Weapon 1 密林ゲリラ野郎
東京の薄暗い路地裏で、その場に似つかわしくない立派な和服を着た老人が、何度も後ろを振り返りながら、必死な形相で走っている。
「はぁっ!!はぁっ!!倉脇と島田の糞ボケがぁぁっっ!!!あれだけ目をかけたっちゅうに裏切りおってぇぇ!!!!」
男の名前は『岩鬼権蔵』、西日本の極道を束ねる岩鬼組の組長である。だが、そんな大層な肩書きを持ちながらも今現在、お付きの者もなく、惨めに何者かから必死に逃げていた。
「はぁっ!はぁっ!もう駄目じゃっ!げほっげほっ。」
やがて権蔵は、体力の限界が来たらしく、咳き込みながら膝に両手を付き走るのを止めた。大きく肩で呼吸をしながらも周りを見渡すと、自分以外動くものはいない。権蔵は、追っ手から少しは距離を離したのを確信し、急いで携帯電話を取り出し電話をかける。
『プップップップッ』
(まだ信じられねぇっ!あれだけの人数の護衛が一瞬で!!しかもなんじゃ、あの忍者や化けもンどもはっ!)
息が整ってきた権蔵は、数日前からのことを思い出す。
数日前、東の極道連合が、西日本極道連盟の会長でもある自分に秘密の会談を持ちかけてきた。疑いながらもわざわざ東京まで行き話を聞くと、それは米連を本拠地とする多国籍複合企業体『ノマド』を後ろ楯とした、すべての極道をまとめる全日本統一連合参加の呼び掛けであった。毛唐の組織に入る気はないと断ると、岩鬼組の幹部である『倉脇』と『島田』の突然の裏切りを皮切りに、この世の者とは思えぬ化け物や忍者らしき者に急襲を受ける。自分は、罠の可能性を考え、どんな人数でも返り討ちにする武闘派の護衛を何人も連れてきたはずであった。しかし、その武闘派の護衛達も命を捨てて、自分をこの路地裏に逃がすのが限界だった。
(やはり、東が魔界のもんと手を結んでいるのは本当じゃった……しかし、あれだけの手練れを一瞬で!!)
『もしもし、会長! どないしたんでっか!』
やっと電話が繋がった。
権蔵が、急いで用件を伝える。
「東がノマドの野郎とつるみよった!!!急いで西を纏めて迎撃体制を……」
その時、はるか上空から何者かが、権蔵の背後に音もなく着地した。
「み~つけたぁ」
「ゴブォッッ??!!!!」
権蔵の胸から、いきなり三つの鉄の爪が生えた。
権蔵が、大量の血を吐きながら後ろを振り向くと、赤いハイレグのような服を着た妖艶な笑みを浮かべる美女がいた。さらに視線を下に向けると女は、両手に鉤爪が付いた手甲をはめており、その片方の鉤爪で自分の体を貫いている。
『もしもし、会長っっ!!!』
「あ、赤い女忍者……鉤爪をはめとる……」
『え!!なんですって、忍者っ?』
女は、痛ぶるのが本当に楽しいと言わんばかりの笑みを浮かべながら、権蔵の体に刺している鉤爪をグリグリと動かす。
「最後に極道の会長らしくかっこいい格言残して、死んでよ。ほら、ほら、ほらぁぁ!」
「ガハッ!うぐぅっ!!……う。……ぞう。……うぞう。」
権蔵は、痛みに顔をしかめながらも、ある単語を何回も小さく呟く。
「え、なぁに?」
思わず耳を傾ける女。
「し、将造ォォォッッッッ!!!!」
権蔵は、思い切り顔を上げ、暗い夜空に向かって命の限り叫んだ。
「うるさいっ!」
ザシュ!!!
あまりの大声に顔をしかめた女は、空いているもう片方の鉤爪で、権蔵の首を跳ねた。鮮血を吹き出しながら、ゴロリと転がる権蔵の生首。
『会長!返事してくださいっ!会…』バキャ!
まだうるさく鳴っている携帯を破壊した女は、地面に転がる権蔵の首を踏みつけ、また表情を笑顔に戻す。
「ショウゾウ?誰よそれ?まぁいいわ。これで西日本の極道達もお終いね。あはははははっっっ!!!!!」
女の笑い声が、狭い路地裏で木霊した。
この後、会長を失い裏切った幹部に乗っ取られた岩鬼組は、抵抗むなしく解体され、さらにノマドの支配は、関西圏に徐々に浸透していくこととなる。
しかし、ノマドの者達は知らない。後が断末魔の如く叫んだあの名前の主『岩鬼将造』は、近い未来、人間や魔界の者に『極道兵器』と呼ばれ、核兵器以上に恐れられることを。
岩鬼権蔵が殺害された半年後……
ダダダダダダ……!!!!ドゴォォォン!!
