エデンズダンガンロンパ 希望の生徒と絶望の楽園   作:M.T.

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ごめん
完全にモチベが低下して4日も開けちゃった


(非)日常編③

楽園生活16日目。

 

『おはようございます、オマエラ!!朝です!!7時になりました!!今日も元気に殺し合いましょう!!』

 

今日もまた、モノクマの耳障りなモーニングコールで起こされた。

俺は、朝の準備を済ませて8時に間に合うように食堂に向かった。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

食堂には既に安生、聞谷、速水が来ており、遅れて一と黒瀬が来た。

今日は、枯罰、ジョン、弦野の3人が朝食を作ってくれていた。

朝食の後は軽めのミーティングを済ませ、その後は各自自由行動の時間となった。

まずはどこに行こうか?

…そうだ、今回はまだ行ってない科学研究所に行ってみよう。

 

「なあ、安生。」

 

「ん?どうしたのかな、赤刎君。」

 

「ちょっと科学研究所を調べたいから、付き合ってくれるか?」

 

「うん、わかった。それじゃあ一緒に探索しようか。」

 

俺も一応職業柄実験器具には精通してるけど、何があるかわからないからな。

…考えたくはないが、実験器具がコロシアイに使われてしまう事も考えられる。

そういう意味でも、安生は科学研究所を探索する時に一声かけるというルールを加えたんだろう。

俺は、安生と一緒に科学研究所に向かった。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

研究所の中に入ると、一面真っ白で清潔感のある空間になっていた。

 

「へぇ…」

 

「そういえば赤刎君はここ来るの初めてだったよね。僕が案内するよ。」

 

「ありがとう。それじゃあ早速見ていこうか。」

 

俺は、1階の化学室から探索する事にした。

化学室は、第一化学室と第二化学室に分かれている。

第一化学室には蛇口付きの机が18台並べられており、両側の壁全部が実験器具を収納しておく棚になっている。

中には、危ない薬品も入っていた。

危険な薬品も扱うから換気扇を回しているのか、天井からは換気扇の音が聞こえる。

 

「こっちが第一化学室ね。ここは主に実験や研究をするための部屋になってるんだ。」

 

なるほどな。

目的によって部屋を分けてるのか。

 

「うわ、ヤバい薬品も結構入ってるな。硫酸に塩化カリウム、フッ酸、ニトログリセリン…放射性物質まで入ってるのかよ。」

 

こんなもんコロシアイに使われたらヤバいだろ…

殺人鬼の仕田原が生きてる間に開放されなかったのが唯一の救いだな。

…まあ、アイツ薬品に頼らず粉塵爆発で殺人してたし、まだ黒瀬という危険因子がいるから安心は出来ねぇけどよ。

 

「…なあ。この薬品って、やっぱり捨てたりはできない感じ?」

 

「うん。モノクマに確認したら、捨てちゃダメだってさ。…まあ、これだけ有害物質が並べられてたら処分するのも難しいけどね。」

 

「だよな。」

 

やっぱり先手を打たれてたか。

まあこれに関しては、仮にルールで決められてなかったとしても、処分しないのが得策だな。

下手に焼却炉にブチ込んだりしたら変なガスとかが発生したり、最悪焼却炉が爆発したりしちゃうかもしれないし。

 

「よし、ひとつずつ見てくか…」

 

「おっと、あんまり迂闊に触らない方がいいよ。調べる時は、ガスマスクと手袋をつけないと。」

 

「…そうだな。」

 

「ガスマスクと手袋は向こうの第二化学室にあるよ。あと防護服も。」

 

仕方ない、下手に調べて目や手をやられたりしたら冗談じゃ済まされないからな。

俺は、防護服を取りに第二化学室に向かった。

 

 

 

「へぇ…」

 

第二化学室には、化学に関する本や防護服が置かれており、何故かショーケースが並べられていた。

勉強をするための学習机も用意されている。

 

「第二化学室は、主に展示と勉強のための部屋になってるんだ。」

 

