手紙を書こうと思った。
特に理由はないが、なんとなく。
もちろんノープランだから誰に送るかすらもよくわかっていない。決まってるわけがない。
「誰に送ろう……」
そう呟きながら、考える。
というのも、友人と呼べる友人は特に手紙を送る必要のない距離にいるからだ。
同じところにいるし。
遠方に住んでる知り合いなんていないし、他に手紙を送れるとすれば──
「あっ」
ぶっちゃけ記憶はないが、たまに夢でぼんやり見るあいつ。
過去の─、精霊だった頃の僕。
それなら送り先なんて書かなくても別にいいし、元から届かないなら何を書いても許されるだろう。だって僕だし。
とはいえ、自分で自分自身に手紙を書くなんてどこか気恥ずかしくて。
呼び方もわからないし、わざわざ毎回「過去の僕」とか「精霊の時の僕」なんて書くのが面倒だしバカバカしくなってしまう。
だから名前をつけようと思ったんだけど……
「うーん……っだーーーーー!!!!!!決まんねーーー!!!!名前つけるのってこんなに決まらないものなのか!!!!!!!世の中のお父さんお母さんすげえ!!!!!!!」
考えること1時間半。全く決まらない。
自分自身の名前なんだからカレーとか天ぷらとか唐揚げとかでもいいのに、何をそんなに悩んでしまうのか不思議でたまらなかった。
しかし、あまり適当に決めると文面がおかしくなって万が一永澄くんたちに見つかってしまって読まれた場合、ものすごく心配されてしまうに違いない。絶対そうだ。
病院に連れてかれるかもしれない。それは願い下げだ。
拝啓、ハンバーグへ。なんて書き出してしまうと見られた時もそうだが何より書ききれる自信もない。絶対に笑ってしまう。というかもうこの時点で笑いそう。
「名前……名前か……」
不意に部屋にある本に目を向けた。
大して数はないし、永澄くんみたいなよくわからないけどすごい本もない。
漫画とか、教科書とか、そんなのばかりだが名前を決めるのには役立つかもしれない。
適当に手に取った本をパラパラとめくる。
閉じて戻す。そして別の本を開いて閉じて戻す。
そんなことを5回ほど繰り返していると、扉をノックする音が聞こえた。
「煌矢、今ちょっといいかい?」
「永澄くん?どうしたの?」
扉を開けて部屋に入れる。
「この写真が落ちてたんだけど、煌矢のものじゃないかなと思って。ほら、相当違うけどちょっと似てるじゃん?」
「写真?そんなの撮った記憶が……」
言いかけたところで写真に目を落とす。間違いない、こいつは夢で見るあいつだ。
永澄くんから写真を借りて裏を見る。
名前が書いていないかを確かめようかと思った。
写真の裏にはたしかになにか書いてあったが、残念ながら読める字ではなかった。というかこれ何語?と思うような、文字というより記号のようなものが記されていた。そもそも字がかすれすぎて何も読めない。いつのだよこれアルファベットなのかも疑うレベルだわ。
「煌矢?どうかした?」
「ううん、なんでもない。ありがとう。残念だけどこれは僕のじゃないみたいだし、癒空にでも聞いてみて。」
「そっか。忙しいとこごめんね。」
そう言って永澄くんは部屋をあとにした。
結局名前はわからなかったし、仕方が無いので手紙の宛名はロールキャベツにすることにした。
拝啓、ロールキャベツへ。
うんうん、完璧完璧。いけるいける。
これならきっと誰も読んでもそこまで驚かないだろう。
よし、この調子でどんどん書いていこう。
1時間後、手紙が完成した。
我ながらいい文がかけたと思う。
宛先は実在しないので、封筒に入れて大事に保管することにした。
「兄さん、ご飯の時間…って、どうしたの?涙目になって……花粉症?」
「えっ?い、癒空?!いつからそこに??!!」
気がつけば癒空が僕の部屋を扉から覗き込んでいた。
「涙目になるような事なんてしてないんだけど…」
「じゃあ花粉症ですね、そういうことにしておきましょう。ご飯出来たから早く来てくださいね。それじゃあ。」
一方的に花粉症と決めつけられた。
癒空が部屋を去ったあと、ぽつりと一滴、涙が零れ落ちた。
しかし何も悲しくはない。寂しくもないし、花粉症というわけでもない。きっと頑張りすぎたのだ。手紙を書くなんて慣れないことをしたから。
だからこれは汗だ。そういうことにしよう。
手紙を片付けて食卓へ向かった。
「拝啓、ロールキャベツへ。」
「特に理由はないけど手紙を書くことにしました。」
「あなたには聞きたいことがたくさんあるけど、あなたを思い出す事ができません。」
「名前がわからないからロールキャベツと呼ぶことにしました。」
「ただ、ひとつだけ気になることがあって、ここに書き記すことにします。」
「いつか思い出した時の為に。」
「あなたはいつも一人で僕の前に現れますが、友達や仲間って居ないんですか?」
「あなたは今、幸せですか?」
「幸せだったら、幸せじゃなくても幸せを感じることが出来たら、」
「僕を通して、教えてください。」
「どんな形でもいい。」
「だから、きっと教えてください。」
「これは、僕との一方的な約束です。」
「約束、守ってくださいね。」
「必ずですよ、■■さん。」
というわけで、超久しぶりの投稿です。
設定も口調も何もかも忘れております。
ただ一つ覚えているとすれば、煌矢の一人称は僕ではなく俺だったはずです。
原作とは何も関係ない二次創作なので許してください
湿っぽい話になりましたが、流石に3年半ぶりとなれば書き方もわからないしあの時の勢いもなく……
文章構成力は三年前からなにも変わっていないみたいです。
次は気力があれば近いうちに書きたいと思います。
来週は修学旅行なのでその時に色々思いついたらいいなと思いやす!
癒空ちゃんの口調が原作者さんの方で定まる前に勝手に仮定したやつで書いてあったので修正しました
https://twitter.com/miki_or_yurai/status/926797411728605190
拝啓ロールキャベツは我ながら変な事書いたなと思ってます。反省はしていないし後悔もないが。