エデンズダンガンロンパ 希望の生徒と絶望の楽園 作:M.T.
楽園生活23日目。
『おはようございます、オマエラ!!朝です!!7時になりました!!今日も元気に殺し合いましょう!!』
今日もまた、モノクマの耳障りなモーニングコールで起こされた。
俺は、朝の準備を済ませて8時に間に合うように食堂に向かった。
◇◇◇
食堂には既に安生と聞谷が来ていた。
うっ、この二人か…
「お…おはよう、二人とも。」
「おはよう、赤刎君。」
「ごきげんよう。」
俺が挨拶をすると、二人は挨拶を返してくれた。
二人とは昨日ものすごく怒られて正直会うのもビクビクしてたけど、反省しているのが伝わったのか意外と反応は優しかった。
すると、集合時間1分前に一が来た。
時間ちょうどに、枯罰と弦野が作った朝食を運んでくれた。
するとさらに遅れて黒瀬が来た。
…今更だけど、コイツマジで反省しねぇな。
「それじゃー食べましょー。」
いや、だからお前が仕切んなって。
…まあでも、このままだと冷めちまうし…とりあえず食うか。
俺達は、用意された朝食を摂った。
「今日も美味しかったですわ。ありがとうございます、枯罰さん、弦野さん。」
「ええよ別に。今更やし。」
「ボ、ボクも見習わないとなぁ…」
「あ、そういえば急に思い出したんだけど…一君、情報管理室の解析は進んだ?」
「あ、えっと…もう終わったよ。昨日徹夜で終わらせた。」
「は!?今、さらっととんでもない事言わなかったか!?」
「ボ、ボク、こういう事しか特技が無いから…はは…あ、あとでみんなで確認しに行こっか…」
「…。」
何だか、初めはどうなるかと思ってたけど、だんだんとみんながまとまっていい雰囲気になってきた気がする。
安生はみんなのまとめ役みたいになってるし、聞谷も最初はこういう環境に馴染めなかったって言ってたけど今はみんなと積極的に交流したりしてるし、枯罰も最初はよくわからない不思議な奴だと思ってたけど話してみれば案外普通の女子高生っぽい一面があるってわかったし、弦野も最初はみんなと壁を作って単独行動を取ってたけど今ではむしろ面倒見のいい兄貴分って感じだし、一も最初はビビりまくって会話をする事すら困難だったけど少しずつ心を開いてくれるようになったし、黒瀬も…まあ何だかんだでみんなとの生活を楽しんでるみたいだし、みんなここに来てから何というか…人間らしくなったような気がする。
この関係がずっと続けばいいんだけどな…
『うぷぷぷぷぷ!!そうは問屋が卸さないよ!!』
突然、例のイロモノが邪魔をしてきた。
モノクマはどこからとなく現れ、食堂のテーブルの上に飛び乗った。
『とうっ!!』
「チッ、またウゼェのが現れたぜ。」
「食後に汚物見せんなや。」
『ちょっと何ですかその態度は!!あ、わかった!!さては二人ともツンデレなんでしょ?そうなんでしょ!?』
「やかましいわお前。で、何しに来たん?」
『オマエラさぁ…何か忘れてる事があるとは思わない?』
「わ、忘れてる事…?」
『オマエラ、コロシアイはどうしたのさコロシアイは!!何かいい雰囲気っぽくなってるみたいだけどね、こっちはオマエラがコロシアイをしないせいで視聴率が下がってピンチなんだよ!』
「知るかそんなの。」
『というわけで、そろそろ誰か死ねよっていう無言の圧力がすごいのでそろそろオマエラにはコロシアイをしてもらおうと思います!』
「無駄だ。俺達は殺し合いなんてしない。」
『そんな事言って、4回も事件起こってるよねぇ?あ、3回目の裁判の時は二つ事件が起こってたわけだから正確には5回か。』
「くっ………そ、それでも俺はみんなを…仲間を信じる!!」
『仲間…ねぇ。そう思ってるのは、赤刎クンだけなんじゃないの?』
「何だと…!?」
『うぷぷぷ…オマエラ7人の中にイレギュラーがいるって言ったら、どうする?』
「イレギュラーだと…!?内通者の正体は暴いたってのに、まだいるのかよ!?」
「っていうか、この状況でイレギュラーって言ったら黒瀬さんが怪しいんじゃ…」
「ぴえん」
マズい…
せっかくさっきまでみんなの団結力が強まってたってのに、モノクマが余計な事を言ったせいで疑心暗鬼に陥ってしまった。
実際黒瀬っていう不穏因子がいるわけだし、モノクマが俺達に嘘を言ったことは無い。
もし、俺達の中にイレギュラーがいるとしたら…?
