対魔忍者と極道兵器   作:不屈闘志

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Weapon 17 異次元イカ野郎 煉獄編

いきなり空間の渦から現れたブレインフレーヤー『アルサール』は、将造達六人を不気味な緑の目に映すとニヤリと笑う。

 

『六匹…予想よりも少々多いですが、すぐ駆除して上げましょう。』

 

ピキッ…

 

ブレインフレーヤーはオークや獣人も驚く未知の生物なのだが、将造はそんな事はお構いなしに容赦なく青筋を立てた。

 

「冗談を言うとは、芸達者なイカじゃのう…今すぐイカ焼きにするのが勿体ねぇぜ~!」

 

そう言って、左手のマシンガンをアルサールに向ける。

 

そして、青筋を立てているのは将造だけではない。

 

「私はタコに見えるわね。けど、関係無いわ。後、数秒でどっちかわからない程グチャグチャになるんだから…」

 

アスカも将造と同じく青筋を立て、火花が収まったアンドロイドアームを向ける。

 

先程まで互いに向けるはずだった二人の銃口が、アルサールに向いた瞬間…

 

バリバリバリバリバリバリッッッ!!!!!!

 

「「?!」」

 

凄まじい轟音と閃光がアルサールを襲った。

 

二人が驚いた顔で雷撃の出処を見ると、憤怒の表情のゆきかぜがいた。彼女の手から放たれ雷撃は怪生物を倒した時、ましてや現代にいる彼女の雷撃と比べ物にならない程の威力である。

 

しかし…

 

『フハハハハハハハハハ! こんな雷撃、私には通じません。今の私は、ブレインフレーヤーが誇る最高のテクノロジーで戦闘ボディで復活を遂げているのです。いわば、真アルサール!』

 

大笑いするアルサールの体には、傷どころか焦げ目一つついていなかった。

 

「食らえ! アンドロイドアーム・抹殺マシンガン!!!!」

 

「うりゃああっっっ!!!!」

 

ズガガガガガガガガ!!!!!!!!×2

 

次はアスカと将造が持つそれぞれのマシンガンがアルサールを狙う。

 

チュイン! チュイン! チュイン! チュイン!

 

だが、電撃と同じようにいとも簡単に銃弾が弾き返された。

 

『ハハハハハハハハハハ!! 原始人らしい武器ですね!!』

 

ビキビキ!

 

馬鹿にしたように笑う無傷のアルサールにより激しく青筋を立てた将造とアスカは、さらなる追撃を加える。

 

「なら、こっちはどう! アンドロイドアーム・皆殺しミサイルッ!!」

 

「うぉぉぉっっっっ!!! 大人しく殺されんかいっ!!!」

 

アスカのアンドロイドアームの小型ミサイルと将造の右足のロケットランチャーが同時に発射された。

 

シュゴォォォッッッッ!!!!!×2

 

ミサイルとロケットは、勢いよくアルサールに向かっていく。

 

『フフフ……』

 

しかし、アルサールは笑ったまま、先程のマシンガンと同じく、相変わらず避ける素振りを見せない。

 

ズドォォォォンッ!!!!!

 

そして、そのすべてが着弾し、凄まじい爆発が起き、爆煙がアルサールを包んだ。

 

「「……」」

 

アスカと将造は、その煙を油断なく睨んでいる。魔界の住人の一部やマッスルジョーのように悪魔と契約した人間でもない限り、あの爆撃に耐えられる生物などいない…はずであった。

 

『フハハハハハハハハ!!!』

 

炎と煙の中から、何事も無かったかのような笑い声が響く。

 

「嘘でしょ…」

 

「チッ!」

 

アスカは僅かな驚きの顔、将造は怒りの表情で、晴れ始める煙を見る。

 

『そんな原始的なミサイルで私を傷付けられると思っているとは、やはり下等生物ですね。』

 

炎の中から現れたのは、無傷のアルサールであった。アルサールは、二人を小馬鹿にしたように喋り続ける。

 

『それにその身体。肉体と機械をそのように歪に継ぎ接ぎするとは、なんと醜い。しかし、下等生物の愚かな文化なサンプルとして是非持ち帰りたい。どうです貴方達? 私のコレクションになりませんか?』

 

不遜な態度を続けるアルサールに将造とアスカは、遂に目まで血走り始めた。

 

「遺言はそれでお終い? 今すぐ消滅させてあげる。」

 

「馬鹿たれ! 逆にぬしの首を切り取って暖炉のある壁に飾ったるわい!!」

 

