エデンズダンガンロンパ 希望の生徒と絶望の楽園   作:M.T.

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Chapter.1 運命の赤い糸
(非)日常編①


「うわ…」

 

「マジかよ…」

 

改札を通り抜けると、そこには信じがたい光景が広がっていた。

目の前にあったそれは巨大なテーマパークで、まさに楽園とも呼べる場所だった。

まず正面に巨大な城のような建物が聳え立っており、その他にも目を引く建物が5つほど見られる。

その5つは巨大な建物がひとつ小さな建物が4つだった。

 

「うっひょー!!」

 

「Amazing!!」

 

「うわぁ、広いね!」

 

「何ここ!!メッチャすごいんだけど!!」

 

漕前、ジョン、筆染、速水、はしゃいでいると、枯罰が呆れ返り神崎が鬱陶しそうに舌打ちをする。

 

「呑気なやっちゃなぁ。ウチらコロシアイのためだけにここに連れて来られとんねんぞ。」

 

「全く、これだから凡愚共は…」

 

「まぁまぁ…とりあえず、楽園全体を探索してみない?何かわかる事があるかもしれないしさ。」

 

「そうだな。それに、ここで一生過ごすって事は寝泊まりする場所も探しておかなきゃいけないって事だしな。」

 

安生の提案で、俺達は楽園の探索をする事になった。

 

「手分けして探索した方が効率がいいし、2人以上のグループを組んでそれぞれ別の場所を探して後で報告し合うようにしようか。」

 

「そうだね。2人以上なら、お互いを見張り合う事ができるもんね。」

 

「それなら安心ですわね。」

 

「…………人付き合いは苦手だが、それで危険を減らせるのなら仕方ないな。」

 

「ぼ…ボクも…」

 

みんなが俺の意見に賛成し、お互いグループを組もうとした時だった。

 

 

 

「俺は嫌だね。」

 

弦野が反論してきた。

 

「どうしてだ?」

 

「どうせそうやってグループ組んだって、ソイツらが互いにグルだったら手を組んで誰かを殺すかもしれないからに決まってるだろうが。」

 

「ひぃいいいぃいいいっ!!!」

 

「に、一君…落ち着いて…」

 

弦野が悪態をつくと、『殺す』という言葉に反応した一が悲鳴を上げた。

安生は、泣き喚く一を宥める。

すると今度は神崎までもが反発してきた。

 

「そこの銀髪の言う通りだ。俺も一人で行動させてもらう。貴様らと同じ空気など死んでも吸いたくないからな。」

 

すると、二人の態度に怒りを覚えた漕前、ジョン、速水が声を荒げる。

 

「Shut up!!オマエら、そうやってthe atmosphereをspoilすんのやめろ!!」

 

「そうだぞ!お前らなぁ、さっきから感じ悪いぞ!!」

 

「二人の言う通りだよ!!円と心はアタシ達のために言ってくれてるんだよ!?」

 

「知るかンなモン。お前らが何と言おうが、俺は一人で行動するからな。」

 

「お前なぁ!!」

 

そうこうしているうちに、5人は喧嘩を始めてしまった。

まずいな…このままじゃ、ますますモノクマの思う壺だ。

早くコイツらの喧嘩を止めねぇと…

 

 

 

「お前らええ加減にせぇよ。どつくぞコラ。」

 

そう言ったのは、枯罰だった。

枯罰から放たれる威圧感に、その場にいた全員が静かになった。

 

「どいつもこいつも猿みたくギャーギャー鳴きおってからに。喧しいんじゃボケ。そないに感情的になりよったらあのクマ公の思う壺やっちゅう事ぐらいわかるやろ。」

 

枯罰は、全員を睨みながら続ける。

 

「お前らそれでも希望ヶ峰の生徒かいな?超高校級なら超高校級らしゅうシャンとせぇよ。」

 

すると、漕前が頷き、握りしめた拳を下ろして怒りを鎮める。

 

「…そうだな。みんな、悪い。俺、つい感情的になっちまって…俺達全員で協力して、絶対みんなで生きて帰るぞ!!」

 

