エデンズダンガンロンパ 希望の生徒と絶望の楽園 作:M.T.
(非)日常編①
楽園生活20日目。
『おはようございます、オマエラ!!朝です!!7時になりました!!今日も元気に殺し合いましょう!!』
モノクマのモーニングコールが流れるが、起き上がる気にはなれなかった。
もう、9人も死んでしまった。
親友だったジョンは実は内通者で、黒瀬の策で速水に殺されてしまった。
…これ以上誰も死なせない、そう決めていたのに。
嫌だ。
嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ
もう限界だ。
これ以上仲間が死ぬのは耐えられない。
俺は一体どうすればいい?
本当に出口なんてあるのか?
俺達は、ひょっとして一生ここで暮らさなきゃいけないんじゃないか?
みんなを信じて何になる?
希望なんて持ち続けてて一体何になる?
ありもしない希望を持ち続けるくらいならいっそ…
ピンポーン…
「!」
インターホンの音が聞こえ、俺は嫌でも目を覚ました。
ドアを開けると、安生がいた。
「おはよう、赤刎君。」
「安生…心配してきてくれたのか。」
「うん。あのさ、朝ご飯食べられるかな?」
「…。」
「あ、無理はしなくていいよ。でも、せっかく枯罰さんと弦野君が作ってくれたし、食欲があるなら…」
「…そうだな。悪い、安生。俺、ジョンの事でどうかしちまってたみたいだ。でももう大丈夫だ。…大丈夫だから…」
「…赤刎君。つらかったら、いつでも僕に相談してね。力になるから。」
「…ああ。」
俺とした事が、ジョンと速水が死んだ事でおかしくなっちまってたみたいだ。
俺がしっかりしないと、みんなに悪い。
俺は、覚悟を決めて安生と一緒に食堂へ向かった。
◇◇◇
食堂につくと、黒瀬以外の全員が揃っていた。
寝起きが悪い一と、二人が死んで傷ついていた聞谷ですら時間通りに来てるのに、俺は遅刻だなんて情けない話だな。
「…おはよう、みんな。」
「よ。」
「お早うさん。」
「お、おはよ…」
「ごきげんよう。」
俺が挨拶をすると、4人とも返してくれた。
「それじゃあ、全員揃ったし飯にするか。」
「黒瀬さんがまだいらしてませんが…」
「あんな奴どうでもいいだろ。あんなのを待ってて飯が冷めるなんて癪だし、先に食おうぜ。」
「そ、そうだね…」
弦野と一は、完全に黒瀬を無視する事に決めたようだ。
…まあ、あんな事があったんじゃ無理ないか。
今回ばかりは俺も二人に賛成だ。
「いただきま…」
「ふわぁ〜あ。みんなおっはよー。」
俺達が朝食に手をつけ始めたその時、招かれざる客が来た。
黒瀬は、あくびをしながら当然のように俺の隣に座ってきた。
そんな黒瀬を、全員が冷めた目つきで睨む。
「…あれ?どうしたのみんな。ボク、何かまずい事した?」
「消えろよ。飯が不味くなる。」
「えぇ〜、律くんひどいよぉ。何でそんな事言うの?」
「チッ、どの口が言ってやがんだ。」
弦野は黒瀬の無神経な発言に舌打ちをし、枯罰は黒瀬を始終無言で睨みつけていた。
裏切られる事に敏感だからか、この二人は特に黒瀬への風当たりが強かった。
まあ黒瀬は黒瀬で嫌われるような事してるわけだし、この二人の反応は当然と言えば当然なんだがな。
結局黒瀬が意地でも出て行こうとしないので、全員渋々黒瀬と一緒に朝食を摂った。
最悪な空気の中で食べた朝食だったので、作ってくれた二人には申し訳ないがあまり美味くなかった。
「はっふー、ごちそうさまー。ボク食べ過ぎちゃったよー。」
「用が済んだならさっさと消えろ。」
「え〜、ひどいよぉ。」
『そうだよ弦野クン!女の子をいじめる男はモテないよ。』
突然、不愉快な声と共にモノクマがどこからか現れた。
「チッ、今度はテメェか。」
『あれれー、何ですかこのつややみたいな空気は!』
「それを言うならお通夜だよねぇ?」
黒瀬がいつも通りモノクマのしょうもないボケに対して律儀にツッコミをしているが、俺はもうそこにツッコむ気力は無い。
『せっかくオマエラにプレゼントを用意したのになー。』
「どうせ新しいエリアに行けるようになったんやろ?」
『もう、だからボクが言おうとした事を先に言うのやめてって言ってるでしょ!ったく、これだから最近の子は〜!』
いや、もう5回目なんだから察しはつくだろ…
『はいはいそうですよ、今回は情報管理室と死体安置所と天空農園と管理センター、それから研究室を全部開放したよ!』
全部…って事はもしかして、俺の研究室も開放されたのか!?