怒るアスカと将造に喚起される様に、他の四人も戦闘態勢を取り始める。

 

「アスカ! 極道達は後回しよ! 先にこいつを始末するわ!」

 

「拓三、俺達も援護するぜ。」

 

「ああ、若をあんだけ馬鹿にされちゃあ殺すしかねえよ。」

 

(テセラックが隠されている今、もうアルサールを倒すしかない。)

 

『来なさい…』

 

アルサールが呟くと同時に六人がそれぞれ散開した。

 

「「うぉぉッッッ!!!」」

 

ズガガガガガガ!!!!!×2

 

まず三太郎と拓三は、左右に別れてアルサールの両サイド斜め前から銃撃する。

 

チュイン! チュイン! チュイン!…

 

だが、将造とアスカのマシンガンと同じく黒光りする装甲に跳ね返される。

 

『だからそんなものは効かないと…』

 

ザザザザザザザザ!!!!!

 

アルサールが呆れ気味に両サイドの二人に注意を向けた時、前方中央から複数の風の刃が襲いかかる。鉄骨をも両断するアスカの忍法『風神・陣刃』の連続攻撃だ。

 

「風神・陣刃乱舞!!」

 

ズガッ!ズガッ!ズガッ!……

 

アスカが技を叫んだ瞬間、いくつもの風の刃がアルサールの胴体に直撃した。

 

『中々、面白い技を使いますね。生きたままコレクション出来ないのが残念です。』

 

だが、アルサールは両断されず、体が少し揺れた程度に収まった。

 

「やっぱり、効かないか…まぁこれが目的じゃないけどね♪」

 

アスカが素早く横に跳躍すると、彼女のすぐ背後には将造が控えていた。

 

「うぉぉぉ! 標本の虫ピン代わりにこれを喰らわんかい!」

 

将造は、ポン刀をアルサールの胴体に付き立てるべく突進する。

 

『ふぅ~もうサービスタイムは終わりです。今度は蹴散らしてあげま…ん?』

 

「はぁぁぁっっっっ!!!」

 

アルサールが迫りくる将造に身構えたとき、彼の耳に叫び声が後ろから聞こえてきた。首を背後に向けると、ゆきかぜが両手に黄色く輝く雷の刃を振りかざし迫ってくるのが見える。

 

『なるほど、フェイントからの挟み撃ちですか、しかし、そんな下等生物の浅知恵、私には通用しま…「今よ、マダムッ!!」?!』

 

アルサールが前方の将造と背後のゆきかぜに注意を向けて迎撃しようとした時、アスカの声が響いた。

 

ヴヴヴヴ……

 

その瞬間、仮面の対魔忍がいきなりアルサールの頭上から現れた。仮面の対魔忍は、アルサールが銃撃する三太郎と拓三に気を取られたのを見計らい、光学迷彩で身を隠したのだ。そして、両手に持つナックルブレードの刃でアルサールの緑色の目を狙う。

 

それと同時に前方の将造のポン刀は心臓部に、背後のゆきかぜの雷剣は脊髄へとそれぞれ斬りかかった。

 

「対魔殺法・鬼切離!!」

「雷剣(ライトニングソード)!!」

「どりゃぁっっっっ!!!!」

 

三太郎、拓三、アスカはその必殺の三点攻撃に注目する。

 

「ぶっ殺せぇ!」

「いけぇ! 若ぁ!」

「決まって!」

 

しかし…

 

ガキィィィンッッッ!!!!

 

「「「「「「?!」」」」」」

 

将造達の耳に、予想し得ない大きい金属がぶつかり合う鈍い音が響いた。

 

『いやいや、すごい攻撃ですね。自慢の装甲が少し凹んでしまいましたよ。』

 

並の対魔忍や魔界の住人に取っては、ひとたまりもない将造、ゆきかぜ、仮面の対魔忍の必殺の攻撃は、確かにアルサールに当たりはした。しかし、頑丈な装甲は急所の部位までも厚く覆っており、いとも簡単に三人の攻撃を跳ね返してしまった。

 

「ちぃっ! まさか目の部分までこんなに硬いとは…」

 

「大丈夫ですか?! マダム!」

 

仮面の対魔忍は、ここに来て初めて驚きと焦りに満ちた表情になっており、心配するアスカが彼女に駆け寄る。

 

「……」

 

「くそ!! 刃が欠けてしもうたわ!!」

 

同じく必殺の攻撃を防がれて、アルサールから離れる将造とゆきかぜも、仮面の対魔忍と同じような表情だ。

 

『フフフ、今度はこっちの番です。』   

 

一方、焦る三人の表情を満足そうに見たアルサールが、緑色の目をギロリと光らせた瞬間…

 

ザザザザ……!!!