「「おぉ!!」」

 

「「…。」」

 

枯罰の言葉で場がまとまり、居心地が悪くなったのか弦野や神崎はそれ以上何も言わなかった。

俺は、枯罰に感謝しなければと思い真っ先に枯罰のもとへ向かった。

 

「枯罰、ありがとな。」

 

「別にウチは感謝されるような事してへんよ。阿呆共がギャアギャア騒ぎよるさかい言いたい事言うただけや。ウチかて、あのクマ公の思い通りんなんのは嫌やしなぁ。」

 

枯罰…才能について何も語らなかった時は冷たくて一匹狼みたいな奴だと思ってたけど、案外頼りになるんだな。

 

 

 

「それじゃあ、早速グループを組もうか。一君、僕とグループを組んでくれるかな?」

 

「え、ぼ、ボクですかぁ!?」

 

「君の才能は調査で役に立つだろうし、僕なら逆に君が困った時に助けてあげられるだろうから。…どうかな?」

 

「そ…そういう事なら…」

 

良かった、一は臆病だからグループに入れるか心配だったけど、安生がいればうまくやれそうだな。

 

「赤刎!俺達と一緒に回ろうぜ!!」

 

声をかけてきたのは漕前とジョンだった。

コイツらとは馬が合いそうだし、断る理由は無い。

 

「おう、もちろんいいぞ。」

 

「あ………」

 

すると、札木が少し寂しそうな顔をする。

 

「どうした札木?早く来いよ。」

 

「…え?」

 

「俺達、同じグループだろ?」

 

「…。」

 

いや、驚く事ないだろ。

少なくとも俺はそのつもりだったんだけどな。

俺は、漕前とジョンに聞いてみる。

 

「な?」

 

「Of course!!ミライもオレ達のfriendだぜ!!」

 

「札木ちゃん、そんな離れた所にいないで一緒に回ろうぜ。」

 

「………うん。えっと…よろしく…お願いします…」

 

札木は、恥ずかしそうに俯いて俺達の輪の中に入った。

聞谷、速水、筆染の3人も仲が良い女子同士でグループを組む事にしたらしい。

残るは枯罰と武本と…

 

「おいデカいの。お前はウチと組みぃ。」

 

「………俺か?」

 

「他に誰がおるんや?力技が必要な時一番役に立ちよるんはお前やろ。それにウチならお前が暴走しても制御できるしなぁ。」

 

「……わかった。」

 

なるほど、確かに探索中に力仕事が必要になった時の事は考えてなかったな。

あの二人は心配なさそうだな。

 

 

 

結局、俺と札木と漕前とジョンのグループ、安生と仕田原と一のグループ、枯罰と武本のグループ、聞谷と速水と筆染のグループの4つに分かれた。

グループ分けであぶれてしまったのは、神崎、黒瀬、弦野、宝条の問題児4人だった。

神崎と弦野は言わずもがな、宝条はわがままなので、黒瀬はマイペース過ぎて何を考えているのかわからないので誰もグループに入れたがらなかった。

 

「うーん…どうする?」

 

「一人にさせるわけにはいかないし…しょうがないから余裕があるグループに入れてもらうしかないよね。」

 

「ちょっとぉ!!ゆめを余り物みたいに言うのやめなさいよ!!」

 

「ボクいい事思いついたぁ。ボク達余り物同士でグループ組めばいいと思いまぁ〜す。」

 

「莫迦か貴様は。貴様と組むぐらいなら俺は一人で行動する。」

 

「俺もそうさせてもらうぜ。こんな怪しい女とグループ組むなんざ死んでも御免だ。」

 

うわぁ…相変わらずだなぁあの二人は。

 

「宝条さん、僕達のグループに入ってくれないかな?」

 

(あら…コイツ、割といい顔してるわね。)

 

「もちろん!ゆめも安生くんのグループに入りたいと思ってたんだぁ〜♪」

 

「…さっきまでグループ入るの嫌がってたのに…………」

 

「一くん、何か言った?」

 

