆気なく散っていった仕田原。

 

しかも、このコロシアイは生中継されていて、黒瀬は内通者である事を自白した。

枯罰も、才能が明らかになって黒瀬なんかよりずっと人を殺していると言っていたが真相はどうなのかわからない。

もう誰も殺させたくない。

でも、もう誰かを信じるのが怖い。

それでもみんなを信じなきゃ前には進めない。

…一体俺は、どうしたらいいんだ…?

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

『おはようございます、オマエラ!!朝です!!7時になりました!!今日も元気に殺し合いましょう!!』

 

「…。」

 

モノクマの不快なモーニングコールが部屋中に鳴り響く。

…うるさいな。

だが今は怒る元気もない。

俺は、モノクマのアナウンスを聞き流しつつ支度をして食堂に向かった。

8時前、食堂に向かうと既に安生、聞谷、ジョンの3人がいた。

一と黒瀬は…相変わらず遅刻か。

 

「おはよう、みんな。」

 

「…おはよう、赤刎君。」

 

「…Morning.」

 

「おはようございます…」

 

やっぱり、みんな元気がなかった。

当たり前だ。

たった一日で3人も死んでしまったのだから。

聞谷に至っては、一晩中泣いたのか目の周りが腫れていた。

…無理もない。聞谷にとっては、あの3人は親友だったんだ。

 

「今日の飯は…」

 

「ああ、枯罰さんと弦野君と速水さんが作ってくれてるよ。」

 

「…そうか。」

 

そこに仕田原の名前が無い。

アイツは筆染を殺した殺人鬼だけど、俺にとっては俺達のために家事をしてくれた仲間だったんだ。

もう、こんな思いをするのは嫌だ。

もう、仲間が死ぬのは嫌だ。

 

 

 

「うぁああああああぁあああああっ!!!」

 

「!!?」

 

突然、一の声が廊下から鳴り響いた。

 

「今の、一さんの声…ですわよね?」

 

「何かあったのかもしれないね。行ってみよう。」

 

俺達4人は、急いで一の声が聞こえた方へ駆けつけた。

 

 

 

「みんな!!」

 

俺達が駆けつけると、朝食を作っていたはずの速水が飛び出してきた。

 

「What up!!?」

 

「千歳が突然暴れ出したの!!」

 

「えっ?」

 

速水に連れられて俺達が向かった先には…

 

 

 

「うぁああぁあああぁあああぁああっ、あぁああぁあああぁああああっ!!!」

 

「おい落ち着けド阿呆!!!」

 

枯罰に組み伏せられ、大声で泣き喚く一の姿があった。

 

「おい弦野、早う鎮静剤打たんかい!!」

 

「うっせぇな、わかってるよクソが!!だからちゃんと腕押さえとけっつってんだろ!!」

 

枯罰が一を押さえつけている間に、弦野が注射を打とうとしていた。

 

「おい、どういう状況だよこれ…?」

 

「こっちが聞きてぇよ!朝厨房に行ったら一が包丁を振り回して暴れてたんだよ!!…よし、打ったぞ。」

 

「ふぅ。とりあえずこれでしばらくは暴れられへんやろ。」

 

一は、鎮静剤を打たれて大人しくなった。

 

「とりあえず、まずは一君を安静にさせてからゆっくり話を聞こう。みんな、朝ご飯はその後でいいかな?」

 

「Oh well. こんなsituationだしな。」

 

俺達は、ひとまず一を食堂に連れて行って話を聞く事にした。

 

 

 

「一君。温かいココアを持ってきたよ。」

 

「…。」

 

一は、安生からココアを受け取るとゆっくりと口をつけた。

安生は、一が落ち着いたタイミングを見計らって優しく声をかけた。

 

「ねえ、一君。どうして急に暴れたの?言いたくない事は言わなくていいし、ゆっくりでいいから話せる事だけ話してくれるかな?」

 

すると、一は少しずつ話し始めた。

 

