エデンズダンガンロンパ 希望の生徒と絶望の楽園   作:M.T.

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(非)日常編③

楽園生活21日目。

 

『おはようございます、オマエラ!!朝です!!7時になりました!!今日も元気に殺し合いましょう!!』

 

今日もまた、モノクマの耳障りなモーニングコールで起こされた。

…コイツ、マジで人を不愉快にさせる事に関してだけはある意味超高校級なんだよな。

俺は、モノクマのモーニングコールにイライラを募らせつつパスポートの画面をぼんやりと眺めた。

…そういえば、もうここに来てから3週間経つんだよな。

そんな事を考えつつ、俺は朝の準備を済ませて8時に間に合うように食堂に向かった。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

食堂には既に安生と聞谷が来ていた。

 

「おはよう、二人とも。」

 

「おはよう、赤刎君。」

 

「ごきげんよう。」

 

俺が挨拶をすると、二人は挨拶を返してくれた。

すると、集合時間1分前に一が来た。

枯罰と弦野が作ってくれた朝食を運んでいると、だいぶ遅れて黒瀬も来た。

相変わらずみんなの黒瀬に対する風当たりは最悪だったけど、一人になられたらもっと困るという理由で一緒に朝食を摂る事になった。

朝食の後は軽めのミーティングを済ませ、その後は各自自由行動の時間となった。

まずはどこに行こうか?

…そうだ、まだ行ってない管理センターに行ってみよう。

俺は、早速管理センターに足を運んだ。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

管理センターでは、主に電気、浄水、ガスの管理がされていた。

まずは、発電室に行ってみる事にした。

 

「へぇ…」

 

発電室は、最先端の技術で発電が行われていた。

効率的でかつ環境に優しいエネルギーで、これだけの設備があれば俺達16人が100年ここで暮らしても大丈夫だそうだ。

安生の報告通り、自由探索は不可能でガラスの窓越しにしか見る事ができない。

…まあ、そりゃ中に入れないのは当然だろうな。

どっかのまっしろしろすけとかが下手にいじって壊したりでもしたら俺達は死んじまうわけだし。

中に入れない分、せめて内部がどうなってるのかはちゃんと窓越しに調べておかないとな。

俺は、発電室を窓越しに調べてわかった事をメモにまとめておいた。

…さて。次は浄水室に行ってみるとするか。

 

浄水室は、一般的な浄水場を小規模にしたような内部構造だった。

やはり最先端の技術が使われており、俺達16人の生活用水を100年分作り出す事ができるようになっていた。

マジでこの施設は最後の方に開放されて良かったな。

もし強引に中に入られて毒でも盛られたりでもしたら終わりだからな…

…ってクソ、俺は一体何を考えてんだ。

俺はみんなを信じるって決めただろうが。

……でも、本当はやっぱり怖い。

また誰かが死んじまうんじゃないかと思っている自分がいる。

もう、誰かが死ぬのも疑い合うのも嫌だ。

俺は一体どうすればいいんだ…

複雑な思いを抱えつつ、俺は浄水室を窓越しに調べてわかった事をメモにまとめておいた。

…さて。次はガス室に行ってみるとするか。

 

ガス室は、生活に使うガスを楽園内の施設に供給する設備が整っていた。

やはり自由探索は不可能でガラスの窓越しにしか見る事ができない。

俺は、ガス室を窓越しに調べてわかった事をメモにまとめておいた。

ついでに近くの廊下にメダルが落ちていたので、回収しておいた。

これで管理センターは全部見た事になるのかな。

俺は、管理センターを後にした。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

管理センターの探索の後は、昼食の時間になった。

その後は自由探索の時間になったので、俺はどこに行こうかで迷っている。

 

…さて。

次はどこに行こうかな?