「…いえ、何も。」

 

「弦野君、良かったらあたし達と組まない?」

 

「はぁ?ふざけんなよ。何で俺がお前らと…」

 

「弦野君だって、あたしのクラスメイトなんだよ?ね、ほら!」

 

すると見かねた安生が宝条を、筆染が弦野をグループに誘った。

残るは神崎と黒瀬か…と思っていたが、案外すんなりとグループができた。

 

「お前らはウチらとや。」

 

「ふざけるな。おい関西弁、何故俺がお前と一緒に行動をしなければならないんだ?」

 

「別にウチらと組みたないっちゅうんならええけどなぁ。ただ、万が一殺人が起きたらウチは真っ先にお前を疑うで。」

 

「貴様、根拠も無しに俺を疑う気か?」

 

「一人でおったモンが怪しいに決まっとるやろ。校則の5番目に誰か殺したんを他の奴に知られたらアカンって書いてあったっちゅう事は、それを破って他の誰かに知られたらルール違反っちゅうこっちゃ。ルール違反したモンがどうなるんかはお前も知っとるやろ?」

 

「…何が言いたい。」

 

「つまりや。お前はウチにマークされとる以上、好き勝手する事は出来へんねん。わかったら黙って言う事聞いとき。」

 

「…フン。貴様等と組むのは癪だが、貴様等如きに疑われるのはもっと癪だからな。仕方ないが貴様等と組んでやろう。」

 

「わぁ〜い、帝くんもボクと同じグループだねぇ。」

 

こうして4人は、無事他のグループに入れてもらう事ができた。

 

「探索を終えたら、みんなでミーティングをしよう。集合場所は…そうだな、正面の建物に食堂があるみたいだからそこにしよう。」

 

「それじゃあ、パスポートの時計で18時に食堂に集合にするか。」

 

「おう。」

 

集合時間と場所を決めた所で、俺達はそれぞれ別の場所を回ることにした。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

「どうする?俺達はどこをまず探索しようか?」

 

「そうだな…まず、目の前にあるデカい建物に入ってみるか。」

 

「札木もそれでいいよな?」

 

「………うん。」

 

俺達は、早速目の前にある高級ホテルのような建物に入ってみる事にした。

建物までの道には美しい花が咲き誇る庭園があり、幻想的な雰囲気を醸し出していた。

正直、案外ここで暮らすのも悪くないと思ってしまっている自分がいる。

…もっとも、モノクマの噴水に吐き気がする点を除けばだが。

 

 

 

「うわぁ…!!」

 

入ってすぐに目に入ってきたのは豪華な装飾が施されたクラシック調のエントランスで、顔が映り込むくらい綺麗に磨かれた床や柱は大理石でできており、監視カメラが至る所にあるのと気色の悪いモノクマのオブジェを除けば目を見張るほど立派だった。

 

「すげぇ!!俺、高級ホテルなんて初めて来たぜ!!」

 

「俺もだよ。ずっと孤児院生活だったからな。」

 

「よし、それじゃあ早速expeditionしようぜ!!」

 

そう言ってジョンが真っ先に駆け出していったので、俺達もジョンを追いかける形でホテルを探索する事になった。

ホテルにあるエレベーターは全部で3台で、左右の2台が8人乗り、中央にあるエレベーターが16人乗りとの事だった。

俺達は、早速エレベーターに乗り込んで上の階に向かう。

 

「おー…」

 

エレベーターの中もやはりクラシック調で豪華な造りになっていた。

 

「…あれ?」

 

ふと気になった事があったので、俺は思わず声を上げた。

 

「どうした?」

 

「このエレベーター、この表示だと地下にもフロアがあるって事だよな?」

 

「そうだな。」

 

「でも、地下に行くボタンなんて無いぞ?」

 

「…あるにはあるけど自力では行けないって事か。」

 