『うぷぷ!ほーらね、オマエラの絆なんて所詮爪でちょっと引っ掻いちゃえば破れる0.01mmなの!断言するよ。今回も必ずコロシアイは起こるよ!』
「何だと…!?」
「どういう事!?ちゃんと説明してよ!!」
『それは、これから見せるあるものが関係してるんだよねー。』
「あるもの…まさか、動機か?」
『ピンポンピンポーン!大正解ー!!なっかなかコロシアイをしないオマエラのために、今回も特別に動機を用意してあげたよ!それがこちら!』
モノクマは、どこからか某猫型ロボットアニメに出てくるようなライトを取り出した。
『テッテレー!お〜も〜い〜だ〜し〜ラ〜イ〜ト〜!!』
「デザインから取り出す時のエフェクトまで全部丸パクリじゃねぇか。」
「ホンマやなぁ。やってて恥ずかしくないんか?」
うわあ…
相変わらず弦野と枯罰は毒舌だなぁ。
「クマちゃん、中の人が同じだからって演出をパクるのは良くないよー。」
「いきなりメタ発言するのやめなよぉ…」
「中の人?何ですのそれは。」
「…うん、とりあえずみんなこれ以上話をややこしくするのはやめようか。」
安生に激しく同感。
黒瀬、お前はとりあえず中の人とかそういうとこツッコむのやめろ。
一も聞谷も引いてんじゃねぇか。
「…それで、その思い出しライトとやらは一体何なのかな?それを使って僕達をどうするつもりなんだい?」
『うぷぷぷぷ、実はね。ボクは、オマエラの記憶を一部だけ抜き取ってるんだよ!』
「な…記憶を抜き取る!?そんなの、今の科学技術でできるわけ…」
『できるんだよなー、これが!だってボクはオマエラのためにこのセカイを創造した神なんだよ?オマエラの記憶を抜き取るのなんて朝飯前なの!』
「まさか…抜き取った記憶を無理矢理思い出させるって事?何でそんな事を…」
『何でって、そんなのコロシアイをしてほしいからに決まってるじゃないかワトソン君!このライトの光を浴びせると、ボクが抜き取っていたオマエラの記憶が瞬時に蘇るんだよ!!ただ、急に記憶が戻ると下手したら半日から一週間は意識を失っちゃうかもね!』
「一週間って…その間ボク達のお世話は誰がするんだよ!?」
『その時は一番早く起きた人がやれば?』
「もし全員何日間も目覚めなかったら?」
『もちろんその時はボクが人肌脱ぎますよ!』
「うげっ…気持ち悪…」
『ちょっとそこー!何ですかその態度は!お世話してもらえるんだからありがたく思ってよね!!』
「いや、キショいやろ。何でお前に感謝せなアカンねん。」
『ガガーン!!もういいよ、それじゃあ早速夢の世界へイリュージョンしてもらいましょう!』
そう言って、モノクマはライトのスイッチを入れた。
そして、光を俺達7人に当てる。
「うわっ!?」
「まっ、眩し…」
くっ…
な、何だこの光…!?
頭がグルグルする。
頭が裂けそうなほど痛い。
色んな情報が入り混じって入ってくる。
何だ?
これは。
違う。
ちがう。
チガウ。
こんなの、俺の記憶じゃない。
違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う
…。
…………。
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「…はっ!!」
…どこだ?
ここは…
見慣れた天井…
楽園の個室…じゃないな。
診療所でもない…
「にーちゃんおっそよー!!」
「うぉわっ!!?」
俺の上に、突然6歳くらいの子供が乗ってきた。
正直、そんなに体格変わらないから重く感じる…
「おいにーちゃんおーきーろー!!」
「うぶっ」
痛い痛い痛い!
起きてるから!!
起きてるから往復ビンタはやめろ!!
…って。
「…あれ?お前、晃…だよな?」
「…にーちゃんどしたの?なんでそんな事聞いてくるの?」
「そ、そうだよな。…そう、だよな………」
おかしい。
俺は、今まで楽園にいたはず。
…なのに、何で晃がいるんだ?