情報管理室は一に任せてあるし…

とりあえず、プレイルームでガチャでも引こうかな。

俺は、プレイルームに向かった。

拾ったメダルを使ってガチャを引くと、アイドルのCDが出てきた。

うーん…俺、そんなにアイドルとか興味ないんだよな。

誰かにあげよっかな…

 

「円くーん。」

 

「うわっ!?」

 

突然、黒瀬が後ろから絡んできた。

 

「…どうした?」

 

「円くん、あのねー。お願いがあるの。」

 

「お願い?」

 

「環ちゃんの部屋にある資料を取ってきてほしいんだー。」

 

「は?自分で行けばいいだろ。」

 

「ダメなのー。」

 

「何で?」

 

「環ちゃん、ボクの事まだ許してないみたいでさー、研究室に入れてくれないんだよねぇ。」

 

それはお前の行いのせいだろ…

 

「ねえ円くーん、一生のお願い。」

 

「はぁ、わかったよ。取ってくりゃいいんだろ?何を取ってくればいいんだ?」

 

「んーと、これ全部。」

 

「…げっ。」

 

黒瀬は、資料をまとめたリストを俺に渡してきた。

おいおい、さすがに量が多すぎだろ。

…図書室からカート借りてくるか。

俺は、黒瀬に頼まれて枯罰の研究室に向かう事にした。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

俺は、図書室からカートを拝借した後枯罰の研究室に向かった。

 

「おい枯罰、いるか?入るぞー。」

 

俺は、一応枯罰の研究室のドアをノックした。

すると、すぐに枯罰が出てきた。

 

「…何や。」

 

「ちょっとお前の研究室の資料を拝借したくてな。」

 

「構へんよ。ウチはもう全部目通しとるさかい、好きなの持って行き。」

 

「ありがとう。」

 

俺は、枯罰の研究室から資料を拝借した。

すると、資料を持ち出している時にある資料が目に留まる。

 

「…え?」

 

その資料には、孤児院を装った人身売買業者の悪行と近辺で起こっている連続殺人について書かれていた。

 

「何だこれ…?」

 

「ああ、8年前の事件か。表向きは孤児院をやってて子供を売り捌くっちゅう下っ衆い商売やっとる業者があってな。同時に、その孤児院の近くでは度々連続殺人が続いとんねん。業者は未だに摘発されず、連続殺人の犯人もまだ捕まってへん。」

 

「未解決事件って事か…」

 

「で、さらに気味悪いんが、その犯人は実は誰だか目星がついとんねん。」

 

「…え?」

 

「犯人は、当時10歳前後のガキや言われとる。まだガキやとは思えへん狡猾で残虐な手口で犯行が行われていた事から、この事件は闇に葬り去られたんや。この研究室には、そういう記事が表に出る事すら無い凶悪事件の資料が揃っとる。」

 

「…。」

 

俺は、この事件の資料も持ち出す事にした。

よくわからないけど、何だかこの事件は俺と無関係じゃない気がする。

 

「…ふぅ。これで全部かな。」

 

俺は、黒瀬に頼まれていた資料を全てカートに詰めた。

…そういや、俺って枯罰の事を何も知らないんだよな。

 

「なあ、枯罰。」

 

「何や。」

 

「…せっかくだし、少し話でもしないか?」

 

「別にええけど…何でまた?」

 

「いや、そういやお前の事何も知らなかったなって思ってさ。」

 

「…せやな。お前らには、ウチの事話してへんかったしな。…ええで。この際やし、話したるわ。」

 

枯罰は、どうやら話をしてくれる気になったようだ。

…そういや、コイツカラオケでアイドルの歌とかアニソンばっか歌ってたけど、そういうの好きなのかな?

俺は、さっき手に入れたCDを渡してみる事にした。

 

「なあ。」

 

「せやから何や。」

 

「…これ、いるか?」

 

「!」

 

俺がCDを渡すと、枯罰は食いついてきた。

 

「おま…これ、どこで手に入れたん!?」

 

「え、普通にガチャ引いたら出てきたんだけど…」

 

「お前…これ、さやかちゃんの新曲の限定版CDやないか!!ウチ、仕事が忙しくて買えへんかったんやぞ!!」

 

「さ、さやかちゃ…?」

 

マジか。

ここまでアイドル好きだったのか。

いつもクールなイメージな枯罰からは考えられない一面だな。

 