考えている内に、エレベーターがフロアに着いた。

俺達が初めに行ったのは、個室があるフロアだった。

パスポートのアプリにあるマップによると、男子が4階、女子が3階で部屋の番号は出席番号順に並んでいるらしい。

俺は自分の名前が刻まれた401号室の部屋に入った。

パスポートが部屋の鍵になっていて、リーダーにかざすと部屋のロックが解除されるようになっていた。

 

「うぉっ…」

 

個室は100平米はあり、置かれている家具はどれも一級品だった。

奥には巨大な窓があり、楽園を一望できるようになっている。

部屋は完全防音になっており、部屋の中の音が隣の部屋に漏れないようになっているらしい。

部屋にはバスルームやトイレ、簡易式のキッチンも完備されていた。

ちなみにトイレはT●TOのウォシュレットでした。

…まあだから何だって話だが。

 

部屋の入り口にはワンタッチで収納できるタイプの用具入れがあり、最低限の掃除道具が入っていた。

テレビも設置されており、一応見られるようになっている。

…まあ、チャンネルはどれもモノクマが用意したであろう茶番番組だったが。

 

「一応クローゼットと引き出しの中もチェックしておかないとな。」

 

クローゼットを開けると中には俺の制服の予備が入っていたが他は特に何も入っていなかった。

ベッドの隣にあったデスクの引き出しを開けると、中には工具箱が入っていた。

俺は、工具箱を開けて中身を確認する。

 

「スパナにペンチにハンマー…一通り揃ってるな。」

 

工具箱の中には、工具だけではなく一枚の紙切れも入っていた。

 

「?」

 

紙切れを広げて読んでみると、これまたモノクマのイラスト付きの汚い文字が書かれていた。

 

『モノクマ楽園長からのお知らせ

部屋の鍵は、パスポートをリーダーに翳すと開閉できるようになっております。パスポートを紛失・破壊してしまうと部屋の施錠・解錠が不可能となってしまいますのでご注意下さい。また、自分のパスポートで他の人の部屋を開ける事はできません。

部屋には、バスルームとトイレが完備されていますが、夜時間は水が出ないので注意してください。

最後に、ささやかなプレゼントを用意してあります。女子には裁縫セットを、男子には工具セットをご用意しました。

裁縫セットには人体急所マップもついているので、女子のみなさんは、針で一突きするのが効果的です。

男子の工具セットを使用する場合は、頭部への殴打が有効かと思われます。』

 

「クソッ、人の事をバカにしやがって…!!」

 

俺は、苛立ちながら紙をグシャグシャに丸めてゴミ箱に捨てた。

部屋を一通り調べた後は、全員4階のエレベーター前に集合した。

ちなみに他の3人の部屋も俺と同じ感じだったらしい。

そして、やはり札木の所には裁縫セットが入っていたようだ。

とりあえず部屋の探索は終わったので、1階と2階の探索もしてみる事にした。

 

すると、途中で安生達に会った。

 

「お、お前らもホテルの探索をしてたのか。」

 

「まあね。それで僕達は1階と2階の探索をしてたんだけど、1階にはランドリールームとトラッシュルームとプレイルームが、2階には食堂と厨房があったんだ。」

 

「厨房には鍵付きの冷蔵倉庫と冷凍倉庫もあったんですよ!中にはなかなかお目にかかれない高級食材もありました!」

 

「お、おう。良かったな。」

 

仕田原がすごい熱心に話してくる。

まあ家事ができる場所が完備されてるのはコイツにとっては嬉しい事なのか。

すると、一がおずおずと発言をした。

 

「えっと…あと、食料には毒とかは入ってないし、どんどん殺菌処理した新鮮なものが追加されるから食中毒や餓死の心配は無いってモノクマが言ってた…それも信用していいのかどうか怪しいけど…」

 

なるほどな。

それは有力な情報だな。

安全な食料があれば、とりあえずこの空間で生き延びる事はできるからな。

…尤も、一の言う通りあのイロモノクマが用意したって時点で安心安全な食料とは言い難いが。

それにしても…この楽園といい、16人全員を一生養える程の食料やライフラインを完備できるなんて、このクソゲーを裏で操ってる奴はどっかの財団とかなのかな?

