エデンズダンガンロンパ 希望の生徒と絶望の楽園   作:M.T.

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(非)日常編②

探索を終えた俺達は、探索の結果を報告し合う事になった。

 

「それじゃあ早速ミーティングを始めようか。まずは赤刎君のグループから報告してくれるかな?」

 

「ああ。最初に調べた死体安置所には、俺達全員分の遺影が飾られた祭壇と、今までの犠牲者の死体が入った棺桶があった。」

 

「ひっ…!」

 

「それと、農園では俺達がここに来てから食べてる食料が作られてた。基本的に畑や加工場に入る事はできないが、最上階だけは自由に探索できるようになってる。最上階には、モノクマが用意した毒リンゴがあったが好きに採っていいらしい。」

 

「そないなキッショいモン誰も採りたないやろ。」

 

「確かにね…」

 

「それと、黒瀬と俺の研究室があった。俺からの報告は以上だ。」

 

「なるほどね、ありがとう赤刎君。それじゃあ次は僕が報告するね。情報管理室には、楽園内のネットワークを管理するコンピューターが並べられていた。セキュリティーがかけられてて中身は確認できないようになってるけど、解析を一君にお願いしてる所だよ。それと管理センターは、電気や浄水、ガスといったライフラインを管理する施設になってたよ。こっちは、見学はできるけど触る事はできないようになってた。あと、枯罰さんの研究室もあったよ。」

 

「なるほどな…」

 

「それと、今回北東の第五区画が開放された事で、残りは北の第六区画だけになったよ。」

 

「やっぱり正六角形だったのか…」

 

「って事は、その第六区画が開放されれば、脱出の手がかりが掴めるんだよね!?」

 

「その前にまず殺人が起こらねぇとあのクマは新しいエリアを開放する気ねぇだろ。」

 

「ひぃいいいいい!!」

 

「弦野君、ちょっと今の発言は…」

 

「チッ」

 

うん、大体両方の班が情報を共有したかな。

んじゃあ今回のミーティングでわかった情報をまとめとくか。

 

・今回開放されたのは研究室3つ、情報管理室、死体安置所、農園、管理センターの7つ。

・今回開放された研究室は、俺、黒瀬、枯罰の3名。これで全員の研究室が開放された。

・情報管理室は、楽園内のネットワークを管理するコンピューターが置かれている。

・コンピューターには全て厳重なロックがかけられている。

・死体安置所には、俺達の遺影が飾られた祭壇と今までの犠牲者の死体が入った棺桶が置かれている。

・農園は、建物全体が俺達の食料を供給するための施設になっており、大体の生物はそこで造られている。

・農園は最上階のみ自由に探索する事が可能。

・最上階にある木に実っているモノリンゴは、美味だが皮は猛毒。しかし、齧った皮の色とは別の色の部分を齧る事で解毒可能。

・管理センターは、ライフラインを管理するための施設になっており自由探索は不可。

 

「…とまあ、こんな所か。」

 

「ねー、ご飯にしようよー。ボクお腹空いたー。」

 

「霞でも食ってろ。」

 

「ぴえん」

 

数十分後、いつもの2人が昼食を作って持ってきてくれた。

朝食が黒瀬のせいで不味かった分、今回はとても美味しく感じられた。

…この二人にいつも作らせるのも悪いし、俺も今から料理勉強しよっかな。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

昼食の後は、各自自由探索の時間になった。

まだ夕食まで時間があるし先に今回亡くなったジョンと速水の供養をしておかないとな。

俺は、早速ジョンの研究室に向かった。

 

「…。」

 