「…昨日はよく眠れなくて…それで、気分を落ち着けるために飲み物を取りに行こうと厨房に行ったんだけど…厨房に入ったら、仕田原さんの事がフラッシュバックしちゃって…いてもたってもいられなくなって…それで…気がついたら近くにあった包丁を…ごめん…ごめんなさい…うっ、ううっ、ふぅうっ…」

 

一は、話し終わると静かに泣いた。

一は仕田原の事が好きだったんだ。

なのにあんな裏切り方をされた挙句、目の前であんな残酷な方法で殺されたのがよっぽどショックだったんだ。

 

「一…」

 

すると、弦野が一の肩を叩いて言った。

 

「…一。後でホールに来てくれないか?」

 

「………え?」

 

「お前らも全員。後でホールに来い。」

 

弦野がどうして急にそんな事を言い出したのかはわからなかったが、とりあえず全員弦野の提案に賛成した。

 

「ふぅ。一君も落ち着いたし、ひとまずこれで安心だね。さ、みんな。朝ご飯に…」

 

 

 

 

 

「ふわぁ〜あ。みんなおはよぉ〜。」

 

黒瀬が、あくびをしながら食堂に入ってきた。

 

「黒瀬…!」

 

「ッ…!テメェ、どのツラ下げて来やがった!?」

 

「ふぇ?何が?」

 

「とぼけんじゃねぇ!!テメェが、宝条が絵麻を襲うように仕向けたんだろうが!!今すぐ俺達の前から消えろ!!この裏切り者が!!」

 

「裏切り〜?ボクは別に裏切ってなんかないよ?だって、ボクは初めからクマちゃんの仲間だったんだもん。」

 

「テメェ…!!」

 

「それよりさー、早く朝ご飯食べようよ。ボクお腹ペコペコなんだけどー。」

 

 

 

『ちょーっと待ったぁ!!』

 

突然、どこからかモノクマが現れた。

 

「…チッ、またテメェか。」

 

「アンタってホント空気読まないよね。」

 

「全くだよ。ボクお腹すいたー。」

 

『うぷぷぷぷ、あれれ?オマエラ、何かやけに辛気臭くない?何か嫌な事でもあった?』

 

「どの口がほざいてんだテメェ!!」

 

「そうだよ!!全部アンタのせいでしょ!!?」

 

『弦野クン、速水サン。あんまり怒ると頭の血管切れるよ?カルシウム不足なんじゃないの?』

 

「うるせぇテメェマジでブッ潰すぞ!!」

 

「落ち着きぃや。売り言葉に買い言葉やろ。」

 

「チッ…!」

 

『うぷぷ、枯罰サンはやけにみんなから信頼されてるんだね。大量殺戮だって平気でやってのけるサイコキラーのくせにさ。』

 

「ひっ…!?」

 

『傭兵なんて聞こえはいいけど、やってる事は…

 

 

 

「やめろ。」

 

モノクマの言葉を遮って声を上げたのは、俺だった。

枯罰の正体が何であれ、仲間の事は絶対に信じ抜くと決めたんだ。

俺達の仲間を侮辱されて、黙ってなんていられなかった。

 

「…どんな過去があっても、枯罰は枯罰だ。俺達の仲間を侮辱するな。」

 

『ふーん、仲間…ねぇ。でも、そう思ってるのは赤刎クンだけだったりして。』

 

「…何?」

 

『オマエラさあ、仕田原サンに裏切られたんだよ?あ、仕田原サンだけじゃないか。宝条サンも、神崎クンも、武本クンも、札木サンも、みんなオマエラを裏切って自分勝手な行動に走ったのにまだ信じてるの?学習能力無さすぎじゃない?一回IQテスト受けたら?』

 

「…っ、確かに、アイツらは自分勝手な事をした。でも、それを止められなかった俺達にも責任がある。だからこそ、今度こそみんなを信じて9人全員で脱出するんだ!!」

 

『9人って、その中に内通者もいるのに一緒に脱出させてあげるわけ?キャー、赤刎クンってば優しいね!もうガチ惚れ濡れ濡れだよ!』

 

「おいクマ公。お前の御託はもう聞き飽きとんねん。早う要件を説明せんかい。」

 

『あれれ、枯罰サンは自分の事を言われてたのにやけに態度が大きいね?発育悪いのに背と態度だけ大きい子はモテないよ。』

 

「お前いつかどつくぞコラ。早う説明せぇ言うとんねんボケ。」

 

『ひえー、怖。じゃあそろそろ枯罰サンが我慢の限界っぽいので、今回開放したエリアについて説明するよ。今回開放したのは、科学研究所、映画館、モノクマタワーの3つだよ。それから研究室を3つ開放したからね。それと…』

 

「何や、まだ何かあるんか?」

 

『今回も先に動機を発表しちゃおうと思ってね。』

 

動機だと…!?

