エデンズダンガンロンパ 希望の生徒と絶望の楽園   作:M.T.

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非日常編④(オシオキ編)

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『うぷぷぷぷ、お見事大正解ー!!【超高校級の脚本家】黒瀬ましろサンを殺したのは【超高校級の講師】赤刎円クンでしたー!!オマエラ5連続正解なんてやるぅー!!』

 

「そんな…赤刎さん……どうして…!!」

 

「…それを説明する前に、まずみんなに謝らなきゃいけない事があるんだ。」

 

「謝らなきゃいけない事…?」

 

「……思い出したんだ。俺は、黒瀬が連続殺人を引き起こした殺人鬼だって言ったけど、本当は違ってた。…人間の記憶って不思議なもんだよな。俺は、自分で自分の都合のいいように記憶を書き換えてたんだ。」

 

「え、それってどういう…」

 

「…逆だったんだよ。」

 

「逆…?」

 

ウチらが疑問に思っとると、クマ公が口を挟んできよった。

 

『うぷぷぷぷぷー!皮肉な話だよねー。オマエラも勘違いしてたみたいだけど、本当に頭がおかしいのは黒瀬サンじゃなくて赤刎クンの方だったんだよ!』

 

「それってまさか…!!」

 

「…ああ。8年前、孤児院の周りで連続殺人を引き起こしたのは、俺だったんだよ。」

 

「な…!?」

 

「おい、何だよそれ!?どういう事か説明しろ!!」

 

 

 

『うぷぷぷ!ここからはボクの口から説明した方が早いかな?実は、赤刎クンと黒瀬サンは同じ孤児院で育った義兄妹の関係だったのです!』

 

「何だと…!?」

 

『そしてさらにショッキングな事に、二人が生まれ育った孤児院は人身売買業者っていう裏の顔を持ってたんだよね!二人にずっと優しく接していたシスターは実は裏社会では有名な孤児売りの女狐で、孤児院の子供達は全員『商品』だったんだ!赤刎クンは、この業者の創設以来ピカ一の頭脳の持ち主だったから、業者側は赤刎クンを残しておいた方がお金になると判断して売り飛ばすのを保留にしてたってわけ。ちなみに同じ孤児院にいた黒瀬サンはというと、赤刎クンと同じく保留の候補には上がってはいたけど先天的な発達障害が理由で早々に売り飛ばされちゃったんだよね!』

 

「そんな、酷い…」

 

「待てよ、それと赤刎が殺人鬼だって事に何の関係があるんだよ?」

 

『…復讐だよ。』

 

「ふ、復讐?」

 

『赤刎クンは、大好きな弟妹達を売り飛ばした業者や弟妹達を物としてしか見てない買い手達を相当恨んでてね。当時10歳の子供でありながら、弟妹達を奪った連中を巧妙な手口で次々と殺していったんだよ。首謀者であるシスターを豚箱送りにしたくても幼い自分に出来る事はたかが知れてるし、自分が逃げればまた弟妹達が被害に遭うかもしれない。業者の闇を明らかにしても、この国じゃ業者を裁けない。そう判断した赤刎クンは、自らが手を汚す事で業者への復讐を果たしてたんだよね!』

 

「じゃあ、赤刎が言ってた『黒瀬が人を殺した事がある』っていう秘密は!?あれは赤刎がついた嘘だったのかよ!?」

 

『嘘じゃありませーん!それは間違いなく黒瀬サンの抱えてる秘密だよ。…っていうか、消された記憶を書き換えてた赤刎クンがオマエラを騙す理由がないよね?』

 

「でも、殺人犯は赤刎クンだったんでしょ!?じゃあ、黒瀬サンが殺した人って一体…」

 

『中絶ですねチューゼツ。アボーション!』

 

「………えっ?」

 

『黒瀬サンは、赤刎クンとは違って早々に売り飛ばされたって言ったよね?実は黒瀬サンを買ったのは巷じゃロリコンで有名な変態で、二人が飼われてた業者の常連だったんだよね。黒瀬サンの事もそういう目的で買ったらしいよ。その男に無理矢理行為を迫られた結果、なんと黒瀬サンはたった10歳で変態との子供を孕んでしまったのです!』

 

「な……!」

 