ジョンの研究室は、相変わらずサバイバルグッズが並べられていていかにもアイツの研究室って感じがした。

でも、どこか寂しく感じられる。

…やっぱり、ジョンがいないとせっかくの研究室も何だか物足りないな。

たった3週間の付き合いだったけど、アイツは俺達をモノクマに売った内通者で俺はアイツの本性を全く知らなかったけど、それでもジョンは大切な俺の親友だった。

でも、内通者だというだけで黒瀬に狙われ速水に殺されてしまった。

アイツだって、家族や親友のために生きて外に出たかったはずなのに、その思いをモノクマと黒瀬に踏み躙られた。

…今思えば、アイツが俺に向けてきた暗い視線は、家族や親友を人質に取られ無理矢理モノクマの内通者をやらされていたアイツのSOSだったのかもしれない。

もちろん宝条と筆染を殺し合わせた事は許せないけど、アイツだって本当は内通なんてやりたくなかったんだ。

俺がアイツのSOSに気付いてやれていれば、宝条を唆す前にアイツに一声かけてやれていれば、あんな事にはならずに済んだのかな。

 

「…。」

 

俺は、ジョンの研究室に飾られていたジョンと湊とのスリーショット写真を眺める。

…ここから出たら一緒に世界中を冒険しようって約束してたんだけどな。

何でこんな事になっちまったんだよ。

湊に続けて、俺は二人も親友を失ってしまった。

俺が挫けそうな時、アイツらはいつでも俺を励ましてくれた。

底抜けの明るさで、どんな時もみんなを笑顔にしてくれた。

でも、俺達を支えてくれたアイツらはもういない。

アイツらがいない今、俺は希望を持ち続ける意味なんてあるんだろうかとすら思えてくる。

…でも、こんな所で諦めたらそれこそ湊とジョンに顔向けできない。

俺は、何があっても絶対に生き延びてここから出てやるって決めたんだ。

アイツらの無念を無念で終わらせないためにも、俺達は7人全員でここを出る。

 

「…ジョン、ごめんな。親友なのに助けてやれなくて。外に出たら、お前の人質も助ける。だから、安らかに眠ってくれ。」

 

俺は、ジョンの机に向かって合掌して頭を下げ、持っていた供物をジョンの机の上に置いた。

ジョンが少しでも安心して眠れるように。

ジョン、俺はやるよ。

みんなで生きてここから出て、お前をあんな目に遭わせたモノクマに一矢報いてやる。

だから、俺達に力を貸してくれ。

俺は、強く誓うとジョンの研究室を後にした。

 

「…次は速水の所に行ってやらないと。」

 

俺は、ジョンの研究室を出た後速水の研究室へと向かった。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

「…。」

 

早速速水の研究室に入った。

速水の研究室は相変わらずグラウンドのような造りになっておりトレーニング器具が並べられていた。

中にはついこの間まで使っていた形跡が見られるものもあり、速水が昨日までこの研究室で走っていた様子が思い浮かぶ。

そう思うと、やっぱり速水がいない研究室は寂しくて暗い感じがする。

 

「速水…」

 

速水は、お世辞にも頭が良いとは言えない奴だったけど、それでもいつも明るく振る舞って俺達を元気付けてくれていた。

でも、速水は外に出て弟達を助けに行きたいという思いを黒瀬に利用され、内通者を消したい黒瀬に操られてジョンを殺してしまった。

確かに、簡単に騙された速水も悪い。

俺の親友のジョンを頭をかち割って殺した事は今でも許してないし、これからも許せないと思う。

でも、速水は今までのクロと違って殺意はなかった。

たまたま運悪く生贄に選ばれてしまっただけで、ジョンを殺すつもりはなかったんだ。

速水が受けたオシオキは、アイツの罪に対してあまりにも残酷すぎるものだった。

あの状況で自分が悪くないと思ってるからこそ、アイツには生きて罪を償って欲しかったのに。

俺は、速水をあんな風に殺してアイツの尊厳を踏み躙ったモノクマを絶対に許さない。

俺も枯罰と同じ気持ちだ。

絶対に、何が何でも生き延びてモノクマを糾弾してやる。

 

「…。」

 

速水は、こんな所で死んでいい奴じゃなかった。

なのに、どうしてこんな事になっちまったんだ。

外に出たらみんなで色んな所を走って回ろうって約束してたのにな。

…今でも、オシオキを受ける前のアイツの悲痛な叫び声が頭から離れない。

 