『それじゃあボクはこれで。どんどん殺し合って視聴率アップに貢献してねー!』
そう言ってモノクマは去って行ってしまった。
「クソ、あの野郎好き勝手言いやがって…!」
「弦野君、落ち着いて。とりあえず今は、探索が先だよ。」
「チッ…」
「今回は施設が4箇所と研究室が3つか…どうする?」
「班を二つに分けてそれぞれが二つずつ施設を調べればいいんじゃないかな?」
「あ、じゃあボクは情報管理室と管理センター調べるから!死体安置所なんて絶対無理!!」
「わたくしも…出来れば調べたくありませんわ。」
「僕も…」
「じゃあボクが農園と死体安置所を調べるよー。」
「だったら俺も黒瀬と同じ場所を調べるよ。」
「やったー、円くんと一緒ー。」
「はぁ、せやったらウチも…」
「待て。」
枯罰が黒瀬と同じ班に入ろうとした時、唐突に弦野が止めてきた。
「弦野?」
「俺がそっちの班に入る。」
「はぁ?何でや。」
「お前、コイツに相当ムカついてんだろ?学級裁判の時、お前アイツの事睨んでたけどよ。アレはキレるとかそういうレベルの目つきじゃなかった。」
「…。」
「お前と黒瀬を同じ班にしたら何が起こるかわかんねぇだろ。ここは俺に任せてお前は安生達と一緒に調べとけ。」
「…わかった。」
弦野の奴、そういう所に気を配れるようになったんだな。
孤立してた頃のアイツからは考えられない成長っぷりだ。
結局、俺と黒瀬と弦野の班が農園と死体安置所を、安生と聞谷と枯罰と一の班が情報管理室と管理センターを調べる事になった。
昼の13時に食堂で会う約束をし、俺達は早速探索を始めた。
◇◇◇
「まずはどっちから見る?」
「ここから近いのは死体安置所だよねぇ。」
「テメェには聞いてねぇよ。俺は赤刎に聞いたんだ。」
「ぴえん」
「まあまあ…」
あーあ、早速始まったよ。
弦野の奴、結局喧嘩するんじゃねぇか。
「それじゃあ、死体安置所から先に調べるんでいいな?」
「おーっす。」
「…俺は、お前がそれでいいなら別に。」
「決まりだな。」
俺達は、早速死体安置所に足を運んだ。
「うぉ、結構寒いな…」
弦野の言う通り、死体安置所の中はかなり寒かった。
おそらく、死体をいい状態で保っておくために冷蔵保存か冷凍保存がされているのだろう。
「死体を腐らないように低温で保存してあるからだよー。常温で置いといたら死体なんてすぐ腐っちゃうからね。…知ってる?人肉が腐った匂いって一生焼き付いて離れないくらい強烈なんだよ?」
「何でそういう余計な事ばっかり知ってるんだテメェは。」
部屋の中を調べると、機械でできた16個の棺桶があった。
棺桶にはそれぞれ俺達の名前が書かれており、正面にある葬儀用の祭壇には俺達16人の遺影が置かれていた。
「うわ…」
「チッ、気色悪い。悪趣味な事しやがって。」
同感だ。
死んでしまった奴はまだしも、生きている俺達の遺影まで飾りやがって。
命を冒涜しているとしか思えんな。
「円くんみてみてー。未来ちゃんの棺桶だよー。中見てみようよ。」
「はぁ!?何考えてんだテメェは!!」
「ボクは円くんに話しかけたんだよー。で、円くん。どうする?この棺桶開ける?」
「…そうだな。もし中に入ってるのが本物なら、出る時に持っていってやりたいしな。」
俺は、意を決して棺桶の蓋を開いた。
そこには、札木の死体があった。
札木は口から出血しており両脚を複雑骨折してはいたが、死体の状態はかなり綺麗だった。
