マルタ達はキッチンでエッグベネディクトを作る。
俺とヴァーリはテーブル席で休む
「できた~!」
「ナイスエッグ!卵のトロトロ具合もばっちりなのだな!」
「試食の味も満点だったし、こっちもちゃんと保存しておかないとね?」
「問題ないとも。保温の魔術を掛けてある」
「卵料理完成だな」
「次はどうするんだ?」
「う~ん、そうね。メインにはまだ早いかしら」
「メインの前にもう一品くらい欲しいとこでちね。汁物―――スープ系はどうでち?」
「うむ。賛成しかない」
「冬の真っ最中だからな。熱いスープで体を温める…女将らしい気配りだ」
「スープ系、いいかもねえ。具沢山のシチューとかにするのはどう?」
…あれ、シチューで何か引っかかる気がするけど、思い出せない…
「
「ああ、それはいい。腹の中から温めてこそ冬を生き延びられる」
「ふむふむ」
マルタは俺をチラ見する。何だ?
(おや、マルタ殿。トーマ殿の方をちらりと見たか?)
(トーマの好みが気になるんだね。分かりやすいマルタっていうのも、可愛いなぁ)
(愛らしさか。分かるとも。年若い姉弟を見ているかのようだ)
「悪くない…か?」
「分かったわ、シチューね!きっと大丈夫。スープ料理は得意だもの!とっておきの美味しいシチューにするから、楽しみにしていてね、トーマ」
「あ、ああ…」
何か俺に某ペンギン属性が付いてる気がするな。気のせいか?
「いい返事!んーもう、お姉さん心を掴むいい子!おいでおいでおいで。ほーら、よしよし」
「いでででで!」
マルタは俺の頭を強く撫でる。この感じ、前にどこかで…?
『お母さん!今日ね、先生に作文で褒められたんだ!』
『あら、それは凄いわね。トーマ』
『いてて!…えへへー』
一つ思い出した。母さんは撫でる力が
「…トーマ。どうかしたか?」
「母さんは撫でる力が何故か強かったって事を思い出した」
「はぁ?お前の母親はあの時…」
「アレは赤の他人だ。俗に言う母を名乗る不審者だ」
「じゃあお前の母親は一体誰なんだ?」
「シチューで何か思い出せる気がするんだ」
「じゃあシチューで決定として―――野菜なら、サラダの時に採ったものが結構あるね。サラダ向きじゃない食材を利用しよっか」
「ニンジンやジャガイモ等の根菜が沢山あるとも。実に素晴らしい事だ」
「ジャガイモ、ジャガイモ。…知らない筈なのに、知ってるのよね。不思議だわ。バターに合うアレよね!」
「んー。そっか、そうよね。マルタ、無理してない?疲れてたりしない?」
「?」
「認識のずれがある霊基ってのは、あたし達より一層大変かと思って。どう?」
「確かに。認識や感覚のずれが続く状態であれば、意識の疲弊は十分に有り得る話だ」
「心配してくれてありがとう。でも、問題無いわ。気持ち的にはメイン料理まで止まりたくないし、メインまでいったら最後まで走り抜けたいし!平気。だから、いきましょう!」
「気力充分だな。では、食材確保に向かおう」
「野菜があるならお肉が欲しい!シチューは具沢山でなければな!」
「お肉は勿論必要ね!牛肉かしら…あ、ベーコンとかもいいかも!」
「肉類なら在庫がたっぷりあるな」
「普段から使うものだし、お肉の在庫なら他にもそれなりにね。お肉主体の料理にするなら別だけど、まだ地下在庫でゲットする程じゃないかな」
「そうなのね!じゃあ、その、皆が良ければなのだけど、まずはミルクが欲しいかも。どう?」
「あ、いいわね!」
「異議なしだ」
「ワン!」
「ご随意に」
「よーし!みんな大好き、ホワイトシチューを作りましょう!」
「…ほう、ホワイトシチューだと!」
来たのはライネスだった
「司馬懿?いや、ライネスか…?」
「ライネスだろ」
「うむ、自分の師匠を見分けられるようで、喜ばしい」
…っ!今、スカサハと鬼一法眼の気配を感じた
てか、俺はお前の師匠じゃないんだぞ
「気のせいか。カルデアのクリスマスは頓狂な事ばかりだが、ホワイトシチューとはやるじゃないか。軽く炙った仔牛に白ワイン、とろけるようなベシャメルソース。フランス料理ではブランケットと言ってね。モダンブリティッシュでも、たまにお目にかかるのさ。ただ、なにしろ仕込みが面倒なものでね。美味しいやつにありつくのは、意外と難しい…!」
「ほう…」
「ふむふむ?」