「何だこれは?」

 

「ああ、それはかつて希望ヶ峰学園の卒業生が作った作品や研究レポートを展示してあるんだって。2階から4階にも似たような部屋があるよ。」

 

「なるほどな。」

 

俺は、ひとつずつ作品やレポートを見て回る事にした。

 

「へぇ、色々あるな。一錠飲んだだけで3日分の必要な栄養素が摂取できるサプリ、食べれば食べるほど記憶力が良くなるトースト、差せば差すほど目が良くなる目薬、これは…何?衣服だけを溶かすスライムだと?こんなけしからんものでも置いてあるのか。是非ともここから出る時に持ち出したいものだな…」

 

「…。」

 

うおっ!?

おい安生!!

何て目で見て来やがる!!

そんなゴミを見るような目を人に向けるのをやめろ!!

…安生はこう見えて怒らせるとヤバいからな。

何とか弁解せねば。

 

「あ、いや…ゲフンゲフン、こういう素晴らしい発明は是非とも人類の発展のために活かすべきだよな!そうは思わないかね安生君!?」

 

「…。」

 

いや、あのさ安生。

確かに今のは10:0で俺が悪かったと思うよ?

でもさ、そろそろそういう目で見るのはやめて?

マジで心が折れちゃうんだってばよ。

…あと、怖いから何か喋って?

 

「さ、さーてと…次はこのレポートでも読むとしようかな。あは、あはは、あはははははは…」

 

…すげー気まずい。

どうすりゃいいんだよこの空気。

 

俺は、安生とギスギスした空気のまま言われた通りに発明品やレポートをリストにまとめた。

ついでに、探索の途中でメダルをゲットした。

その後は防護服を着て第一化学室に戻り、実験器具と薬品をリストにまとめた。

ちなみにこの防護服も卒業生が作成したものらしく、軽量で動きやすいのに丈夫で破れにくく有害物質を一切通さないという優れ物だ。

 

「…ふぅ。種類が多いから骨が折れるなぁ。これ、残りの3階もこんな感じなのか?」

 

「お疲れ様、赤刎君。」

 

「…ああ。それじゃあ、1階の探索は終わったし2階行くか。」

 

「そうだね。あ、一応防護服は持っていってね。物理室にも危険な機械があるから。」

 

「おう。」

 

化学室の探索が終わったので、俺達は2階の物理室の探索をする事にした。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

物理室も、化学室同様第一物理室と第二物理室に分かれていた。

第一物理室が実験と研究用、第二物理室が展示と勉強用らしい。

ここまでは化学室と同じだな。

第一物理室には実験に必要な機材が揃えられており、実験台が18台並んでいた。

よし、早速探索を進めていくか。

 

「俺は機材をリストアップしておくから、安生は案内頼む。」

 

「任せて。」

 

俺は、安生に指示された通り片っ端から機材を確認していった。

色々あるな…

電流計に、振り子…あとは…音波発生装置なんてものもあるぞ。

スピーカーに繋げば出力を上げて音波を発生させる事も可能なのか。

やっぱり、注意書きには人に向けて使ってはいけないって書いてあるな。

人って音波浴びせるだけで殺せるらしいし。

それから、レーザー銃なんかもあるな。

これは人を殺せる威力は無いが、精密な電子機器を故障させるには十分な出力だ。

…って、さっきから俺物騒な事考えてないか?

3度もクラスメイトの死を目の当たりにして、俺も知らぬ間に疑心暗鬼になってしまっているのかもしれないな。

とりあえず、殺人に利用されたらヤバそうなのだけは隠しておくか。

 

「…よし。これで全部リストにまとめたぞ。」

 

俺は、機材のリストを書いたルーズリーフを安生に返した。

 

「お疲れ様。じゃあ第二物理室の方も見てみようか。」

 

俺達は、第二物理室に向かった。

 

 

 

第二物理室は、第二化学室同様卒業生の発明品や研究レポートを展示してあるショーケースと勉強机、物理学に関する本が並べられた本棚があった。

 