『当時まだ幼かった黒瀬サンには、変態との子供を育てる力も愛する自信もありませんでした。日に日に胎児が大きくなっていくと共に黒瀬サンは心を病んでいき、ついにはわざと階段から転落して自分の子供を殺めてしまったのです!』

 

「何だよ、それ…じゃあ結局、黒瀬は何も悪くなかったって事かよ!?だったら何でアイツは殺人鬼だって嘘ついたりしたんだよ!?」

 

「……それは多分、赤刎君を守るためじゃないかな。」

 

「え、どういう事?」

 

『うぷぷぷ。ハッキリ言っちゃうと、黒瀬サンは赤刎クンに恋をしていたんだよ。』

 

「………は!?嘘!?え、だってそんな素ぶり全然なかったじゃん!!え、何で!?」

 

『さっき、黒瀬サンは変態に買われて襲われたって話したよね?実はその変態、赤刎クンに殺されてるんだよ。で、黒瀬サンはその場にいて変態が赤刎クンに殺されるところを見てたわけ。黒瀬サンは、殺人っていう一番ヤバい手段に訴えたとはいえ自分の手を汚してまで救い出そうとしてくれた赤刎クンに心酔してったんだよね。そしてそれは、8年ぶりにたまたまこの希望ヶ峰楽園で再会した今でも変わらなかったのです。そこで黒瀬サンは、赤刎クンが記憶を失っているのをいい事に、残虐な殺人鬼を演じてみんなからそう思われるように振る舞ったわけ。全ては、黒瀬サンなりの赤刎クンへの恩返しだったんだよ。』

 

「そんな……」

 

ウチは、黒瀬が以前言うとった言葉を思い出した。

『嘘は愛情』。

アイツは、最初から最期まで大嘘つきやった。

せやけど、それは全部ウチらを思っての嘘やった。

殺人鬼を演じたんは、赤刎を守るため。

非情な悪役を演じたんは、嫌われる事で全員の殺意の矛先を自分に向けるため。

コロシアイを引っ掻き回したんは、ウチに【超高校級の絶望】やと思わせるため。

アイツは元々悪者やったんとちゃう。

ウチらがアイツを悪者にしたんや。

 

「……実は、黒瀬からメッセージを受け取ってるんだ。最期に、これだけは確認しておきたい。」

 

『んもー、しょーがないなぁ!それじゃ、冥土の土産に黒瀬サンからのメッセージを公開しちゃいましょう!モニターオン!』

 

 

 

 

 

クマ公がそう言うてリモコンのスイッチを押すと、黒瀬の映像が映し出される。

 

「やっほー、円くん。キミがこの映像を見てる時、ボクはもうこの世にはいないと思います。……なーんてね。ふふふっ、これ一回言ってみたかったんだよね〜。」

 

黒瀬は、いつも通りふざけた様子で話す。

 

「ここからは、演技抜きで話をしていこうと思うんだ。今から言う事を信じるかどうかはキミ達に任せるよ。まずね、キミ達に言わなきゃいけない事があるの。ボクが殺人鬼だっていう話だけど………あれ、嘘だよ。…ふふっ、すっかり騙されてたでしょ?ボク、脚本だけじゃなくて女優の才能もあると思うんだよね〜。ちなみにボクが殺した人っていうのはね、ボクを買った人に孕まされたお腹の中の赤ちゃんなんだ。何もわからないまま、汚いおじさんに襲われてできた子供。ボクが殺したのはその子一人だけ。え?じゃあボクが人を殺して作品を書いてたとか言ったのは何だったのかって?あれは、知り合いのジャーナリストさんに頼んで取材をしに刑務所に足を運んで貰ってたりとか、過去の殺人事件の資料を読んだりしてそれっぽく作り込んでただけなんだ〜。」

 

黒瀬は、全く笑えへん事をヘラヘラ笑いながら言うと、急に畏まった顔になった。

 

「って、無駄なおしゃべりが過ぎたね。ボクは、思い出しライトで全部知っちゃったの。この楽園の秘密とか、コロシアイの目的とか全部ね。でもね、ボクはそれをキミ達に言い遺すつもりは無いよ。だってボクは、今のボクとみんなが大好きだから。ボクは、みんながここから出てもみんなのままでいてくれるならそれでいい。それじゃ、これからの人生は苦難だらけだろうけど頑張ってね。」

