エデンズダンガンロンパ 希望の生徒と絶望の楽園   作:M.T.

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(非)日常編③

『おはようございます、オマエラ!!朝です!!7時になりました!!今日も元気に殺し合いましょう!!』

 

「…。」

 

2日目、俺は耳障りなモーニングコールで目を覚ました。

朝からモノクマの声が部屋中に鳴り響いて本当に不快だ。

…さて、8時に間に合うように支度するか。

俺は、ベッドから起き上がって着替えようとした。

その時、ゴミ箱の後ろから何かが光っているのが見えた。

 

「…ん。」

 

ゴミ箱を移動させると、床にはコインが落ちていた。

コインをよく見ると、モノクマの絵が描かれている。

これが奴の言うモノクマメダルか。

そういや至る所に隠されてるって言ってたな。

昨日は気づかなかったが、こんな所にも置いてあったのか。

正直デザインが最悪だが、プレイルームのガチャガチャで使えるらしいから一応拾っとくか。

俺は、メダルを拾って着替えると食堂へと向かっていった。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

「おはよう。」

 

時間より少し早く食堂に来ると、既に安生、仕田原、武本が来ていた。

 

「おはようございます、赤刎さん!」

 

「おはよう、赤刎君。」

 

仕田原と安生が返してくれた。

すると突然、仕田原が俺に話しかけてきた。

 

「いきなりで申し訳ないのですが赤刎さん、朝食は和食と洋食どちらになさいますか!?」

 

「え?あ、えーっと…じゃあ昨日和食だったし洋食で。」

 

「かしこまりました!」

 

そう言って、仕田原は厨房に走っていった。

それぞれの好みに合わせて作ってくれるのは正直嬉しいな。

 

「安生は何をやってるんだ?」

 

「僕は朝食後のミーティングの準備をしているんだ。そうそう、枯罰さん、札木さん、武本君の3人は厨房で朝食を作ってくれてるよ。」

 

今日は武本も作ってくれてるのか。

そういや上手くはないけど一応料理できなくはないって言ってたな。

 

しばらくして、5分前に聞谷と漕前が、8時丁度にジョンと速水が来た。

 

「うわ、仕田原達もう朝飯の準備進めてくれてたのか!昨日手伝うって言ったのに完全に出遅れちまった!」

 

「アタシもランニングしてたら時間ギリギリになっちゃったよ。メンゴ!」

 

漕前は先に着いて朝食を作ってくれていた4人に対して申し訳なさそうにし、速水は軽いノリで謝ってきた。

まあ8時集合って言ってたし、時間守ってるならまだいい方だろ。

すると3分ほど遅れて一が食堂に来た。

 

「うわっ!?もう3分過ぎてる!ごめんなさい!ボク、低血圧で…すみません許してください!」

 

「うん、まだ2日目だから仕方ないよ。でも次からは気をつけようね。」

 

「はい…」

 

一が平謝りしてくると、安生がニッコリ笑って注意をした。

一は反省した様子で席に座る。

…あとは神崎、黒瀬、弦野、筆染、宝条の5人か。

 

 

 

それから30分5人を待っていたが、5人とも食堂に現れなかった。

 

「アイツらなかなか来ねぇな。」

 

「来なさそうなメンバーだもんな。…まあ、黒瀬と筆染はまだ来てくれそうだけど。」

 

「呼びに行こうか?」

 

「I agree!」

 

仕方がないので俺が筆染を、漕前が弦野を、ジョンが神崎を、安生と速水が宝条を、一と聞谷が黒瀬を呼びに行く事になった。

 

俺は、まだ部屋にいるのかと思い筆染の部屋に行ってみる事にした。

部屋の前のインターホンを鳴らしてみる。

 

「筆染?いるか?」

 

インターホン越しに声をかけるが、返事はなかった。

 

「…念のため。」

 

俺は、もう一度インターホンを鳴らして、すぅと大きく息を吸い込む。

 

 

 

「筆染ぇええええっ!!!いるなら返事しろぉおおっ!!!」

 

 

 

俺は、インターホンが反響するぐらい大声で叫んだ。

すると、その直後…

 

「ビックリしたぁ…え、何?」

 

パジャマ姿で寝癖がついた筆染がドアを開けてひょっこり顔を出した。

…もしかして、さっきまで寝てたのか?