今回は何を言い出す気なんだ…!?

 

 

 

『今回の動機、それはズバリ友情だよ!!』

 

「ゆ、友情!?」

 

「Friendshipだと!?」

 

『そ、友情!人生において欠かせないもの、それは友情だよね!?『友情・努力・勝利』は某少年誌の標語にもなってるでしょ?友情という動機で、殺人という努力をして、失楽園という勝利を掴む!!これこそがこの楽園生活の醍醐味だよね!?』

 

「うん、それはわかったから友情が動機ってどういう事?」

 

…あれっ?

黒瀬は内通者なんだよな?

動機についても聞かされてるんじゃないのか?

 

『簡単に言うと、今回学級裁判で勝ったクロには、一緒に失楽園となる一人を選ぶ権利が与えられるんだよ!』

 

「…えっ?それって…」

 

『そうです!もし正しいクロを指摘できた場合は通常通りクロのみが処刑、正しいクロを指摘できなかった場合はクロと選ばれた一人だけがここから出られるってわけ!』

 

「…どういうつもり?君らしくないね。わざわざ生き残れる人を増やすなんて…」

 

『何言ってんの、ボクはちゃんと飴と鞭を使い分けるクマだからね!オマエラの中には、どうしてもここから出たいけど人を殺す度胸はない人とか、誰かを殺してでも脱出したいけどどうしても死なせたくない友達がいる人もいるんじゃないかと思ってね。これはそういう人達のための温情措置です!救える命を増やしてあげたんだから、感謝してよね?』

 

「わーい、ありがとクマちゃん。」

 

…本当にそうか?

モノクマの事だ、ただの親切心でこんなルールを追加したとは思えない。

何か、裏があるとしか…

 

「…えげつない事しよるのぉ。」

 

「え?」

 

俺は、枯罰がボソッと呟いた言葉が気になった。

えげつない?

どういう事なんだ一体…?

 

『それじゃ、ボクはこれで…』

 

「あ、ちょっと待ってくれ。」

 

『何?赤刎クン、珍しくグイグイくるね。もしかして、その気?』

 

「んなわけないだろ。一個聞きたい事があるんだ。」

 

『言ってみそ。』

 

「…黒瀬は本当に内通者なのか?」

 

「えっ?」

 

「コイツは自分で内通者だと言っていたが、俺にはどうもそうは思えなくてな。どうなんだ?」

 

『教えません教えられません教えたくありませーん。本人がそうだって言ってるならそうなんじゃないんですかー?』

 

コイツ…

半ばこういう回答が返ってくるのは予想していたが、実際に返ってくると腹立つな。

 

『それじゃあボクからは以上です!みんな、ゆっくり殺し合っていってねー!』

 

そう言ってモノクマは姿を消した。

 

 

 

「クソッ、あの野郎…!」

 

「いちいちキレんなや。時間の無駄や。それより今は探索やろ。」

 

「それもそうだね。…あ。弦野君。後で集まってって言ってたけどそれは…」

 

「ああ、探索の後でいい。急ぎの用じゃねぇしな。」

 

「そうかい?じゃあ、新しく開放されたエリアを探索しよう。班分けはどうする?今回は3人ずつで班を分けて、解放された施設を一つずつ探索しようか。」

 

「そうだな。…なあ、枯罰。」

 

「何や。」

 

「今回は一緒に探索しないか?」

 

「…何でまた?」

 

「今回のルールでちょっと聞きたい事があって…ダメか?」

 