それにここ…よく見たら俺がいた孤児院じゃねぇか。
…って事は、これは夢か?
「いってて…」
つねったら痛い…
って事は、これは現実なのか?
どういう事だ?
何がどうなって…
「にーちゃん、今日は学校のみんなと遊びに行く約束してるって言ってただろー!?早く起きないと遅れるぞー!!」
約束…?
そうだ、携帯…!
…げっ、もう20件も来てる…
《おい円ー、起きてっか?》
《返事しろよおーい!》
…えっ?
湊?
何で湊のアドレスからメッセージが?
…っていうか、何で湊が俺のアドレス知ってるんだ?
《なあ。遊びに行く約束って…どこ集合だっけ?》
《はあー!?学校の最寄り駅近くの公園って話になってただろ?ほら、あの変な滑り台があるとこ!忘れてんじゃねーよ!》
《そ、そうだったな。ごめん…》
えっと…
どうなってるんだ?
孤児院のみんなは無事で、湊も生きてて、俺はみんなと遊びに行く約束をしてる…
いつも通り弟や妹、そしてシスターと一緒に朝飯を食って、学校の最寄り駅まで向かって…
俺が公園に向かうと、俺と一緒に楽園にいたはずの15人が既に待っていた。
「おー、やっと来た!」
「赤刎君おそいよー、寝坊したの?」
「オメーこそいっつも遅刻してくるだろ。」
「あたっ!」
弦野が筆染を小突いている光景を、みんなが当たり前のように見ている。
どういう事だ?
札木も、武本も、湊も、神崎も、宝条も、筆染も、仕田原も、ジョンも、速水も、みんな生きてる。
「…………赤刎くん、大丈夫?」
「あ、ああ…ちょっと浮かれすぎて昨日夜更かししちまったかな、なーんて…」
「ふんっ、ガキね。」
みんなが、当たり前のように和気藹々と話している。
その後は、みんなと色んな所に遊びに行った。
…あれ?
何だこれ、すげぇ楽しい…
…もしかして、コロシアイなんて全部夢だったんじゃないか?
本当は拉致監禁なんてされてなくて、俺達は普通に入学して楽園生活を謳歌してた。
…そうだ、そんな気がしてきた。
もうあんな悪夢は二度と見たくないな。
俺達はその後、一緒に喫茶店に行った。
うおっ、俺が注文した特大クレープ!
うまそ〜!!
いただきまー…
ドンドンッ
「?」
急に窓ガラスを叩く音が聞こえたので見てみる。
すると、窓の向こうでは安生が何かを叫びながら何度も窓を叩いていた。
「…………!!………………!!!」
んだよ、何言ってんのかわかんねぇよ。
つーか窓叩くのお店の人に迷惑だからやめろ。
…ったく、しつけぇな。
普段の安生なら絶対こんな事しないのに…
…あれ?でも、安生は反対側の席にいるし…
…じゃあ、コイツは一体誰だ?
すると、安生のそっくりさんの声が少しずつ聞こえるようになってくる。
「…か…ね君!!…きて!!…を……して!!」
…ん?
何て言ってるんだ?
「赤刎君!!起きて!!目を覚まして!!」
…!!
そうだ、俺は…
…。
…………。
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「…はっ!!」
俺は、診療所のベッドで目を覚ました。
腕には、チューブのようなものが繋がれている。
「あ、良かった…やっと起きた。」
…ああ、何だ。
こっちが現実だったのか。
…って事は、みんな本当に死んじまったんだな…
「…なあ、今何時だ?」
「6時半。夕方のね。」
「…そっか。って事は俺、半日近く寝てたんだな。」
「5日。」
「……え?」
「君、5日も眠りっぱなしだったんだよ。」
「いつ…!?」
嘘だろ!?
俺、そんなに寝てたのかよ!!