 

今までずっとヘラヘラ笑っとった黒瀬が、急に涙目になる。

ウチらがコイツの涙を見たんは、これが最初で最後やった。

 

「…最後に円くん、キミにどうしても伝えたい事があります。円くんは覚えてないだろうけど、ボクはキミに助けられた時からずっとキミの事が好きでした。ボクが孤立してた時、キミだけはボクに構ってくれたよね。あの時、本当に嬉しかったんだよ。…………今までありがとう。大好きだよ、()()()()()。」

 

黒瀬が涙を流しながら微笑んだ直後、ブツッと音が鳴って画面が暗転した。

 

 

 

 

 

そこで映像は終わった。

ウチはただ、モニターを呆然と眺める事しか出来へんかった。

 

「嘘でしょ…こんな事って………」

 

「何だよこれは…じゃあ、俺達がした事って…」

 

「黒瀬さん…ごめんなさい…何も知らずにあんな態度を取って…ごめんなさい…うっ、ううっ…!!」

 

「黒瀬さん…」

 

「……ホント、バカな奴だよな。殺人の罪を擦りつけて勝手に外道扱いしてきた奴に『ありがとう』だとよ。アイツは昔からそんな奴だったよ。誰よりも純粋で、どんなに冷たく突き放してもしつこく懐いてきて、人付き合いとなるとどこか不器用で、そういうところは昔から何も変わってない。…実は昨日、アイツが書いた短冊が研究室に置いてあったから拾って読んだんだけど、なんて書いてあったと思う?」

 

「………。」

 

「『世界中の人とお友達になりたい』……だってさ。ガキの頃の願い事を今でもずっと願い続けてる、アイツはそういう奴なんだよ。」

 

「………何やねんそれ……お前……全然話がちゃうやんか!!ウチは…コイツが【超高校級の絶望】や思たから殺そうとしたんやぞ!!それに、ウチらに伝えたい事があるから自殺しようとしたって…まさかこないな事伝えるためだけに死のうとしたっちゅうんか!?ふざけんなやオイ!!!」

 

「…枯罰。黒瀬が自殺しようとしてた理由だけど、あれ、本当は俺が適当にでっち上げたんだ。本当の事を言えば、お前が罪の意識に苛まれるんじゃないかと思ってな。」

 

「何やと…!?」

 

「お前に殺されそうになった後黒瀬が自殺しようとしたのは、枯罰。お前を守るためだよ。」

 

「………は?」

 

「お前の殺人が成功すれば、お前はクロとしてオシオキされる。だからアイツは、自殺する事で犠牲を自分で最後にしようとしたんだ。」

 

「じゃあ、赤刎が黒瀬を殺したのって…」

 

「…もし、黒瀬が生きてるかどうかを確認しにお前が研究室に戻ったら、お前は間違いなく黒瀬にトドメを刺すだろうと思った。それに、黒瀬が自殺に失敗して途中で死んだらお前がクロになるかもしれない。逆の立場なら、きっと俺も自分で死ぬ事を選んでた。そして自分でも死ぬ事ができない状況なら、多分黒瀬に殺すよう頼んでた。…そう思ったんだ。だから俺は、黒瀬を殺した。」

 

「そんな………」

 

 

 

「…ごめん、枯罰。俺…どうしてもこれ以上みんなが死ぬのを見たくなかった。」

 

赤刎は、これから殺されるっちゅうのに笑っとった。

コイツ…

 

「俺の嘘を暴いてくれてありがとう。……後は頼んだ。」

 

「………は?………何言うてんねん…!!お前ら、揃いも揃ってこないなウチを庇うためだけに死のうとしたっちゅうんか!!?ふざけんなや!!!!ウチは、今まで何人も平気で殺してきたし、感情を殺す訓練も死ぬほど受けさせられて来た!!今更死ぬ事なんぞ怖ないわ!!!せやけど、お前らはちゃうやろ!?お前ら、死ぬんが怖ないんか!?」

 