 

アスカと仮面の対魔忍の方に凄まじい速さで詰め寄り、爪先まで装甲に覆われた腕を振りかざしてきた。

 

「速い?!」

「くっ?!」

 

アスカと仮面の対魔忍は、その腕をギリギリで避ける。

 

ドゴォッ!!!

 

勢い余ってアルサールの腕は、地面を抉った。

 

「アスカ!! 今度は同時に首元を…『ドムッ!!』ぐぁっ?!」

 

「きゃあっ?!」

 

避けた二人が反撃を試みた瞬間、背後の死角から一撃を加えられた。

 

『フフフ…』

 

攻撃したのはアルサールの長い尾であった。その尾は五m程あり、他の部位と同じく先端まで装甲に覆われていた。

 

背後から分厚い装甲の一撃を受けた二人は、数m先まで吹き飛ばされる。だが、地面に激突する瞬間に受け身を取り、素早く立ち上がった。

 

「ゲホッ…こいつ動きが滅茶苦茶のくせに、私達に一撃を加えるなんて…元々の生物としてのポテンシャルが桁違いだわ。」

 

「ヒュ…ヒュ…性格も…ゴホッ! 最悪だし苛つきますね。」

 

二人は、背中に重い一撃をくらったため呼吸が乱れ荒くなっている。

 

しかし、息を整える暇など与えるかと言わんばかりにアルサールが再度、素早い腕と尾を使い二人に襲いかかった

 

『死になさい!! 下等生物ッ!!』

 

「アスカ! 今度は関節部を攻撃するわよ!」

 

「クッ?! 了解!」

 

そこから二体一の激戦が始まった。

 

アルサールの動きは、相変わらず滅茶苦茶で、何も訓練を受けていない素人同然の動きである。しかし、仮面の対魔忍が先程呟いた通り、ブレインフレーヤーという種族は、人類や魔族より桁違いのスピードとスタミナ、そしてパワーを持っており、熟練の戦士である二人が徐々に追い詰められていく。さらに二人は、装甲の弱点であるはずの関節部位を何度も全力で攻撃しているが、他の装甲と同じく刃が弾かれるため為す術が無く、スタミナ切れで倒れるまで時間の問題であった。

 

一方、三太郎、拓三は歯痒そうにアスカ達の戦いを離れた所で見ている。

 

「くそ! あのイカ野郎…目も口も装甲で覆われてる分、マッスルジョーよりやりづれぇ!」

 

「それに性格が最悪な癖に、動きと力も俺達とは段違いだ! 細胞具の伯父貴のあの新兵器さえあれば…」

 

そして、もう一方の離れた所では、ゆきかぜがアスカ達に加勢しようとする将造を止めていた。

 

「ゆきかぜ! 何故止める! 装甲が固くてもわしの馬鹿力でイカ野郎の首を回転させたり、腕を引きちぎることは出来るはずじゃ!」

 

「将造! あの二人は大丈夫なの! それよりもアスカが持っていたトランクを探し…」

 

「未来でそう決まっているからか…」

 

「?!…………」

 

ゆきかぜは、図星を付かれたかのように言葉を失った。

 

「その様子じゃと本当らしいの? 三太郎と拓三もあえて聞かんようじゃったが、多分わしらは、未来であの二人よりも、イカ野郎達に手痛い目に遭わされるんじゃろ?」

 

「………」

 

ゆきかぜは、何も答えられない。彼女には、未来で三人はブレインフレーヤーと戦うが、三太郎と拓三は感染者に成り果て、将造は十年も孤独に感染者を狩り続けるなど言えるはずがなかった。

 

将造の言うことは本当だというように沈黙するゆきかぜを見た将造だが、凶悪な笑顔でニヤリと笑った。

 

「ほうか…だったら未来のわしらの仇討ちじゃ。この極道兵器に任しとけ!」

 

「けど将造! 今の武器じゃ…」

 

「誰がまともに戦うと言うた? 今から極道らしい戦いを見せてやるぜ。」

 

将造が自信満々にゆきかぜに宣言した。

 

そして、それと同時にアルサールは、一旦戦闘を仕切り直すように二人と距離をおいた。

 

「ハァ…ハァ…どうしたのかしら? もう諦めたの?」

 

「フゥッ…フゥッ…謝る気になった?」

 

アスカと仮面の対魔忍は、最初の尾の一撃からアルサールの攻撃をすべて避けてはいた。しかし、絶え間ないスピードと予想外の尾の猛攻に晒され続け、スタミナを予想外に消費し肩で息をしていた。

 

(アスカ、大丈夫?)

