対魔忍者と極道兵器   作:不屈闘志

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第六章 東京キングダム大決戦!!
Weapon 19 中華マフィア野郎


将造達が、ブレインフレーヤーと戦う数日前、東京キングダム有数の組織の一つである『龍門』が支配するビルでとある会合があった。

 

普段はストリップショーをしていると思われる舞台がある広い部屋で、男達が一対ニで椅子に座って向かい合っている。

 

一方は、長身で殺気を放つ鋭い目をした黒いスーツを来た男。

 

対する二人は、江戸時代に来日した宣教師のような服を着た、頭頂部が禿げ上がった太った男。その隣にいるのは、三度笠を被り髑髏を腰に着飾っている侍風の男である。

 

太った男は、笑顔でスーツの男に紙の束を見せながら説明をしている。

 

「先程説明した通り、この『極道兵器』こと岩鬼将造は、日本に帰国してからノマドに牙を向き、次々と破壊行為を繰り返しています。そして、東京キングダムを救った英雄だと持て囃されていますが、実際は、この男が海座を狙った故に核ミサイルが発射されたのです。どうです? 我ら『沙無羅威』と共に岩鬼組に復讐しましょう!」

 

太った男の名は、『フュルスト』。朧やイングリットと並ぶノマドの最高幹部の一人。魔界医の中でも最高峰の腕を持ち、古くからエドウイン・ブラックに仕えるノマド最古参の男である。

 

殺気を放つスーツの男は、『黄広天』。通称『黒龍』と呼ばれる、米連と世界の覇権を争う中華連合の下部組織である『龍門』のボスである。

 

フュルストの言葉を聞いた公天は、額に青筋を立てる。

 

「ふざけるな…それが真実であろうと、貴様らは最初から核を東京キングダムに向けていたんだろうが。」

 

「いえいえ、あくまで候補地の一つとしてインプットしていたに過ぎません。実際は対魔忍の里に向けられていたのを、岩鬼将造が発射装置を銃撃して、偶然こちらに向いてしまったんです。朧はそれに巻き込まれただけで…だから、共に手を取り合って…」

 

「馬鹿か? 今落ち目のノマドと組めば、逆に他の組織から白い目で見られ、商売上がったりだ。さっさとここから…いや、東京キングダムから出ていけ!」

 

「!!!!」

 

公天が声を張り上げた瞬間、フュルストの横に座っていた侍風の男が、凄まじい殺気を放ちながら立ち上がった。

 

「止めなさい、ニールセン。」

 

フュルストが制止しようとしているのは、彼の腹心の部下であり、『沙無羅威』のボス『ニールセン』。魔の力を操る東京キングダム随一の剣客である。

 

公天は、ニールセンの殺気を受け止めながらも、毅然とした態度を崩さない。

 

「何だ? ニールセン。俺に傷一つでも付ければ、ここからただでは出られないぞ。まぁ、貴様ごときでは傷つけること自体不可能だが…試してみるか?」

 

二人の尋常ではない殺気がぶつかり合う。

 

そんな殺気溢れる雰囲気のなか、フュルストは睨み合う二人に落ち着いた声で話しかける。

 

「座りなさい、ニールセン。黄さん、私も只で同盟を組もうとしているわけではありません。」

 

フュルストの命令に従い、ニールセンは椅子に座るもまだ黄を睨んでいる。しかし、当の公天は、にらみ続けるニールセンから目線をフュルストに移していた。

 

「続けろ、聞くだけ聞いてやる。」

 

「こちらからの条件は、二つ。潰した岩鬼組の支配地域は、全てあなた方、龍門に差し上げること。そして、現在、龍門がしている研究にノマドは口を出さないこと。」

 

「……俺達の研究を知っていたのか?」

 

「ええ、六年前の朧クローンの置き土産、我が主の細胞と最強の対魔忍の細胞を掛け合わせる研究…まぁ噂ではあまり上手くいっていないらしいですが…」

 

朧クローンという単語が出た途端、公天の顔が嫌悪感と怒りに溢れた顔になる。

 

「六年前のことには触れるな…本当に殺すぞ…」

 

六年前、中華連合は、魔界の技術を使った遺伝子研究で朧のクローンを作り出した。そして、朧クローンを日本政府に廃棄されたばかりの人工島である東京キングダ厶に送り込み、龍門という組織を起ち上げ、キングダム全体を支配させた。朧クローンは、現在の龍門と比べ物にならない程、残酷極まりない人体実験を嬉々として行い、その毒牙はアサギを始めとした対魔忍やノマドの者にも向き、彼らは次々と実験の餌食となった。最終的には、対魔忍に朧クローンと実験で怪物にされてしまった対魔忍『沙耶』は倒され、ノマドに研究結果をすべて奪われてしまう。

 

しかし、中華連合は諦めずに、六年前に偶然手に入れたアサギとブラックの細胞を掛け合わせる実験を続けていた。

 

公天は、敵対する者には容赦はしないが、かつての朧クローンのように生かせながら苦しめるような残酷な実験などはせず、そして、なんの関係の無い者を犠牲にはしなかった。彼は今でこそ龍門のボスだが、元々は貧しい農家出身であり、虐げられる者の気持ちが良く分かっていたからだ。故に朧クローンが行っていた非道な実験を嫌悪しており、今だに中華連合に命令されている遺伝子実験にも辟易としていた。

