エデンズダンガンロンパ 希望の生徒と絶望の楽園 作:M.T.
ピーンポーンパーンポーン
『死体が発見されました!住民の皆さんは、至急【超高校級の脚本家】の研究室にお集まり下さい!』
放送が鳴り響いたのは、俺達が黒瀬の亡骸を目の当たりにした直後だった。
「………嘘だろ?黒瀬……」
「いやぁああああああっ!!!」
「帰る帰る帰る帰る帰る…」
「そんな、黒瀬さん…」
「…。」
「クソッ…」
俺は、呆然と立ち尽くしていた。
黒瀬は、まるでお伽噺の白雪姫のように、ソファーの上で動かなくなっていた。
いくら今まで散々みんなに迷惑をかけた奴とはいえ、死んでしまうのは耐えられなかった。
聞谷と一は混乱し、安生と弦野は黒瀬の死を悔やんでいた。
枯罰は、俯いており表情で何を考えているのか察する事はできなかった。
『うぷぷぷぷ!ついに5回目の殺人が起きちゃいましたね!いやー、まさかあれだけ余裕ぶっこいてた黒瀬サンが被害者になるとはね。コロシアイを舐めて好き勝手やってたからこんな事になるんだよ!』
「モノクマ…!」
『というわけで今回もファイル配るから、捜査頑張ってねー。』
モノクマは、ファイルを送信するとそそくさと消えていった。
「…よし、ファイル貰ったし捜査を始めるとするか。」
「ほんならウチが……」
「…いや、枯罰さんは今回の事で気が動転してるんでしょ?ここは僕が検視をやるよ。」
「は?何言うてんねん。お前、血ィ無理やったやろ?」
「…命がかかってるんだ。そんな甘い事言ってる場合じゃない。」
そう言って黒瀬の死体に近づく安生だったが、手が震えて青ざめた顔には冷や汗が浮かんでいた。
それを見た俺は、ここで俺が動くしかないと思った。
「俺も手伝うよ。」
「…じゃあ俺もやる。」
「ありがとう。赤刎君、弦野君。」
俺と弦野が見張りを引き受けると、安生は青ざめた顔が少し戻った。
「聞谷と枯罰と一は各自探索を進めてくれ。」
「わかりましたわ。」
検視は俺と安生と弦野が、捜査を聞谷と枯罰と一が担当する事になった。
何としてでも黒瀬の死の真相を解き明かさねぇと。
みんなが生き残るには、それしか方法が無いんだ。
ーーー
《捜査開始!》
まずはモノクマファイルを確認しておこう。
モノクマファイル⑥
被害者は【超高校級の脚本家】黒瀬ましろ。
死亡時刻は午後7時15分。
死体発見場所は【超高校級の脚本家】の研究室。
死因は中毒死。
喀血が見られ、右肩に切傷がある。
中毒死か…
肩からの出血量は少ないし、これが死因だとは思えない。
死因は毒殺で間違いないだろう。
コトダマゲット!
【モノクマファイル⑥】
次は黒瀬の死体を調べるとするか。
「っ…!?」
何だこの鼻を刺すような変な匂いは!?
黒瀬の死体からだな。
何か香辛料みたいな匂いがするけど…
これは一体何の匂いなんだ?
コトダマゲット!
【香辛料の匂い】
「…。」
黒瀬の頬に触れると、氷のように冷たかった。
この間まで俺に懐いてきたコイツがもうこの世にはいないと思うと、何とも言えない気分になった。
すると、同じように死体を調べていた安生が怪訝そうな表情を浮かべていた。
「…おかしい。」
「え?」
「死体が冷たすぎるんだ。死亡推定時刻は19時15分。で、今は19時40分。死後30分もしない間にここまで急激に体温が下がるとは考えられないな。これは、少なくとも死後1日以上は経ってる死体だよ。」
「…。」
死後1日以上か…
コトダマゲット!
【安生の検視結果】
「さて、もう少し詳しく見ていこうか。」
「ああ。」
俺は、黒瀬の死体を観察した。
見ると、黒瀬は口から血を流していた。
「あれ?これは…」
「…これは、喀血っていって肺から出血してるんだ。おそらく、黒瀬さんを殺した毒によるものだろうね。」
「なるほどな…」
コトダマゲット!
【喀血】
俺は、黒瀬の右肩の切り傷を観察した。
傷口は綺麗に切り裂かれていて、鋭利な刃物で切りつけられたとしか考えられない。
自分で切りつけたんじゃこうはならないし、余程扱い慣れた刃物で切られたと考えるのが妥当だろう。
だが、出血量を見る限りこれが直接の死因になったとはまず考えにくい。
そもそも、ファイルには死因は中毒死って書いてあるしな。
…じゃあ、この切り傷は一体…?