「……怖いよ。怖い…けど……ふと思ったんだ。俺に殺された人達もこんな気持ちだったんだろうなって。俺が殺してきた人達は、確かに俺の弟妹達の仇だ。けど、俺達と同じ人間だったんだよ。アイツらにはアイツらなりの人生があって、大切な人がいて、死ぬ事を怖いと思う感情だってあった。それを全部奪ったのは俺だ。俺だけ逃げる事は許されない。…罰はちゃんと受けるよ。」

 

赤刎が言うと、他の奴等も口を挟んだ。

…当たり前や。

こんなん、黙ってられるわけないやろ。

 

「それは違うよ!君の過去と今回の事件は何も関係ない!!」

 

「そうですわ!!赤刎さんがどんな方でも関係ありません!!あなたまで死に急ぐのはおやめ下さいまし!!」

 

「お前、武本が殺された時『生きて罪を償ってほしかった』って言ってたじゃねぇかよ!!死ぬ事は償いでも何でもねぇぞ!!」

 

「やだよ…赤刎君…!ボク、やっぱりもうオシオキなんてやだよぉ…!!」

 

「みんな………いや、俺はみんながなんと言おうとオシオキを受ける。これは、黒瀬を殺した時から決めてた事だ。外に出たところで、殺人鬼の俺を世間は受け入れちゃくれないだろう。でも枯罰、お前は違う。」

 

「………え?」

 

「みんなのこれからは、お前にかかってるんだ。お前は頭がいいし、誰よりも正しい奴だと俺は思ってる。お前になら、後の事を任せられる。」

 

「何言うてんねんお前……ウチは………」

 

「…やっぱりな。お前は『機械』なんかじゃない。お前は、ちゃんと自分の頭で考えて生きて、感情もあって、お前の事を大切に思ってる仲間もいる。お前は、一人の人間なんだよ。…今だって、俺みたいな殺人鬼のために泣いてくれてるだろ?」

 

「っ……………」

 

 

 

『はいはーい、もう茶番が長すぎて飽きちゃったのでそろそろアレいっちゃいましょっか。』

 

「!?おい、待てやコラァ!!やるんならウチをやれや!!元はと言えばウチが黒瀬を殺そうとしたせいでこないな事になっとんねんぞ!!オシオキされるんはどう考えてもウチの方やろ!?」

 

『ダメでーす!オシオキの対象となるのは『実行犯』のみ!今回の実行犯は赤刎クンなので、赤刎クンだけをオシオキするよー!』

 

「ふざけんなや!!殺すぞボケコラァ!!」

 

ウチは、クマ公に突進した。

このままウチがクマ公を攻撃したら、ウチは校則違反で死ぬ。

別にそれでも構わへん。

ここで赤刎を見捨てて生き延びるくらいなら、死んだ方がマシや。

 

「やめろ枯罰!!犬死にだぞ!!」

 

「喧しいわボケ!!お前のオシオキは犬死にとちゃうんか!?あぁ!?」

 

「ここでお前が処刑されれば、それこそモノクマの思う壺だぞ!!お前、モノクマの言いなりにだけは死んでもなりたくないんじゃなかったのかよ!?」

 

「そんなもんもうどうでもええわ!!ウチはクマ公を道連れにして死ぬ!!それでウチの目的もクソみたいな人生も全部終いや!!」

 

「聞け!!!」

 

「!?」

 

赤刎は、ウチに思いっきり体当たりを仕掛けてきた。

思わぬ方向から体当たりされたせいで、ウチは当たり負けした。

 

「バカ野郎!!お前が今すべき事はこんな事じゃねぇだろ!!!」

 

「黙れや!!お前に何がわかんねん!!こっちは死ぬつもりで黒瀬を殺そうとしたんやぞ!?なのに、お前みたいなホンマの戦場も知らんようなドチビに庇われて生き恥晒す屈辱がお前にわかってたまるかぁ!!」

 

「うるせぇ!!!!」

 

「ッ…!!」

 

「生き恥が何だ!?屈辱が何だ!?そんなもん、いくらでも晒しゃあいいじゃねぇか!!死んじまったらそこで終わりなんだぞ!!地べたを這いつくばってでも、醜態を晒してでも生きろ!!潔く死ぬくらいなら見苦しく足掻け!!!」

 

「…ド阿呆……お前、言うとる事メチャクチャやんか………そないに言うなら、お前も簡単に死ぬとか言うなや!!」

 

