魔導英傑伝   作:黒い玄米

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夕日は沈む。

遥か昔。

まだ、今よりも人が幅を利かせていた時代。

其れの暴虐は始まった。

 

其れは自らを

『我々は人に仇なす者──魔物の、王。それ即ち魔王なり。』

人々は安寧と幸福を失った。

親も知らない子も多くいた。

子を失った親も多くいた。

しかしこの惨劇を黙って耐え続けるほど我等が人類も弱くはない。

数々の国が魔王を狩ろうと尽力したが、意味無し。

そんな中、一人の青年が立ち上がる。

 

──これが、後の世にも伝わる、

『魔王の喉元に最も近付いた戦士』。

其の名は、ドレイク。

 

その生涯は明らかではない。

だが彼のおかげで魔王の驚異は無くなった。

これだけは確かな事実である。

 

彼が本当に実在したのか疑問に思う者もいるが、書物から見ても、確かにそのような物事があったという記録は存在している。

そして彼が遺した物は未だ世界に存在する。

一つは、この世界がまだ魔王に支配されていない事実。

もう一つは彼が生涯愛用した魔剣。

 

其れは平和の象徴として死の大地の中心に刺さっている。

誰もそれは抜けない。

誰かを待つように、ただ幾年もそのままで。──

 

 

 

 

 

本は好きだ。

目の裏にいとも容易く景色を映し出せる。

足を組みながら陽の光で本を読む。

日が落ちていく頃合に、COOLに佇む俺が一人。

 

バタンッ!ガチャッ!

「バラフト!あ!まーたその本読んでるのかよ!」

「バカヤローこれ以外も読んでるわ。そうだアルゴス、お前もどれか読んでみたらどうだ?」

 

毎度毎度俺の読書の邪魔をしてくるコイツはやる事はないのだろうか。

 

「バカ言え、俺が落ち着いて本読めると思うかよ?」

「ははっ。それもそうだな。このアホめ。」

「ぬかすなよこのヤロウ!俺に一度でも狩りで勝った試しがあるかよ!」

「ウルセェ今の時代にゃ頭が大事なんだよ頭が!」

「こんなド田舎にかよ?」

 

こいつの言うとおりだ。

ここはキンギ王国の中でも寂れた地、第3ヘキチ村。

僻地も僻地。田舎も田舎。

村人も少ないし、来客も年に数回、行商人や国のお偉い様が来られる程度。

正直こんな本読んでも大して意味はない。

ただの趣味、いや将来への投資と言うべきか。

 

バタンッ!

「おおアルゴス、バラフト。ここにいたか!」

 

ヨボヨボのじいさん…いや、我が村の長ことソンチョじゃないか!

ソンチョ珍しいな。息を荒らげながら入ってくるなんて。明日槍でも降るんじゃねーの?

 

「お、なんだソンチョ。腰痛めたか?」

「今バリバリ歩いてんだよなぁ。」

「おお…寄る年波には勝てんわい…じゃなくて!!」

「じゃ何だってんだ?とうとう廃村か?」

「違う!!まあお前らにゃまあ良い知らせじゃ!!」

「なにィ!?新しい本が手に入ったァ!?」

「違う!!お主らを街に出す事にした!」

「「は!!?」」

 

一生涯この村にいるつもりは断じてない。

いつかは街に出るつもりだった。

だがしかしこんなにも早くチャンスが来るとは…!

 

「で、でも大丈夫なのかよ俺達いなくなってよ。」

「大丈夫じゃ。むしろ育ち盛りのお主らのせいでキツかったんじゃ!」

「先祖代々の墓はどうすんだよ!俺達の親だって…入ってんだぜ!?」

 

俺達の親世代は隣国との戦争で多くが命を落とした。

俺と、アルゴスの両親もまた、例外じゃない。

 

「安心しろい!近いうちにヨリキ街の近くに移してもらうよう手はまわしてある。」

「俺達の行く街は?」

「そこじゃ!墓参り頼むぞ!」

「ガンコな爺婆共も了承してんのかよ!?」

「ああ。皆納得してくれたよ。もうこの村にはお主らを除けば後先のない者しかおらん。そんな村におっても──つまらんじゃろう…?」

 

この爺さんは俺の心を見透かす力でもあるんだろうか。

俺がいつしか村を出る事を気づいていたのだろうか。

 

「あ、あと仕送り頼むぞ。流石にタダで街に送らせる訳じゃないからのぉ!カカッ」

「テメェそれが目的か!」

「ああそうじゃ!今夜はご馳走じゃぞ!のんびりしないでとっとと来いよー!」

 

…とある果ての村の夕暮れに、こんなどんちゃん騒ぎがあった事を、今はもうだれも知らない。

そして、ここから始まる物語を、今はまだ誰も知らない。

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