ただそこに眠っているだけなんじゃないかと思ってしまう程だ。
「札木…」
【超高校級のタロット占術師】札木未来。
彼女が最初の被害者だった。
大切な人を殺され、自分の運命に絶望し武本に自分を殺させてしまった。
全ては、モノクマのDVDからこの地獄は始まってしまった。
モノクマは札木の気持ちを踏み躙り、後出しルールで俺達を散々苦しめた。
札木も、裁判の事を知っていれば自分の命を犠牲にしようなんて思わなかったはずだ。
「次行くよー。」
黒瀬が次の棺桶を開くと、そこには赤い瞳の目玉と血塗れの肉片が転がっていた。
「う゛っ…!?」
「おい、何なんだよこれは!!?」
「多分闘十郎くんだよ。可哀想に、オシオキされたからこんな事になっちゃったんだねー。」
【超高校級の武闘家】武本闘十郎。
彼は初めての裁判で裁かれオシオキされた最初のクロだった。
札木に自分を殺すように頼まれ、裁判の事を知らなかった武本は家族や師匠のために札木を殺してしまった。
武本だって、裁判の事を知っていれば札木を殺さなかったはずだ。
武本もまた、モノクマに踊らされてその命と尊厳を踏み躙られた被害者だったんだ。
「次ー。」
次の棺桶には、湊の遺体が入っていた。
身体中に穴が開いており、白目を剥き口から泡を吹いている。
「湊…」
【超高校級の幸運】漕前湊。
アイツは、唯一才能を持たない事をものともせず誰よりも明るく振る舞っていた。
俺達はいつしか、湊の底抜けに明るい性格に惹かれ、才能の有無に関わらず大事な仲間の一人として見るようになっていた。
だけど、アイツはよりによって一番会いたがってた実の兄貴に殺されてしまった。
もしもアイツが別の形で神崎と兄弟として出逢えていたなら、二人が辿る結末は違ったのだろうか。
「次いっくよー。」
次の棺桶は、灰が底に溜まっていた。
「う゛っ…」
その強烈な臭いに、俺と弦野は思わず吐き気を覚えた。
底に溜まっていた灰は、人肉が焼けた匂いを放っていた。
「これは帝くんだねー。」
【超高校級の天才】神崎帝。
アイツは傲慢な奴で、俺達を見下したり札木が死んだ時は捜査や裁判を引っ掻き回したりとあまり良い印象は無かった。
だけど、アイツが俺達の大切な仲間だった事には変わりなくて、神崎をあんな方法で殺したモノクマには今でも怒りを覚えている。
神崎は、唯一心の底から尊敬していた母親を取られた嫉妬から実の弟の湊を殺してしまった。
もしもアイツが別の形で湊と兄弟として出逢えていたなら、二人が辿る結末は違ったのだろうか。
「お次ー。」
次の棺桶には、宝条の死体が入っていた。
頭から血を流してはいたが、宝条の死体は今までで一番綺麗な状態だった。
まるで、そこで死んでいるのが嘘のようだ。
「宝条…」
【超高校級の収集家】宝条夢乃。
アイツはわがままでうるさい奴だったけど、話してみれば根は優しくていい奴だった。
初めはみんなに対してキツく当たってたけど、みんなと打ち解けて、俺には友達になってほしいと言ってくれた。
でも、ジョンに唆されて筆染を殺そうとして返り討ちに遭ってしまった。
もしも、宝条がジョンの言葉を間に受けていなかったら。筆染を殺す決断をする前に思い留まる事が出来たなら、こんな結末を辿らなくて済んだのだろうか。
「んじゃ次ー。」
次の棺桶には、焼けた左手首と焼けてグズグズになった肉塊が転がっていた。
死体の状態から察するに、おそらくこれは筆染の死体だ。