 

「ああ、悪い。大声出しちまって。でも、もう集合時間から30分も過ぎてるからよ。」

 

「え!?嘘でしょ!?あたし、てっきり6時台ぐらいだと…」

 

「は?」

 

って事は6時台には既に起きてたって事か?

 

「…筆染。お前、今まで何やってたんだ?」

 

「えっと…朝起きてまだ6時前だったから、絵を描いてたんだけど…あ!!もしかしてあたし、また絵に夢中で時間忘れちゃった!?ごめんね!!次から気をつけようと思ってたのにまたやっちゃったー!ごめんちょっと待ってて、すぐ着替えるから!」

 

そう言って、筆染は急いで部屋の中へと走っていってTシャツとズボンに着替えた。

筆染の奴、身嗜みを整えるのも忘れてずっと絵を描いてたのか。

 

「お待たせー!」

 

筆染がようやく部屋から出てきたので、俺は筆染を連れて漕前とジョンと合流した。

 

「よ。」

 

「赤刎か。そっちはちゃんと筆染ちゃんを呼べたみたいだな。」

 

「うん。あたし、絵に夢中で時間忘れちゃってて…ホントごめん!」

 

「…Well、出てきてくれただけエマはまだいい奴だぜ。」

 

「どういう事だ?」

 

ジョンが浮かない顔で言ったので、俺はジョンに事情を聞いた。

 

「オレ、ミカドを呼びに行ったんだけどよ。『喧しいから消えろ』って言われてdoorをSlam!!って閉められたんだよ!アイツ、such a jerkだぜ!」

 

「俺も、弦野を呼びに行ったら『どっか行け』って門前払いされたよ。まあ、呼んでも無駄だとはわかってたけどよ。」

 

うーん…神崎と弦野は相変わらずだな。

俺が二人に頭を悩ませていると、安生と速水が宝条と一緒に俺達のところに来た。

 

「宝条ちゃん、おはよ…」

 

「おはよぉ、赤刎くん、漕前くん、ジョンくん♡」

 

「お、おはよ…」

 

筆染が最初に宝条に声をかけるが、宝条は完全に無視をして俺達3人に声をかけてきた。

猫撫で声でウインクまでしてくるもんだから、俺は思わず引いてしまった。

 

「えーっと…宝条、なんで遅れてきた?」

 

「んもぉー、赤刎くんってば!ゆめの事はゆめって呼んでって言ったでしょ?」

 

うわぁ…昨日と全然キャラが違うぞ。

一晩寝てスッキリしたのかな?

 

「ゆめは、髪をセットしてお化粧してたの。ダサい格好で外に出るなんてサイアクでしょ?」

 

「え、そんな事で遅刻したのか?」

 

「そんな事って何よ!女の子にとって、身だしなみはアンタ達の朝ごはんなんかより大事なの!」

 

そう主張する宝条に、安生と速水は呆れ返っていた。

自己中にも程があるだろう。

…はぁ。俺、何でこんな朝っぱらから疲れてるんだろ。

 

「あとは黒瀬だけだな。」

 

「確かカオリとチトセが呼びに行ってたよな?アイツらはどうなって…」

 

 

 

 

「ぎゃあぁあああああぁああああああっ!!!」

 

突然、廊下に大声が響いた。

 

「!?今の、一の声だよな!?」

 

「マシロのroomの方からだ!」

 

「何かあったのかも…急ごう、みんな!」

 

「え?あ、ちょっと!置いてかないでよ!」

 

俺達7人は、一と聞谷の安否を確かめに黒瀬の部屋に向かった。

 

「一!!大丈夫か!?」

 

俺達が駆けつけると、一が黒瀬の部屋の前で尻餅をついていた。

 

「あら…皆さん、すみませんお騒がせして…「あああああ!!!無理無理無理おうち帰るぅうううううううう!!!」

 

一緒にいた聞谷が何か言っていたが、一の叫び声で掻き消された。

 