「まあ…そういう事ならええで。」

 

「ありがとう。」

 

俺は、枯罰を同じ班に誘う事に成功した。

あとは…

 

「なあ、ジョ…

 

「まーどーかーくーん、あーそびーましょー。」

 

「うわっ!?」

 

俺は、突然黒瀬に抱きつかれた。

引き剥がそうにもあまりにも強い力で抱きつかれて引き剥がせない。

…コイツ、意地でも俺と同じ班になる気か。

 

「…ああもう、わかったよ。お前と組めばいいんだろ?」

 

「わーい。」

 

「枯罰もそれでいいか?」

 

「…まあ、探索の邪魔せぇへんなら好きにすればええんとちゃう?」

 

「よっしゃー、正義は勝つんやー。」

 

俺と枯罰が半ば呆れて黒瀬と同じ班での探索を認めると、黒瀬は猫耳のような癖毛をピコピコさせた。

俺、正直ジョンと班を組みたかったんだけどな…

まあ、黒瀬は俺がそばにいれば変な気は起こさないし、この班が一番平和ではあるのか。

 

 

 

結局、話し合いの結果安生、一、弦野が科学研究所を、聞谷、ジョン、速水が映画館を、俺、黒瀬、枯罰がタワーを担当する事になった。

 

「それじゃあ行きましょ行きましょー。」

 

俺は、黒瀬に強引に手を引かれてタワーへと向かった。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

俺達は、モノクマのように白と黒に分かれた塔に辿り着いた。

塔には、巨大な時計が付いている。

 

「ここで合ってるよな?」

 

「マップはここを示しとったしな。ほんなら中入ろか。」

 

「おう。」

 

俺達は、マップが示す塔の中に入った。

 

 

 

「おぉ…」

 

塔に入ってまず目に留まったのは、広くて綺麗なエントランスだった。

 

「無駄に綺麗だな。」

 

「せやなぁ。中は一応、1階がエントランス、5階が放送室、6階が管理室と展望エリアになっとるみたいやぞ。」

 

「2階から4階に行けないのは何でなのかなぁ。」

 

「重要な機器があるからって書いとるな。」

 

「ふーん。」

 

「…お前なぁ。自分のパスポートで確認せぇよ。」

 

「うす。」

 

全くだよ。

…って言いたいところだけど、俺も枯罰に任せきりだったな。

 

「エントランスには特にこれといって気になるものは無いし、上行くか?」

 

「せやなぁ。」

 

「さんせー。」

 

俺達は、エレベーターで5階の放送室へ向かった。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

エレベーターが5階へと向かう途中、俺は枯罰に声をかけた。

 

「…なあ。」

 

「何や。」

 

「さっき、モノクマが動機の説明をした時お前、『えげつない』って言ったよな?アレはどういう意味なんだ?」

 

「…お前、それ聞くためにわざわざウチと班組んだんか。別に大した意味はあらへん。ただ、厄介な事になりよったなって思ただけや。」

 

「厄介な事?」

 

「考えてみぃ。クロが勝った時外に出られる奴が一人増えたっちゅう事は、共犯するメリットがあるっちゅうこっちゃ。仮にクロが共犯する気やなかったとしても、自分の命惜しさにクロを庇う奴が出てきてもおかしない状況になってもうた。今までの、クロとそれ以外の全員の命懸けの勝負っちゅう大前提はもう通用せえへん。アリバイの証明の意味が無くなんねん。」

 

枯罰に言われて気がついた。

確かに、今の状況は圧倒的にクロ以外の全員に不利な状況だ。

…何が救える命を増やした、だ。

とんだトラップじゃねぇか。

 

「…でも、俺達はもう殺し合いはしない。」

 

「阿呆ぬかせ。言うだけなら簡単やねん。内通者もおるんやぞ?しかもソイツはウチらが殺し合うように仕向けとる。初めは殺す気が無かった宝条も、結局内通者の思う壺に嵌まった。殺し合わへん言うてもそないに簡単に行くわけないやろ。…まあ、そないに疑うのが嫌や言うんなら、そこにおる黒瀬はんがクマ公の嘘に乗っかって勝手に内通者演じとるだけやっちゅう可能性に期待すればええんとちゃう?」