「うぅっ…」
「絵麻…!!」
弦野は、血相を変えて棺桶に手を突っ込むと、肉塊を両手で掻き寄せてポロポロと涙を溢していた。
「絵麻、絵麻…!」
「わー、何やってんの。律くん頭大丈夫?」
「弦野…」
【超高校級の画家】筆染絵麻。
アイツは、ちょっと抜けてる所はあったけど、いつでも底抜けに明るくて誰よりもみんなの事を考えて行動する奴だった。
ずっと気にかけていた弦野と付き合う事になったアイツは、本当に幸せそうだった。
でもジョンに唆された宝条に襲われて返り討ちにしてしまった挙句、後釜を狙っていた仕田原に爆破されてしまった。
もし、アイツが宝条を殺さずに話し合いで解決する事ができたなら、俺達がいち早く仕田原の正体に気付いてアイツから遠ざけていれば、あんな悲劇は起こらなくて済んだのかな。
「はい次ー。」
次の棺桶には、バラバラになってもはや原型を留めていない肉片が転がっていた。
棺桶に書いてある名前から察するに、恐らくこれは仕田原の死体だ。
「仕田原っ…!!」
【超高校級の家政婦】…もとい、【超高校級の爆弾魔】仕田原奉子。
誰よりも真面目で、俺達のために一生懸命家事をこなしてくれるいい奴だと思っていた。
でもその正体は、今までずっと俺達の事を騙していた爆弾魔だった。
アイツは大勢の一般人を殺し、後釜を狙っていたという理由だけで筆染を殺した。
でも、いくら殺人鬼とはいえ大事な仲間をあんな残虐な方法で殺されるのは許せなかった。
俺達がもっと早くアイツの正体に気付いていれば、あんな事にならなくて済んだのだろうか。
「ほい次ー。」
次の棺桶には、ジョンの死体が入っていた。
頭部は潰されており、棺桶に入っていたのは首から下だけだった。
「うげ…」
「ジョン…」
【超高校級の冒険家】ジョナサン・ウォーカー。
アイツは、どんな時でも場を盛り上げてくれるムードメーカーで、俺の大事な親友だった。
俺も、湊が死んでからは何度もジョンの明るさに助けられた。
でもアイツはモノクマに指示されてコロシアイを裏から操っていた内通者で、宝条を間接的に殺した。
結局、内通が黒瀬にバレて黒瀬に操られた速水に殺されてしまった。
内通者でもアイツは俺にとって親友である事には変わりなくて、ジョンを殺した黒瀬と速水は未だに許せない。
もし違う形で出逢えていたなら、一人で重荷を抱え込む事なく心の底から友達だって思えたのかな。
「これで最後だねー。」
最後に開けた棺桶には、速水の死体が入っていた。
身体を真っ二つに切断されており、オシオキを受けたせいで全身ボロボロになっていた。
「うっ…」
「速水…」
【超高校級のランナー】速水蘭華。
アイツは、いつも明るく元気で俺達に活力を与えてくれる、そんな奴だった。
だけど、アイツは黒瀬に唆されて外に出たいがためにジョンを殺してしまった。
もちろんジョンを殺した事は許さないけど、アイツも弱みにつけ込まれて黒瀬に操られた被害者だったんだ。
速水は元々あんな事をする奴じゃなかった。…きっとアイツは、顔には出さなかっただけで本当は人を殺すほど追い込まれていたんだろう。
俺がアイツをもっと気にかけてやれていれば、こんな事にはならなかったのだろうか。
…でも、今更そんな事を考えたって仕方ない。
「これでとりあえず犠牲になったみんなの遺体は確認し終えたのかな?」
「そうだな。」
「それじゃ、そろそろ農園の方の探索をしなきゃな。」