「終わった!!やっぱりモノクマはボク達を殺す気だったんだぁあああああああ!!!」

 

「おい、どうした一!?」

 

「赤刎君!!助けて!!黒瀬さんが部屋の中で死んでたんだよぉおおおおお!!!」

 

一は、パニックになって黒瀬の部屋の扉を指差した。

 

「な…何ですって!?黒瀬が…死んだ!?」

 

「そんな…!!」

 

「あの、皆さん。落ち着いて下さ…「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」

 

「おい、一。お前、ビビりすぎだよ。黒瀬が死ぬわけ…」

 

漕前がそう言って鍵のかかっていない扉を開けると、黒瀬がドアの前で倒れていた。

 

「「「どわぁあああぁあああああああっ!!?」」」

 

「キャアアアァアアアアッ!!!」

 

「あの、ですから皆さん…」

 

「そんな…嘘でしょ!?黒瀬ちゃん!?」

 

「…みんな、とりあえず落ち着こうよ。」

 

「これが落ち着いていられるか安生!!だって、黒瀬ちゃんが死んでるんだぞ!?ほら、脈だって…あれ?」

 

すると、聞谷が呆れた様子で口を開く。

 

 

 

「…皆さん。黒瀬さんは、寝ていらっしゃるだけですわよ。」

 

『え?』

 

俺達は全員、聞谷の一言に目を丸くした。

するとその直後…

 

「くかぁー…」

 

『…。』

 

黒瀬の口元から、寝息の音が聞こえてきた。

 

「どうやら、部屋を出る前に睡魔に襲われて力尽きたみたいですわね。とにかく、黒瀬さんは無事ですわ。」

 

「紛らわしっ!!ビビって損したよ!!」

 

「ってか聞谷ちゃん、もっと早く言ってくれよ!」

 

「わたくしは何度も言おうとしたのですけれど…一さんの声でかき消されてしまったのと、皆さんが混乱していらしてわたくしの話を聞いてくださらなかったんですの。」

 

「…あっ。」

 

そういえば、聞谷が何度か何かを言いかけてたような気がしなくもないな。

って事は、俺達ずっと聞谷の事無視してたのか。

…何か悪い事した気分だな。

 

「うーん…」

 

すると、騒ぎを引き起こした張本人である黒瀬がようやく目を覚ました。

 

「ふぁ…あれ?みんなどうしたの?」

 

「どうしたのって…お前を呼びに来たんだよ!」

 

「そぉなのー?なんでー?」

 

「何でって…朝8時に食堂に集まって生存確認も兼ねた朝ごはんにしようって話だったじゃないか。」

 

「ふぁあ、そうでしたー。忘れてたぁー。えへへー、ごめんなさぁい。」

 

黒瀬は、間延びした口調で話しながらゆっくりと起き上がった。

ホント、黒瀬はマイペースすぎて正直ついていけんな…

 

 

 

「お前ら何しとんねん。朝っぱらから喧しいんじゃボケ。」

 

突然、後ろから枯罰が声をかけてきた。

 

「Oh,タマキか。何しに来たんだ?」

 

「朝飯出来とるさかい、お前らを呼びに来たんや。早う来いやド阿呆共。」

 

そう言って枯罰は食堂に向かっていったので、俺達も全員食堂に向かった。

 

 

 

「お待たせしましたぁ〜。」

 

「……………来たか。」

 

「お、ようやく皆さんお揃いですね!」

 

「弦野君と神崎君は来てくれなかったけどね。」

 

「もう、アイツら何やってんのかしら。自分勝手にも程があるわよ。」

 

「ホントだよぉ〜。帝くんも律くんも、ちゃんと空気読もうよ〜。」

 

お前らが言うか、宝条、黒瀬。

 

「二人は無事だったみたいだし、僕が後でミーティングの内容を知らせとくよ。」

 

「そうだな。それじゃあ、任せるよ安生。」

 

「ねぇ、冷めちゃうし早く食べちゃおうよ!」

 

速水が待ちきれないと言わんばかりに食器を鳴らしたので、俺達は席について食事を始めた。

ちなみに今日の朝食は、安生、聞谷、札木、仕田原、ジョン、武本、一が和食で、俺、黒瀬、漕前、枯罰、速水、筆染、宝条が洋食だった。

 