 

(最初の一撃以外上手く避けてますけど、体力が不味いです。せめて対魔超粒子砲が撃てる隙さえ作れたら…)

 

一方のアルサールは、二人の攻撃を無敵の装甲ですべて弾いており、ダメージを受けた様子も疲労した様子もなかった。しかし、自分の攻撃がすべて躱されているのに少し苛立ち、新たなる行動を取ろうとしていた。

 

『ちょこまかとすばしこっいハエですね…そろそろ一掃して差し上げます!』

 

そう言ってアルサールは、大袈裟に両手を大きく広げたと同時に…

 

『キシャキシャシャァーーーーー!!!!!』

 

と不快な金切り声を上げた。

 

将造は、鼓膜が切り裂かれるような鋭いアルサールの奇声に耳を塞ぐ。

 

「イカ野郎…下手くそな歌、歌いやがって…なに?!」

 

将造が何も無い空間に目を見張った。叫んで数秒後、最初にアルサールが出現したような空間の歪みがそこら中に現れたからだ。

 

将造達六人が身構える中、渦の中から複数の声が聞こえてくる。

 

「お呼びで御座いますか、御主人様?」

「お呼びで御座いますか、御主人様?」

「お呼びで御座いますか、御主人様?」

 

次々と渦の中から三mを超える○ンダムのようなロボットがと出現した。

 

「ゆ、ゆきかぜ? あ、あのロボットは何だよ?」

 

三太郎が慌てて、ゆきかぜに問う。

 

「あれはブレインフレーヤーが使役している生物の一種、機械生命体『パズズ』よ…不味いわね。」

 

ゆきかぜは、現代に来て一番の焦りに満ちた顔になっていた。

 

「ああもうゾロゾロと鬱陶しい!」

 

「勘弁してほしいわね。」

 

アスカと仮面の対魔忍は、ゴキブリがでたかのように軽い調子で毒づくが、先程のアルサールの戦いで体力を憔悴しきっており、この現状を打破する考えが浮かばないでいた。

 

そして、将造達が注目するなか、十数体のパズズが倉庫内に降り立った。

 

アルサールは、焦る将造達を見て緑の目を細めて満足そうにニヤける。

 

『その表情をずっと見ていたいですが、後数分で終わりなのが残念…ん?』

 

アルサールは、そんな絶望的な状況の中、一人だけ不敵に笑う男を見つける。

 

将造だ。

 

「へへへ、イカ野郎…こんなポンコツいくら呼んでもこの極道兵器には無駄だぜ。」

 

ピキッ…

 

その不遜な態度にアルサールは、怒りを覚えたのか、将造の方向に手をかざし、一体のパズズに大声で命令した。

 

『その不遜な態度を取るオスを先に仕留めなさい!』

 

「承知致しました…」

 

アルサールの命令を聞いたパズズが、凄まじいスピードで将造に向かって行く。

 

「将造、下がって! パズズは雷遁使いの私が…」

 

「邪魔じゃ!!ゆきかぜ」

 

ゆきかぜが将造を守ろうとするが、それよりも早く、将造もパズズに向かって行き、跳躍して斬りかかった。

 

「どりゃぁぁ!」

 

だが、パズズは唐竹割りを浴びせようする将造に対して恐るべき速さで、鉄の爪で迎撃する。

 

「「頑張れ若ぁ!」」

 

三太郎と拓三は、将造が勝つことを願う。

 

しかし…

 

「遅いっ!」

 

「ぐぁっ?!」

 

弾き飛ばされたのは、将造の方だった。将造は、パズズの鉄爪を辛うじてポン刀で防御していたが、勢いを殺せず、そのまま吹き飛ばされ倉庫の棚に激突する。

 

ドカァァァァッッッッッ!!!!!!!