 

「ふふふ♪このホテルお城みたいだし、思ったより粗末な場所じゃないし、案外ここに住むのも悪くないかも。たまには凡人の生活ってものを体験してみようかしらねぇ。」

 

すっかり気分が良くなった宝条は、さっきまで駅でギャーギャー騒いでいたとは思えない発言をした。

 

「1階と2階は既に安生達が探索してくれたみたいだし、俺達は別の場所を探してみるか。」

 

「………そうね。」

 

 

 

俺達は、部屋を出てすぐの場所にあった少し変わった建物に入ってみる事にした。

西洋風のレトロな感じの扉で、扉にはタロットの絵が描かれていた。

 

「何だここは?」

 

『ズバリご説明します!!』

 

そう言って、突然モノクマが茂みから飛び出してきた。

 

「ぎゃあっ!!?」

 

「Whaaaaaaaaaaaat!!!?」

 

「うわ、ビックリした!!」

 

突然イロモノが茂みから現れたので俺達3人は悲鳴を上げる。

さすがの札木も目を見開いて小さく「きゃっ」と声を上げていた。

 

『ちょっと、神をGで始まる黒い虫みたいに扱うのやめてよね!』

 

「お前なんかゴキブリ以下だ!!」

 

『ちぇーっ、何ですかその反応は!!せっかく神が親切にその施設の説明をしてあげようと現れたのに!!』

 

「Oh,なんだそういう事だったのか。それを早く言えよ!」

 

「漕前、ジョン。こんな奴にムキになったら負けだ。それで、この施設は一体何なんだ?」

 

『ゴホン、ズバリ説明します!それは、『超高校級研究室』です!』

 

「超高校級研究室?」

 

『はい!この『超高校級研究室』では、才能のデータを取るためにその人の才能に沿ったものが用意されてるんだよ!』

 

「って事は…」

 

俺達は、札木の方を見た。

 

「ここは札木の研究室って事か。まさかトップバッターが札木だとはな。」

 

「……………。」

 

札木は恥ずかしそうに俯いていた。

 

『それじゃ、ボクは用が済んだのでこれで。またボクに会いたくなったらいつでも呼んでね〜!』

 

「誰が呼ぶか!!」

 

漕前が怒鳴るが、モノクマは全く気にしない様子で去っていった。

 

「Shit!!」

 

「アイツいちいちムカつくな。塩撒いとくか。」

 

「まあ、確かに不快だわな。でも厄介者が去った事だし、気分入れ替えて探索しようぜ。中入ってもいいか、札木?」

 

「あ………うん……」

 

よし、許可が降りたし入ってみるか。

札木が扉を開けて俺達は中に入った。

 

 

 

中は少し暗くなっていて、後ろにはカーテンが吊るされている。

中央にあるテーブルにはテーブルクロスが敷かれており、上にはタロットカードが置かれていた。

 

「なるほどな、これが『超高校級のタロット占術師の研究室』か。」

 

「俺、タロット占いってやった事ないんだけどさ、札木ちゃん俺の事占ってくれね?」

 

「………え、でも探索中………」

 

「まぁ…いいんじゃね?時間はたくさんあるし、別の場所は他のグループが調べてくれてるだろうしな。」

 

俺がそう言うと、札木は少し微笑んで頷いた。

 

「……………わかった。」

 

札木は早速椅子に座ると早速ホワイトセージを焚いて部屋の浄化を始める。

一通り清めの儀式が終わると、カードをテーブルに並べた。

 

「……何について占う?」

 

「あ、じゃあ恋愛について占ってくれるか?」

 

「…………うん。」

 

札木は、カードをシャッフルして占いを始める。

そして引いたカードを見て結果を伝えた。

 

「………えっとね、漕前くんの人柄に惹かれてる人は少なからずいるみたい。」

 

「マジで!?」

 

「……ただね、自分の行動を反省しないと痛い目を見るよ。」

 

「うぐ…」

 

そう言われた漕前は苦笑いを浮かべた。

やっぱり思い当たる節があるんだな。

…まあ、人の事は言えないけど。

 