「んー、美味しい!」

 

「今日は武本さんも手伝ってくださったんですよ!」

 

「え、そうなの?」

 

「…………俺が作ったのはサラダとスクランブルエッグだけだがな。」

 

「へぇ、そうなんだ。ありがとう武本君。美味しいよ!」

 

「……………そ、そうか。」

 

筆染がニコッと笑いながら言うと、武本は顔を真っ赤にして俯いた。

どうやら褒められたのは嬉しいが恥ずかしくて素直に喜べなかったようだ。

食事の後はちょっとしたミーティングをして、その場で流れ解散となった。

 

「…さて。メダル拾ったし、ガチャガチャでもやるか。」

 

 

 

 

俺は、プレイルームに行ってモノモノマシーンで遊んでみた。

 

「…うお。」

 

出てきたのは、割と上質な短身の木刀だった。

 

「木刀かぁ…」

 

正直使い方に困るんだよなぁ。

そう思いつつプレイルームを後にし、探索がてら庭を歩いていると、漕前とジョンが武本の研究室に入っていくのが見えた。

 

「…あれ?アイツら何やってんだ?」

 

俺は、二人の様子が気になったので声をかけてみる事にした。

 

「お前ら何やってんだ?」

 

「Oh,マドカ!Come on!今から、トウジュウロウにmartial artsのlectureしてもらうんだよ!」

 

「は?どういう事だ?」

 

「ずっとこんな閉鎖された空間にいたら萎えちまうだろ?だから心と身体を鍛えて、俺達はコロシアイなんてクソみてぇなゲームになんか負けねぇぞってところをあのクマに見せてやるんだよ!」

 

…なるほど。確かに一見脳筋の理屈っぽいが、理に適ってはいるな。

心身共に健全でいた方が閉鎖空間での長期間の生活にも耐えられるし、交流を深めるって意味でもいい方法ではある。

…考えたくはないが、誰かに殺されそうになった時護身術で身を護れるかもしれないしな。

 

「マドカはskinnyだからな!もっと食ってもっと鍛えろ!」

 

大きなお世話だ。

 

「うーん…でも、3人で押しかけたら武本も迷惑じゃないか?」

 

「安心しろって。もう約束してあるからよ。」

 

んー…ならいい、のか?

結局、俺は二人についていって一緒に武本の研究室に行く事になった。

 

「おーい、武本。入るぜ。」

 

引き戸を開けて中に入ると、武本がこっちに鋭い眼光を向けてきた。

 

「…………お前らか。」

 

「ああ。何かあった時のために、お前に護身術を習おうと思ってな。」

 

「…赤刎も一緒か?」

 

「Yes!マドカもやりたいってよ!」

 

「………それは別に構わんが。女子供でも使える護身術もあるしな。」

 

女子供って何だよ。

こう見えても成人間近の男だぞ。

 

「なぁ、武本!なんかこうカッコいい技とか教えてくれよ!敵をバーンって倒したりとかさ!」

 

「………お前ら、何か勘違いしているようだが。護身術というのはあくまで自分の身を守るためのもので、相手を倒すためのものではないのだぞ。」

 

「Oh,sorry…」

 

武本に凄まれると、漕前とジョンは大人しくなった。

 

「…ではまず礼から入るぞ。細かい作法があるから、よく覚えておけ。」

 

「え!?そっから!?」

 

「当然だ。武道というのは礼で始まり礼で終わるものだ。本当は道場に入る時の作法もあるのだぞ。」

 

本格的だな…

それに、達人の武本の言う事だからなんか説得力があるな。

それから俺達は、武本に礼儀作法を叩き込まれた。

 

「くーっ、思ってたよりやる事多いな!」

 

「Right!もっとこうcoolなartsをlectureしてもらえると思ってたのによ。」

 

「………文句を垂れるな。」

 

「「「押忍。」」」

 

二人が文句を垂れていると、武本に叱られたので俺達は思わず肩を窄める。

一通り武道の礼儀作法の基本を叩き込まれた後、ようやく技を教えてもらえる事になった。

 