 

「「若ぁぁぁっっ!!!!!」」

 

三太郎と拓三は必死な形相で将造に叫んだ。

 

「…………」

 

しかし、将造からの返事がなく、さらに砂煙に包まれて姿も確認できない状態だった。

 

仮面の対魔忍もその様子を驚きの表情で見ていた。しかし、すぐに頭の中で疑問点が湧く。

 

(おかしい…極道兵器がいくら狂人でも、さっきの動きは隙が大き過ぎる。まるでわざと…)

 

一方、吹き飛ばされた将造を見たアルサールは幾分か溜飲が下がったらしく、落ち着いた口調に戻りパズズ達に命令する。

 

『安心して下さい。貴方達もすぐにあのオスに会わせてさし上げましょう! お前達っ!』

 

「承知しました、御主人様。」

「承知しました、御主人様。」

「承知しました、御主人様。」

 

アルサールの命令を聞いたパズズ達は、ゆきかぜ達に向けて歩き出した。

 

「若をよくも! このくず鉄!!」

「スクラップにしてやる!!」

「アスカ…私が全力を出して止めるから、対魔超粒子砲の準備を…」

「わかりました…けれど、もう…」

(くっ将造っ……)

 

十数体の迫りくる鉄の巨体を前に、将造を抜いた五人は怒りと絶望が混じった顔をしながら、再び戦闘態勢に入る。

 

アルサールは、そんなゆきかぜ達の表情を見て勝ち誇った…が、その時であった。

 

『さぁ、お前達! 止めを「待たんかいっ! イカ野郎っ!」ハッ?!』

 

ある者の大声が倉庫内に響いた。

 

『ま、まさか?!』

 

アルサールだけでなく、その場にいるすべての者が、その声の出処、つまり砂埃の中心に注目した。

 

ジャリ…ジャリ…ジャリ…

 

そして、草履の音と共に砂埃から現れたのは、血だらけの将造だった。

 

「「若ぁ!!」」

 

三太郎と拓三が喜びに満ち溢れた声を上げる。

 

『まだ、生きていたとは、しぶとい虫め! 今度は全員でかかりなさい。』

 

喜びの声を上げる二人に反して、アルサールは苛ついた顔戻り、再びパズズ達に命令を下した。

 

「承知しました、御主人様。」

「承知しました、御主人様。」

「承知しました、御主人様。」

 

今度はすべてのパズズ達が、将造に向かう。

 

将造が生きていたことに安堵したゆきかぜだが、現状が何も変わっていないことに危機感が蘇る。

 

(くそ、あの傷から見て将造は、限界に近い! 次こそパズズの一撃を食らえば、命は…)

 

傷だらけの将造にすべてのパズズが突撃するのを見て、三太郎と拓三もゆきかぜと同じく、喜びの表情が焦りの表情へと変わる。

 

「「止めろぉっ!」」

 

対照的に今度こそ勝ちを確信したアルサールは、上品な言葉が崩れ再び叫ぶ。

 

『グチャグチャのジャムにしろぉ!』

 

「「「「「「グォォォォッッッ!!!!!」」」」」」

 

複数のパズズ達が、将造に鉄の爪を突き立てる。

 

だが、その時誰にも予想し得ない信じられないことが起こった。

 

ピタッ…

 

すべてのパズズが、画面の一時停止のように静止したのだ。

 

「「「「「?!」」」」」

 

その様子にゆきかぜ達は、驚愕した顔になる。

 

『ど、どうした?! お前達! 何故止めをささない?!』

 

アルサールは、彼女達以上に驚愕した声で叫んだ。

 

「ア、アルサール様、こ、こいつ?!」

 

停止したと思われるパズズの集団が、アルサールに将造が見えるようにモーセの波のように二手に別れた。

 

「ポンコツかと思っとったが、中々賢いじゃねぇか。」

 

パズズの中心にいる将造は右手に持つある物をアルサールに見せつける。

 

『そ、それはテセラック?!』

 

将造が持っているのは、アスカが最初に持ち込み、ゆきかぜが破壊しようとし、アルサールが狙う遺物、もとい『テセラック』であった。

 

「もし、どこかのイカ野郎やクズ鉄が、わしの気に障ることをすれば、ストレス解消にこのオモチャを…」

 

コンコン…

 

将造は、笑顔で左手のマシンガンでテセラックが入ったトランクを小突く。

 

『止めろォォォッッッッ!!!』

 

アルサールが、この倉庫内に出現してから一番の狼狽えた顔になり、声を荒らげて叫んだ。

 

「『止めろ。』じゃと?」

 

ビキビキッ!!!

 

アルサールの叫び声を聞いた将造の顔にいくつもの青筋が生まれた。そして、視線だけで殺せるような目でアルサールを睨む。

 

「わしに命令口調は、例え地獄の閻魔や宇宙を喰らう化物であろうと許可しねぇ!」

 

ズドンッ!