「速水、ごめんな。助けてやれなくて。辛かっただろ?…約束、守れなくなっちまってごめんな。俺、生きるよ。お前の無念を晴らすためにも、何としてでも全員で生き延びる。そして、お前の命を弄んだモノクマに一矢報いてやる。だから、どうか安らかに眠ってくれ。」

 

俺は、ベンチに向かって合掌して頭を下げ、持っていた供物をベンチに置いた。

速水が少しでも安心して眠れるように。

…これでアイツも少しは浮かばれるといいんだけどな。

 

「…あと、裁判では追い詰めるような事をしてすまなかった。」

 

俺は、再び供物を置いたベンチに頭を下げると、複雑な思いを抱えつつ速水の研究室を後にした。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

…さて、これからどうするかな?

もう今回の犠牲者の供養は終わったし、プレイルームに行って少し遊ぼうかな。

俺は、早速ホテルに戻りプレイルームに向かった。

前回の裁判で貰ったメダルがあるので、俺はガチャを引いた。

すると、中からUSBが出てきた。

 

「USBか…」

 

パソコンとか持ってれば使う機会があったんだろうけどな。

俺は正直要らないし…後で一にでもあげよっかな。

俺がそんな事を考えていると、一が来た。

 

「赤刎君、こんな所で何してるの?」

 

「ああ、ちょっとこのガチャで遊んでたんだ。」

 

「ええ…それ、全然いい景品出ないよ?君も物好きだね…」

 

物好きって…失礼な奴だな。

 

「そういうお前は何しに来たんだ?」

 

「ああ、えっと…ちょっと息抜きにゲームでもしようかと思って…」

 

そう言って、一は近くにあったゲーム機の前に腰掛けた。

すると早速ゲームが始まった。

俺は、一がプレイしている様子を横から少し観察してみる事にした。

初めのうちは、ただ普通に上手いなぁと思っているだけだった。

一は、プロゲーマーなんじゃないかっていうくらいゲームが上手かった。

…ここまでは良かったのだが。

 

「オラオラオラァ!!どうしたどうしたぁ!!?汚物は消毒だァ!!!」

 

「…あ、あのぅ…に、一さん?」

 

俺は一体何を見させられてるんだろうか。

一は、ゲームを始めてから十数分経った頃からだんだん性格が変わり始めていた。

今じゃ完全にバーサーカーだ。

そういやアイツ、ゲームすると性格変わるって言ってたけどここまで豹変すると流石に引くぞ。

 

「ふぅ。まあまあかな…って、赤刎君どうしたの?」

 

「いや…すげー楽しそうだなーって。」

 

すると、一は突然オロオロし出す。

どうやら、俺の反応から自分が今まで豹変して周りが見えていなかった事に気が付いたらしい。

 

「あっ、ごっ、ごごごごめん!ボク、またトリップしちゃってたみたいで…ごめん!」

 

うーん、癖なら仕方ない…のか?

 

「それじゃあ、息抜きも終わった事だしボクはこれで…」

 

「おう。」

 

あ、いかんいかん。

危うくアレを忘れる所だった。

 

「あ、ちょっと待て。」

 

「…何?」

 

「はいこれ。」

 

俺は、新品のUSBを一に渡した。

一は、状況が飲み込めずキョトンとしている様子だった。

 

「…え?」

 

「プレゼントだよ。さっきガチャ引いたら出てきたんだ。お前には主に機械関係で色々世話になってるし、良かったら受け取ってもらえないかなって思ってるんだけど。」

 

「あ、いや…そんな…え、待って?これ、何かのドッキリとかじゃないよね?」

 

いや、プレゼントでドッキリって…

どんだけ猜疑心強いんだよ。

 

「いや、そんなわけないだろ。お前が受け取ってくれた方が、俺もありがたいんだけどな。」

 

「そ、そういう事なら…」

 