「あー、疲れたぁー…でも、なんかちょっとだけ強くなったような気がしなくもないな。」

 

「俺でも使えそうな技もいくつか教えてもらえたしな。」

 

俺達がキャッキャとはしゃいでいると、武本が深いため息をついた。

 

「…悪用はするなよ。」

 

「押忍!」

 

 

 

するとそこへ、枯罰が現れる。

 

「お前ら何しとんねん。」

 

「………枯罰か。」

 

「お、枯罰ちゃん。実は今、武本に護身術を習ってたんだよ。」

 

「ほぉん。武本、お前人見知りやったんとちゃうんか?」

 

「…俺も、弟子は何人かいる。コイツらも一度弟子だと思えば抵抗感は薄れた。」

 

「なるほどなぁ。」

 

「トウジュウロウは、girlがweaknessな割にはタマキにはfriendlyだよな。Why?」

 

「…1日目の探索で色々と情報交換をしたら、緊張が解けてな。俺が暴走した時も、枯罰なら制御できるから身を任せられる。」

 

「それ…ウチを女やと思えへんっちゅう意味かいな?」

 

「断じて違う!…友として信頼できると言っているんだ。」

 

「冗談や。そないにムキになるなや。」

 

「…お前なぁ。」

 

枯罰が冗談で武本にジト目を向けると、武本は必死に弁明する。

そんな武本を見て枯罰が軽く武本の肩を叩くと、武本は呆れながらため息をついた。

コイツらなんだかんだ言って仲良いのな。

1日目の探索は同じ班だったし。

 

「タマキ!せっかく来たんだったら、オレ達がトウジュウロウに習ったartsを見てくれよ!」

 

「…おいウォーカー。無闇矢鱈に力を振り翳すなとあれ程…」

 

「But…いざって時に使えなかったらmeaninglessだろ?だからpracticeしとくんだよ!」

 

「はぁ、そないに自慢したいんか。まぁウチも暇やさかい、適当に相手したるわ。」

 

「適当に相手って…お前、武術の心得でもあんのか?」

 

「まぁ一応なぁ。」

 

そう言って、枯罰はジャケットを脱ぐと軽くジョンの胸ぐらを掴む。

 

「ほんならお前、敵がこう来たら次はどないすんねん?」

 

「Easy peasy!こうやってwristをgrabして…」

 

ジョンが受け身を取ろうとした瞬間、枯罰が足払いを仕掛けて素早く腕を固めるとそのまま巴投げをかました。

ジョンの身体は綺麗にカーブを描いて畳に叩きつけられた。

 

「Gwa!!」

 

「お前、ウチが通り魔やったら今ので死んどったぞ。」

 

枯罰が呆れながらため息をつくと、ジョンは背中を押さえながらゆっくりと立ち上がった。

 

「Ouch…トウジュウロウに言われた通りやったのに…Why!?」

 

「まずなぁ、重心がブレブレやねんお前。あと脇がガラ空き。んなモン、倒してくれ言うとるようなモンやぞ。」

 

枯罰は、ジョンに対してダメな所をズバズバと指摘した。

それはどれも、武本が俺達に対して指摘した事と同じ内容だった。

 

「…まぁ、初心者の割には上出来やったけどな。ほんならウチはこれで。」

 

そう言って、枯罰はジャケットを着ると武本の研究室を後にした。

 

「Damn it!girlに負けるとは…so pitifulだぜ!」

 

「まあ、アイツが女子にカテゴライズされるのかどうかは甚だ疑問だけどな。」

 

漕前、お前それ本人に聞こえてたらのされるぞ。

 

「…これで懲りただろう。無闇に力を振り回す事の愚かさがな。力を使うのは、己が危険に陥った時か仲間が危ない時だけにしろ。わかったな。」

 

「「押忍。」」

 

二人は武本に向かって立礼をすると、そのまま研究室を後にした。

 

 

 

「………お前は行かなくていいのか?」

 

「ああ、ちょっとな。お前に渡したいものがあるんだ。」

 

「…?」

 

「これやるよ。」

 