「こっちもリストアップしておくか。安生、ルーズリーフ貸してくれ。」

 

「はい。」

 

俺は、安生と一緒に発明品や研究レポートをリストにまとめた。

その中で、俺は気になる研究レポートを見つけた。

 

「…何だこれ?」

 

俺が手に取ったのは、トランスヒューマニズムに関する研究レポートだった。

俺は、研究レポートを読んでみる事にした。

 

そこに書かれていたのは、脳とコンピュータの互換性に関する内容だった。

何でも、脳内の記憶や意識、感情などの情報をデータ化しコンピュータに読み込む事に成功し、本物のマウスの記憶や意識を元に動くロボットマウスを作ったとの事らしい。

まだこの段階ではマウスにしか実験をしていないが、いずれヒトの脳をデータに置き換える事ができれば記憶障害の治療や機械への人格の移植などに役立てられるかもしれない。だが、倫理的な観点から現時点では実現不可能な技術である…か。

 

「記憶や感情をデータ化しただと?バカバカしい、人の心ってのは機械みたいに単純じゃねぇんだよ。安生もそう思うだろ?」

 

「…そうだね。この技術が確立されて記憶障害や精神障害に悩む人がいなくなるならそれはいい事だけど、悪用されたらたまったものじゃないよ。人の記憶や感情をデータ化して書き換えるなんて、あっていい事じゃない。」

 

安生は、そう言って眼鏡を上げた。

俯いて顔はよく見えなかったが、声の調子からして多分怒っているか悲しんでいるかのどちらかだろう。

 

「おっと、脱線しちゃったね。続きやろうか。」

 

「そうだな。」

 

俺は、引き続き研究レポートと発明品を調べた。

…しかし、化学室の方もそうだったがユニークな発明品ばっかりだな。

髪を自動でセットしてくれるヘルメットに、インク要らずで永久的に使えるペン、有害物質をほぼ100%遮断するメガネ、完全防音の耳栓…

 

「これ、マジで全部希望ヶ峰の卒業生が作ったのか…」

 

「すごいよね。希望ヶ峰学園は、こんなものを作れちゃう人をスカウトしてるんだもの。憧れちゃうよね。」

 

「俺達も、その希望ヶ峰にスカウトされてるんだけどな。」

 

「そういえばそうだったね。結局、入学式は出来なかったけどね。」

 

「ははは…」

 

俺達は、互いの顔を見合わせて苦笑いを浮かべた。

本来なら、この人達は俺達の先輩だった人達なんだ。

俺だって、憧れの希望ヶ峰に入って順風満帆な学園生活を送るものとばかり思っていた。

なのにまさかこんな事になるなんて、誰も想定してなかった。

 

「僕、身体が弱いしずっと勉強漬けだったからちゃんと学校のイベントに参加できた事が無くてさ。だから、入学するのを楽しみにしてたんだよね。」

 

「安生…」

 

「でも僕、ここでみんなに会えて友達になれたのはすごく嬉しかったんだ。赤刎君、みんなで一緒にここを出ようね。」

 

「おう。」

 

さっきは主に俺のせいで気まずい事になったが、安生の機嫌が良くなったようで何よりだ。

 

「…あ、もうお昼の時間だ。3階と4階は後で調べようか。」

 

「そうだな。」

 

俺達は、科学研究所を後にし昼飯を食いに食堂に向かった。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

昼飯の後は、一度プレイルームでメダルを使ってから科学研究所の探索をする事にした。

早速、拾ったメダルでガチャを引く。

出てきたのは、いい香りがするお香が入った箱だった。

うーん…使い道に困るなぁ。

誰かにプレゼントしようかな?