一は、おずおずと俺のプレゼントを受け取った。

 

「…あ、お礼…しなきゃだよね…」

 

「いや、いいよ。別に見返りが欲しかったわけじゃないし。」

 

「ひっ!う、嘘だ!そんなおいしい話あるわけないもんね、絶対何か企んでるよ!!」

 

いや、だから猜疑心強すぎだろ。

 

「うーん、そうだなぁ…じゃあ、こういうのはどうだ?俺、お前の話とかちゃんと聞いた事なかったし、良かったら思い出話とか聞かせてくれよ。」

 

俺が宥めながら言うと、一はようやく落ち着いたのかコクリと頷いて俺を研究室に案内した。

俺は、一と一緒に過ごす事にした。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

俺は、一に案内されて研究室の中に入った。

相変わらず、一の部屋にはコンピューターが並べられておりそれら全てが忙しなく動いていた。

 

「しかし…お前の研究室、少し寒くないか?」

 

「これだけコンピューターが並んでると、それだけ室温が上がって熱暴走を起こしやすくなるからね。だから元々室温が低めに設定されてるんだ。」

 

「ふぅん…」

 

このパスポートもそうだけど、コンピューターって暑い所に置いただけですぐダメになるからな。

そういう事ならこの部屋が少し寒いのも納得だ。

 

「このコンピューターの解析は終わってるのか?」

 

「一応ね…でも、全然この楽園とは関係のない情報しか出てこなかった。多分、最低限の情報しか入手できないようになってるんだと思う。」

 

そっか…

情報管理室の方がダメでも、一のパソコンからなら何か重要な手掛かりを掴めるんじゃないかと思ったんだがな。

まあそんな事考えてても仕方ないし、とりあえず今は一の思い出話でも聞くか。

 

「…ええっと、何から話す?」

 

「そうだな…じゃあ一、お前は何で【超高校級のソフトウェア開発者】になったんだ?」

 

「えっと…ボクの両親はプログラマーをやってて…それで、ボクも自然とプログラマーを目指すようになったんだ。たまたま適性があったしやってて楽しかったから、どんどんソフトウェアを開発していったらいつの間にか【超高校級のソフトウェア開発者】って呼ばれるようになって…」

 

「へぇ、すごいな。」

 

「そんな、ボクなんてちーたんに比べればまだまだだよ…」

 

「…ちーたん?」

 

「あ、言ってなかったっけ。ボク、親戚にすごい才能を持ったプログラマーの子がいるんだ。不二咲千尋っていうんだけど、歳が近いから小さい頃からボク的には弟に近い感覚なんだよね。優しいし、ボクより才能あるしとってもいい子なんだ。」

 

「へぇ、そうだったのか。」

 

そういえば親戚にプログラマーをやってる子がいるって希望ヶ峰の公式サイトの説明欄に書いてあったな。

この前パニクった時も『ちーたん』って言ってたけど、あれは親戚の子の事だったのか。

 

「…なあ。もう一個聞いていいか?」

 

「何?」

 

「ちょっとこの質問をするのは自分でもどうかとは思うけど…お前、何でいっつもビクビクしてるんだ?」

 

「…!!」

 

「いや、別に臆病なのが悪いって言ってるわけじゃないんだけど…何かこう、怖がり方が不自然っていうか…もしかして、過去に何かあったんじゃないか?」

 

「…。」

 

「あ、別に話したくなかったら話さなくてもいいぞ。ただ聞きたいから聞いてみただけだし…」

 

「…イジメだよ。」

 

「えっ?」

 

「ボク、高校に上がってすぐいじめられたんだ。ボクの両親は、プログラマーはプログラマーでも安月給で働いてる底辺プログラマーだったから、家が裕福じゃなくてね…それでもボクを一流のプログラマーにするために無理していい高校に入れたんだ。元々興味があったけど経済的な面で志望から外してた高校だったし、ボクは全然嫌じゃなかったんだけどね。だから同級生達はみんなボクとは違っていい所のお坊っちゃんばっかりで、ボクは入学当初から浮いちゃってたんだ。ボクは、将来のために頑張っていい成績を取ってきた。でも、それが良くなかったんだよね。」