 

枯罰は、上を見上げながら後ろを振り向くと、目だけで黒瀬を見下ろした。

 

「んー、環ちゃん何か言ったー?」

 

「…。」

 

黒瀬は、とぼけた様子で首をこてんと傾げた。

黒瀬自身は内通者だと言ってはいたが、それが真実かどうかは確かめる術がない。

…だが、何かが引っかかる。

内通の自己申告は、それが真実であれ嘘であれメリットがあるとは思えない。

仮に黒瀬の言っている事が本当なら、これ以上隠す必要が無くなったから?それとも、敢えて名乗り出る事で俺達の不安を煽るため…?

…いや。どっちにしろ、俺達を不安にさせて殺し合いをさせたいなら黙っていた方が得策なはずだ。

…黒瀬は、一体何が目的なんだ?

 

「!」

 

そんな事を考えているうちに、エレベーターが5階に着いた。

俺は、エレベーターから降りて放送室に入った。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

放送室は、テレビの放送局の内部のような造りになっており、主調整室と副調整室に分かれていた。

放送のための機器が並んでおり、初めて見る機械もあった。

 

「これは知らないやつだな…あんまり触んない方がいいかな。」

 

「枯罰はこういう場所とか詳しかったりするのか?」

 

「…まあまあやな。」

 

「そうっすか…」

 

せめて機械に強い一がいてくれるとありがたいんだけど…

仕方ない、後で個人的に捜査を頼むか。

 

「ボクの方がこういうの詳しいかなー。よく来るし。」

 

「そうか。じゃあこれは?」

 

「それはねー、音量調整器だよ。それで放送の音量を変えられるの。それで、録音はこの機械でやるんだー。試しに何か録音してみよっか?」

 

「え?ああ…」

 

「えいっ」

 

「ひゃあっ!!?」

 

突然黒瀬に尻を触られたので、ビックリして変な声を出してしまった。

 

「ちょっ、お前いきなり何すんだよ!!?」

 

「えへへー。」

 

黒瀬は、ヘラヘラ笑いながら近くにあった機械のスイッチを押した。

 

「…おい。まさか今の、録音してないだろうな?」

 

「え?」

 

黒瀬は、とぼけた様子で隣のスイッチを押した。

すると次の瞬間…

 

 

 

『えいっ』

 

『ひゃあっ!!?ちょっ、お前いきなり何すんだよ!!?』

 

『えへへー。』

 

 

 

「…。」

 

俺が黒瀬に尻を掴まれたやり取りの音声が機械から流れた。

 

「こういう風にねー、音声を録音したりもできるんだよー。」

 

「できるんだよー、じゃねぇよ!!消せ!!」

 

「えー、いいじゃん別にー。」

 

「俺が恥ずかしいから!!消せ!!」

 

俺が黒瀬と喧嘩紛いの事をしていた、その時だった。

 

「おい。」

 

いきなりテーブルをバンッと叩く音が聞こえ、振り向くと枯罰が鬼のような形相で俺達を睨んでいた。

 

「真面目に探索せんかい。」

 

「………はい、すみませんでした。」

 

「確認やけど、この放送室からはこの楽園内にある全ての施設で放送が可能みたいやな。ただ、死体発見アナウンスと捜査終了アナウンスをするための機材はウチらが操作出来へんようになっとる。」

 

「なるほど…」

 

「ほんなら次行こか。もう特にこれといって気になるモンは無いやろ?」

 

「まあな。放送室から展望エリアは、階段から直接行けるみたいだけどどうする?」

 

「んー、エレベーターでいいかなー。」

 

俺達は、展望エリアの探索を行うためエレベーターに乗り込んだ。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

管理室は、放送室とは違い狭い部屋に機械が一つ置いてあるだけだった。

しかも、入り口をガラスの壁で封じられている。

 

「…あれ?これだけ?」

 

「やなぁ。」

 

「これ、何の機械なんだろうねー。」

 

 

 

『うぷぷぷ、ズバリご説明しましょう!』

 