「まあ…お前がそこまで気に入ってくれたんならよかったよ。」

 

「いやー、まさかこないなとこで手に入るとはなぁ。ホンマおおきに。せや、何か礼したるけど何がええ?」

 

「え?いや、いいよ。別に見返りが欲しくてプレゼントしたわけじゃないし。」

 

「そうは言うてもなぁ。」

 

「せっかく研究室来たんだし、話をしよう話を。…あ、枯罰。あれは何だ?」

 

俺は、変わったデザインのナイフを指差した。

研究室にあるという事は、枯罰の所持品だった事はまず間違い無いだろう。

イニシャルも書かれてるしな。

 

「ああ、それはウチの仕事の相棒や。」

 

「相棒?」

 

「ああ。それはウチの恩人にもろたんや。ウチは、仕事の時はいつもそれ使っとる。なんでここにあるんかはわからへんけどな。」

 

「へぇ…恩人にねぇ。どんな人なんだ?」

 

「…少し、昔話しよか。」

 

そう言って、枯罰は俺を座らせた。

枯罰がようやく自分の素性を話してくれる気になったみたいなので、俺は心して聞く。

 

「ウチはな、捨て子やったんや。まだ赤ん坊やったウチを、師匠が拾って育ててくれた。師匠は軍人をやっとったさかい、生き延びるために格闘技やら処世術やらをウチに叩き込んだ。ウチにとって師匠は、ウチに生きる術を教えてくれた恩人で親代わりやった。ウチの喋り方も師匠譲りや。」

 

「なるほどな、それで育ての親に憧れて傭兵に…」

 

「…いや、その時はまだ傭兵になるなんて夢にも思てへんかった。軍人に育てられた言うても、対人戦闘の技術を仕込まれた事以外は普通の子供として育てられとったからなぁ。」

 

「何かきっかけがあったのか?」

 

「ああ。師匠はある陸軍に所属しとる軍人やったんやけどな、後で分かった事やけど、師匠の直属の上司がウチの親父やったんや。」

 

「じゃあ…」

 

「ああ。ウチが実の子やと気付いた親父は、なんとしてでもウチを軍人に育て上げたかったらしくてのぉ。師匠がとある戦争で殉職してからは、ウチは親父の軍隊に入隊させられたんや。ウチは軍に入隊させられてからは男として扱われて、感情を表に出さない訓練を受けさせられて、ひたすら殺しを教え込まれた。お陰で、入隊してから半年もせずに人を殺しても何とも思わへん殺戮マシーンになってもうたわ。」

 

「…。」

 

…そっか。

枯罰は自分で軍人になったんじゃなくて、親の都合で殺しを教え込まれてたのか。

あれ?

親が軍人って、どっかで聞いた話だが…

 

「なあ。枯罰。一つ聞いていいか?」

 

「何や?」

 

「お前の実の親父の名前って…」

 

「…『勅使河原雷人』。ウチの本名は、枯罰環とちゃう。勅使河原(テシガワラ)(イタル)。それがウチの本名や。…まあ、あないなクソ野郎のつけた名前を名乗る気なんぞさらさらあらへんし、ウチの父親は師匠だけやから、ウチは師匠がつけてくれた名前を名乗っとんねん。」

 

「…。」

 

「っちゅうわけで、ウチの呼び方は変えんでええぞ。っちゅうか間違うても変えんなや。ウチ、自分の本名嫌いやし。」

 

なるほどな、だから枯罰の名前でいくら調べても何の情報も出てこなかったのか。

そりゃあそうだ。

そもそも本名じゃないからな。

…でも、何で自分の本名を嫌うほど親を毛嫌いしてるんだ?