その後俺とジョンも占ってもらったんだが、それはもう思い当たる節の連続だった。

どうやら【超高校級のタロット占術師】の実力は伊達ではないらしい。

ちょうど3人占ってもらったところであと1時間程になったので、俺達は楽園内を適当に歩きながら食堂に向かう事にした。

楽園内をブラブラしている途中、道場のような建物を見つけた。引き戸には、柔道のピクトグラムが描かれていた。

 

「ここってもしかして…」

 

「多分、武本の研究室だろうな。どうする?中入るか?」

 

「そうだな…」

 

「…………わたしはどっちでも。」

 

「タノモーッ!!!」

 

「わっ、おいバカ!!人の研究室なんだからそっと開けろ!!あと声がデカい!!」

 

ジョンは、大声を出しながら引き戸を勢いよく開けて中へ入っていった。

俺達は、ジョンの後を追う形で武本の研究室の中に入った。

 

 

 

「破アッ!!」

 

「わぁー、闘十郎くんカッコいいー。」

 

研究室の中は畳が敷かれ、壁には神棚と達筆な文字が書かれた木の板が立て掛けられていた。

そして正拳突きをしている武本、そして部屋の隅でそれを見ている黒瀬がいた。

 

「セイッ!!」

 

武本が再び正拳突きを繰り出すと、その迫力に俺は思わず目を見開いた。

俺は、とりあえず隅にいた黒瀬に声をかける事にした。

 

「…なぁ、何やってんだ?」

 

俺は、コソッと黒瀬に耳打ちする。

すると、黒瀬が相変わらずふわふわした口調で答えた。

 

「んーっとねぇ…あのねー…闘十郎くんがー、研究室を見つけたから修行したいって言って、ずっと正拳突きしてるのー。ボクはやる事がないのでずっとここで見てましたー。」

 

「そうか…あれ?枯罰と神崎は?確か同じグループだったよな?」

 

「環ちゃんと帝くんはぁ、お外で調べたい事があるから色々お調べ中なんだってー。自分の研究室じゃないなら興味無いからいいって言って出てっちゃったのー。」

 

「そっか…まあ、アイツららしいっちゃアイツららしいわな。」

 

「Wow!!トウジュウロウ!!今の、very coolだったぜ!!One more time!!」

 

「すげぇなオイ!!武本、お前もしかして波出せんじゃねぇの!?ちょっと出してみてくれよ!!」

 

いつの間にか、漕前とジョンが武本の周りでキャイキャイはしゃいでいた。

すると、武本が二人をギッと睨む。

 

「……………道場は神聖な場だ。静かにしろ。」

 

「「…ハイ。」」

 

武本の重々しい一言で、二人は大人しく静かに正座をした。

すると、そこへ枯罰と神崎が現れる。

 

「おー、武本。お前まだやっとったんか。」

 

「フン。それより、何故莫迦共がこんな場所にいるのだ?」

 

莫迦共って…もしかして俺達の事か?

 

「あー、環ちゃんに帝くん。あのねー、円くんたちはー、探索が終わったからボク達の様子を見に来たんだってー。」

 

「なるほどなぁ。」

 

「二人もここで闘十郎くんの技見れば良かったのにー。凄かったんだよー。それはもう登山者の臓物を食い破るグリズリーの如き迫力でー…」

 

黒瀬よ、何故そんな物騒な喩えをチョイスした?

ああ…そういやコイツホラー系とかミステリー系専門の脚本家だったな。

それを聞いた枯罰はスラックスのポケットに両手を突っ込んで答える。

 

「別に興味無いわ。今は脱出方法以外はどうでもええねん。お前らはここから出とうないんか?」

 

「んー…ボクは別に出なくてもいいかなー。ここでみんなと一緒にいるの楽しいし。」

 

「お気楽すぎるやろ。…もうええ、お前に聞いたウチが阿呆やったわ。」

 

枯罰は、額を手で覆ってため息をついた。

…アイツも黒瀬と一緒にいると大変そうだな。

 