俺達は、死体安置所を後にし農園へ向かった。
◇◇◇
しばらく歩いていると、モノクマタワーよりもさらに高い塔が見えた。
どうやら、この塔の内部は全て農園になっているらしい。
農園の中に入ると、まず目に留まったのはだだっ広い室内菜園だった。
「うおっ…」
「すごーい!」
畑では多種多様な農作物が育てられており、作物の旬の季節ごとに部屋が分かれているので同時期に全ての作物を食べられるようになっていた。
肉や魚などの加工場もあり、ほとんど全ての食材がここで管理されている。
「こんなモンがここにあったのか…」
『ここではオマエラの食べ物を作ってるんだよ!』
「「…。」」
「あ、クマちゃんやっほー。」
『あれ?赤刎クンも弦野クンもリアクション薄くない?無視?虫なの?インセクト?」
「「…。」」
俺と弦野は、モノクマを無視する事にした。
こんな奴に構うなんて時間の無駄以外の何物でもない。
「ねークマちゃん、ここ何なの?」
『よくぞ聞いてくれました黒瀬サン!ここでは、オマエラが一生楽園生活をするための食材が作られているのです!この農園が機能してる間は、オマエラは餓死する事はないから安心してね!』
「ふーん。これ、中には入れないんだね。」
『当然だよ。これはみんなの食料を確保するための農園なんだよ?どっかのまっしろしろすけに盗み食いでもされたら困るからね。』
「ぎくっ」
ぎくって…
盗み食いする予定でもあったのかよ。
「あれ?でもマップだと一ヶ所だけ行ける場所があるよな?」
『おおっと、さすが赤刎クン!お目が高い!今から、天空農園の最上階に案内するよ!』
そう言ってモノクマはルンルン歩きで俺達をエレベーター前まで案内した。
…行けって事か。
俺達は、最上階へ向かうエレベーターへと乗り込んだ。
エレベーターから降りると目の前に扉があったので、パスポートを翳して扉を開ける。
「!」
扉が開いてすぐに目に飛び込んできたのは、草木が生い茂り綺麗な水が流れ中央にはリンゴの木が聳え立った、エデンの園を再現したかのような庭だった。
「何だここは…」
「すごいねぇ」
『ここにはいつでも来られるよ。ここにあるものは全部好きに食べてオッケーだよ!』
「つっても、ここで食えるモンっつったらこの気色悪いリンゴくらいしかねぇだろ?」
そう言って弦野が指差したのは、モノクマのように白と黒に分かれたリンゴが実った木だった。
「つーかこれ食えんのか?毒々しいし不味そうなんだけど。」
『毒々しいとは何ですか!それは世界にひとつしかないモノリンゴの木なんだよ?』
「モノリンゴ?何それー。」
『このリンゴは、香りを嗅いだだけで眩暈がして一口齧れば昇天しちゃうくらい美味しいリンゴなんだよ。ボクの自信作だから好きに食べてよね。…あ、ただひとつだけ注意してね。』
「何が?」
『このリンゴには、皮の白い部分と黒い部分にそれぞれ違う成分の毒が含まれているのです!皮ごと齧ったら文字通り昇天しちゃうから、食べる時は必ず皮を剥いてから食べてね!でも、ボクは優しいから万が一皮ごと齧っちゃった時の対処法もお教えします!皮ごと齧っちゃったら、白い皮の方を齧ったなら黒を、黒い皮の方を齧ったなら白をすぐに齧れば解毒できるよ。お互いの効果を打ち消し合う毒が含まれてるからね。』
「やけにすんなり教えてくれるんだな。怪しいぜ。」
『当然じゃん!コロシアイ以外で死人が出るなんて、視聴者ウケ悪いからね。そんな事になった日にはもう苦情の嵐だよ!』