 

「なあ、枯罰。お前は何でそんなに父親を嫌ってるんだ?もしかして、お前が軍を抜けてフリーの傭兵を始めた事と関係あるのか?」

 

俺が聞くと、枯罰は殺気に満ちた表情を浮かべた。

 

「…あのクソ野郎は、師匠の仇や。アイツがウチの師匠を殺しよった。」

 

「えっ…?でも、お前の師匠は戦争で殉職したんじゃ…」

 

「表向きはな。師匠は、あのクソ野郎に戦死に見せかけて撃ち殺された。」

 

「なっ…!?何で…」

 

「何でそないな事したかやと?…簡単な話や。あのゴミ野郎は、自分の血を引いていてかつ優秀で従順な駒が欲しかったんや。せやけど、アイツは既に病気で子供こさえられへん身体になっとった。そこで女やからって理由で捨てたウチがおったのを思い出して血眼で探しよった。せやけどようやくウチを見つけ出して引き取ろうとした時、師匠がウチを引き取って育てとった。ウチを忠犬に育てるのに師匠を邪魔やと判断したクソは、戦死を装って師匠を撃ち殺し行くあてが無くなったウチを自分の軍に入隊させたっちゅうわけや。」

 

「…ひでぇ話だな。その後はどうなったんだ?」

 

「そこからはクソの思い通りや。ウチはその事に気付かず殺戮マシーンに育てられて、戦場で人をバンバン殺した。あの頃は、『これで師匠みたいなかっこいい軍人になれる』って誇らしかった事もあったなぁ。今思えば、そないな事考えながら人殺しとった自分をどつき回したいけどな。ウチが戦場で活躍するに連れてクソも『天才少年兵を育て上げたカリスマ将軍』って持て囃されるようになって、アイツは私腹を肥やし放題やった。」

 

「…過去形?」

 

「ああ。アイツはもう、この世にはおらへん。」

 

「えっ…?」

 

「ウチは、どうしても師匠の最期が知りたくて一度師匠の経歴や最期を調べ上げた事があんねん。その時、気付いてもうた。クソが新兵時代に敵を撃ち殺した手口と、師匠の死に方がえらい似とったんや。銃殺に使われた銃の種類も全く同じで、現場に残っとった証拠品にもアイツの犯行と思わせるものはいくつかあった。ウチは、今までのクソの態度から確信した。師匠を殺したんはこの男やとな。」

 

「まさか…」

 

「…そこからは早かった。ウチは復讐のためにあのクソを、アイツが師匠を撃ち殺した銃で射殺したった。その後は自身の死を偽装して軍を抜けた。ウチは一人で生きていくために色んな職を探したんやけど、人殺しがバレるんが…何より、あのクソの娘やとバレるんが怖くて表社会では生きて行けへんかった。でもそないな時、どこからかウチの情報を手に入れた資産家の男が、ウチに殺しを依頼して来よったんや、ソイツは、殺し屋として働き完璧な仕事をこなす事を条件に過去を不問とし仕事に見合った報酬をやると言ってきよった。…アイツも、結局はウチの武力が欲しかったんやろな。せやけど、あのクソに比べれば百倍マシやった。ウチは、闇の仕事をして生き延びる事に決めた。これが、ウチが【超高校級の傭兵】になった理由や。」

 

「…。」

 

俺は、言葉が出なかった。

枯罰に何て言葉をかけてやればいいのかわからなかった。

枯罰が抱えていた過去は、俺の想像をはるかに超えて重かった。

まさか自分の実の父親が育ての父親を殺し、その復讐のために親殺しをしていただなんて。

…枯罰は、自分を含めて人を殺す人間を許せないと言っていた。

そんな過去を抱えているのなら無理はない。

けど、俺は枯罰を最低の人殺しだとは思わない。

コイツも、親の都合で振り回された挙句大切な恩人を殺された被害者なんだ。

それ以上に、枯罰はもう俺達の仲間だ。

俺は、コイツにどんな過去があろうと信じると決めた。

俺は、意を決して口を開く。

 

「…枯罰。話してくれてありがとな。それと悪かった、話したくない事まで話させちまって。」

 

「別にええよ。ウチが勝手に話しただけや。」

 

「…あのさ。ひとついいか?」

 

「何や?」

 

「別に答えたくなかったら答えなくていい。師匠が親に殺されたと知った時、お前はどんな気持ちだったんだ?」

 

「…許せへんかった。アイツだけは絶対にウチの手で殺したろ思て、気がついたらあのクソを撃ち殺しとった。」

 