「っ…………」

 

『えー、お取り込み中悪いけどもう尺が無いので始めちゃいますね!』

 

次の瞬間、赤刎の首がアームで掴まれた。

 

 

 

「っ…うぁあああああぁああああああああああああああああ!!!!!」

 

「枯罰!?」

 

ウチは走った。

一度は死ぬ事すら覚悟した。

ウチは、自分が死ぬのは怖ない。

けど、赤刎だけは絶対助ける。

コイツは、親父の言いなりになって何人もの人間を殺してきたウチなんぞを身を邸して庇ってくれた。

コイツを死なせたら、今までクソみたいな人生を歩んできた意味がなくなる。

たとえ手足を吹き飛ばされても、身体が半分になったとしても、コイツだけは…

 

『今回は、【超高校級の講師】赤刎円クンのために!!スペシャルな!!オシオキを!!ご用意しました!!!』

 

「死なせてたまるかぁあああああぁあああああああああああああ!!!!!」

 

「枯罰ッ……俺、やっぱり……………」

 

『ではでは、オシオキターイム!!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「死にたくねぇわ…………!!」

 

 

 

 

 

ウチは、手を伸ばした。

赤刎も、ウチの手を取ろうと必死に手を伸ばした。

 

 

 

……伸ばした手は、僅かに届かへんかった。

 

 

 

 

 

ーーー

 

GAME OVER

 

アカバネくんがクロにきまりました。

 

オシオキをかいしします。

 

ーーー

 

 

 

赤刎は、アームで引き摺られてそのままどこかへと連れ去られた。

連れてこられたのは、職員室のような部屋だった。

どこからか、ピッ、ピッ、という機械音が鳴っている。

赤刎は、両腕両脚と胴体に付けられた拘束具で金属製の椅子に拘束されており、両足は靴と靴下を脱がされて裸足になっていた。

そこで画面上に文字が現れる。

  

 

 

ーーー

 

教えて!赤ペン先生

 

【超高校級の講師】赤刎円 処刑執行

 

ーーー

 

 

 

赤刎の目の前にはテーブルがあり、赤刎の右手にはプリントの山とチューブのようなもので繋がれたガラスペンが、左手には変わったデザインのアナログ時計が置かれていた。

その両隣では、教師の格好をしたモノクマが眼鏡を光らせながら監視している。

左足には何故かチクリとした痛みがあるが、足は机の下にあるので確認する事はできない。

左のモノクマが時計のスイッチを押すと時計は少しずつ進み始める。

すると、右のモノクマは山上からプリントを一枚取って赤刎の前に置く。

赤刎は最初何の事かわからなかったが、何となくモノクマの意図を察しプリントに目を通す。

内容は小学生一年生レベルの算数ドリルで、既に汚い字で回答が書かれていた。

赤刎は、ガラスペンを手に取ると一枚目のプリントを採点する。

ペンのインクの滲み方に少し違和感を覚えるが、ものの数秒で採点を終わらせ左のモノクマにプリントを渡した。

すると、間髪入れずに右のモノクマが次のプリントを渡す。

 

この作業が何回、何十回、何百回と繰り返された。

採点するプリントのレベルは少しずつ上がり、初めは小学生レベルだったものが中学生レベル、高校生レベルと上がっていく。

それでも赤刎は問題文を見た瞬間に脳内で模範解答を作成し、その通りに採点を行い続けた。

だが赤刎は集中力を消耗したのか少しずつ顔色が悪くなっており、さらに追い討ちをかけるかのように問題の難易度がグンと上がった。

そして、大学受験レベルに上がったあたりから赤刎の採点スピードが急に落ち始めた。

自分の頭の中の解答に自信がなくなってきたのだ。

それでも何とか採点を続ける赤刎だったが、ここに来て初めて最後の計算間違いに気付かず丸をつけてしまうというミスを犯す。

すると、モノクマは容赦なく赤刎の左足の小指の爪を剥がした。

あまりの痛みに、赤刎は悶絶する。

だが、時間内に全てのプリントを採点し終わらないと処刑される。

死にたくないという思いが赤刎の弱りかけた心に鞭を打ち、再び赤刎は採点を続ける。

だが、その勢いはたった数分で終わりを迎え、集中力が切れた赤刎は次々とミスを連発するようになった。

両足の爪は全て剥がされ、左足の指は全て切断されていた。

もはや採点が追いつかない程の問題の難易度や集中力を掻き乱す機械音、そして拷問による苦痛のせいで、赤刎は完全に思考を停止し採点をする手は全くと言っていいほど動いていなかった。