 

「…え。」

 

「ボクが通ってた学校は成績でクラス分けされてて、ボクは一番上のクラスにいたんだけど、ボクのクラスにいたのはエリート御曹司ばっかりだったから『貧乏人が一番上のクラスなんて生意気』っていう理由で良く思われてなかったんだ。下のクラスの同級生からもいじめられて、先生達も親が寄付金を出してるいじめっ子達の味方だったから学校には誰も味方がいなかった。」

 

「ひでぇ話だな…」

 

何だよ、よくよく聞いてりゃただの嫉妬じゃねーか。

そんなもん自分がいい成績取りゃいいだけの話なのに、人を蹴落とすなんて最低だな。

 

「…初めはちょっとした嫌がらせだった。無視されたり、私物を隠されたり、わざと聞こえるように陰口を叩かれたり…でもどんどんエスカレートしてって、殴られたりカツアゲされたり、酷い時には万引きをされられた事もあった。」

 

「な…」

 

ちょっと待てよ、それって立派な犯罪じゃないか。

高校生だろうと、暴行罪や脅迫罪で訴える事もできる。

周りの大人達は今まで一体何やってたんだよ…

 

「ボクはもう学校に行きたくなかったから、しばらく不登校になっちゃって…一日中家でゲームばっかりする生活を続けてたんだ。学校に行ってない間も、ずっと人の顔色を窺う癖は直らなかった。親にも迷惑かけたくないしもう死のっかなって思ってた時、奇跡が起こった。希望ヶ峰からスカウトの通知が来たんだ。…その手紙を読んだ時、ボクは一日中泣いたよ。これでやっと解放される、もうイジメに悩まなくて済むって。スカウトが無かったら、ボクは…」

 

「一…」

 

一は、当時の事を思い出したのか泣き始めた。

 

「希望ヶ峰ならボクと同じ超高校級の才能を持った人達がいっぱいいて、家が裕福とか貧乏とか関係ないからきっともうあんな目に遭わなくて済む、そう思ってた矢先だよ。入学式に参加しようとしたら突然意識が途切れて、目が覚めたらこんな所にいてわけわからないままコロシアイを強要されて、人がどんどん死んでいって…大好きだった仕田原さんも殺されて…もうわけわかんないよ!!何でボク達がこんな目に遭わなきゃいけないんだよ!!ふざけんなよ、ボクが一体何したっていうんだよ!!」

 

一は、急にパニックを起こして喚き散らした。

俺は、一を落ち着けるために背中を摩った。

 

「一、大丈夫か?」

 

「あっ…」

 

一は、ようやく落ち着いたのか我に返ったように俺の方を見た。

 

「…一、話してくれてありがとな。俺、お前がそんな悩みを抱えてたなんて知らなかった。…つらかったよな。」

 

「…。」

 

「今更こんな事言っても説得力無いかもしれないけど、今度こそみんなで一緒に外に出よう。今までの日常に逆戻りしちまうだけかもしれないけど、俺達がついてるから。」

 

「………ありがとう。」

 

一は、ポツリと呟いた。

一の素性を聞いた事で、少しは絆が深まった気がする。

俺達は、こんな所で立ち止まってるわけにはいかないんだ。

 

《一千歳との親密度が上がった!》

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

…さて。一と話し終わったし、残りの時間は何をしようかな?