「お前は、何が許せなかったんだ?師匠を撃ち殺された事か?その仇に、何も知らされずに利用され続けてた事か?」

 

「…。」

 

「…お前が一番許せなかったのは、師匠を救えなかった事じゃないのか?」

 

「…!」

 

「俺は殺人やオシオキで仲間がどんどん死んでいった時、モノクマを許せなかった。でも一番許せなかったのは、クラスメイトのアイツらを助けてやれなかった俺自身だったんだ。お前の話を聞いててわかったよ。お前は、今でも救いたかった命を救えなかった自分自身を許せないんじゃないのか?」

 

「…。」

 

「俺はこれ以上仲間が死ぬのは嫌だし、お前がこれ以上自分を責めるのも嫌だ。だから、俺は今度こそみんなで一緒に外に出たい。…頼む。力を貸してくれ。」

 

俺が頭を下げて頼み込むと、枯罰はため息をついた。

 

「…何言うとんねん。今更やろ。」

 

「え…?」

 

「ウチは初めから、何がなんでも生き残ってクマ公をどつく事だけを考えて今まで生き延びてきた。ウチとしてもクマ公の思い通りになるんは嫌やし、コロシアイを食い止める事でアイツの阿呆面拝めるんなら喜んでやるつもりやったぞ。ウチは、引き続き自分のやり方でアイツを追い詰める方法を考える。お前は、ただいつも通り生意気なチビでおればええねん。」

 

「枯罰…」

 

すると枯罰は、少し俯いてボソッと呟いた。

その顔は、少し微笑んでいるようにも見えた。

 

「…ここまで本音曝け出せたんは、師匠とお前くらいやな。」

 

「え?」

 

「…何もあらへん。」

 

枯罰は、ふいと横を向いた。

だが、耳はほんのり赤くなっていて照れているのが目に見えていた。

 

「お前、もしかして照れてんの?」

 

「ちゃうわボケ!どつくぞコラ!!」

 

おーおー、ムキになってるなってる。

もう、素直じゃないんだから。

 

「お前、そもそも資料取りに来たんやろ!?用が済んだなら早う出てけや!」

 

「はいはい。」

 

俺は、流されるように研究室を後にしようとした。

するとふと、ある事を思い出した。

 

「…なあ。」

 

「何や?」

 

「…【超高校級の絶望】って何だ?」

 

俺が尋ねると、明らかに枯罰の態度が変わった。

どうやら、言おうかどうしようかで迷っているようだ。

すると枯罰は、覚悟を決めたような顔で口を開いた。

 

「………簡単に言うと、世界規模のテロを企んどる連中、っちゅうとこか?」

 

「…え?」

 

「ウチも詳しい事は知らへんけどな。【超高校級の絶望】と呼ばれる奴が水面下で世界規模のテロを企んどんねん。【超高校級の絶望】については、顔も名前もわかってへん。けどひとつ言える事は、世界中に絶望を振り撒く害悪やっちゅうこっちゃ。」

 

「な…!?じゃあ、お前がモノクマを【超高校級の絶望】って言ったのは…!?」

 

「そう疑っとるっちゅうだけや。ウチらのコロシアイの生中継は、テロの前振りやと考えれば説明がつく。さしずめ、希望の象徴である超高校級達が殺し合う所を生中継すれば絶望を伝染させられると考えた…そんなとこちゃうやろか?」

 

「…。」

 

【超高校級の絶望】…

だとすれば、俺達はただ絶望を感染させるためだけにコロシアイをさせられてるって事かよ…!?

…あれ?

でも待てよ?

 

「ちょっと待て、でもその話はおかしくないか?」

 

「何がや?」

 

「…俺達は【超高校級の絶望】なんて知らなかったし、そんな才能を持つ生徒が入学していたって記録はどこにもない。なのにお前は、何で【超高校級の絶望】を知ってたんだ?」

 

俺が尋ねると、枯罰は少し驚いたような顔をした。

 

「…そういえば。ウチは、何でこの事を知ってたんやろか?」

 

「………は?」

 

「ウチは、何故か【超高校級の絶望】を知っとんねん。【超高校級の絶望】がウチにとって何か重要な存在やっちゅう事も自覚しとる。せやけど何で知ってるのか、ウチは【超高校級の絶望】と何の関係があるのかがわからへんねん。それを思い出そうとすると、頭に靄がかかるっちゅうか…」

 

枯罰は、頭を抱えて悩み出した。

…頭に靄がかかったような感覚?