そういや、思い出しライトを浴びると半日から1週間は意識が途絶えるってモノクマが言ってたけど…
「…。」
「どうしたの?」
「ああ、いや…何か思い出したのか、とか…聞かないんだなって思って。」
「…聞けないよ。それを聞いてしまったら、何かが壊れてしまうかもしれないから…」
「…そっか。そう、だよな…」
俺は全部思い出した。
初めは拒絶した。
でも、これが俺の記憶だとすれば全ての辻褄が合う。
…俺は、自分の記憶に、過去に、これからも向き合っていけるのだろうか。
「そういや他のみんなは?」
「聞谷さん、弦野君、一君の3人はまだ寝てるよ。枯罰さんは、僕と交代制でみんなのお世話をしていたんだ。今はちょうど僕の順番だから、枯罰さんは休憩してるんじゃないかな。黒瀬さんは別行動を取ってるみたいだけど…ごめん、診療所を出て行ったきりどこで何してるのかまでは…」
「…。」
俺は、隣のベッドを見た。
すると、安生の言う通りちゃんと3人がベッドで眠っていた。
3人ともチューブが腕に繋がれている。
…そりゃ1週間も寝たきりなんだもんな、自分で食ったり飲んだりできないから点滴に頼らざるを得なかったのか。
安生の話によると、光を浴びてから数時間後に安生が目覚め、それからさらに数時間後に枯罰が、黒瀬が目を覚ましたのは俺が目を覚ます数時間前の事だったらしい。
それにしても、本当に良かった…
俺が寝てる間に誰かが死んでたりとかは…してないんだな。
「赤刎君、大丈夫?お粥あるけど…食べる?」
「あ、ああ…じゃあ貰おうかな。」
俺は、安生に貰ったレトルトのお粥を食べた。
5日も眠りっぱなしだったという事もあって、すごく美味しく感じた。
「どう?身体は回復してきた?」
「あ、ああ…」
俺は大丈夫だけど、黒瀬と枯罰は大丈夫なのかな…
ちょっと様子を見に行ってやらないと。
俺は、早速二人を探し始めた。
「どこ行くの?」
「黒瀬と枯罰を探してくる。5日も経ってたら、二人とも無事なのかとかちょっと気になってな。」
「そう…」
俺は早速二人の研究室がある第五区画へ向かった。
「!」
第五区画には、枯罰の姿があった。
「枯罰!悪い。俺今目ぇ覚めたんだけど、黒瀬がどこにいるか知らね?」
「………。」
俺は枯罰に声をかけるが、枯罰は無反応なままどこかへ行ってしまった。
…どうしたんだ?
枯罰の奴。
記憶が戻ったからちょっとぼーっとしてるのかな?
…よっぽど思い出したくない記憶だったんだろうな。
俺は枯罰を追おうかとも考えたが、黒瀬が心配なのと今の枯罰はそっとしておいた方がいいという事で引き続き黒瀬を探す事にした。
俺は、早速黒瀬の研究室に入った。
「おーい、黒瀬ー。いるかー?」
俺は、黒瀬の研究室のドアを叩いて確認した。
だが、黒瀬からの返事はなかった。
「…。」
俺は、仕方なく窓の外から様子を見る事にした。
「…。」
黒瀬は、ソファに横たわっている。
俺は、一応無事かどうかを確認するために研究室の中に入った。
…すまん、黒瀬。
後で詫びる。
俺は研究室を見渡し、状況を把握した。
酷い有様だ。
…かなり散らかってるな。
黒瀬は…脈はあるな。
眠っているだけのようだ。
「…。」
キョロキョロと研究室の中を見渡すと、少しレトロな感じの小さな暖炉がある。
…そういえば、前から少し変だとは思ってたけど、暖炉とかソファーがある割には他の研究室と比べて狭い部屋だな。
暖炉の中を覗くとまだ使えそうな薪が積まれており、暖炉の横には火かき棒が並べられていた。
「…。」
そういや暖炉なんて使った事無いな。
そんな事を考えつつ、俺は暖炉をぼんやりと見つめた。
◇◇◇
黒瀬の研究室を後にし、俺は再び診療所に戻った。
診療所に戻ると、安生が眠っている3人を世話していた。
「あ、赤刎君。おかえり。」
「ああ…」
「枯罰さんと黒瀬さんを探しに行ったんだよね?二人共見つかった?」
「…ああ。二人共無事だったよ。」
「…そう。ならよかった。」
「3人はどうだ?まだ目覚めないままなのか?」
「…うん。みんな、定期的に起こそうとはしてるんだけど全然目を覚さなくて…僕の次に目が覚めた枯罰さんにも手伝ってもらいながら僕がお世話してるから、見たところは大丈夫そうだけど…」
確かにずっと寝てる割にはみんな元気そうだけど、安生の方は少しやつれているような気がする。
…そりゃあ、3人を枯罰と交代で世話してたら無理もないか。
俺が目を覚ますまでは俺達4人をずっと世話してくれてたんだもんな。
「なあ、安生。お前、ずっと一人でコイツらを世話してて色々大変だろ?アレだったら俺が代わるよ。」
「そう?じゃあお願いしようかな。」
「おう、任せとけ。」
俺は、安生に楽をさせてやりたかった。
自分は身体が弱いのに、頑張って俺達の面倒を見てくれていたんだ。
今度は、俺が安生を助ける番だ。
「…ありがとう、赤刎君。それじゃあ、お言葉に甘えて僕は少し休んでくるね。」
そう言って、安生は診療所から出て行った。
…よし、頑張ってみんなを世話するぞ!