 

公天の表情が憤怒の表情に変わっても、フュルストはさらに続ける。

 

「本来、我が主の細胞が使われている実験なら、我々が総力をあげて潰しても文句は言えないはずです。それを私の判断で目を瞑ろうと言っています。」

 

「………」

 

「それに龍門は、今や『海神』や『九龍会』に押されて消滅の危機だとも聞いています。ここで岩鬼組の関西の支配地域をすべて手に入れれば、本国にも申し開きが立つんじゃないでしょうか?」

 

中華連合の下部組織は、一つではない。バイオ研究を題目に魔界技術の研究を進めて、本国に莫大な利益をもたらしている『海神』、そして東京キングダムと並ぶ魔界都市である『アミダハラ』で、その三分の一を支配している『九龍会』が存在している。その二つの組織と比べて、近年、目立った成果が上げられない龍門は、吸収合併される危機的状況であった。

 

怒りを抑えた公天は、これからの龍門のことを考え始める。

 

(確かに今の龍門の状況では、いずれ海神か九龍会に吸収されてしまうだろう。さらに本国から成果を出せと迫られている『馬超』の制御も、未だにままならないときている。しかし、この男は、かつての朧クローンと同じような危険な匂いがする。)

 

『馬超』とは、最強の対魔忍『伊河アサギ』と吸血鬼の真祖『エドウイン・ブラック』の細胞を掛け合せた人工生命体である。しかし、戦闘力は申し分無いのだが、コントロールが出来ずに持て余している状態だった。

 

沈黙している公天に対して、フュルストは、最後のひと押しと言わんばかりに畳み掛ける。

 

「別に同盟は、岩鬼将造を殺すまでで構いません。これはとても破格の条件だと思いますが…」

 

その言葉を聞いた公天は、ゆっくりと口を開く。

 

「………わかった。岩鬼将造を殺すまでは、一応協力してやる。ただし、裏切ったらそれ相応…いや、それ以上の報いは覚悟しておけ。」

 

渋々といった口調であるが、公天の了承の言葉を聞いたフュルストは、安心したような顔になる。

 

「良かった。では…これからの作戦ですが…」

 

フュルストは、新しい紙束を公天に渡して、笑顔で岩鬼将造殺害の計画を話し始めた。しかし、公天はフュルストの笑みの裏側にある、残酷な計画を知る由は無かった。

 

 

龍門と沙無羅威の同盟が成された二週間後…

 

「ハァッ…ハァッ」

 

一人の少年が、東京キングダムの繁華街を何者かから逃げるように必死に走っていた。

 

「?!」

 

しかし、少年は遠くから来る誰かを見つけると急いで路地裏のゴミ袋の山に潜り込んだ。

 

数秒後、ゴミ袋の前に一人の人物が辺りを見回すように立ち止まった。その人物は、山吹色のロングの髪をして、はちきれんばかりのバストとヒップをギャル風の赤い服で無理矢理抑えこんでいる、年齢が十代後半の少女だった。

 

少女の名は、『神村舞華』。五車出身の火遁を操る対魔忍である。

 

「畜生っ! どこにいやがるんだ。あの野郎! 時間がねえってのにっ!『ピピピピっ!』?!」

 

悔しげに叫んだ舞華が地団駄を踏もうとした時、胸元の携帯が鳴った。舞華は、急いで携帯を胸元から取り出す。

 

「もしもし、爆斗か?! こっちにはいねぇぜ! え! そっちもかっ?! 遊撃隊は、獣王会の方…? なら俺は鬼武衆の縄張りに行く!『ピッ…』」

 

十秒にも満たない会話をして携帯を切った舞華は、やり切れなさそうな顔になる。

 

「腹時計がニ時間を切っていたら、すぐに焼き殺せか…久し振りにキツイ任務だぜ。」

 

そう呟いた舞華は、すぐにその場を駆け出し去って行った。

 

「………」

 

少年は、ゴミ袋の隙間から舞華が去ったのを確認するとヨタヨタと這いずり出た。そして、おもむろに胸元の服を捲る。すると服の下から、大きなデジタル時計と細いフラスコが埋め込まれた腹部が出現した。その時計仕掛けの腹を確認した少年は、焦燥感に満ちた顔になり、一言呟く。

 

「助けて…兄さん…」

 

少年の名は、『黄新紅』。龍門のボスである黄広天の中華連合に残していた実の弟である。公天は、農村で兄の帰りを待っていたところを何者かに誘拐され、体の中に時限式の細菌兵器を埋め込まれて人間爆弾にされてしまった。しかし、日本の東京に連れてこまれたところで、何故か厳重だった警備が緩み逃走に成功した。新紅は兄に助けを求めるため、東京キングダムの龍門のアジトへ向かっている途中だった。

 

そして、それらの情報が細菌兵器の映像付きで、五車に送られてきたのは数時間前だった。

 

アサギは、最初は敵の罠だと怪しんだが、公安第三課の山本から、映像の人物は間違いなく公天の弟である新紅だと確認が取れた。それを聞いたアサギが火遁衆と遊撃隊に与えた任務の内容は、

 

『腹部の時限爆弾が二時間前なら、輸送と分離手術の時間込みで何とか助けることができる。しかし、二時間を切っていたら、有無を言わさずに細菌兵器ごと新紅を焼き尽くせ。』