「つまり、だ。そういう事なら、私もレシピを提供できる。ぜひとも作ってくれたまえよ。パーティーの一参加者として楽しみにしている。せっかくだ。物理的な援助もしておこう」
ライネスは俺達に強化の魔術をかける
「これは…!」
「わっ。なんだか力が湧いてきたわ!ありがとう!」
「へえ、司馬懿っていうかライネス、お料理にも一家言あるとはね。ありがと!」
キャットはキャットで走り回る
「タマモキャット!強化を受けて滾るのは分かるが、まだ早い!」
「ははは。彼女は奔放な笑顔も素敵だね。しかしレディの祝福とは実にありがたい。騎士にとって素晴らしい励みになるというものだ。諸君、行くとしよう。―――さあ、ミルクの確保だ!」
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いつものように、地下食糧庫に行き、ミルクについてスカディに聞く
『…ホワイトシチュー?』
『別名クリームシチュー。20世紀初頭の日本で生まれた料理ですね。ミルクや乳製品を用いたシチューです。シチューそのものはフランス発祥で…ライネスさんの仰ったように、フランスには、乳製品を用いたブランケットという料理もあるそうです。ですが、ことホワイトシチューとなると日本の発祥とされていて―――現代でも定番のメニューだそうなので、トーマさんにとっては懐かしい味かもしれませんね』
『ふふ。トーマの故郷の味か。気を遣ったな、マルタ?サーヴァントの心遣いというモノか』
(もー。言わないでおいたのに…)
(まあ、仕方あるまい。当の本人は気にしていないようだ)
「ええそう、そうなの!折角だから故郷の味はどうかしらって。トーマも嬉しいかと思って。余計なお世話だったら、ごめんなさい」
正直、記憶さえ戻ればそれでいいけどな
「ホワイトシチュー、久しぶりに食うな」
「そうなの?じゃあ、いっそう気合入れなきゃだわ!」
マルタの拳が空を切る
「ん。気のせいだろうか?今、レディの拳が鋭く空を切っ「気のせいじゃない?」「気のせいだろう」そうだろうか―――」
「眠れる獅子を目覚めさせれば大山鳴動。ネズミが騒げばお店は閉まる。多少のビリビリは自然現象のようなもの。大きな心でスルーするがよい」
「そういうものか…。ご教示病み入る、レディ・キャット」
「なぁパーシヴァル、キャットの言葉が分かるのか?」
「ははは。みなは分からない、とでも?」
ブーディカがパーシヴァルに睨む
「んん?」
『ホワイトシチューといえば、日本では白米に合う料理とされているようですね』
「あー…、そう…なの、か?」
「は?シチューに白米は合わねえだろ!」
ヴァーリがキレる。コイツはかけない派なのか
俺?どうでもいい
「パンにも白米にも会うのがホワイトシチュー。最強の一角と言っても過言ではない」
『ああ確かに!金時が喜びそうな献立です』
「あれ、頼光?管制室にいるの?」
『紅閻魔様のご指示で、こちらにお弁当などを届けておりました。エネミーの反応のルーンに無いものだという事で、管制室の皆様、忙しくされているとの事。食事をする暇もないだろう、と紅閻魔様がお気を遣われたのです』
「おお…。幻のホテルの女主人だと聞いてはいたが、納得の心遣い。騎士パーシヴァル、感服いたしました」
『マスター御不在のカルデアは、どうか我らにお任せくださいませ。どうぞ後顧の憂いなく、存分にミルク探しをなさってくださいな!』
「ありがとう、頼光」
「ありがとう、黒髪の美人さん。―――あっ思い出した、源頼光さん、頼光さんね!」
そこにエネミーが来る
「お、来た来た。氷削りタイムかな?」
「ええい面倒だ!まとめてカチ割りかき氷にしてくれるワン!」
(どっちだよ)
(どっち?)
(どちらだ?)
(カチ割り氷とかき氷の、どちらなのだ?)
「とーーーーう!」
カチ割るのか、かき氷なのか、どっちだよ
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エリアへ繋ぐ道が開く
『来たな、ルーンの導きだ。さあ―――』
『ああ、噂の。では第四の食材エリアという訳ですね』
『その、私の台詞を取らないで欲しいのだが…』
『皆様いってらっしゃいませ!お気を付けて!』
「いってきまーす!」
『ああっまた…。う、うむ、気を付けるのだぞ!』