 

するとモノクマは、何を考えたのか赤刎の口に怪しい薬を流し込み無理矢理飲み込ませる。

その直後赤刎の脳内を襲ったのは、情報の洪水、そして今までどんなに頭を捻っても採点出来なかった問題の解答が一瞬で浮かんだ事への多幸感だった。

赤刎は、再び紙の上でペンを走らせる。

だが薬で頭が冴えた状態でも何度かミスを繰り返してしまい、右足の指も全て切断され、鉋で足の皮膚を剥がされ、足元の鉄板で足を焼かれる。

しかし驚くべき事に、拷問を受けている間も赤刎は休む事なくペンを走らせ続けていた。

麻薬をも軽く凌駕する快感に溺れた赤刎にとってはもはや()()()()()()()だったのだ。

拷問の苦痛より、身体の限界より、採点結果の正誤より、『目の前の問題を解く事』だけを求めひたすら採点を繰り返す機械と化していた。

しかし、脳細胞を酷使し続けたせいか鼻や目から出血し始める。

だが今の赤刎は脳神経が焼き切れる感覚にすら快感を覚えており、興奮のあまり自身のモノを勃起させていた。

 

そしてプリントは最後の一枚になる。

最後の問題は、ミレニアム問題にも匹敵する未解決問題だった。

赤刎は、早速用意されていたノートに思い浮かんだ解法を書き殴る。

問題に奮闘する事数時間、ついに赤刎は正解に辿り着き、導き出した答えをプリントに書き込む。

赤刎は、生きた人間のものとは思えない顔をしていた。

目の焦点は合っておらず、口からは血の混じった泡を吹いていた。

そしてついに最後の一行を書きおわり、それと同時に絶頂に達した赤刎は快感に打ち震えながら精を解き放つ。

その直後だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ピーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

今まで一定のリズムでなっていた機械音は、長く平坦な音へと変わった。

赤刎は糸が切れた操り人形のようにだらんと力無くもたれており、手から落ちたペンは床に落ちて転がっていた。

赤刎の座っている席からはコードが伸びており、座席の後ろの機械と繋がっていた。

座席の後ろの機械の液晶画面には、水平な直線と『0』という数字が表示されている。

そして、赤刎が今まで握っていたペンから伸びたチューブは、赤刎の左足に刺さった採血針と繋がっていた。

 

モノクマは、赤刎が赤ペンで数式を書き殴ったプリントに目を通した。

モノクマは、褐色を帯びた赤いシミで汚れたプリントを見て『判別不能』と見做しペンで大きくバツをつけた。

部屋には、モノクマの不気味な笑い声だけが鳴り響いていた。

 

 

 

 

 

『エクストリーーーーーーム!!!』

 

「うわあああああああああああああ!!!」

 

「いやっ!!いやぁあああああああっ!!」

 

「そんな…赤刎君が…」

 

「クソッ…チクショウ…!!」

 

「…………。」

 

ウチは一体何をしとったんや。

目の前でクラスメイトが殺されるのを、ただそこで見とっただけやった。

こないなはずやなかった。

ホンマなら、あそこにいたのはウチのはずやった。

生きたかったアイツが死んで、死にたいウチが生き延びた。

 

なんで。

 

なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで

 

 

 

『いやー、いいもの見れた。まさかポイントゲッターだった赤刎クンがこんな呆気なく死んじゃうとはね!って、あれ?枯罰サンどうしたの?便秘?』

 

「……………。」

 

ウチは、ふとブレザーの内ポケットを漁る。

…やっぱりあった。

ウチは軍に所属しとった頃、護身のため、そして万が一の時自分で命を絶つために懐に凶器を隠し持っとくよう教え込まれとった。

戦場を退いた後も、その癖はどうしても抜けへんかった。

…まさか、この癖がこないな所で役に立つとは思てへんかったけどな。

ウチは、持っていたナイフを自分の首筋に当てた。

 