 

である。

 

新紅は、爆弾の時間を確認すると服を戻してまた走り出した。腹部のデジタル時計の残り時間は、とっくに二時間を切っていた。

 

 

舞華が新紅を取り逃がした同時刻、将造は東京キングダムの龍門のアジトへ三太郎と拓三を連れて向かっていた。

 

「アサギさんも無茶言うぜ。敵対している対魔忍の情報を龍門は絶対に信じないからって、命を狙われている俺達に弟の事を伝言役として使うなんてよ。」

 

「弟が助かれば、義理固い黄公天は、戦争を回避してくれるかもしれないってのは、甘すぎるっすよ。それにもし二時間を切っていたら…ねえ、若。」

 

「…………」

 

三太郎と拓三が、大きな袋を交代で持ちながら将造に愚痴をこぼす。

 

黄新紅の情報は将造達にも通達されたが、将造は最初は協力する気など無かった。しかし、新紅に搭載された細菌兵器は、一都市の人口を皆殺しにするほどの威力だと知り協力する気になったのだ。だが、将造達にお願いされたのは、共に新紅を探すことではなく、龍門のアジトへ行き、黄公天に弟である新紅の情報を伝えることであった。仮面の対魔忍に伝えられた情報では、龍門と沙無羅威の岩鬼組への侵攻はあと少し先らしい。故にアサギは戦争回避の為、そして細菌兵器の爆発阻止の協力を取り次ぐ為、長年に渡って敵対している対魔忍ではなく、まだ侵攻を知らないと思われている将造に龍門への伝言役を頼んだのだ。

 

そして、伝言役を頼んだもう一つの理由は、『神村舞華』『西円寺炎斗』『眞田焔』のような血気盛んな対魔忍が多い火遁衆と狂気を孕む岩鬼将造とが、チーム組めば、絶対に厄介なことになってしまうのが目に見えていたからであった。

 

「しかも、敵対を悟られないために少人数で行って頂戴とか言われてもなぁ…性格キツそうだけど、舞華ちゃんとか好みなのに、チキショー! 一緒に組みたかったぜ!」

 

「黙れ…三太郎。ここからだぜ。」

 

嘆く三太郎の言葉を遮りながら、将造達は龍門の支配地域の入口である通称『天安門』をくぐっていった。

 

門に入って十数m程歩き、将造が辺りを見回す。

 

「なんか、日本じゃないみたいやのう?」

 

「東京キングダムにもこんなところがあったんですね。」

 

将造達の周りは、他のキングダムの地域と同じく雑多感に溢れた建物だらけだったが、中華連合向けの漢字の看板が多く、まるでアジアの繁華街のような雰囲気だった。

 

だが、物珍しそうに周囲を観察する将造達に、二十人を超えるゴロツキのような者達が、暗い笑みを浮かべて近づいてきた。

 

「ぬしら、わしになんか用があるんじゃろうが!! はよう言えや〜!」

 

将造は、物怖じせずに大声で問うが、ゴロツキ達は、将造の声が聞こえないかのようにニヤニヤと笑うのみ。

 

「ほうかい…言わんならこっちの用を言わせてもらうで。黄公天に会わせてもらおうか!!」

 

そう将造が叫んだ途端…

 

ガタンッ!

 

将造に一番近い建物の窓が勢いよく開き、中国の道士の格好をした顔が白塗りの男が飛び出して来た。

 

「きぇぇぇぇぇっっっっっ!!!」

 

道士風の男は大きな叫び声を上げて、右手に持つ巨大な青竜刀で将造の首を狙う。

 

しかし…

 

ガキィッ!

 

「?!」

 

「ボケェ! 誰を相手しとる思うとるんじゃ!!」

 

将造は、笑みを浮かべて背中から出したポン刀で男の青竜刀を楽に受け止めた。

 

「わしゃ、極道兵器やぞぉぉぉっっっっ!!!!」

 

ズバァッッ!!!

 

将造は、青竜刀を弾き飛ばし、返す刀で男の首を切断して空に飛ばした。

 

「「「「「?!」」」」」

 

血を吹き出しながら宙を舞う首を見たゴロツキ達は、一瞬でニヤついた顔が焦りに満ちた顔に変わる。

 

「こ、殺せぇ! こいつらをぶち殺せぇ!!」

 

バタンッ! バタンッ! バタンッ!

 

一人のゴロつきの叫び声とともに、頭上の窓から先程の白塗り男と同じ格好をした男達、周りの扉からは長槍を持った男達が将造を狙って飛び出してきた。彼らは、龍門配下の殺し屋達だった。

 

「来やがれ、キョンシーども!! まとめて地獄に送ってやる!!」

 

将造は、襲い来る数本の長槍をポン刀で上手く裁き、穂先を上ヘ向けさせた。

 

ドスッ! ブスッ!

 

「グエッ!」

「ガハッ!」

 

空中から襲いかかる白塗りの男達は、いきなり向けられた穂先が空中故に回避できず、深々と胸や喉に突き刺さった。

 

「ああっ?! そんな『バスッ!』ぎゃん!」

「わ、わざとじゃ『ズバッ!』おごっ!」

 

味方を刺し殺して狼狽える長槍を持った男達を、将造は容赦なく斬り殺していく。

 

「なんだこいつは?! 化け物か?!」

「撃ち殺せ!」

「蜂の巣にしろ!」

 

一秒足らずの間に、五人もの凄腕の殺し屋が殺され、その凶行を見た男達は青冷めた顔で次々と銃を発射した。

 

ズドン!ズドン!ズドン!