『きええ!』『ぎゃお!!』『ゲゲゲ……!』
鬱蒼と草木が茂る密林で、何百という銃の発砲音、地雷の爆発音、絶命する人間の声が、絶え間なく響いていた。その喧騒の中で、軍服の男が無線機に必死に叫ぶ。
「奴ら、こちらの動きを読んで待ち伏せていやがった!!周りはゲリラと地雷だらけだ!は、早く救援をッ!!」
軍服の男からの通信を聞いているのは、海岸の安全圏にいるこの戦闘の指揮権を持つ米連の上層部達だ。
「落ち着け、まずは現在位置を述べよ……」
上官達がいるテントから、通信の会話がわずかに聞こえる離れた場所で、他の陸軍の兵と待機している褐色の長い黒髪をポニーテールに纏めた筋肉質な美女が、苦虫を噛み潰した顔をしていた。米連陸軍特殊機械化部隊に所属する『ミラベル・ベル 』である。
(ぐ、中華連合め……中東にどれだけの武器を横流ししたんだ。)
今回の作戦は、米連に麻薬を広めている中東の麻薬組織の壊滅である。しかし、単なる麻薬組織であれば、軍など出向しない。組織の裏に中華連合がいることが判明し、米連の戦艦や機械化部隊を含む海、陸軍が出動することになったのだ。
だが、戦闘が始まって何時間も経つが、その機械化部隊に出動の命令が一向に下りない。何故なら、軍の上層部は、まず米連と繋がりが薄い金で雇った傭兵を先行させて、相手の力量、作戦を見極めてから、奥の手の機械化部隊を出動させる作戦だったからだ。
ミラベルとしては、例え金で雇った傭兵であれど、一刻も早く救援に向かいたい。しかし、軍曹の階級であるミラベルには、全軍の指揮権などなく、悔しそうな表情をするのみであった。
(待機も任務の内だと分かっているが…。 私達が出動すれば、無駄な犠牲を出さずに殲滅できるのに…ん?)
ヒュルルルル……ズドォォン!!!
『ぎゃおぉぉっっっ!!!!ブツッ!』
轟音が鳴り響いた瞬間、無線から断末魔らしき叫びが聞こえ、通信が途絶えた。
(この音は戦艦の艦砲射撃!まさか、味方の傭兵達が戦っている場所に!)
傭兵達は、特定の国や組織に金で雇われているだけで、所属している訳ではない。故に米連は、麻薬組織の予想外の軍事力を少しでも削ぐために、替えが聞く傭兵達を囮にして、ゲリラ兵ごと殲滅する手段に切り替えたのだ。
(くそっ、私達は何のためにいるのだ!!)
味方を巻き込むほどの戦艦の砲撃で、前線で戦っている傭兵達は、パニックに陥っていた。てっきり、今回の雇い主である米連が、窮地にいる自分達に救援の軍を寄越してくれるものだと思っていたからだ。
「米連の野郎!!俺達ごと吹き飛ばすつもりだ!!」
「もうだめだ!!」
「ああ…!!」
「早く逃げよう!!」
「逃げるったってどこに逃げればいいんだ!!」
見通しが悪い密林の中、ゲリラ兵と地雷に無数に囲まれ、上空からは戦艦の砲弾が降り注ぐ。進むも引くも留まるも地獄。歴戦の傭兵達も今度ばかりは、死を覚悟した。
ある一人を除いて……
「うぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
ドガガガガガガ!!!!