とりあえず、適当に散策しようかな。

 

俺は、残り時間を散策して過ごす事にした。

適当に歩いていると、途中で安生に会った。

 

「やあ、赤刎君。」

 

「安生か。お前は何をしてるんだ?」

 

「脱出の手がかりがないかと思って…色々と探してた所だよ。」

 

「そうなのか。」

 

さすが安生、抜かりないな。

 

「で、何か見つかったのか?」

 

「…いや、特に何も。やっぱり、この楽園について重要な事は全部隠されてるみたいだね。」

 

「…。」

 

「…どうかした?」

 

「安生ってさ、すごいよな。身体弱いのに俺達のために頭フル回転させてくれてよ。こんな状況でも冷静だし、何か頼りがいがあるよ。」

 

「やだなぁ、全然大した事ないよ。逆に僕はみんなと違って頭を動かす事くらいしかできないからね。だからせめてちょっとでもみんなの役に立てるように、自分にできる事をしてるだけだよ。」

 

何をそんなに謙遜する事があるんだか。

俺は事実を言っただけなんだがな。

 

「…なあ、安生。」

 

「ん?」

 

「このコロシアイってさ…誰が何の目的で計画したんだと思う?」

 

「誰かまではわからないけど…全国に配信するためでしょ?」

 

「それはわかってるよ。俺が知りたいのはそういう事じゃなくて、俺達を見せ物にして結局黒幕は何がしたいんだろうなって話。世の中にはこういうのを楽しむ悪趣味な変態がいるのは知ってるし、それで儲かるのは確かなんだろうけど儲かるってだけでここまで手の込んだセッティングをするかな?俺達のコロシアイで手に入る収入がここまでセッティングする労力に見合ってるかっていったら微妙じゃないか?」

 

「それは…黒幕にしかわからない事だろうね。とにかく僕達が今やるべき事は、ここから脱出する方法を探す事だよ。」

 

「そう…だな。」

 

脱出できない事にはいくら考えても意味がないからな。

俺も脱出の手がかりを探さないと。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

…少し喉が渇いたな。

俺は、一旦ホテルに戻って飲み物を取りに行く事にした。

ホテルの食堂に行ってみると、聞谷、黒瀬、枯罰の三人がいた。

女3人集まれば姦しいとはまさにこの事だ。

テーブルの上を見ると、美味そうなお菓子が置いてあった。

 

「あー、円くんだぁー。」

 

「何や、お前かい。」

 

「あら赤刎さんごきげんよう。」

 

「おう。お前らは何してんだ?」

 

「ちょうど3時ですので…枯罰さんが作ってくださったお菓子をいただいていたところですの。」

 

「そうなのか。」

 

そういやちょっと小腹も空いてきたし、もし良いなら俺も食べよっかな。

 

「俺も食っていいか?」

 

「好きにせぇ。」

 

よっしゃ、お許しが出たぜ。

お察しの通り、俺は甘いものが好きだ。

俺は、用意されていたお茶と一緒にお菓子を食べた。

やっぱり、枯罰が作ったというだけあって美味かった。

 

「円くーん、これおいしいよぉ?」

 

黒瀬が勧めてきたのは、もちもちした食感のプチケーキだった。

すると次の瞬間、黒瀬はモノモノジュースと同じ白黒マーブルのソースにプチケーキをディップした。

粘性の高いソースをプチケーキに塗りたくっている様は、見ているだけで食欲が失せる。

 

「あのー…黒瀬?お前、何してんの?」

 

「見ての通りですよー。」

 

「いや、見ての通りって…そんだけつけたらソースの味しかしなくないか?」

 

「違うよ。プチケーキにソースをつけてるんじゃないの。」

 

「え?」

 

「プチケーキをソースにつけてるの。」

 

「ひぇっ…」

 

俺は、黒瀬の奇行に始終引くしかなかった。

 

「そういえば…枯罰さんはお料理が得意なんですよね?」

 

「まあなあ。」

 

「何か得意料理とかはございますの?」

 

お、聞谷が枯罰に質問してくれたぞ。

ナイス聞谷。

 

「あ、それ俺も知りたい。」

 

「プリン。」

 

「え?」

 

「プリン。」

 

え、いや…もっとこうなんていうか…おかず系かと思ったらまさかのスイーツときたか。

確かに、このお菓子は全部パティシエが作ったんじゃないかってくらい美味しかったけど。

 