パラララララララ!!!

ダダダダダダダダダ!!!!

 

将造達は、十数人の殺し屋の仲間ごと弾丸の雨に晒される。

 

そして、硝煙立ち込める中、わずか数秒で銃痕だらけの死体の小山ができあがった。 

 

その山を見て周りの殺し屋達が、勝利を確信した笑みを浮かべ銃弾を一旦止める。

 

「や、やったのか?」

 

殺し屋の一人が、死体の山にゆっくりと近付く。

 

「へへへ、これだけ撃てば流石に…ん、何か動いたような?」

 

男の目には、死体の山の一部が動いたかに見えた。そして、もっとよく確かめる為に、さらに近付いた瞬間…

 

ズボォォォ!!!!!

 

男が近付くのを待っていたかのように、死体の山からいきなりガドリングガンが生えた。

 

「「「「「?!」」」」」

 

キュィィィィィィィィン!!!!!!

 

驚いている間に、ガドリングガンの四つの銃口がこちらに向いて回転し、今度は弾丸が逆に自分達に発射された。

 

ズガガガガガガガガガガ!!!!!!!!!

 

「ぎゃあ!」

「ごほぁ!」

「ぐあ!」

 

それは左手を抜いた将造のガドリングガンだった。敵の死体を盾にする、将造が戦場でよく使う戦法だ。

 

周りの殺し屋達が、ガドリングガンで吹き飛ぶとともに将造、三太郎、拓三の三人が死体の山から飛び出す。

 

「うおおお!」

「うりゃあ!」

「死にさらせぇ!」

 

ダダダダダダダダダダ!!!!

 

そのまま残りの殺し屋達も銃撃していく。

 

「な、何だコイツラはぁっ?!」

 

将造の正面のビル各階に配置していた他の殺し屋達は、数で勝っていた地上の仲間が、三人の普通の人間に蹂躪されるの見て驚く。

 

将造は、正面のビル二階から六階の窓から現れたこちらを観察する殺し屋達を確認し、銃口を向けたが…

 

「ここにいる人間はみんな殺し屋かぁ! ん?!」

 

上空から異常な殺気を感じ取った。

 

「二人とも離れろぉ!」

 

「「?!」」

 

将造達は、素早くその場から飛び退く。

 

ズドォォォォォン!!!!!

 

そして、複数の何者かが、常人なら死亡必死な高さから、将造達が一秒前にいた場所に降り立った。

 

「な、なにもんだ? こいつら?」

 

「また魔界のモンか?」

 

三太郎と拓三は、目の前に現れた者達を見て驚く。

 

その者達は、常人より身体が二回り程大きく、手足が奇妙に長かった。さらに頭部は、髪が無くつるりとしているが、代わりに広く裂けた口、そして本来、目と耳があるところに人工のセンサーである巨大な目玉が埋め込まれていた。服こそ着ているが、彼らは、明らかに人とは違う化け物であった。

 

将造は、急に目の前に現れた異形の者達を見てニタリと笑う。

 

「いや違うぜ。おそらくこいつは、仮面のマダムが言っていた龍門が作った強化人間、『グール』ってやつじゃな。」

 

彼らは、中華連合で未だに続けられている魔界の技術と遺伝子研究をかけ合わせた人工生命体である強化人間であった。その存在は、対魔忍や米連でも確認されており、通称『グール』と呼ばれている。

 

十数匹のグールは、地面に降り立った途端に各四つの目玉が周りを素早く観察するようにギロギロと動くが、将造達が視界に入ると乱雑な動きを止めて、すべての目玉が一気に三人に集中した。

 

三太郎と拓三は、彼らの感情の無い爬虫類のような視線を一芯に受けて身震いする。

 

「なんかこいつら、心の動きが見えねぇ…」

 

「正に兵器の為に作られた生物だな…」

 

だが、将造だけは笑顔を崩さず、左手のガドリングガンをグールに向けた。

 

「噂のグールの力、試させてもらうぜ!」

 

ズガガガガガガガガガガ!!!!!!!!

 

将造は二人に先行して、グール達に人間の体を貫通させる程の威力を持つ、ガドリングガンの弾丸を全身に浴びせた。

 

しかし…

 

『『『『『『グルルルルル………』』』』』』

 

グール達は、体を仰け反らせたのみであり、さらに体表面には傷一つ無い。

 

「馬鹿めっ! そいつらの皮膚は、ライフル弾だって弾くんだ!」

「さっさとミンチにされろぉ!」

「死ねえ、日本のヤクザども!」

 

グール背後の正面ビルの各階で戦闘を見ている龍門の殺し屋達は、大声を上げて将造達を揶揄する。

 

ビキビキ!

 

将造は、額に青筋を作りながら左手のガドリングガンを外して拓三の方を向く。

 

「拓三、あれを出せ。」

 

「はい! 若!」

 

拓三は、持っている大きな袋から、ゴムのチューブが袋と繋がっている太く長い砲身の銃を将造に渡す。

 

ガチッ!