 

 

ガッ

 

「!」

 

いきなり右手を打たれた事でウチはナイフを手放し、飛んでいったナイフは聞谷に拾われた。

ふと目の前を見ると、弦野がウチの手を払っとった。

 

「しっかりしろ!!!お前は俺達のリーダーなんだぞ!!」

 

「……………ウチが?」

 

「そうだよ。…少なくとも、俺はそう思ってるぜ。」

 

「ええと…わたくしも、初めから枯罰さんと赤刎さんがリーダーだと思っておりましたわよ?」

 

「君は、君の正しさを常に貫いていた。僕は、そんな君だからこそ赤刎君は君に託したんだと思うよ。」

 

「ボ、ボクも……キミが一番向いてると思う……」

 

 

 

…思い出した。

赤刎は、ウチに後を任せる言うた。

ウチは、こないな所で立ち止まっとる場合とちゃう。

ウチは、どないな手を使っても生き延びる。

ほんでもってあのキッショいロボットを操って阿呆面しとるクソッタレに一発お見舞いしたる!!!

 

「…おい、クマ公。その汚い耳かっぽじってよぉ聞けや。ウチは、絶対お前にキッツい一発ブチ込んだる。それまでは、せいぜいそのキショい面晒してろや!!」

 

「やっといつもの調子に戻ったかよ。」

 

「枯罰さん……うん。決めた。僕も生きてここから出るよ。僕には、外で待ってくれてる患者さん達がいるから。」

 

「わたくしも…聞谷家の長女ともあろう者が、こんな所でへこたれていてはなりませんわ!」

 

「俺だって、こんな所で死ねねぇんだよ!何が何でも生き延びて、世界一価値のある人生を送ってやる!!」

 

「ボ、ボクだって死にたくない!!早くお家に帰りたいんだよ!!」

 

 

 

『…うぷぷぷ、オマエラはもう誰も死なないしコロシアイもしないつもりみたいだね。よし、じゃあこうしましょう!新しいルールを追加します!ここからは、殺人を禁止とします!』

 

「何だと…!?」

 

「じゃ、じゃあボクはもう殺されなくて済むんだね!?やった!!」

 

『その代わり、オマエラにはこの楽園の卒業試験に挑んでもらうよ。』

 

「卒業試験…?」

 

『オマエラも薄々気付いてるだろうけどね、黒幕はオマエラ16人の中にいるんだよ!!』

 

「………え?」

 

『もしかしたらもう既に死んじゃった中にいるかもしれないし、この5人の中にいるかもしれない。オマエラに課す卒業試験は、『黒幕を暴く事』!それだけです!!』

 

「じゃ、じゃあ、黒幕を暴けばボク達は外に出られるんだよね!?」

 

『そーでーす!見事当てたら全員揃って卒業!ここから出してあげるよ!…ただし、やっぱりここでも間違えたらオシオキだけどね!』

 

「ひ、ひぃ!?」

 

『特別に第六区画は開放してあげたので。それじゃ、最終試験頑張ってねー!』

 

そう言うて、クマ公は去っていった。

 

「ど、どうしよう!?いきなり黒幕を暴けなんて言われたって、そんなのできるわけ……」

 

「………ちょうど良かった。クマ公が言わへんかったら、ウチが勝手に見つけ出そうとしとったとこやったわ。」

 

「…え?」

 

「お前ら、絶対に黒幕を見つけ出してここから出るぞ!!」

 

 

 

 

 

Chapter5.脆く儚い御伽噺 ー完ー

 

 

 

《アイテムを入手した!》

 

『書き古されたメモ帳』

 

Chapter5クリアの証。

赤刎の遺品。

弟妹から誕生日にプレゼントされたもので、常にコートの内ポケットに入れていた。

最期までコロシアイに足掻き続けた少年の生きた証が記されている。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

ー生存者ー

 

【超高校級のカウンセラー】安生心

 

【超高校級の香道家】聞谷香織

 

【超高校級の傭兵】枯罰環

 

【超高校級のヴァイオリニスト】弦野律

 

【超高校級のソフトウェア開発者】一千歳

 

ー以上5名ー

 

 

 




まさかの主人公交代。
近いうちに解説も出すよー。
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