 

パキャン…

 

将造は、トランクの取手の部分を銃撃した。取手は、砕け地面に転がる。

 

『や、止めっ!…て下さい。お、お願いします。』

 

アルサールは、歯軋りが聞こえそうな口調で、先程まで下等生物とバカにしていた将造に土下座した。

 

地面に這いつくばるアルサールを見た将造は、ニタリと凶悪な笑顔で笑うと次にパズズ達の方を向く。

 

「クズ鉄共! ぬしらは、あのイカ野郎の近くまで引き上げぇ!」

 

「「「「「「「…」」」」」」」

 

パズズ達も悔しそうな雰囲気を漂わせながら、アルサールの元に引き上げる。

 

「さっきはよくも散々コケにしてくれたのう! わしが直々に殴ってやりたいが自慢の装甲で手を怪我をしちゃ堪らねぇぜ。じゃから……代わりにてめぇらがイカ野郎を殴れ!」

 

将造がパズズ達を指差した。

 

将造の言葉を聞いたパズズ達に戸惑いが広がる。

 

「ご、御主人様を殴るなんて…」

「そ、そんなことはできない!」

「他の命令なら何でも聞くから、それだけは!」

 

狼狽えるパズズ達を見た将造は、視線をアルサールに向ける。

 

「おい、イカ野郎! クズ鉄共は、このブツがどうなってもいいらしいぜ!」

 

ズドン!

 

バキッ…

 

再度将造の左手が火を吹き、今度はトランクの角が弾け飛んだ。

 

その様子を見たアルサールは、土下座したまま絞り出すような声でパズズ達に命令する。

 

『な、殴れ…お前達!』

 

「御主人…」

 

『早くしろぉぉッッッッ!!!!』

 

「「「「「「「………!!!!!」」」」」」

 

ガキィ! ガキィ! ガキィ!…

 

『ウグッ…グェッ…ガハッ…』

 

「おら~手加減せずに足も使って思い切りやらんかいっ!!」

 

将造の激が飛ぶなか、パズズ達の集団リンチが始まった。アルサールは、ブレインフレーヤー最新の装甲を装着しているために、大したダメージを与えられているわけではない。しかし、パズズ達もブレインフレーヤーに作られた最新の機械生命体である。故に装甲は砕けないまでも、ボコボコに凹んでいった。

 

一方、ゆきかぜ達は将造の元に集い、殴られるアルサールを共に見ている。

 

「いい気味だぜ! イカ野郎!」

 

「チクショ〜俺も参加してえなぁ!」 

 

三太郎と拓三は、ボコボコに凹んでいくアルサールを見て鬱憤が晴れたかのようにニヤけている。

 

「命じていることは、悪党そのものね…」

 

「どっちが悪党か解ら…いや、やってることは、こっちの方がより凶悪かも…」

 

仮面の対魔忍とアスカは、将造の命令に少し呆れているものの相手がアルサール故に、憐憫の情など一欠片もない。そして、仮面の対魔忍は、満足そうに眺めている将造に向き直る。

 

「岩鬼将造、さっきわざと吹き飛ばされたのは、あいつらに気付かれないように、私が隠していたトランクの場所へ行く為だったのね。」

 

「ああ、そうだぜ。ぬしはゆきかぜと戦っていた時、変わり身をしながらもなんとなく、あの場所に注意を向けていたからのぉ。しかし、結構な賭けだったぜ。」

 

そんな仮面の対魔忍と将造の会話の間に、ゆきかぜが割り込む。

 

「将造…もう気が済んだでしょ? 早くそれを破壊して。」

 

しかし、ゆきかぜの最もな提案を将造は真剣な顔で否定する。

 

「確かにこれを破壊すれば、イカ野郎の目的を挫くことはできるかもしれん。じゃが、テセラックを破壊したわしらを怒り狂ったあいつらは、全力で殺しに来るじゃろう。そうなったら、もう打つ手がねぇ。」

 

「だったらどうすれば?」

 

「あいつを倒せる方法はあるわ!」

 

今度はアスカが、会話に入る。

 

「イカ野郎に二人がかりでもやられていたぬしがか?」

 

将造は訝しげにアスカを見る。

 

「私は、一発限りだけど最後の切り札があるわ。この兵器はチャージに時間がかかるけど、威力は抜群なの。米連の計算では、不死身のブラックでさえ、この技で消し飛ぶと結果が出ているし。それにあいつがボコられている今なら絶好の機会だわ。けど、それでも避けられる心配があるから…」

 