「うわ出た!」

 

『ちょっと赤刎クン!ボクを黒光りするGで始まる虫みたいな扱いしないでって何度言えばわかるの!』

 

「お前なんかゴキブリ以下だ!!」

 

『ちぇーっ、せっかく管理室について説明しようと思ってたのになー、そんな事言うなら説明するのやめちゃおっかなー。』

 

「ボクは聞きたいから教えてよー。」

 

『んー、じゃあ黒瀬サンに免じて教えてあげます!この管理室は、ズバリこの楽園生活の時を支配する要の部屋です!』

 

「えーっと、要するに楽園全体の施設の時計を管理してる部屋って事?」

 

『ザッツライ!このタワーの時計はもちろん、楽園内の全ての時計はこの管理室で管理されてるんだよ!あ、ちなみにパスポートの内蔵時計はこの管理室とは関係ないけどね。』

 

「なるほどな…てかガラスの壁のせいで中に入れねぇんだけど?」

 

『そりゃそうだよ!この楽園内の全ての時計を管理してるって言ったでしょ?簡単に入っていじられちゃ困るからね。立ち入り禁止エリアになってるんだよ!ちなみに、この壁は最先端の技術を駆使して作られた防弾ガラスで、耐熱性と耐衝撃性にも優れるからちょっとやそっとじゃ壊れません!マシンガンでも貫通できないんじゃないかな?』

 

いや、流石にそれはないだろ…

 

『それじゃあボクからの説明は以上です。頑張って殺し合ってねー!』

 

そう言ってモノクマは去っていった。

 

 

 

「まあ、入れへんならしゃあないわな。展望エリアの探索しよか。」

 

「そうだな。」

 

枯罰の提案で、展望エリアを見てみる事になった。

このエリアは壁が全部強化ガラスで出来ており、楽園全体を見渡せるようになっている。

 

「うぉ、すげぇな。」

 

やっぱ、展望エリアって名前がついてるだけあって高いな。

…高所恐怖症の一と筆染は絶対無理だろうな。

 

「…。」

 

枯罰は、窓越しに外を眺めて何かを考え込んでいた。

 

「…どうした?」

 

「いや、何もあらへん。」

 

「…?」

 

何もなくて急に考え込むか?

…枯罰の事だから、何か重要な事に気がついたのかもしれない。

ミーティングの時にそれとなく聞いてみるか。

 

「さーてと、探索も終わった事だし降りましょー。」

 

…黒瀬は相変わらずだな。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

タワーから降りると、まずログハウスが目に留まった。

 

「ここは…?」

 

「誰かの研究室やろなぁ。寄ってみるか?」

 

「ああ。」

 

扉には、リュックサックの絵が描かれていた。

ここは多分…

 

「…ジョンの研究室かな?」

 

「ふーん、ジョンくんの研究室かー。」

 

「おい、入るならノックはせぇよ。」

 

「わかってるよ。おーい、ジョン。入るぞー?」

 

俺は、ノックをしてから扉を開けた。

 

 

 

「…おぉっ。」

 

研究室の中には、サバイバルグッズやトレーニンググッズ、地図、世界中の絶景の写真、などが置かれていた。

本棚には、冒険の日誌やサバイバルに関する専門書などが置かれている。

中では、ジョンが筋トレをしていた。

 

「Oh,マドカにタマキにマシロか。What happened?」

 

「ああ、いや…大した事じゃないんだけど、せっかく研究室が開放されたわけだし探索しておこうかなって思って。」

 

「I see.」

 

「そういや聞谷と速水は?」

 

「カオリとランカなら、カオリのlaboratoryにいるはずだぜ。」

 

そっか、今回は聞谷の研究室も開放されたのか。

それじゃあちょっと見に行こうかな。

 

「じゃあ、俺達はそっちに顔出そうかな。悪いな、邪魔しちまって。」

 

「No problem.」

 

俺達は、ジョンの研究室を後にして聞谷の研究室へ向かった。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