なるほど、だから俺達が一生ここで暮らせるように衣食住やら最新のセキュリティやらが用意されていたわけか。
やっぱり、コロシアイ以外で死人が出るのはモノクマにとっても都合が悪いんだな。
「だいたいわかった。もうどっか行っていいぞ。」
『ぷんぷん!』
俺が適当にあしらうと、モノクマは頭から湯気を出して去っていった。
やっと去ってくれた。あんな奴、視界に入るだけで目障りだ。
「調べ終わったし研究室行くー?」
「そうだな。」
死体安置所と農園を調べ終えた俺達は、研究室を見て回る事にした。
◇◇◇
農園を後にしてまず目に留まったのは、レトロな雰囲気の建物だった。
サムラッチ付きの木の扉には、本の絵が描かれていた。
「本…って事はオレの研究室か!?」
「どうだろうねー。」
俺は、早速ワクワクしながら研究室に入った。
「…あれ?」
扉を開けた先に広がっていたのは、外装と同じくレトロな雰囲気の書斎だった。
暖炉まであり、本棚には映画の台本が並べられている。
19世紀の西洋を思わせる造りだ。
そしてどういうわけか、ソファーにはぬいぐるみが置かれていた。
「ここはボクの研究室だねー。」
俺のじゃなかった…
今度こそってちょっと期待してたんだけどな。
「うわ、ここすごいね。」
「何がだ?」
「ボクが普段使ってる道具が揃えられてるの。それに見てよ、ボクが今まで書いた脚本が本棚に入ってるんだー。」
「へー…」
「俺の時もそうだったけど、何で俺達の私物がこんな所にあるんだ?俺のヴァイオリンなんて、世界に一つだけしかなくて億はするやつだぞ?」
「そう、だな…」
俺達の私物をここに持ってこられたという事は、このコロシアイを主催してるやつは俺達の事をよく知る人物という事か?
「わーい、こんな所にふかふかのソファーがあるー。ちょっと一休みしちゃおーっと。」
「おい!!何寝てんだよ!!探索はどうした!?」
「…くぅ。」
黒瀬は、ソファーに寝転がると寝息を立てて寝始めた。
「おい、黒瀬。寝るな。起きろ。」
俺は、黒瀬を起こそうと黒瀬の肩を揺すった。
「むにゃ…」
「おわぁっ!?」
黒瀬は、ものすごい怪力で俺をソファーに引き摺り込むとそのまま俺を抱き枕にした。
二人とも小柄だったので、ソファーにすっぽり収まってしまった。
「な、何すんだよ!?」
「えへへ、円くんしゅきー。」
「おい、離せバカ!!そうだ、おい弦野!!見てないで助けてくれ!!」
「…。」
弦野は、無言で写真を撮りやがった。
「何撮ってんだ!!」
「何かあった時のためにお前の弱みを握っておこうと思って。」
「んの野郎…!」
「冗談だよ。おい起きろクソ女。」
「んにゃ」
弦野が黒瀬を叩き起こすと、黒瀬は眠そうに目を擦りながら起きた。
「んー、よく寝たー。あれ?二人ともどうしたの?」
「どうしたの、じゃねぇよ。まだ探索終わってねぇから行くぞ。」
「んー!」
俺達は、二度寝しようとする黒瀬を引っ張って研究室を後にした。
◇◇◇
黒瀬の研究室を後にして次に見えてきたのは、割と新しくて綺麗なプレハブだった。
ドアには、十字架のマークが書かれている。
「ねぇ、ここってもしかして…」
「ああ。」
…【超高校級の傭兵】の研究室だろうな。
俺達は、研究室に入ってみる事にした。
「それじゃ入るぞ。」
俺は、ノックをして扉を開けた。
「…へぇ。」