 

将造はすぐさま左手に装着し、砲身の先を長い爪を伸ばして勢いよくこちらに迫って来るグール達に向けた。

 

「それなら…こちらも思い切りやったるぜえぇぇっっ!!」

 

ゴォォォォォォォッッッッ!!!!!!

 

『『『『『『?!』』』』』』

 

将造の叫び声と共に左手の砲身から巨大な炎が吹き出した。炎は、即座にグール達全てを包み込む。

 

「こいつらは対魔忍の火遁にも耐えるよう作られている! ただの火炎放射器なんて…え?」

 

『『『『『『ギェェェッッッ??!!』』』』』』

 

火に強いはずのグール達が、人間には出せない奇声を発しながら、火達磨で分けのわからないジダバタとした動きをし始めた。

 

グールの一連の様子を見たビルの殺し屋達は、一瞬ポカンと間の抜けた顔になるが、自慢のグールが痛みと苦しみの動きをしていると分かった途端…

 

「「「「「ヒィィィッッッッッ??!!!」」」」

 

と悲鳴を上げて一目散に逃げ出した。

 

将造の左手に装着された新兵器は、新紅の時限細菌爆弾が時間切れだった時の為の火炎放射器であった。しかし、普通の火炎放射器の威力なら、一人の人間が燃え尽きる程度だが、将造は対魔忍の武器製造を担当している『内源賀平』を脅して、数十倍の威力の火炎放射器を作らせたのだ。それはあまりの残虐さ故に米連のみならず、世界で使用禁止とされた『ナパーム』と人間を溶かす航空機用液体燃料『ヒドラジン』を大量に高射出する特別製であり、標的に火が付けば高温で燃え続け、雨が降っても鎮火は不可能である悪魔の兵器なのだ。その殺傷能力は、並の対魔忍の火遁とは比べ物にならない。

 

『『『『『『アギィィィィィ??!!』』』』』』

 

「ヒヒヒ、化け物の癖に良い悲鳴を上げよる。それにしてもこれはええ兵器じゃ〜地獄にいるマッスルジョーも羨ましがるぜ。」

 

苦しみ続けるグール達の断末魔がゴスペルのように聞こえる将造は、リラックスした顔で左手をガドリングガンに戻した。

 

将造が楽しんでいるうちに、グール達は苦しむ動きと悲鳴が段々と小さくなり、やがて完全に静止した。

 

周囲の敵が全滅したのを確認した三太郎と拓三は、将造に駆け寄る。

 

「やっぱり、龍門の奴らは喧嘩腰というか、もう俺達を殺しにかかって来てますね。」

 

「どうします? 若?」

 

「勘違いしてるのは奴らじゃ、このまま行くしかねえ!!! まぁ、後で良い詫びの品を贈られれば許してやってもええがな!」

 

「さ、さすが、若…」

 

「あっちが謝る立場なんすね…」

 

 

「た、大変だ! ヤクザ達が来る!」

 

正面ビルから逃げた殺し屋の一人が、焦燥した顔で黄公天含む龍門幹部が待機している部屋にノックもせずに飛び込んで来る。

 

「バレてたんだ! 俺達が沙無羅威と組んで岩鬼組に攻めようとしていたことを! どうする黒龍!」

 

幹部の一人が慌てふためき、公天に駆け寄る。

 

「させない…」

 

公天は、覚悟を決めた顔で勢いよく立ち上がった。

 

「日本で危ない橋を渡ってここまで来たのだ! このまま潰されてたまるかぁっ!」

 

そのまま、周りの幹部達に向かって叫ぶ。

 

「ここで引き下がったら、これからこの国での我々の居場所は無くなる! 俺達はまた、この東京キングダムを支配して、国から家族を呼ぶために戦って来たのだ! ありったけの武器で奴を倒すぞっ!」

 

「「「「「「オウッッッ!!!!!」」」」」」

 

配下だけでなく、幹部達も武器を持って雄々しく立ち上がった。続いて公天は、遺伝子研究を担当している丸坊主の眼鏡をかけた男に大声で命令する。

 

「おい、地下の『ハイグール』と『馬超』を解き放つ準備をしておけ!」

 

「良いのかっ?! ハイグールはともかく、馬超はまだ制御が…」

 

『ハイグール』とは、エドウイン・ブラックの細胞と人間の細胞をかけ合わせた人工生命体である。戦闘力は『馬超』には劣るが、只のグールとは比べ物にならないほど優れている。さらにコントロールには成功しており、現在は量産化を研究している最中であった。

 

坊主男が迷った顔で聞き返すが、公天の表情は変わらない。

 

「いざと云うときの保険だ…」

 

「わかった!」

 

坊主男は、急いで携帯を取り出し連絡をし始めた。

 

しかし、公天が飛ばした激に周囲の者達の士気が上がるなか、公天自身は表情と裏腹に、胸中からある疑問が湧き上がってきた。

 

(おかしい…沙無羅威に連絡して、もう一時間が経つのにまだ何の連絡も応援も来ない。とっくに四天王の誰かが来てもおかしくないはずだ。まさか…『ガタッ…』?!)

 

公天の考えを中断させるようなタイミングで、いきなりバリケード代わりに扉の前に積まれていた椅子が動いた。

 

ジャキッ!ジャキッ!ジャキッ!