 

…!

ちょっと待て、俺はコイツと同じような感覚に陥った事があるぞ!?

俺は、黒瀬が起こしていたかもしれない殺人事件の事を思い出そうとしたけどうまく思い出せなかったんだ。

…もしかして、枯罰も俺と同じように記憶障害を起こしてるんじゃないのか?

 

「…なるほどな。頭の隅に置いておくよ。」

 

「疑わへんのか?側から聞いたら完全に妄言やぞ?」

 

「俺は、お前が嘘や妄言を言う奴だとは思っちゃいないさ。…実は俺も、どうしても思い出さなきゃいけない事があるのに思い出せないんだ。」

 

「…さよか。」

 

「だから、妄言だなんて思う事はないぞ。それと、無理に思い出そうとするとかえって思い出せない事もあるからな。ゆっくり思い出していけばいいんじゃないのか?」

 

「……せやな。」

 

俺は、枯罰と少し話をしてから資料を持ち出していった。

少しは、枯罰との絆が深まった気がする。

何というか…いざって時には色々と助けてくれたし、コイツだけはどんな状況でも信頼できるっていうか、何か相棒みたいな感じがするんだよな。

…まあ、向こうはそんな事思っちゃいないだろうけどさ。

 

《枯罰環との親密度が上がった!》

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

俺は、頼まれていた資料を黒瀬に渡した。

 

「はい、全部持ってきたぞ。」

 

「わーいありがと円くん!」

 

黒瀬は、きゃっきゃとはしゃいで資料を回収した。

 

「…でも、随分と遅かったね?資料取りに行くだけでこんなに時間かからないでしょ?」

 

「ああ、実は枯罰と話してたら思いの外盛り上がっちまってな。」

 

「むぅっ、円くんのバカー!そんなに環ちゃんとばっかり仲良くしてたらボク妬いちゃうよ。」

 

「勝手に妬いてろ。」

 

「ひどいよぉ!ふーんだ、だったら夕ご飯までの時間はボクが円くんを独占しちゃうもんねー!」

 

頼む、マジでやめてくれ。

俺はオモチャじゃないんだぞ。

 

そんな俺の願いは黒瀬に届かず、俺は夕飯の時間まで黒瀬に振り回された。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

「…。」

 

俺は、黒瀬に振り回されて完全にげっそりした状態で食堂に入っていった。

というのも、黒瀬は小柄な体格からは考えられない怪力で文字通り俺を振り回したので、俺にはもうほとんど体力が残っていなかったのだ。

 

「赤刎さん…大丈夫ですの?」

 

「…うん。」

 

嘘です。

全然大丈夫じゃありません。

この猫耳ゴリラ…

可愛い顔して俺を散々振り回しやがって。

 

 

 

「お前ら何しとんねん。飯出来たさかい、早う机の上片せや。」

 

「!!?」

 

俺は、食事を運んできた枯罰の姿を見て思わず目を丸くした。

食堂に集まっていた弦野以外の他の4人も同じ様子だった。

枯罰は、普段の男子用の制服ではなく女子用の制服を着ており、胸元には普段の青いネクタイの代わりに青いリボンを付けていた。

よく見ると、髪型も男子と見紛うようなヘアスタイルから少し女の子らしいショートヘアに変わっていた。

 

「…何や?やっぱ似合うてへんか?コレ。」

 

「いや、似合ってるよ?似合ってるけど…どうしたんだ、それ?」

 

「別に。気分で服変えたらあかんのんか?」

 

普段なら少し腹の立つ返しだが、今は何故か怒る気にはなれなかった。

…っていうかコイツ、可愛くないか!?