俺は、ガチャで手に入れた景品を持って安生との待ち合わせ場所に向かった。

 

「お待たせ。」

 

「それじゃあ、生物室と地学室の探索をしようか。」

 

俺達は、早速科学研究所の3階へと足を運んだ。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

生物室も、化学室や物理室同様第一生物室と第二生物室に分かれていた。

第一生物室が実験と研究用、第二生物室が展示と勉強用らしい。

ここまでは化学室や物理室と同じだな。

第一生物室には、生物観察や生物の飼育に必要な道具が揃えられ、実験台が18台並んでいた。

俺は、下の2階同様置かれている道具を順にリストアップした。

 

「ええっと…顕微鏡に骨格標本に…うおっ、培養器まであるのか。」

 

この培養器、人一人がすっぽり入る大きさだぞ。

しかも16台もある。

 

「…まさか、これで人造人間とか作れたりするわけじゃないよな。」

 

「ははは、まさか…SF映画じゃあるまいし。」

 

「だよなぁ。」

 

いくらモノクマと言えど、流石にこれで人間を作ったりは…しないよな。

 

「ここって、診療所ほどじゃないけど医療器具もあるんだな。」

 

「…まあ、生物実験に医療器具が必要だったりするし…ここの機材の扱いは僕が一番慣れてるかな。」

 

「そうか。じゃあ、わからない事とかあったらお前に聞けばいいか?」

 

「うん。何でも相談してよ。」

 

安生はホント良い奴だな。

知識が豊富で頭が切れるし、身体が弱いのに積極的にみんなのために動いてくれるし、同い年なのに頼れる兄貴って感じがするんだよな。

 

「…よし。これで全部リストにまとめたぞ。」

 

俺は、機材のリストを書いたルーズリーフを安生に返した。

 

「お疲れ様。じゃあ第二生物室の方も見てみようか。」

 

「おう。」

 

俺達は、第二生物室に向かった。

 

 

 

第二生物室は、化学室や物理室同様卒業生の研究レポートを展示してあるショーケースと勉強机、生物学に関する本が並べられた本棚があった。

 

「こっちもリストアップしておくか。安生、ルーズリーフ貸してくれ。」

 

「はい。」

 

「サンキュ。」

 

俺は、安生と一緒に研究レポートをリストにまとめた。

その中で、俺は気になる研究レポートを見つけた。

 

「…何だこれ?」

 

俺が手に取ったのは、人造生物に関する研究レポートだった。

俺は、研究レポートを読んでみる事にした。

 

そこに書かれていたのは、人工的に生物を作り出す研究に関する内容だった。

クローン技術と遺伝子組み換え技術を利用し、元となる細胞が一つあれば体格や体質、性格、行動パターンなどの個体差を自在に操作した生物を作る事が可能だという事が書かれていた。

この技術を人間に応用する事で遺伝子操作を施した人間を大量に造り出し、専用の施設内で育て人造人間がどのように成長するのかを観察する事も検討しているが、やはり人道的な面から実現はしないままでいる、との事だった。

 

…なぁんだ、まだ確立されてない技術なのか。

冷静に考えたら、人工的に人間を大量に造るとかヤバい事してるしな。

…さっきの脳のデータ化のレポートといい、このレポートといい、何かSFじみてないか?

 

「…。」

 

「赤刎君、どうかしたの?」

 

「ああ…いや、このレポートがちょっと気になってな。」

 

「ああ、人造生物に関する研究レポートね。僕も読んだよ。」

 

「安生はこれを読んでどう思う?」

 

「うーん…この研究に関しては、既にある技術を応用したものだからね。否定はできないかな。実際、似たような論文を過去にも読んだ事があるし。『将来人間を人工的に造る技術が確立され、デザイナーベイビーが増えたらどうなるのか』、っていう内容だったかな。もしそれが現実になれば、病気に苦しむ人が減るっていう良い面もあるけど、非人道的な事に利用されたりもしそうだよね。人体実験とか、殺人とか…」

 

「確かにな…」

 

「おっと、また脱線しちゃったね。それじゃあ生物室の調査は終わった事だし、後は地学室だけだね。」

 

「ああ。」

 

生物室の探索が終わったので、俺達は4階の地学室の探索をする事にした。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