 

一斉に部屋内のすべての銃口が、動いた椅子に向く。

 

その数秒後、椅子の間から出てきたのは、暗い顔をした一人の男だった。

 

「見ない顔だな…撃『待てっ!』?!」

 

制止を叫びながら公天は、銃撃しようとする幹部達と椅子から出てきた男の間に割り込んだ。

 

「お前…新紅?!」

 

「兄さん…」

 

男は、人間細菌爆弾にされた新紅だった。

 

公天は、男が実の弟である新紅であると判ると彼の両肩を持って激しく問い詰める。

 

「お前、どうしてこんなところに?! 密航してきたのか?!」

 

「兄さん、助けて…爆発しちゃうよ…」

 

新紅は、公天の問いには答えずに服を捲って腹部のデジタル時計とフラスコを見せた。

 

「?!」

 

公天は、新紅の「爆発」という単語を聞くとその腹部にあるものが、すぐに爆弾であることに気付く。

 

「これが爆弾だというのか?! お前の体の中に爆弾が埋め込まれたということか?! 一体誰がこんなことを…お前の身の回りは、本国の警備兵が居たはずだ?!」

 

公天は、中国に残してきた家族を人質にされないよう、貧しい農村だが、多大な費用を払って中華連合所属の兵に守らせていたはずだった。

 

「僕ら家族を誘拐したのはその警備兵なんだ。誘拐されて家族とバラバラになって、すぐにこの爆弾を取り付ける手術をされた。その後は、何故か日本の東京キングダムに連れてこられて、警備が薄くなってきたところを逃げ出した…」

 

「ま、まさか、本国が俺達(龍門)を切り捨てようとしたのか?! 誘拐した奴の特徴は、他に解るか?!」

 

「海を渡る前は中華連合の兵士達だったけど、日本に着いた時は、このマークを付けた兵士だった…」

 

新紅は、床にアルファベットの「N」と「M」と「D」が合体したようなマークを書いた。

 

「ノ、ノマド…」

 

そのマークは、表や裏の世界でも使用されている、総合企業ノマドのマークであった。

 

公天が驚くなか、坊主男が腹部を調べ始める。

 

「こいつは普通の爆弾じゃない。化学兵器みたいなものを持ってる、細菌兵器かもしれない。」

 

「どうなんだ?! 外せそうか?!」

 

「駄目だ…内蔵と一体化している。手術をしなければ無理だ。」

 

「なら、早く地下の研究施設へ『ズドォォォォォン!!!』な、なんだ?!」

 

公天が、新紅を地下の遺伝子研究へ連れて行こうとした時、大きな爆発音が響き部屋が揺れた。

 

『ピリリリリリリ!!!!!』

 

そして、揺れが収まった瞬間、坊主男が先程使用した携帯が鳴った。急いで坊主男は、携帯電話を取り出す。

 

「どうしたっ?! 何?! そ、そんな馬鹿な?!」

 

坊主男の表情が、絶望の顔に変わっていく。

 

「どうした?!」

 

「ハイグールが……殺られた…」

 

「なにっ?! 極道兵器か?!」

 

「違う…殺ったのは…『サイエント』。沙無羅威幹部の殺人鬼サイエントだ!」

 

坊主男の叫び声に、公天だけでなく龍門幹部全員に激震が走った。

 

 

同時刻。

 

「出やがったな! ノマド野郎どもっ!!!!!」

 

ズガガガガガガガ!!!!!

 

将造達は、数分前に公天達がいる龍門のビルに潜入して、配下の者達と銃撃戦を繰り広げていた。

 

しかし、いきなりの大きな爆発音と共に天井が破壊され、その穴から龍門配下の者達とは違う、最新の装備をした傭兵達が降り立った。彼らは、海座のビルで朧と共に現れた傭兵達とそっくりであり、疑いようもなくノマドの兵たちであった。そして、あっという間に龍門の配下達を皆殺しにして、将造達を銃撃してきたのだ。

 

「クソっ! あの時と同じ完全防弾だ!」

 

三太郎は、マシンガンを撃ちながら嘆く。

 

傭兵達は、将造達のガドリングガンやマシンガンの銃弾を受けながらも、わずかに仰け反るのみでゆっくりとこちらに前進して来る。

 

「若、もしかして今回の黒龍の弟の事件は…」

 

拓三は傭兵達を銃撃しながら、焦りが見え隠れする笑顔で顔だけを将造に向ける。

 

「ああ、やはり何かがおかしいと思うとったんじゃ。今回の事件の黒幕はノマド…というより龍門と同盟した…」

 

 

また同時刻。

 

「オラァ! ゾクトやドグルの敵討ちだっ! 岩鬼組を全員ぶっ殺せぇっ!」

 

「ブサイクオーク共のカチコミじゃぁっ! 全員獲物持って丁重に出迎えたれぇっ!」

 

元神魔組の支配地域である現岩鬼組の事務所前の広場で、五十人を超えるオーク軍団と二十人程の岩鬼組が対峙していた。

 

一瞬即発の雰囲気のなか、その様子を岩鬼組事務所の二階の窓から、心配そうに覗きこんでいる者がいる。

 

「本当に大丈夫なの? 私が加勢しなくて…」

 