そこから将造達は、アスカが考えたアルサールを倒す作戦を聞く。

 

数分後…

 

「よし、OKじゃ! 頼んだぜ、アスカ!」

「やってやるぜ!」

「目にもの見せてやる!」

「任しといて! あんたらもしくじらないでよ。」

「まさか、今夜初めて会った者達とこんな作戦をするなんて…」

「時間が無い…早くしましょう…」

 

そして、今夜最大の作戦が始まった。

 

ガキィ! ガキィ! ガキィ!…

 

「申し訳ありません…御主人様…」

「申し訳ありません…御主人様…」

「申し訳ありません…御主人様…」

 

一方、アルサールは、将造達が話している間も殴られ続けていたが、密かに怨念の一発逆転のエネルギーを溜めていた。

 

『くそ、よくも私にこんな真似を! あのオスと私を殴ったコイツラは絶対に殺して…』

 

「クズ鉄共! こっちを見ぃ!」

 

いきなりの声にアルサールとパズズ達は、一連の行為を止めて声の方向を向く。すると、そこにはテセラックを持った将造がいた。その姿を見たアルサールが何かを言おうとした瞬間…

 

「受け取りやがれぇぇぇっっっ!!!!」

 

将造は、テセラックをアルサールの頭上、天井ギリギリまで投げつけた。

 

アルサールは自分の頭上高く投げられたテセラックを目で追いながら、即座にパズズ達に命令する。

 

『お前達! 早くテセラックを受け取れぇ!』

 

「了解しまし…」

「了解しまし…」

「了解しまし…」

 

すべてのパズズ達は、頭上のテセラックを追って跳躍しようと将造達から目を離した瞬間…

 

『幻影不知火・電!』

 

いきなり、ゆきかぜの声が響いた。

 

「「「「「「「?!」」」」」」」

 

パズズ達が視線を将造達に戻すと、目の前に雷遁の術で五体に分身したゆきかぜがいた。

 

複数のゆきかぜ達は、パズズに手をかざすと現代に来てから初めて全力の雷遁を放つ。

 

「真・雷神の断罪者!(ライトニングパニッシャー! フルコネクト・ネイキッドォ!!)」

 

バリバリバリバリバリバリッッッ!!!!!!

 

「「「「「「「グァァァァァァッッッッッッ!!!!!」」」」」」

 

すべてのパズズに何百万ボルトの電流が走り、彼らは跳躍出来ずにその場で釘付けにされた。

 

『何をしている! くそぉ!』

 

動けない部下を前にアルサールは、自ら跳躍する。

 

しかし、一m程地面から離れたとき…

 

「ロックオンじゃ!」

「対魔殺法-壱の陣・星!」

「死ね! イカ野郎!」

「うりゃあ!!」

 

予めロックオンしていた将造のロケットランチャー、仮面の対魔忍が放った大量の手裏剣、そして、三太郎と拓三のマシンガンが同時にアルサールに着弾する。

 

ドガァァァァン!!!!!!!!

 

 

堪らずアルサールは、地面に撃ち落とされた。

 

『ぐあっ! 下等生物めぇぇっっ!!』

 

「アスカ!!」

 

仮面の対魔がアスカの方向を見て叫ぶ。

 

撃ち落とされたアルサールも五人の目を追ってアスカの方を見るとアスカは、両手の掌をこちらに向けている。

 

『あ、あのエネルギーは、この前私のバリアを破ったエネルギー?!』

 

アルサールは、かつて五車を襲撃した際に物理的な攻撃をすべて通さないブレインフレーヤー特性のバリアを秋山凛子の忍法で破られたことを思い出す。あの時よりも何十倍の強大なエネルギーの前なら、例えこの自慢の装甲でも助かる保証はない。

 

「待ってました! 目標OK!」

 

アスカが考えた作戦はこうだった。

 

まず、頭上に投げたテセラックに、アルサール達の注意を向けさせ視線を将造達からずらす。次に跳躍しようとするパズズ達をゆきかぜの雷遁で動けなくし、さらにアルサールには、将造、仮面の対魔忍、三太郎、拓三のそれぞれの飛び道具で撃ち落とす。テセラックを空中で奪取するのに失敗したアルサール達は、地面で受け取るしかなくなり、落下予測地点から動けなくなる。最後に動けないアルサール達をまとめてアスカの対魔超粒子砲で一掃する。

 

「対魔超粒子砲…」

 