弾丸、砲弾の嵐の中、一人の日本人の傭兵が、マシンガン片手に地雷も恐れず、ゲリラ兵の一団に無謀にも向かって行った。
その特攻を見て上官らしき男が、大声で叫ぶ。
「マッド・ドッグ!!戻れ!死ぬ気かぁ!!」
「ばかたれ!!敵も予想外の砲撃でひるんどるんじゃ!今、勝負せんでいつするんじゃあ!!!」
マッド・ドッグと呼ばれた日本人は、何十人といるゲリラの集団に銃撃しながら突っ込んだ。
「わぁ!」「ああ!」「なんで!?」
ゲリラ兵達は、その狂人のような行動に恐れおおのき、集中して銃撃をするが、弾丸は日本人の体をギリギリで掠めるのみで当たらない。さらに無数に埋まっているはずの地雷や広範囲を吹き飛ばす砲弾においては、掠りもしない。
「あいつはおかしい!」
「なんで当たらないんだ!」
その光景に敵どころか味方である傭兵達も驚いている。
「弾なんぞ、怖いと思うから、当たるんじゃ~~~~!うわぉぉ!わしが睨み付けりゃ地雷だって逃げ出すわい!」
恐怖など微塵も感じず、逆に楽しささえ感じている顔で、さらに日本人は進んで行った。異常な状況だが、とにかく敵の集団に大きい穴が空いたことは確かだ。傭兵達は、この場面でしか生き残るチャンスはないと感じ、特攻する日本人を追いかけるように進軍していった。
同時刻、傭兵達を犠牲にして十分な砲撃を浴びせた米連の軍隊は、やっと虎の子の機械化部隊を出動させた。
(やっとか。ゲリラ供め。最大火力でもって一気に制圧してやる!)
米連の強化外骨格部隊が、出動した十分後、麻薬組織のボスであるジョセフ大佐は、頑丈なトーチカで他の幹部と共に米連のことをせせら笑っていた。
「米連も大金をかけてこの攻撃とは……。わしの流している麻薬をどうしても潰したいらしいな…。無駄なことを。」
その時である。
ドガァァ!
頑丈であるはずの扉が、銃撃で破壊され、薄暗いトーチカに強烈な日の光が入ってきた。その入り口から、逆光と砂煙で顔の見えない一人の傭兵が、突っ込んでくる。幹部連中は、敵だと一瞬で判断し、銃撃を加えた。
ダダダダダダ!!!!
弾丸は、すべて命中したかに見えた。しかし、傭兵は先程撃ち殺した二体の敵兵の死体を盾にして、弾を防御しており無傷であった。そして、その二体を抱えたまま逆に両手のマシンガンで反撃してきた。
「うぉぉぉぉぉ!!!」
スダダダダダ!!!!
「ぎゃおっ!」「ぐぁっ!」「がはっ!」
傭兵は、長方形の長い机にダイブし、スピードを殺さず、滑りながら両脇に陣取る幹部達を一瞬で銃撃した。勢いよく上座まで滑った傭兵は、そこに座っている一番偉いと思われる者の鼻先に銃口を突き付ける。
「ようやく会えたな、ジョセフ大佐」
「貴様、あの戦闘の中、ここまで来るとはなんて強運な……」
「これが俺の喧嘩のやりかたよ!」
傭兵は、容赦なく引き金を引く。しかし……
ガチッ!
「ふぁは?」
弾切れだ。
逆転を確信したジョセフは、胸から素早く銃を取り出し、引き金を引く。
「貴様もこれまでだ!」
ズドン!
「なに!?」
弾丸は、傭兵ではなく、机に当たった。傭兵は、机の上で思い切りのけぞり弾丸を避けたのだ。代わりに下半身を上げて、ジョセフの顔面に蹴りを放つ。
ガシュン!
ジョセフは、たった一回の蹴りで落命し、地面に崩れ落ちた。死体を見ると顔面に複数の穴が開いている。蹴りを放つ瞬間、傭兵の靴底に凶悪な鋭いスパイクが出現し、その仕込み靴の一撃で大佐の命を奪ったのだ。ジョセフの落命を足裏で確信した傭兵は、血だらけの顔面で勝ち誇った笑みを浮かべた。その傭兵は、無謀にもゲリラ兵の集団に特攻したあの日本人だった。
その後、ボスが殺されたと知った麻薬組織のゲリラ兵達は、烏合の衆に成り果てて、後詰めに送られた米連の機械化部隊に次々と討ち取られていった。
数時間後、残党がいないことを確認した米連の軍人達は、地雷がない安全地帯で撤退の時間まで自由行動を取っていた。安全地帯の中でミラベルは、重厚な強化外骨格を脱ぎ、ある人物を探していた。ある人物とは、あの絶望の状況の最中、自分の命も省みず、勇敢にも特攻し、仲間達を救ったという日本人、通称『マッド・ドッグ』本名を「岩鬼将造」という男である。
(一体、あんな地獄のような状況でどうやって、単身で敵のボスを討ち取ったのだ?マッド・ドッグという二つ名を持つ日本人……。日本に行く前に一回会っておきたい。)
ミラベルは、この戦いを最後にストーム・キャットという強化外骨格部隊を率いる隊長として日本に派遣される予定であった。故にこの戦争の英雄である日本人に少し興味が沸いたのである。仲間の傭兵に居場所を問うと、将造は米連のキャンプ地から少し離れた場所で、降伏し捕虜となったゲリラ兵達を見張っているらしい。ミラベルは、少し興奮した面持ちで、傭兵の指示した場所へ向かっていった。
しかし、数分程歩くと、捕虜達がいると思われる方向から、微かだが銃撃音と悲鳴が聞こえてきた。
(まさか、捕虜達の反撃にあっているのか?)