その者は、フリルが付いた赤い対魔スーツ、ツインテールで褐色の少女、対魔忍の水城ゆきかぜであった。彼女は、新紅を探しに大量に出払っている岩鬼組組員の代わりに事務所の警護に付いていた。

 

「若の大事な客人の力をお借りするまでもありゃせん。まぁ、見ていてつかぁさい。」

 

一人のスーツを着た接待役らしい極道が、笑顔で答える。

 

彼の力強い答えを聞いたゆきかぜは、視線を再び窓の外に戻す。

 

「「「「「「ウォォォッッッ!!!!」」」」」」

 

雄叫びを上げて組員達に迫りくるオークの軍団は、羅刹オークロードやハイオークチーフなど、対魔忍でも手を焼くオーク種が混ざっていた。さらに集団心理が働いているのか、いつもの卑屈な態度が見えず、人間なら一撃で絶命させるであろう斧や棍棒を振り回している。

 

「この縄張りは、岩鬼組の若のモンじゃあ!! ブサイク共に渡してたまるかいっ!」

 

土煙を上げて迫るオーク達に対して、岩鬼組の組員達は、冷静に海座から奪ったバズーカやロケットランチャーなどの重装備を取り出し砲身を向けた。

 

「ウォォッッ……え゛?! な、何であんな重火器を…」

 

組員達の重装備を見たオーク達は、数秒前までの勢いが萎えていくがもう遅い。

 

「発射じゃあっ!」

 

ズガァァァッッッッン!!!

 

容赦なく発射された弾丸やロケットは、見事オークの集団に着弾し、大爆発を起こした。

 

「うわぁ…凄い爆発ね…ちょっとオークの奴らが気の毒だわ。」

 

巨大な爆発に巻き込まれるオーク達を見て、ゆきかぜが珍しく同情する。

 

やがて、爆発によって発生した煙が段々と晴れていくと、多くのオークの爆散した死体が現れた。だが、まだ数人、生きている者もおり何か呟いている。

 

「あ、あいつ…この事務所には、ろくな武器は無いって言っていたのに…」

「だ、騙された…」

「チクショ…まだ死にたくない…」

 

岩鬼組の組員達は止めを刺すために、まだ生きているオークの近くまで寄り、胸元から出した短銃を向けた。

 

(ふぅ…あっけないけど、これで終わりね。けれど、おかしいわね? 強い者には従順なはずのオークが、配信されてる将造の拷問動画を見ても岩鬼組へ復讐しに来るなんて…)

 

一連の戦闘を見守っていたゆきかぜが、心の中で安堵と疑問が湧くなか、組員達の弾丸が生き残っているオークに発射される…瞬間だった。

 

ブスッ!ブスッ!ブスッ!

 

「ギャア!」

「うぁっ!」

「あぎぃ!」

 

いきなり、暗い夜空から複数の白い羽毛のような物が、組員とオークに降りしきるのが見えた。

 

「「?!」」

 

ゆきかぜと接待役の男が驚きながら窓に張り付くと、さらに建物の隙間の暗闇から、黒尽くめのアサシンのような男達が現れて、羽を免れた組員達に刀で襲いかかった。

 

「まずいっ!」

 

ゆきかぜは、二階にも関わらず窓から飛び降り、ライトニングシューターを放ちながら、組員達の元へと駆け寄る。そして、何人かのアサシンを撃ち殺し、わずか数秒で組員達の元に辿り着き、生き残った数人の組員達を背にする。

 

「あんた達、何者よ?!」

 

ゆきかぜは、殺気を放ちながら、アサシンの集団に問いかける。すると、目の前のアサシンでは無く、頭上で声がした。

 

「クケケケェェェェ!!! オーク共はやっぱ使えねえな。しかし、対魔忍は一人だけか。ならここは早く済みそうだぜ!!」

 

ゆきかぜが、夜空を見上げると、巨大な服を着た鳥のような者が、羽を羽ばたかせ空を飛んでいた。

 

巨大な鳥の名は、『シームルグ』。沙無羅威の幹部であり、フュルストに仕える四天王の一人である。鳥の獣人で毒の羽クナイを飛ばすことから、通称『忍獣』と恐れられている。

 

「あんた、ノマドの奴ね! 『ここは』ってどういう意味よっ!」

 

「クケケケケケッッッッッ…」

 

ゆきかぜは空に向かって吠えるが、シームルグは不気味に笑うのみで答えない。

 

 

また同時刻。

 

かつてマッスルジョーが所有していたビルの前に、大量の氷の像と一人の少女が立っていた。

 

像は、完全装備したオーガやトロールといった亜人種の形をしていた。そして、像の前でプリプリと怒っているのは、露出の激しい白い対魔スーツを着た金髪のツインテールの少女『鬼崎きらら』だ。

 

きららは、ゆきかぜと同じく、新紅を探すために手薄となった岩鬼組の拠点の警護を任せられていた。彼女は、ビルに来た当初、岩鬼組組員達に自分のふくよかな体を、いやらしい目で見られて憤慨していた。そんな組員達に辟易としていたところに突然、重装備のオーガやトロールの集団が現れたのだ。

 

「もうっ! なんであいつと別行動な上に、ヤクザにいやらしい目で見られて、おまけにこんな奴らと戦う羽目になるのよっ!」

 

ドゴォッ!