コトダマゲット!
【肩の切り傷】
俺が肩の切り傷を観察していると、弦野が覗き込んできた。
「…あれ?これ、何だろうな。」
「ん?」
よく見ると、切られたパーカーには血に混じって黒いシミのようなものが滲んでいた。
「二人とも、どうしたの?」
「ああ、いや…血に混じって黒いシミが付いててさ。安生はこれが何かわかるか?」
「うーん…」
安生は、黒瀬の肩を観察して少し考え込んだ。
何かわかったのかと思って尋ねてみると、意外な答えが返ってきた。
「…これは多分毒だね。」
「毒?」
「うん。それもかなり強力で、少量でも死に至る毒だよ。」
「何でそんな事わかるんだよ?」
「いや…状況的にそうとしか考えられないなって。それに見てよ。黒瀬さんの肩の傷口にも、よく見たら黒い液体が染み込んでるんだ。それで、黒い液体が付着してる部分だけが炎症を起こしてるでしょ?多分、切りつけられた時に毒が混入したんじゃないかな。」
「…。」
切りつけられた時に毒が混入した、か…
じゃあそれが直接の死因なのか?
でも、そうだとしても何かが引っかかる…
コトダマゲット!
【黒い液体】
「…あ。」
ソファーの近くの床には、齧られたリンゴが落ちている。
モノクマのように白と黒に分かれた気味の悪いリンゴは、白い部分だけ齧られていた。
…あれ?
リンゴの齧られた部分に少しだけ血が付いてるな。
コトダマゲット!
【齧られたリンゴ】
「…おい、モノクマ。」
『はい何でしょ?』
「このリンゴの毒について詳しく教えて欲しいんだが。」
『えー、やだなぁ。何で教えなきゃならないのさー。』
「いや、こんな得体の知れない物体が絡んでる事件をどう推理しろっていうんだ。俺達の常識にない事柄は事前に教えておかなきゃ公平性を保ててるとは言えないだろ?」
『ぐぬぬ、そう言われると返す言葉が無いですね。そのモノリンゴは、モノトキシンαとモノトキシンβという二種類の毒が含まれています。白い方はモノトキシンαが、黒い方はモノトキシンβが含まれてるんだけど、この二種類の毒はお互いに中和作用を示すから毒が回る前にもう片方の毒を摂取すれば解毒できるんだよ。』
「へぇ。」
コトダマゲット!
【モノトキシンα】
コトダマゲット!
【モノトキシンβ】
『それと、解毒の時は1時間くらい強い睡眠作用が伴うんだよね。どれくらい強いかっていうと、寝てる間にゴソゴソチョメチョメしても全く起きないくらい強いんだよ!』
「ああ、そういうのいいから。もう行っていいぞ。」
『ちぇーっ、せっかく教えてあげたのに…』
モノクマは、ぶつくさと文句を言いながらどこかへ去っていった。
コトダマゲット!
【解毒の副作用】
「…ふう、やっと目障りなのが去ってくれた。」
俺は、引き続き黒瀬の死体を調べた。
すると、スカートのポケットに何かが入っている事に気がつく。
「…あれ?」
ポケットには、小さく折り畳まれた紙が入っていた。
開いてみると、何かが書かれている事に気がつく。
俺は、紙に書いてある内容を読んでみた。
『ここを出ろ 繰り返すな この世界を壊せ』
何だこれは?
一見意味不明な内容だが、俺達に託したメッセージのようにも思える。
かなり綺麗な字で書かれてるし、これは死ぬ直前とかに書いたものじゃないだろう。
って事は、黒瀬はかなり前から死ぬ予定があって、俺達にメッセージを残そうとしたって事か?
コトダマゲット!
【黒瀬の手紙】
「…とりあえず、検視からわかる情報はこれくらいかな。」
検視を終えた俺は、部屋の中を見渡してみた。
「…あれ?」
何だ、本棚が荒らされて本が散乱しているな。
本好きの黒瀬からは考えられない散らかり方だ。
しかもよく見たら所々ぶつかったような痕があるし、ここでいざこざがあったって事か?
コトダマゲット!
【散らかった部屋】
「あとは…」
あれ?
何だ?
今、散らかった本の中で何かが光ったような…
俺は、散らかった本を掻き分けて光ったものを探してみた。
「…何だこれ?」
床に落ちていたのは、小さな銀色の十字架だった。
金具が取れたような痕がある事から考えても、おそらくこれは誰かのアクセサリーだったと考えられる。
十字架のアクセサリーを使ってそうな奴は…
コトダマゲット!