ミラベルが急いで音の発生源に到着すると、そこには信じられない光景が広がっていた。
まず最初に目に入るのは、十人ほど木に生きたまま吊るされたゲリラ兵。次についさっき撃ち殺したと思われる、まだ血を流している新鮮な死体の山。最後に椅子に座り、片手で果物を食べながら、楽しそうに吊るされた捕虜を撃つ日本人らしき男。その男こそ、ミラベルが探していた英雄、岩鬼将造だった。
ミラベルは、一秒ほど愕然と立ち尽くした後、急いで椅子に座っている将造に怒りの表情で詰め寄った。
「何をしているっ!我々に捕虜に対するリンチは、許されていない!米連に雇われている以上、風紀を乱す様な行いは許さん!軍人として自覚をもって行動しろ!」
殺気を放つミラベルに対して、どこ吹く風といった顔で将造は答える。
「わしら、傭兵じゃ。米連の軍じゃねぇ。ゼニをもらって、こいつらの掃除を頼まれたんじゃ。綺麗に片付けるのがプロの仕事じゃろうが。」
そう言いながら、新たな弾を込めて吊るされた捕虜を狙う。ミラベルは、怒りの表情のまま、持っている銃を将造に向けた。
「止めろ!!それ以上やれば、貴様を撃つ!銃を下ろ……」
ドンッ!!
ミラベルが言い終わらないうちに、将造は、捕虜の頭を容赦なく撃ち抜いた。
「やめられんのう……」
あっけに取られるミラベルに対して、将造は、ニタリと片方の口角を上げて笑う。
「き、貴様……」
「人間が死ぬときの悲鳴が…わしの耳から身体中を駆け巡るんじゃ……」
残酷な言動と行動にミラベルは、血の気が引く。将造は、ミラベルの青い顔を楽しそうに見ながら、今度は自分の真後ろに吊るされている、先程撃ち殺した捕虜とは別の捕虜をさらに銃撃した。
ズドン!
「ぎゃん!」
胴体に当たり、悲鳴をあげる捕虜。
「どうした?へへへ…。」
「貴様ァッ!」
その傲慢で不敵な笑みを見たミラベルは、一気に血の気が戻り、将造を撃ち殺そうと引き金に指をかけた。将造もそれを予測して、ミラベルに銃を向ける。
ズドドン!
だが、両者から放たれた弾丸は、ともに標的に当たらず地面に着弾した。いつの間にか二人に近づいていた米連の日系軍人らしき男が、発射直前に両者の銃口を地面に向けさせたのだ。
「神竜さん!」
銃撃を邪魔されたはずの将造は、意外にも尊敬の表情でその軍人の名前を叫んだ。
「相変わらずじゃのう将造。」
神竜と呼ばれた軍人は、懐かしそうに将造の名前を言う。
「こういう生き方を教えてくれたのはあんただぜ!『極道兵器』としての生き方をな!」
突然の上官の登場と今回の戦場の英雄の名前、そして、謎の『極道兵器』という単語を聞いて、ミラベルは徐々に冷静になっていった。
(極道兵器?YAKUZA・WEAPON?この狂った男が、この戦場の英雄である岩鬼将造だと。)
「お知り合いですか?神竜大尉?」
「ああ、ミラベル軍曹、こいつはわしに任せてくれんか。もう、捕虜は殺させんけぇ。」
「……わかりました。先に戻ります。」
上官に素直に従うミラベルは、元のキャンプ地へ戻るため、後ろを振り返る。しかし、その振り返る一瞬前、将造と視線が重なった。まだ、出会って五分と経っておらず、視線が重なった時間も一瞬だが、二人はお互いの気持ちが、熟年の夫婦のように通じあった。
しかし、お互いに考えていたことは、
(貴様は、もう一度会ったら殺す!!)