元から美形だとは思ってたけど、ちゃんと女子らしくしたらここまで可愛いとはな…

 

「俺が提案してみたんだよ。たまには格好変えたらどうだってな。」

 

「え、弦野君が?」

 

「ああ。ちなみにコイツのヘアセットしたのは俺な。素材の良さを生かしつつ普段とは違った髪型にしてみたんだ。なかなかイカしてるだろ?」

 

「確かに…とても似合っていらっしゃいますわね。」

 

「さ、さよか?」

 

「ふふん、だろ?俺、ヴァイオリニストに戻るのやめて美容師になろっかな。絶対才能はあると思うんだよな。」

 

おいおい、弦野よ。

筆染のためにヴァイオリンを続けるんじゃなかったのかよ。

 

「ふにゃー、環ちゃんかわいー。似合ってるよー。」

 

「お前に言われたところで嬉しないわド阿呆。」

 

「ぴえん」

 

いやぁ、しかし…

本当に似合ってるな。

こうして見ると、枯罰って仕田原にも劣らないくらい美人だったんだな。

何か、こんな美人と今まで相棒気分でいたかと思うと急に恥ずかしくなってきたんだが!?

 

「しかし…枯罰さんは本当にお綺麗ですわよね。」

 

「確かに…何か外国のモデルみたい…」

 

「さよか?まあ一応、東欧系の血混じっとるしな。」

 

マジかよ。

確かにちょっと外国人っぽい顔かなとは思ってはいたが…

道理で背が高くて美形なわけだ。

 

「ほな飯にしよか。」

 

「…。」

 

枯罰は、自然な流れで俺の左隣に座った。

いや、当然のように横に座られても困るんだが!?

 

「どないしたん?お前。」

 

「…。」

 

どないしたん、じゃねぇよ!

こんな美少女が隣にいたら反応に困るわ!!

…まあ、今まで普通に接してきてこっちは一方的に相棒だと思ってたのに今更態度変えるのもおかしな話なんだけどさ。

 

「ぷぅ…環ちゃんばっかりズルいよー。ボクの円くん取っちゃダメだからねー?」

 

「誰も取らんわこないなドチビ。」

 

おい。

今しれっと貶したろ。

 

「じゃあボクは円くんの右ー。」

 

「…。」

 

何だこの変なサンドは。

美女とサイコパスに挟まれるシチュエーションなんて人生で一度も味わった事ねぇよ!!

 

「くっ…羨ましい…!!」

 

一は、羨むような目で俺を見ていた。

…そっか。聞谷の両隣は安生と弦野だから、一だけ女子の隣じゃないのか。

 

「何や、そういう事ならウチの隣に来ればええだけの話やろ。」

 

「ぱぇっ!!?え、あ…その…いや、それは…」

 

枯罰が左隣の空席を軽く叩くと、一は顔を赤くして口をパクパクさせた。

…コイツ、仕田原に一目惚れしてたからそうだとは思ったけど、美女にめっぽう弱いタイプなんだな。

結局一は席を移動せず、そのまま安生の隣に座った。

 

「何だよ根性無し。」

 

「う、うるさいなぁ…!」

 

弦野、あんまりいじってやるな。

俺も正直、この姿の枯罰の隣だとメチャクチャ気まずいから。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

結局、食事の間はずっと落ち着かなかった。

そのせいで、二人には悪いが何を食べたのかハッキリ覚えていない。

夕食の後は再び自由時間となったので、俺は温泉に入って散歩をした後、自分の部屋に戻っていった。

こうして、楽園生活の21日目が幕を閉じたのだった。

 

 

 

 

 


 

 

 

ー生存者ー

 

【超高校級の講師】赤刎円

 

【超高校級のカウンセラー】安生心

 

【超高校級の香道家】聞谷香織

 

【超高校級の脚本家】黒瀬ましろ

 

【超高校級の傭兵】枯罰環

 

【超高校級のヴァイオリニスト】弦野律

 

【超高校級のソフトウェア開発者】一千歳

 

ー以上7名ー

 

 




今回はこばっちゃん回です。
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