地学室室も、他の3つの階同様第一地学室と第二地学室に分かれていた。

第一地学室が研究用、第二地学室が展示と勉強用らしい。

第一地学室には、地質の調査や天体観測に必要な道具が揃えられ、実験台が18台並んでいた。

俺は、下の3つの階同様置かれている道具を順にリストアップした。

 

「えーっと…望遠鏡に、測定器に、温度計に、コンパスに…」

 

この部屋は他の3つに比べて用具が少ないし部屋も少し狭いな。

特に危険物も無いし…

おかげでリストアップが早く終わったぞ。

 

「これで全部だな…」

 

「ありがとう。赤刎君、リスト作るの早くなったね。」

 

「まあ、この部屋が一番備品が少なかったからな。」

 

「それにしても早いよ。作業に慣れてきた?」

 

あー…そういえば、まだここに来たばっかりだった時も診療所と倉庫の備品のリスト作りを手伝ってたからな。

 

「それじゃあ、第二地学室の方も調べようか。」

 

「…だな。」

 

俺達は、第二地学室の方も調べる事にした。

 

 

 

第二生物室は、他の3つの階同様卒業生の研究レポートを展示してあるショーケースと勉強机、天文学や地質学に関する本が並べられた本棚があった。

俺は、安生に指示された通り展示品や本をリストにまとめた。

 

「…。」

 

俺は、壁に貼られている地図を見て少し考え込んだ。

 

「どうしたの、赤刎君?」

 

「ああ、いや…いくら壁で囲まれた閉鎖空間といえど、流石にそろそろ警察が俺達の居場所を突き止めててもおかしくないんじゃないかと思ってな。それに、ここにある設備と俺達超高校級の力をもってすればここがどこなのかを割り出す事はできるんじゃないか?」

 

「モノクマが、それを黙って見てるとは思えないけどね。多分、僕達がそう考える事も織り込み済みだよ。だからわざわざ研究施設なんて開放したんだ。」

 

「う…それは、そうだが…」

 

「それに、そもそもここが国内だっていう確証もないしね。」

 

「…えっ?」

 

「実は僕、君と同じ事を考えてここ数日間太陽の動きや気温を計測してたんだ。」

 

マジかよ。

いつの間に…

見た目によらず抜かり無いな安生は。

 

「…でも、わかったのはこの楽園があるのは北半球の中緯度地域のどこかという事だけ。何年も辿り着けないような無人島にいるって事も考えられるんだよ。」

 

「…。」

 

「あ、ごめんね。不安にさせるような事を言って。…でも、超高校級が16人、しかも2週間もここに閉じ込められてるのに家族や警察が動かないわけがない。居場所が分からなくても、今も僕達の事を必死に探してくれてるはずだよ。僕達にできる事は、外で僕達の帰りを待ってくれている人達のためにも無事に生きてここから出るための手がかりを探す事だ。」

 

「…そうだな。」

 

俺は、まだ外に出てやりたい事があるんだ。

こんな所で悲観的になってる場合じゃないな。

探索をしリストを作り終えた俺達は、そのまま科学研究所で解散した。

…まだ時間があるな。

適当にどこかで暇潰ししようかな。

 

俺は、とりあえずプレイルームにでも行こうとホテルに戻った。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

ホテルのエントランスに戻ると、そこで聞谷にバッタリ会った。

 

「あら、赤刎さん。ごきげんよう。」

 

「おう、聞谷か。」

 

…そういや、聞谷とちゃんと話したのって3回目の探索で同じ班になった時以来だったかな。

せっかくだし、この機会に仲良くなりたいな。

 

「なあ、聞谷。」

 

「はい、何ですの?」

 

「今からちょっと時間ある?話がしたいんだけど。」

 

「お話、ですか。わたくしの方こそ、是非赤刎さんとお話したいですわ。では、せっかく研究室が開放された事ですし、わたくしの研究室でお話をしませんか?」

 

「お、ありがたい。それじゃあ…お邪魔します?」

 