【銀色の十字架】
「…ん?」
よく見ると、棚の後ろにスプレー缶が隠されていた。
「何だこれは?」
スプレー缶を拾い上げて調べてみた。
持ち上げてみると見た目の割に軽いので、おそらく中身のほとんどは既に使われているのだろう。
よくよく調べると、黒瀬の身体の匂いと同じ匂いがする。
これってもしかして、催涙スプレーじゃないのか?
だとしたら、何でこんな所に…
コトダマゲット!
【催涙スプレー】
俺が探索を進めていると、枯罰が声をかけてきた。
「おうチビ、検視は終わったんか?」
「まあ、大体調べ終わったかな。」
「さよか。ほんなら、ウチが調べてわかった事と聞谷や一に調べてもろた事を一応報告しとくわ。」
「ああ、頼む。」
俺は、枯罰から報告を聞く事にした。
「まず、ウチの捜査結果から言うぞ。まずな、この部屋は窓が全部閉め切られとった。」
「窓が?」
「ああ。見てみ。」
枯罰は、パスポートで撮った写真を見せてくれた。
枯罰が撮った写真の窓は、ガムテープが貼られていた。
「…え?」
「これ、部屋にある窓全部こうなっとった。」
ガムテープでガチガチに固められて…
隙間が一ミリも無いな。
コトダマゲット!
【閉め切られた窓】
「それだけやない、何故かずっと使われとらんかったはずの暖炉が使われとった。」
「暖炉が?」
「おう。薪は使った痕があるし、火かき棒も使われとった。何のために暖炉なんて使ったんやろな。」
「…。」
コトダマゲット!
【暖炉】
「それとな、あといくつかになる事があんねん。」
「何だ?」
「まず暖炉についとった煙突やけどな、入り口が塞がれとったんや。暖炉を使うなら、こないな事せえへんやろ?」
「まあ、な…」
「誰かが意図的に塞いだのかもなぁ。」
コトダマゲット!
【塞がれた煙突】
「もう一つは、換気扇や。」
「換気扇?」
「ああ。換気扇に何かが貼り付けられたような痕があったんや。」
「貼り付けられたような痕?」
「おう。ガムテープを剥がしたような痕や。心当たりあるか?」
「いや…」
ガムテープを剥がした痕か。
そういえば窓もガムテープが貼られてたけど…
何か関係あるのかな?
コトダマゲット!
【換気扇の痕】
「あと扉を調べてわかった事なんやけど、これ見てみい。」
枯罰は、再び俺に写真を見せてきた。
さっき弦野が無理矢理蹴破ったドアだ。
「これ、よぉ見てみ?おかしないか?」
枯罰は、よく見えるように写真を拡大した。
「…あれっ?これ、鍵がかかってないぞ?」
「せやな。弦野の奴は無理矢理扉を蹴破ったけど、元々扉には鍵がかかってへんねん。ほんなら、あの時扉が開かなかったのは何でなんやろな?」
コトダマゲット!
【研究室のドア】
「…何かで無理矢理扉を固定されてたとか?」
「せやろな。ウチもそう思て扉を調べたんやけどな、気になるモンを見つけたんや。」
そう言って、枯罰は写真を見せてきた。
よく見ると、扉には透明のゼリー状の何かが貼り付いている。
「何だこれ?」
「さぁなぁ。近くで嗅いでみたら薬品臭かったさかい、何かの薬品なんやろな。」
「何かの薬品か…心当たりあるか?」
「んー…多分、接着剤とかやろな。」
コトダマゲット!
【扉のゼリー状の何か】
「それと、これは一の奴の証言や。」
枯罰は、一の証言をまとめたものを教えてくれた。
「まず、死亡時刻の約1時間後に換気扇のスイッチが手動モードになっとった。」
「換気扇が?」
「せや。何で換気扇が使われとったのかはわからへんけどなぁ。」
コトダマゲット!
【換気扇のスイッチ】
「それと、トラッシュルームに変なモンが捨てられてたらしいで。」
「変な物?」
「せや。写真撮ってきてもろたからお前も見い。」
枯罰は、俺に一から送ってもらった写真を見せた。
そこには、割れたガラスが写っていた。
よく見ると、ガラスにはラベルが貼られていて『β』と書かれていた。
…あれ?
β?
どっかで聞いたことある響きだな。
コトダマゲット!
【割れたガラス片】
「それと、もう一つ捨てられてたモンがあったんやと。」
「…何?」
枯罰は、画面をスライドしてもう一枚の写真を見せた。
そこには、銀色の何かが写っていた。
「これは…何だ?」
「接着剤のチューブらしいで。」
「何で接着剤がトラッシュルームに捨てられてるんだ?」
「ウチに聞くなや。ウチは実物を見とらんさかい、詳しい事は知らん。」
接着剤ねぇ…
…あれ?
何かどこかで聞いた事あるような…
コトダマゲット!