これでも孤児院では年長だったからな。
えーっと、まずは何をすれば…
…あれ?
俺、まずは何をすればいいんだ?
しまった。孤児院で弟妹達の世話してるから大丈夫って安請負いしちまったけど俺、看病なんてやった事ないんだった…
やべ…どうしよ…
…今からでも安生を呼ぶか?
でも、せっかく休んでこいって言ったのにやっぱり手伝えとは言えねぇしなぁ…
「何しとんねんお前。」
「枯罰…!」
気がつくと、枯罰が後ろに立っていた。
「今は安生が世話する時間のはずやのに外出歩いとったさかい、何があったのか聞いてみればお前に任せたやと?嫌な予感がして急いで来て正解やったわ。」
「う…」
枯罰は、ジト目で俺を見ながらため息をついた。
うぐぐ、痛いところを突きおる…
そうです、今まさにみんなの世話でどうしたらいいのかわかんなくなってたところです。
「コイツらの世話はウチがやるさかい、お前はウチを手伝え。ええな?」
「お、おう…」
俺は、枯罰に指示された事をやった。
枯罰は、手際良くみんなの世話をしていた。
…俺も少しはコイツを見習わないとな。
俺達3人は、交代制で眠っている3人の世話をした。
黒瀬はというと、まだ研究室で寝ている。
すると日付が変わり午前1時に差し掛かった頃、ずっとつきっきりで面倒を見ていた甲斐があってかようやく弦野が目を覚ました。
「…………うぅ。ここは…どこだ……?」
「やっと目ぇ覚めたんか。ここは診療所や。」
「診療…所?…俺、どのくらい寝てたんだ?」
「5日ちょいやな。」
「いつ…!?嘘だろ、そんなに寝てたのかよ!?…いっっ………」
弦野は、頭を押さえて痛がりだした。
「大丈夫か?」
「ああ…急に記憶が戻ったから、頭が混乱しちまってるみたいだ。…けど、これは間違いなく俺の記憶だ。」
「…そっか、やっぱりお前もあの光を見て全部思い出したんだな。」
「……みたいだな。…あれ?そういや他の奴等は?」
「聞谷と一はまだ眠ってて、安生は休憩中だ。俺達はシフトでお前らの世話をしてたからな。黒瀬の奴は、まだ研究室で呑気に寝てるよ。さっきチラッと確認してきた。」
「…そうか。」
弦野は、少し俯くとすぐに顔を上げて言った。
「…なあ、俺にも何か手伝わせてくれないか?」
「え、でも…いいのか?目が覚めたばっかりなのに…」
「目が覚めたのに、俺だけ何もしないわけにはいかないだろ。お前らは俺達の世話で色々と疲れてるだろうし、俺も手伝うよ。」
「…弦野。」
「あ?何だよ。」
「…お前、何か変わったよな。みんなを思いやれる、そんな奴になった気がする。」
「……何言ってんだよ、恥ずいだろ。」
弦野は、照れ臭そうにそっぽを向いた。
弦野も俺達を手伝ってくれる事になり、俺達は4人でまだ目を覚さない聞谷と一の世話をした。
すると、ちょうど昼頃に今度は一が目を覚ました。
一も、初めは自分の記憶に混乱してはいたが、すぐにそれを自分の記憶だと受け入れた。
「あ、あの…ボク…」
「…良かった。一も目を覚ましたんだな。」
「おい、赤刎。お前はそろそろ寝ろ。」
「え?俺はいいよ。それより、弦野。お前、まだシフト入ってから一回も休んでないだろ?」
「俺はいいんだよ。昨日までずっと寝てて体力有り余ってるからな。お前の方こそ一回休め。」
「そうだよ、赤刎君。気持ちは嬉しいけど、無理はいけないな。」
「おう、そういう事なら…」
俺は、その場で瞼を閉じて仮眠を取った。