俺は、自分から話を振っておいて何だが不自然に畏まって軽く頭を下げた。

夕食までの時間は、聞谷と一緒に過ごす事にした。

仕田原達の事で一時期精神的に不安定だったから心配だったけど、聞谷は意外にも快く俺を研究室へ案内してくれた。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

研究室に着くなり、聞谷は抹茶と茶菓子を出してくれた。

 

「どうぞ。お茶をお淹れしましたの。」

 

「ありがとう。…ふぅ。」

 

うん、美味い。

 

「…いかがですか?」

 

「美味いよ。これ、いい茶葉使ってるだろ?それにこの饅頭も美味いな。」

 

「あ、わかります!?このお茶、研究室に置いてあったのですが本当に美味しいんですのよ!それにこのお饅頭、程良い甘さでお抹茶によく合うんです!」

 

「お、おう…そうだな…」

 

聞谷の奴、いつになく興奮してるな。

このままヒートアップする前に、プレゼントを渡しておこうかな。

 

「なあ、聞谷。」

 

「はい、何ですの?」

 

「はいこれ。」

 

俺は、ガチャで引き当てたお香の箱を聞谷に渡した。

 

「えっと、これは…」

 

「プレゼントだよ。お前なら気に入ってくれるんじゃないかと思ってな。」

 

「こ、これをわたくしに!?本当に受け取ってもよろしいんですの!?」

 

「俺は正直全然使わないし、お前が使った方がお香も喜ぶだろ?」

 

「あ、ありがとうございます…!ですが、何かお礼をさせていただかなくては…」

 

「いや、いいんだよ。別に見返りが欲しくてプレゼントしたわけじゃないしな。このお茶とお菓子で十分だよ。」

 

「いえ、そういうわけには参りませんわ!」

 

別にいいって言ってるんだけどな。

 

「んー…じゃあそうだな、せっかく研究室に入れてもらった事だし、話聞かせてくれないか?」

 

「お話、ですか。そのような事でよろしいんですの?」

 

「聞きたいしな。」

 

「…わかりました。では、何からお話しましょう?」

 

「そうだな…じゃあ、お前はどうして【超高校級の香道家】に?」

 

「ええと…わたくしの実家は、代々伝統芸能をやっておりまして、わたくしも物心ついた時から茶道や華道のお稽古をしておりましたの。ですが、どれもわたくしの実家が輩出している名人ほどの才能はありませんでした。妹の佐織は何でも卒なくこなしてしまい、我が家でも一番才能があったので比べられる事も多かったですわ。」

 

…なるほど。

名家のお嬢様ってイメージだったけど、聞谷もそんな苦労をしてたのか。

ん…?

佐織って…

あ、そういえば生花のコンクールで最優秀賞を取った中学生が話題になってたっけ。

その中学生が聞谷佐織って名前だったけど、あの子聞谷の妹だったのか。

 

「ですが、唯一わたくしに向いていたのが香道でしたの。わたくしは香道家になる事を決め、独自の流派を生み出した事が話題となってスカウトされるまでに至りましたの。」

 

「そうか。良かったな、お前に向いてて続けられるものが見つかって。」

 

「ありがとうございます。わたくしの尊敬するお婆様が、『自分で決めた道は全力で歩みなさい』と仰っていましたの。お婆様の言葉もあって、わたくしはわたくしにしか歩めない道を歩もうと決めたのですわ。」

 

「…なるほどな。」

 

聞谷の奴、おばあちゃん子だったのか。

他の奴と話しててもそうだったけど、何かこうして二人きりで話してると家庭の事情とか色々わかってくるもんなんだよな。

そうだ、そろそろ別の話題振ってみようかな。

 

「…ところでさ。話は変わるんだけど、聞谷って普段は大人しいのに動物館とかカラオケとかでものすごくはっちゃけてたじゃん?…もしかして、実は家ではあんな感じだったりする?」

 

俺が聞谷に軽めのテンションで尋ねると、聞谷は顔を真っ赤にしてブンブンと両手を振った。

 