アスカの対魔超粒子砲とは、アンドロイドアームに備わっているチャージ機能で貯めた対魔粒子を両手のひらから、一気に撃ち放つ技である。DSO(米連防衛科学研究室)の理論上では、不死身のブラックでさえこの技には耐えられないとされており、まさにアスカ最後の切り札なのだ。

 

将造達の目眩ましによる時間稼ぎで、十分にチャージされた対魔粒子が、アルサールに向かって今まさに解き放たれる。

 

『や、やめろォォッッッ!!!!』

 

しかし…

 

「マキシマムバー『べキャ!』嘘っ?!」

 

発射直前で左のアンドロイドアームの肘部が破損し、逆90℃に曲がってしまった。

 

実はアスカのアンドロイドアーム&レッグは、将造の義手以上にメンテナンスが必要な精密機械であり、一回の作戦ごとに新品に代えなければいけない程の代物なのだ。それ故、最初の将造との戦闘でコマグナム弾を撃ち込まれ、その上すぐにアルサールとの戦闘に入ったため、いつ壊れてもおかしくない状態だった。さらに一発限りの大技である対魔超粒子砲を撃つ為の膨大なエネルギーチャージで、遂に限界を迎えてしまったのだ。

 

「くそっ大事なところで!!」

 

アスカは、残った右手で折れた左手を再度アルサールに向けようと動かすが、完全に肘部が破損してしまって元には戻らない。その上、せっかくチャージした対魔粒子が、破損部位から凄い勢いで漏れ出ている。

 

『ふぅ~…一瞬驚きましたが、どうやら天は私の味方みたいですねぇ!』

 

アスカの逆転の秘策が失敗に終わったのを見たアルサールは、落ち着きを取り戻し、後一秒程で落ちてくるテセラックを受け取るため悠々と頭上に手を伸ばす。

 

一方、すべての力を使い果たし、へたり込んでいるゆきかぜは、絶望の表情でアルサールの手に渡ろうとしているテセラックを見ていた。

 

(まさかこれでお終いなの…やっぱり過去は変えられないの…)

 

仮面の対魔忍、三太郎、拓三もゆきかぜと同じ表情でテセラックを手に入れようとするアルサールを何もできずに見ている。もう銃弾を使い果たし、投げつける手裏剣もないのだ。が…一人だけ必死な顔でアスカに向かって駆け寄る者がいた。

 

将造である。

 

「何しとる、アスカ! しっかりしやがれぇ!」

 

将造はアスカを怒鳴りながら、折れた左手を持ち、急いで両手のひらを再度アルサールの方に向けさせた。

 

(もう無駄よ…岩鬼将造。チャージした対魔粒子はほとんど空気中に流出した。それにアンドロイドアームを治して、対魔粒子をまた貯める時間なんか…え…)

 

アスカが、もう何をしても無駄という目を将造に向けようとした時、両腕に異変が起こった。

 

ズギュュュゥゥゥンッッ!!!

 

将造が両腕を支えた瞬間、チャージ機能が破損しているのにも関わらず、アンドロイドアームにエネルギーが一瞬でフルチャージされたのだ。だが、チャージされたのは、対魔粒子ではない。

 

(な、何? この凄まじいエネルギーは?!)

 

その薄緑色のエネルギーは、アンドロイドアームのチャージ機能を優に超えて、アスカの両腕を覆う溢れんばかりの輝きを放っていた。

 

(知らない…あんな凄まじいエネルギー?! あの薄緑色は対魔粒子じゃない?!)

 

仮面の対魔忍も驚きの顔で、光り輝く二人を見ている。

 

「アスカ! はよ撃てぇっ!」 

 

(ハッ?!)

 

将造の叫び声がアスカの思考を再開させた。前を向けばアルサールが後少しでテセラックを手にしようとしている。もう、刹那の余裕もない。

 

将造もゆきかぜの未来を滅茶苦茶に荒らしたであろうアルサールを睨む。

 

(わしは未来でブレインフレーヤーに奪われた全てを取り返す。そうじゃゲッター〈奪還者〉じゃっ!)

 

そして、頭に浮かんだ名詞をアスカの必殺技の叫び声に重ねて自らも叫ぶ。

 

「「くたばれ! 対魔超粒子『ゲッター』砲ォォォォッッッ!!」」

 

ズドォォォォォォォッッッッッッッン!!!!!!

 

将造が支えるアスカの両腕から凄まじいエネルギー波が、アルサール達に向かって放たれた。




また、もう後編なのに1万字を越えてしまいました。次で本当に完結致します。次の話は、石川賢先生の世界が満載の話です。
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