「えっと…枯罰はプリンが好きなのか?」

 

「せやで。倉庫を探しに行ったら、ウチが気に入っとるプリンの香水が置いとったさかい、持ってってもうたわ。」

 

「ひぇっ…」

 

プリンの香水って…

どんだけプリン好きなんだよ。

そして何がヤバいかって、コイツ真顔で話してるんだよな。

冗談でやってるわけじゃないって事だ。

食事中に二度も引く事になるなんて思わなかったぞ。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

3時のおやつを楽しんだ後は、再び探索をしに外に出た。

すると、途中で弦野に会った。

 

「よぉ、弦野。」

 

「赤刎か。」

 

「お前も探索中か?」

 

「まあな。安生が手がかりを探してっから自分でも色々探してんだけど、今のところ手がかりナシだ。」

 

「…まあ、そんなすぐに見つかるんだったら苦労しないわな。」

 

「外部からの情報は全く無くて、逆に外部へ俺達の現状を伝達する手段も無い。せめて情報管理室のパソコンが使えれば何かわかるかもしれねぇんだけどな。」

 

「一が解析してくれてるらしいけど、いつ終わるかもわかんねぇしな。…あのさ、良かったら手伝おうか?」

 

「いいのか?」

 

「ああ。お前は夕飯の支度とかあるだろうし、早く終わった方がいいだろ?」

 

俺は、ちょうど夕食の時間まで暇だったので弦野の仕事を手伝う事にした。

だが、結局のところめぼしい情報や手掛かりは何一つ見つからなかった。

 

「クソ…俺達、本当でこんなんでこっから出られんのかな。」

 

「そう悲観的になるな。まだ新しいエリアが開放されてから1日目なんだしよ。それに、新しいエリアが開放されれば何かわかる事があるかもしれないだろ?」

 

「コロシアイでしか開かない次のエリアに期待すんのか?」

 

「う…」

 

「でもまあ、見つからねぇもんは仕方ねぇよな。戻るぞ…」

 

壁を調べていた弦野が引き返そうとした、その時だった。

 

「!」

 

弦野は、突然立ち止まってボソッと呟いた。

 

「…何の音だ?」

 

「え?何が…」

 

「しっ」

 

弦野は、調べていた壁に聞き耳を立てた。

 

「………。」

 

「おい弦野、どうしたんだよ。」

 

「…この壁の中から音がした。」

 

そう言って、弦野は壁を指差した。

 

「壁の中から?外の間違いじゃなくて?」

 

「いや、確かに壁の中から音がしたんだ。…待て。この壁、中に空洞があるぞ。」

 

「え?壁に空洞?」

 

「…多分、人一人通れるだけのスペースはあると思う。」

 

「マジか…」

 

結局探索の収穫は、壁の中に空洞を発見したというものだけだった。

だが、この壁がただの壁じゃないと分かっただけでも御の字だ。

 

「壁の中に空洞…もしかして、脱出手段になったりしないかな?」

 

「ねぇよ。そもそもどうやって壁の中に入るんだって話だし、モノクマがそんなの許すわけねぇだろ。」

 

「…。」

 

弦野にバッサリ切り捨てられてしまった。

…弦野はもっとこう、希望とか可能性とか考えてみてもいいと思うんだけどな。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

その後は夕食の時間になり、俺達は枯罰と弦野が作ってくれた夕食を食べた。

夜時間が来るまでは、俺は研究室で時間を潰した。

こうして、楽園生活20日目が終わったのだった。

 

 

 

 

 


 

 

 

ー生存者ー

 

【超高校級の講師】赤刎円

 

【超高校級のカウンセラー】安生心

 

【超高校級の香道家】聞谷香織

 

【超高校級の脚本家】黒瀬ましろ

 

【超高校級の傭兵】枯罰環

 

【超高校級のヴァイオリニスト】弦野律

 

【超高校級のソフトウェア開発者】一千歳

 

ー以上7名ー

 

 

 

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