俺は、ガチャでゲットした木刀を武本に渡した。

 

「…!お前、どこでそれを手に入れたんだ?」

 

「ああ、ガチャでゲットしたんだ。」

 

「…それを、俺に?本当にいいのか?」

 

「俺が持ってても使い道ねぇし、お前が持ってた方がいいだろ?」

 

「…そうか。そういう事なら受け取ろう。ありがとう、大切に使わせてもらう。」

 

武本は、深く頭を下げて木刀を受け取ってくれた。

どうやら喜んでくれたみたいだ。

 

「…俺も何か礼をしなければな。何か欲しい物はあるか?」

 

「礼?いや、いいよ。俺はお前が気に入ってくれるかなって思って渡しただけだし。…あ、そうだ。じゃあ、次の集合時間まで二人で話さないか?」

 

「…いいのか?俺、面白い話はできないぞ。」

 

「いいんだよ。俺が話したいだけだからさ。」

 

「………赤刎、お前はいい奴だな。」

 

「んな事ねぇって。」

 

俺達は、研究室の畳に正座して話をした。

 

 

 

「武本、お前は何で武闘家になったんだ?」

 

「………何故、か。俺は、田舎の貧乏な実家で暮らしていたんだ。俺の家は7人兄弟で、父と母は俺達を養うために汗水流して働いてくれていたよ。俺は図体が大きい事だけが取り柄だったから進んで力仕事をしていたんだが、10年ほど前のある日山で腰を痛めて帰れなくなっていたご老人を助けたら、その人は有名な武道家で俺を道場に連れていってくれたんだ。そこでその人の弟子達の技を見て武道に惹かれた俺に対して、その人は『またいつでも来なさい』と言ってくれたんだ。その人が、後の俺の師匠というわけだ。」

 

「へぇ…そうだったのか。…それで?」

 

「一家の長男だった俺は父の後を継がなければならなかったのだが、俺はどうしても師匠に教えを乞いたかった。だから俺は、両親にその事を話したんだ。そうしたら父も母も、ただでさえ家計が苦しいのに喜んで俺の入門を勧めてくれたんだ。二人には、感謝してもしきれないよ。」

 

「いいご両親だな。」

 

「ああ。その後俺は師匠に正式に弟子入りをして教えを乞うた。そして、家族に楽をさせるためにも、俺はあらゆる大会に出て勝ち続けた。だがそれだけでは飽き足らず、更なる高みを目指すため常に己と闘ってきたのだ。…これが俺が武闘家になった所以だ。」

 

「なるほどな。ありがとな、武本。話、聞かせてくれてよ。」

 

俺がそう言うと、武本はフッと笑った。

…コイツが笑うとこ初めて見たな。

 

「…お前も俺のつまらない話を真面目に聞いてくれるんだな。」

 

「ん?他にも誰かと話したのか?」

 

「…札木だ。朝食を作っていた時、札木は俺の事を気にかけてくれたんだ。」

 

「そうだったのか。」

 

…ん?

もしかして武本の奴…

 

「…。」

 

「…………どうした?」

 

「武本。お前…札木の事好きだろ?」

 

「なっ…!?」

 

おっと、武本の奴顔を真っ赤にして動揺してるぞ。

ふふふ、これは図星だな?

 

「たーけーもーとー♪正直に言っちゃえよ、好きなんだろー?」

 

「やめろ赤刎!!神前でそんな…ふしだらだぞ!!」

 

「悪い悪い。…あ、そうだ。俺がアイツに好きな物とか聞いといてやろうか?俺、アイツとは高校のクラスメイトだし、割と接点多いからよ。」

 

「…何故そんな事をする?」

 

「応援してやるっつってんだよ。札木の方もお前と仲良くしたいみたいだし、お前らが仲良くできれば俺は満足だしな。プレゼントの礼は、お前らの仲って事で♪」

 

「お前なぁ…いい加減にしろ。」

 

その後、調子に乗りすぎて無作法をやらかした俺は、追い出される形で研究室を後にした。

脱出の手掛かりについて何もわからないのは相変わらずだが、武本と仲良くなれたのは十分大収穫だ。

ガチャで手に入れたものをプレゼントして友好を深めるのもアリだな。

…モノクマめ、悪趣味なくせにいいもの用意しやがって。

 