◇◇◇
「おい、赤刎。起きろ。」
「ん………」
俺は、弦野に起こされてぼんやりとではあるが目が覚めた。
「…どうした?弦野。」
「聞谷が目を覚ました。」
それを聞いた俺は、完全に目が覚めた。
これで全員記憶が戻ったんだ。
何はともあれ、ここにいる全員が無事なら良かった。
ふと時計を見ると、時計は7時半を指していた。
…そっか。俺、仮眠を取るとか言いながら7時間以上寝てたのか。
「え、えと…わ、わたくし…は……」
俺がふと聞谷のベッドを見ると、聞谷は自分の記憶に少し混乱しつつもそれを自分の記憶だと受け入れていた。
「聞谷さん、大丈夫かい?」
「……はい。わたくし、全部思い出しましたの。…どうしてこんな大事な事を今まで忘れる事ができたのでしょうか…」
俺が聞谷の言葉に安心していると、聞谷は周りをキョロキョロと見渡して言葉を発した。
「…………あら?黒瀬さんは?」
それを聞いた一は、俺の方を見ながら答えた。
「黒瀬さんなら研究室で寝落ちちゃってるんだよね?」
「ああ。俺が見た時はそうだったけど…」
黒瀬は研究室で昼寝をしているだけ、俺は聞谷にそう伝えた。
だが、それを聞いた弦野は、かなり深刻そうな顔をしていた。
「…おい、変じゃないか?」
「え?」
「考えてもみろよ。俺が赤刎や枯罰から黒瀬が研究室で寝てるって聞いたのは夜中の1時だぞ?いくら黒瀬だからって、20時間も寝てるのはどう考えたっておかしいだろ。」
「あ…」
「俺は確かめに行くぞ。」
そう言って、弦野は黒瀬の研究室へ走っていった。
「あ、待てよ弦野!」
俺達5人も、弦野を追いかけて黒瀬の研究室へと向かった。
◇◇◇
俺達が黒瀬の研究室に辿り着くと、弦野は黒瀬の研究室の扉のドアノブを何度も捻っていた。
「クソッ、開かねぇ!!コイツ、内側から鍵閉めてやがんのか!!…おい、お前ら下がってろ。」
「ちょっ…ねぇ君、何する気!?まさか…」
「弦野さん、いけませんわそんな…!ここは穏便にいきましょう、ね!?」
「うるせぇ!!人の命が掛かってるかもしれねぇんだぞ!!…オラァ!!!」
弦野は、無理矢理ドアを蹴破って中へ入った。
「ひっ…!け、蹴ってドアを…」
「おいクソ女!!生きてんなら返事しやがれ!!聞いてんのかコラ!!」
弦野は、大声で叫びながら黒瀬を探す。
そして、ふとソファーの上にあったものが弦野の目に留まった。
弦野は目を見開き、先程までの態度とは打って変わって静かに
「…弦野君?どうし…」
「見るな!!!」
弦野は見るなと叫んだ。
だが、俺は嫌でもそれが目に留まってしまった。
ソファーの下に転がる、齧られた白と黒のリンゴ。
その近くにだらんと力なく垂れ下がった左手。
まるで、本当にただそこで眠っているかのように。
ソイツは口と肩から血を流し、安らかな表情を浮かべていた。
ソイツは、この前まで俺のクラスメイトだった。
色々あったけど、それでも俺はコイツに死んでほしいとは思えなかった。
…なのに、何でお前まで…
【超高校級の脚本家】黒瀬ましろは、そこで死んでいた。
ー生存者ー
【超高校級の講師】赤刎円
【超高校級のカウンセラー】安生心
【超高校級の香道家】聞谷香織
【超高校級の傭兵】枯罰環
【超高校級のヴァイオリニスト】弦野律
【超高校級のソフトウェア開発者】一千歳
ー以上6名ー
ついに5章で死人が出たぜヒィーハァー!!(深夜テンション)