【接着剤のチューブ】
「次は聞谷の捜査結果を報告するで。」
「ああ、頼んだ。」
「まず、物理室からガスマスクが一つ盗まれとったらしいで。」
「ガスマスクが?」
一体何のために…
コトダマゲット!
【ガスマスク】
「それとな、本が散らかってた方の本棚とは逆側の本棚なんやけど、並びがおかしいらしいで。」
「え?」
そう言って枯罰は再び写真を見せた。
写真の本棚はジャンルなどが無造作に並べられていて、きちんと本をジャンルごとに並べていた黒瀬が並べたとは考えられない並べ方だった。
「よぉ見てみぃ。ジャンルとかがバラッバラやろ?黒瀬やったらこないなけったいな並べ方はせえへんよ。」
「本当だ…確かに並べ方がおかしいな。誰かが並べ直したって事か?」
「せやろな。誰が何の目的で並べ直したのかまではわからへんけどな。」
コトダマゲット!
【本の並べ方】
「それと、こんなモンが研究室のゴミ箱に捨てられとったらしいで。」
枯罰が見せてきた写真には、折れた何かが入ったゴミ箱が映っていた。
よく見ると折れた部分から青みを帯びた黒い液体が漏れている。
おそらく、漏れているのはインクだ。
…って事は、捨てられてるのはもしかしてペンか?
「何だこれ。…ペン?」
「せやな。しかも、かなり丈夫で高級なヤツや。一体どないな使い方したら真っ二つに折れんねん。」
「確かに…いくら怪力の黒瀬とはいえ、流石にストレス発散でペン折ったりは…しないよな。」
コトダマゲット!
【折れたペン】
「そういや、枯罰。」
「何や。」
「みんなが目覚めた順番と時間を教えてくれないか?」
「えーっとなぁ… 光を浴びてから3時間後に安生、それからさらに6時間後にウチ、黒瀬が目を覚ましたのはお前が目を覚ます2時間前だったらしいで。弦野が目覚めたのは午前1時、一が目覚めたのは正午、聞谷が目覚めたのは19時半やな。」
「その間に誰か起きたりしてないよな?」
「してへんよ。交代で見張りしとったさかい、誰か起きたらその時点で異変に気付くやろ。」
なるほど…
って事は、まず聞谷には犯行不可能だったってわけか。
コトダマゲット!
【起床時間】
「…うーん。みんなが寝てる状態だと、アリバイの証明のしようがないよな。」
「そんな事はあらへんと思うで。診療所の入室履歴確認してみ。」
「そっか、その手があったか。」
俺は、1日分の入室履歴を確認してみた。
18:00 退室
18:38 退室
19:18 入室
19:25 退室
19:28 入室
19:57 退室
20:30 入室
01:24 入室
12:05 退室
19:25 入室
「なるほどな…」
「この履歴と当時の状況を合わせて考えれば、犯人が見えてくるんとちゃうか?」
「確かに。」
「パスポートの方にも履歴が残るみたいやし、裁判でパスポート見せ合えば一発で犯人わかるやろ。」
「…そうだな。」
コトダマゲット!
【診療所の履歴】
ピーンポーンパーンポーン
『えー、もう待ちくたびれたので捜査時間を打ち切らせていただきます!オマエラ、ホテル1階のエレベーター前まで集合して下さい!15分以内に来ないとオシオキしますよー!』
え、嘘!?
もう終わり!?
クッソ、まだ調べておきたい事はあったのに…
…でも、ここで悔しがってる場合じゃないな。
早くエレベーター前に行かないと。
俺は、覚悟を決めてエレベーター前に向かった。
◇◇◇
俺がエレベーター前に到着した時には、既に他の5人は集まっていた。
その直後、アナウンスからちょうど15分になった。
『うぷぷぷ、ちゃんと全員集まりましたね?それでは裁判所へレッツゴー!』
モノクマがそう言った直後、エレベーターの扉が開く。
6人全員が乗り込んだ直後、エレベーターの扉が閉まり下に動き出した。
…未だに信じる事ができない。
この中に黒瀬を殺した犯人がいるかもしれないなんて…
…黒瀬ましろ。
アイツは、かなりマイペースで周りを振り回して楽しむような奴だった。
実際、ジョンや速水はアイツに命を弄ばれた。
だけど、アイツが死んでよかったとは思わない。
黒瀬の死の真相を明らかにしなきゃみんなが死ぬ。
何としてでも、学級裁判を乗り越えてみせる!!
ー生存者ー
【超高校級の講師】赤刎円
【超高校級のカウンセラー】安生心
【超高校級の香道家】聞谷香織
【超高校級の傭兵】枯罰環
【超高校級のヴァイオリニスト】弦野律
【超高校級のソフトウェア開発者】一千歳
ー以上6名ー