「あ、あれは忘れてくださいまし!!」

 

「お、おう…」

 

あちゃー…ちょっとからかってみただけなんだけどマジで気にしてたのか。

聞谷って、普段はお上品な大和撫子って感じなのにちょっと天然ボケなんだな。

とりあえず、これ以上からかうのは可哀想だしやめとくか。

 

「わたくしは今まで家の中だけで暮らしておりましたので、庶民の方がどのような生活をなさっているのかを全く存じ上げませんの。ですから、初めて庶民の方の生活に触れてつい興奮してしまい、それでお見苦しいところを…」

 

庶民って…

聞谷家は伝統芸能で有名な旧家だって聞いてるけど、マジで俗世間とは無縁なのな。

そりゃあ、俺達からしてみれば当たり前の事も聞谷からしてみれば新鮮なわけだ。

そう思って話を聞いていると、少しずつ聞谷の声のトーンが暗くなっていった。

 

「わたくしは、庶民の方と接した事が殆ど無かったので、初めてここに来た時は緊張しておりましたの。…ですが、そんな中たまたまわたくしと同じ車両にいらっしゃったのが筆染さんが、明るくわたくしに接して下さったのです。」

 

あ、そういえば駅で一緒にいたし、やけに仲良かったような…

 

「筆染さんだけではありませんわ。仕田原さんも、このような場所に不慣れなわたくしに優しく接してくださいました。宝条さんも、初めは自分勝手な方だと思っておりましたが一緒に話しているうちに本当は優しい方なのだと分かりました。…それなのに、どうしてあんな事に…何故、わたくしの大切なお友達があのような目に遭わなくてはならないのですか!?こんな思いをするくらいなら、もうお友達なんて…!」

 

「聞谷。そんな事言うな。お前、アイツらと友達になれて、アイツらと一緒に楽しい事ができて、嬉しかったんだろ?アイツらと過ごした時間が楽しかった分、別れがつらいのはわかる。でも、つらいからってその思い出まで否定しちまったらアイツらが悲しむぞ。」

 

「でも、わたくしは…!」

 

「だったらこうしよう。ここを出られたら、みんなで一緒に遊びに行かないか?」

 

「…え?」

 

「外はな、お前が経験した事ないような楽しい事で満ち溢れてるんだ。世界中を回って、お前も俺も体験した事ない事をいっぱいやろう。つらいのを忘れちまうくらい、みんなで思いっきり遊ぼうぜ。その方が、アイツらも喜ぶと思わないか?」

 

俺がそう言うと、聞谷は静かに頷いた。

 

「赤刎さん。わたくしは、生きてここを出ますわ。まだ見た事のないものを皆さんと一緒に見てみたいですもの。それに、聞谷家の長女ともあろう者がこんな所で立ち止まっていては、お婆様に合わせる顔がありませんわ。」

 

よかった、いつもの聞谷だ。

 

「ああ、約束だからな。」

 

俺は、聞谷と一緒に外に出る約束をした。

もう、仲間が死ぬのも、絶望するのもいやだ。

俺達は、今度こそみんなでここから出るんだ。

絆さえあれば、どんな事だって乗り越えられる。

 

《聞谷香織との親密度が上がった!》

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

その後、俺達は食堂に集まって夕食を食べ、その後は適当に時間を潰した後部屋に戻った。

こうして、楽園生活の16日目が幕を閉じたのだった。

 

 

 

 

 


 

 

 

ー生存者ー

 

【超高校級の講師】赤刎円

 

【超高校級のカウンセラー】安生心

 

【超高校級の香道家】聞谷香織

 

【超高校級の脚本家】黒瀬ましろ

 

【超高校級の傭兵】枯罰環

 

【超高校級の冒険家】ジョナサン・ウォーカー

 

【超高校級のヴァイオリニスト】弦野律

 

【超高校級のソフトウェア開発者】一千歳

 

【超高校級のランナー】速水蘭華

 

ー以上9名ー

 

 

 

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