中は、普通の事務所のような造りになっていた。
見た事のない資料が並べられている事以外は、特に変わった様子はない。
すると、デスクに座っていた枯罰が立ち上がって声を掛けてきた。
「おう、誰かと思えばお前らかいな。探索は終わったんか?」
「研究室以外はな。あれ?他の3人は?」
「まだ管理センターを調べてもろてるわ。」
「そっか。ここはお前の研究室なんだよな?」
「他に誰がおんねん。」
「まあ、そうだけど…」
俺は、少し気になっていた事を枯罰に聞いてみる事にした。
「なあ。」
「何や。」
「ここ、お前の研究室だと言う割には割と普通じゃないか?」
「…そこの引き出し開けてみ。」
「?」
俺は、言われるがまま引き出しを開けた。
すると中には、オートマチックピストルが入っていた。
「!?」
「この部屋には、ウチが使っとった武器がぎょーさん隠されとるでな。」
「マジかよ…あ、でもこれは流石にレプリカだよな?そんな実弾が入った銃なんて置いてるわけ…
ズギュンッ
「っ………」
あっっっぶね!!!
実弾入ってんじゃねぇかコレ!!
間違えて撃っちゃったよ!!
「ド阿呆。せやから迂闊に触るなって言おうとしたんや。」
「…スンマセン。」
「ここに置いてある武器は全部ホンマモンやぞ。見るのはええけど触んなや。」
「…ハイ。」
怒られた。
でも今のは俺が悪いから仕方ないか。
俺達は、枯罰の研究室を後にした。
◇◇◇
「さて。もう一つ研究室があるって言ってたよな?」
「ここから歩いてすぐらしいけど…」
しばらく歩いていると、学校をイメージした建物が見えてきた。
スライド式のドアには、数式が書かれている。
「ここってもしかして…」
「俺の研究室だよな!?」
「…多分な。」
「いやっほぉおおおおお!!!」
やった!!
ついに俺の研究室が開放されたぞー!!
早速中を確認せねば!!
「…!!」
研究室の中に入ると、まず目に飛び込んできたのは大きなスライド式のホワイトボードだった。
壁一面使われた本棚には参考書がビッシリと並んでおり、教卓も最新式で必要な文房具は一通り揃えられていた。
「最高だなここ!一生ここにいてもいい!!」
「…あの、赤刎。」
「え?」
「…お前、すげぇ興奮してるけど大丈夫か?」
あ…
いかんいかん、俺とした事が浮かれすぎた。
だが、この研究室はよくできている。
悔しいが、これを用意したモノクマの事を少しは認めざるを得ない。
「す、すまん…一番最後だって事もあって興奮しちまって…」
「うん、引くほどはしゃいでたぞ。」
「…マジで?」
「きゃっきゃしてた円くん可愛かったよー♪」
「…。」
頼む、もう突くのはやめてくれ。
俺だって年甲斐もなくはしゃぎすぎて今メチャクチャ恥ずいんだよ。
俺のライフは0よ。
「そ、それじゃあ探索終わった事だし、そろそろ食堂に戻るか?」
「うわ話逸らしたよコイツ。」
「ねー。」
いや、だって恥ずいし。
俺がはしゃいでたって事をバラされでもしたらたまったもんじゃねぇよ。
用が済んだので、俺達はホテルの食堂に向かった。
そこでちょうど安生達と合流したので、ミーティングを行う事になった。
ー生存者ー
【超高校級の講師】赤刎円
【超高校級のカウンセラー】安生心
【超高校級の香道家】聞谷香織
【超高校級の脚本家】黒瀬ましろ
【超高校級の傭兵】枯罰環
【超高校級のヴァイオリニスト】弦野律
【超高校級のソフトウェア開発者】一千歳
ー以上7名ー