「お前らはこれからどうするんだ?俺達は適当に歩きつつ食堂に行こうと思ってるんだが。」

 

「ウチはまだ調べる事あるさかい、終わるまでここら辺におるわ。」

 

「おう。それじゃ、また後でな。」

 

俺達は、武本の研究室を後にして再び楽園内の探索を行う事にした。

食堂に向かう方向に歩いていると、今度はドーム状の建物が見えてきた。

ガラスでできた扉には、ランニングのピクトグラムが描かれていた。

 

「ここは速水の研究室か。」

 

「今のところ、これが最後の研究室かな。ここも一応調べておくか。」

 

俺達は、ガラスの扉を開けて中に入った。

 

「お邪魔しまーす…っと。」

 

 

 

中はジムのようになっており、ランニングマシーンやダンベルなどの走るために必要な筋肉を鍛えるためのトレーニング器具が揃えられていた。

 

「お!円達じゃん!!おつかれー!!」

 

俺達が研究室に入った途端、中にいた速水が俺達の方へ走ってきた。

どうやら、他の3人も一緒のようだ。

…単独行動を取ると言って聞かなかった弦野までいるのは正直意外だったが。

 

「おう。お前ら、ここにいるって事は探索は終わったのか?」

 

「ええ。倉庫の探索が終わった後、速水さんの研究室を見つけたのでここで少し休憩を取っていた所ですの。赤刎さん達も探索がお済みなのですか?」

 

「まあな。探索終わったし、適当にぶらぶらしつつ食堂に行こうとしてたところなんだ。」

 

「Oh,リツも一緒なのか!That‘s a surprise!さっきまでindependent action取るって聞かなかったのによ!」

 

「チッ…この女があまりにもしつこいからな。撒こうにもついて来やがって撒けねぇから、諦めたってわけ。」

 

「弦野君も、あたし達の大事な仲間だもん。勝手にどっか行かれて何かあったら困るよ!」

 

「見ての通り、こんな感じでずっとついて来るんだよ。」

 

筆染がニコッと笑うと、弦野は鬱陶しそうに筆染を指差した。

筆染の裏表がない純粋な優しさの前では、さすがの弦野も悪態をつく気を削がれたらしい。

筆染、グッジョブ。

俺が筆染に心の中で感謝していると、速水がガラス張りのランニング用の部屋へ走っていった。

 

「ちょっとひとっ走りしてくるね!じっとしてるの落ち着かなくて!」

 

速水は本当に体を動かすのが好きなんだな。

…ちょっとでもガタイを良くするためにも、俺も少しは見習った方がいいのかな?

 

「…あ。時間ちょうどいいし、そろそろ食堂行くか?」

 

「…………そうね。」

 

「お前らも一緒に行くか?」

 

「あー、待って!もうちょい!」

 

「ええと…速水さんがもう少し走りたいそうですので、わたくし達はもう暫くしたら向かいますわ。赤刎さん達は先にお行き下さいまし。」

 

「そっか。遅刻しないように来いよ。」

 

俺達は速水の研究室を後にし、集合場所である食堂に向かってミーティングの準備をした。

 

 

 


 

 

 

ー生存者ー

 

【超高校級の講師】赤刎円

 

【超高校級のカウンセラー】安生心

 

【超高校級の天才】神崎帝

 

【超高校級の香道家】聞谷香織

 

【超高校級の脚本家】黒瀬ましろ

 

【超高校級の幸運】漕前湊

 

【超高校級の???】枯罰環

 

【超高校級のタロット占術師】札木未来

 

【超高校級の家政婦】仕田原奉子

 

【超高校級の冒険家】ジョナサン・ウォーカー

 

【超高校級の武闘家】武本闘十郎

 

【超高校級のヴァイオリニスト】弦野律

 

【超高校級のソフトウェア開発者】一千歳

 

【超高校級のランナー】速水蘭華

 

【超高校級の画家】筆染絵麻

 

【超高校級の収集家】宝条夢乃

 

ー以上16名ー

 

 

 

 

 

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