(気があうのぉ、わしもじゃ!)
という物騒な内容だった。
ミラベルが去ったのを確認すると神竜は、将造を連れて、誰もいない場所に移動し、そこで神妙な顔で口を開いた。
「将造、久しぶりに会ったが、まさに兵器のような活躍じゃ。死んだ親父さんも手を焼いてわしに預けるはずじゃ。」
「死んだ?親父が?!」
「半年前に…立派な極道じゃった。」
「ククク……」
「?」
「ぐわはははは !ついにくたばりおったか、あの石頭の骨董品が!生きているうちに日本制覇してやると吹いとったくせに!これでせいせいしたわい。」
将造は、少しも動揺することなく、さも愉快そうに大笑いした。その笑いを咎める様子もなく、神竜は続ける。
「親父さんは、東の極道との会談で殺されたらしい。最後にお前の名を断末魔代わりに叫んだそうじゃ。」
「泣かせる話じゃ。」
言動と違い、まだ笑っている将造。
「将造、日本に帰れ。」
「わしは狭い日本に飽きた。世界を相手に喧嘩するんじゃ。あぁ、半島紛争が懐かしいワイ……」
「お前が出ていって十数年立ったが、今現在の日本の裏世界は、昔と比べて海外モンに侵食されとる。あの東京キングダムやアミダハラは、日本政府もうかつに手が出せん。じゃから今なら米連、中華連合を相手に喧嘩できるぞ。」
「ほぉ……」
「さらに親父さんを殺したのは、東のモンやない。わしも米連の者じゃから大声で言えんが、東を配下に置いて直接手を下したのは、あの『ノマド』らしい。」
「?!……詳しく聞かせてくれ。」
将造は、『ノマド』という単語を聞いた瞬間に真面目な顔に変わった。
ノマドとは、本社機能こそ米連に置いているが、その活動範囲は、全世界に及ぶ巨大企業である。軍事産業を中核にあらゆる種類の事業に手を広げており、ノマドが提供する製品やサービスなしでは、現代社会において日常生活をおくることすら難しい。だが、それは表向きの話で、裏では数々の悪事に手を染めているらしい。
神竜が詳しく伝えた情報は三つ。ノマドの日本の裏世界への支配は予想外に進んでおり、東の極道はもう支配下に置かれ、次に西に進出するため、邪魔な将造の父を殺したこと。その際、同じ組の幹部である倉脇と島田が裏切ったこと。最後に父を殺したのは、鉤爪をはめた謎の赤い女忍者であること。
話を聞くうちに将造は、両方の目元と口角が段々と吊り上がり、先程の愉快そうな笑顔と一線を画す、殺意を帯びた笑顔に変わっていった。
一方、将造に対する怒りを抱えて軍の元へ戻るミラベルは、極道兵器という言葉がまだ少し頭に引っ掛かっていた。
(私が日本に派遣されれば、あの男とおそらくもう会うことはないだろう。だが、もし会えば私の強化外骨格で必ず殺す!しかし『極道兵器』と言う言葉…気になるな。)
その後、幸か不幸か、ミラベルは自分が派遣される日本で、この『極道兵器』という言葉の意味を嫌と言うほど知ることとなる。
麻薬組織と激闘を繰り広げた数日後、日本の空港に傭兵を辞めた将造含む三人の男達が、飛行機から降り立った。
「久し振りの日本じゃ。懐かしいのぅ。なぁ三太郎!」
将造の故郷への感想に三太郎と呼ばれた丸いサングラスをかけたモヒカンの男が、笑いながら同意する。
「ヒャハハハハ……ええですのう。やっぱ、日本の空気はうまいですわ!」
次に笑みを浮かべる短髪の男が、将造に問う。
「若!最初にやっぱ、親父さんの墓参りですか?」
「バカたれ!拓三!久し振りの日本じゃぞ!まずは………………牛丼じゃ!」
「「えぇ~~~?」」
極道兵器のデス・ドロップ・マフィアと対魔忍のノマドって設定似てると思ったら、妄想が止まらずに書いてしまいました。
キャラの口調と設定、ファンの方から見て違和感ないか心配……
もうひとつの連載作品は、辞めた訳ではないので気長に待ってて下さい。
後、感想お待ちしております。