聞谷の研究室を探しながら歩いていると、映画館の手前に木造建築の建物が見えた。

扉は引き戸で障子とかあるし、ここが聞谷の研究室で間違いないだろう。

扉には、香木と思われる木の枝の絵が描かれてるしな。

 

「聞谷ー、入るぞー。」

 

俺は、ノックをしてから引き戸を開けた。

 

 

 

研究室の中は和室になっていて、非常に落ち着いた空間になっていた。

障子の向こうには小さな庭園もあり、チロチロと水が流れる音が心地良い。

すると、座布団に座っていた聞谷と速水がこちらに気がついて声をかけてきた。

 

「あら、赤刎さん、黒瀬さん、枯罰さん。ごきげんよう。皆さん、探索はお済みですの?」

 

「まあな。お前らは?」

 

「わたくし達は、映画館の探索が終わりウォーカーさんとわたくしの研究室を見つけたのでここでまったりしておりましたの。」

 

まったりって…

呑気だな。

まあ、放送室の探索中に黒瀬と一緒になってふざけてた俺が言えた事じゃねぇけど。

 

「…あのさ、それより…円、助けて…」

 

「ん?」

 

正座をしていた速水が、顔色を悪くして消え入りそうな声で言ってきた。

 

「…お前、まさか足が痺れたのか?」

 

「…。」

 

俺が言うと、速水が無言で頷いた。

 

「はぁー…普段から正座せぇへんからそないな事になんねん。ほれ、ゆっくり足伸ばしぃ。」

 

「いっちちち…」

 

「…あの。速水さん。大丈夫ですの?」

 

「あ、ああ…普段正座しないから痺れちゃったかなー、かなー…あはははは…」

 

全く、一瞬何かあったのかと思ってヒヤッとしたじゃねぇか。

長居するのもアレだし、そろそろお暇するか。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

聞谷の研究室を出てしばらく歩くと、今度は無機質な白い建物が見えた。

扉はタッチするとスライドするタイプの自動ドアで、パソコンの絵が書かれている。

 

「んー、千歳くんの研究室かなー。」

 

「だろうな。」

 

ちょっと俺の研究室なんじゃないかって期待したんだけどな…

まあいいや、入ってみよう。

 

「一、入るぞー。」

 

俺は、ノックしてからドアのボタンをタッチした。

 

 

 

「ひぃいいいいいっ!!?だ、誰!?いきなり入ってこないでよ!!」

 

突然、一の悲鳴が聞こえてきた。

一は、大型のコンピューターがズラリと並ぶ部屋の奥に置かれたデスクで何やら作業をしていた。

デスクのさらに奥の壁には巨大なモニターがいくつか並んでおり、デスクの上にはパソコンやタブレットが散乱し、床にはコードが張り巡らされていた。

 

「おおー…さすが【超高校級のソフトウェア開発者】のお部屋ー…」

 

「いきなり来て悪かったな。でも一応ノックはしたぞ?」

 

「えっ?そうなの?ごめん…作業に夢中で気付かなかった…」

 

「まあそれは仕方ないけどよ。…あれ?安生と弦野は?」

 

「ああ、2人ならまだ科学研究所を探索中だよ。今回研究室を開放されたボクだけここに残る事になったんだ。」

 

「そっか、悪いな。作業の邪魔しちまって。昼のミーティングには遅れずに来いよ。」

 

「うん…」

 

俺達は、一の研究室を出た後ホテルの食堂に戻り、一足先にミーティングの準備を進めた。

すると、別の場所を探索していた班が戻ってきたので、全員が揃ったタイミングで昼のミーティングが開かれる事になった。

 

 

 

 

 


 

 

 

ー生存者ー

 

【超高校級の講師】赤刎円

 

【超高校級のカウンセラー】安生心

 

【超高校級の香道家】聞谷香織

 

【超高校級の脚本家】黒瀬ましろ

 

【超高校級の傭兵】枯罰環

 

【超高校級の冒険家】ジョナサン・ウォーカー

 

【超高校級のヴァイオリニスト】弦野律

 

【超高校級のソフトウェア開発者】一千歳

 

【超高校級のランナー】速水蘭華

 

ー以上9名ー

 

 

 

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