《武本闘十郎との親密度が上がった!》

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

その後は、いつもの3人に加え漕前と速水が作ってくれた昼食を食べて再び探索を再開した。

まだランドリールームには行ってなかったし、行ってみるとするか。

 

「お。」

 

ランドリールームに着くと、仕田原と聞谷がいた。

 

「洗剤を入れたらここを押して、コースを選択してスタートボタンを押すんですよ。」

 

「なるほど、ありがとうございます。」

 

「お前ら、何やってるんだ?」

 

「あら、赤刎さん。ごきげんよう。実はわたくし、洗濯機の使い方がわからなくて…それで、仕田原さんに使い方を教わっていたところですのよ。」

 

…そっか、聞谷はお嬢様だから普段家事とかしないんだよな。

だから洗濯機の使い方がわからなくて困ってたのか。

 

「おかげさまでようやく使い方を覚えましたわ。これで一人でお洗濯できますわね。」

 

「どうしてもうまくいかなかったら、どんどん自分に任せちゃっていいですからね!」

 

「え、ですがそれでは仕田原さんの負担が大きすぎませんか?ただでさえ料理と館内の清掃をされていますのに…」

 

「いえいえ!むしろ、家事は自分の生き甲斐ですんで!じゃんじゃんこき使っちゃって下さい!赤刎さんも、何か自分がお役に立てる事があったら遠慮せず仰って下さいね!」

 

すごい気迫だ…

仕田原の奴、仕事熱心だもんなぁ。

 

「あ、ああ…じゃあお言葉に甘えさせてもらおうかな?俺、家事とかからっきしだしさ。何か困った事があったら頼っていいか?」

 

「ええ、喜んで!!」

 

俺は、二人と少し話をした後ランドリールームを後にした。

あと行ってないのは…トラッシュルームか。

 

「あ。」

 

トラッシュルームに行くと、一と速水がいた。

 

「お、円じゃん!どうしたの?」

 

「いや、俺はまだトラッシュルームには来てなかったから見ておこうと思ってな。お前らは何をやってるんだ?」

 

「あー、えっとね。ここ、焼却炉を動かすための機械があるから、千歳に調べてもらってたんだよね。」

 

「そうだったのか。…で、何で速水まで一緒にいるんだ?」

 

「あー…千歳がさ、一人だと怖いって言うから。それで、ちょうど暇だったアタシが付き合ってあげてるわけ。」

 

「だって!!一人でいたら殺されちゃうかもしれないんだよ!?」

 

「…おい、怖いのはわからなくもないがあんまりそういう事言うな。」

 

「ひぃっ!ごめんなさい!」

 

「で、何かわかったのか?」

 

「あ、えっと…この機械、基本自動モードになってるんだけど手動モードにできるみたい。あと、夜時間中は稼働しなくなるみたいだから注意してね。」

 

「なるほどな。」

 

俺は、二人と話をした後トラッシュルームを後にした。

その後は全員食堂に集まって探索の結果を報告した後夕食を取り、夜時間が来たので全員個室に戻っていった。

こうして、楽園生活の2日目が終わった。

 

 

 

 


 

 

 

ー生存者ー

 

【超高校級の講師】赤刎円

 

【超高校級のカウンセラー】安生心

 

【超高校級の天才】神崎帝

 

【超高校級の香道家】聞谷香織

 

【超高校級の脚本家】黒瀬ましろ

 

【超高校級の幸運】漕前湊

 

【超高校級の???】枯罰環

 

【超高校級のタロット占術師】札木未来

 

【超高校級の家政婦】仕田原奉子

 

【超高校級の冒険家】ジョナサン・ウォーカー

 

【超高校級の武闘家】武本闘十郎

 

【超高校級のヴァイオリニスト】弦野律

 

【超高校級のソフトウェア開発者】一千歳

 

【超高校級のランナー】速水蘭華

 

【超高校級の画家】筆染絵麻

 

【超高校級の収集家】宝条夢乃

 

ー以上16名ー

 

 

 

 

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