 

きららは、怒りながらオーガの氷像を思い切り殴りつける。

 

この像達は、全てきららの能力で氷漬けにされた本物のオーガやトロール達であった。きららは、鬼族の母から受け継いだ、空気中に一瞬で氷の盾を出現させる程の氷を操る力を持つ。その威力は凄まじく、何十人という集団であっても一瞬で氷漬けにすることが出来るのだ。

 

「これで全部……!?」

 

ズドドドドドド……………!!!!!

 

「ぎゃあ!」

「ぐえぇ!」

「がぁっ!」

 

きららの耳に、組員の悲鳴と共にこちらに近づいてくる大きな蹄の音が聞こえてきた。音の方向を向くと、全身分厚い鎧を纏った下半身が馬の大男が、巨大なメイスを振り回しながら組員達を蹴散らして、こちらに迫るのが見える。

 

「ウォォォォォッッッッ!!!! い、岩鬼組、殺す!殺す!殺す!殺す!」  

 

半身半馬の大男は、シームルグと同じく沙無羅威の幹部であり、フュルストに仕える四天王の一人、『オロバス』。頭は悪いが、頑丈な体と無双の怪力を使い敵を蹴散らすことを得意とする怪物である。

 

「何じゃ?! このバケモンはぁっ?! きららちゃんに近づけさせるな、撃ち殺せぇっ!」

 

ダダダダダダダダ!!!!

 

キィンキィンキィンキィン!!!!

 

組員達が激しく銃撃するも、オロバスはその身に纏う鎧で難なく弾き返し、また組員達を踏み潰していく。

 

「あんたら、どきなさいっ! SUPERFREEZE!」

 

きららが、大きく足を踏むとその足元から、巨大な氷が張り始め、オロバスの方向へ向かう。先程、敵の集団を一瞬で氷漬けにした『凍奔征走』という技である。

 

しかし、氷がオロバスの足元ヘ絡み付く瞬間…

 

ドンッ!

 

オロバスは、その巨大な体から想像出来ない跳躍力で、五十m程上空ヘと飛び上がった。

 

「嘘っ! オーガよりもデカいやつが、あんな高さまでジャンプできるなんて?!」

 

あまりの跳躍力に虚を突かれたきららだが、すぐに空気中に巨大な鋭いつららを作ってオロバスに飛ばす。

 

ギィンッ! ギィンッ! ギィンッ!

 

だが、弾丸と同じく堅固な鎧に弾かれる。

 

「そ、そんな物効かないっ! 死ねえっ!」

 

そして、つららを弾きながら、そのままオロバスはきららに向かって、自慢の豪脚を突き出しながら落下した。

 

ズドォォォォン!!

 

爆音と共にきららの周りに土煙が立ち込める。

 

「「「「「き、きららちゃんっ?!」」」」」

 

 

また同時刻。

 

東京キングダムではない、臨海副都心のかつて海座が支配していたビルでも、大規模の戦いが行われていた。

 

「何じゃあ?! この化け物達はぁ?! 撃て撃てぇ!」

 

「怯むな! ビルを守れぇ!」

 

GYAAAAAAAA!!!!!!!

 

岩鬼組の組員は海座が残した武器で、達郎含む対魔忍達は、風遁や土遁を使って、巨大な烏賊や魚といった怪生物達と戦っていた。

 

彼らは、ノマドが海座のビルを取り返すのを防ぐために、交代で在中している警護役の組員と対魔忍である。大量の武器があるために将造とアサギは、神魔組の支配地域やマッスルジョーのビルよりも、腕利きの者達を配置していた。

 

しかし、怪生物は、彼らの一定の攻撃を受ければ、どす黒い血を吐きながら息絶えるが、戦闘の一番後方に立つ男が、その手に持つ本を読めば、何もない空間から黒い渦が発生し、そこからまた新たなる怪生物が無限に現れる。故に組員達と対魔忍は、死者がまだ出ないまでも徐々に追い詰められていた。

 

「倒しても倒しても湧いて出てくる…将造さん…」

 

そして、怪生物との戦闘のすぐ近くで、何十と剣戟を行っている者達がいた。

 

「うぉぉぉっっっっ!!」

 

「ガァァァァァァッッッッッ!!!!!!」

 

撃ち合っている一人は石切兼光を持った『秋山凛子』、もう一人は、沙無羅威のボス、魔界サムライ『ニールセン』である。

 

だが、ニールセンは、いつものフュルストに付き従っている姿ではなく、体格は二回りほど大きくなり、頭に巨大な二つの角を生やし、自慢の変幻自在の魔剣〈天ノ弱〉と右腕が一体化していた。それは、後ろの男が持つ魔本により力を与えられ、魔人となったニールセンの姿であった。

 

通常なら、魔人となったニールセンでも凛子の逸刀流の腕であれば、苦戦はすれど倒せないまでの敵ではなかった。しかし、彼女が逸刀流の技を使おうとする度に、黒髪にも似た水のような物が、足元から湧き出て邪魔をしていた。

 

「あらあら、普段なら手を出すなって怒るところだけど、こうなったらニールセンちゃんもカワイイものね!」

 

「クソッ!」

 

明るく喋っているのは、本を持つ男の隣にいる黒いドレスを纏っているが、頭部は髪も目も鼻も無い口だけの女性。彼女の名は、『ヴィネア』。沙無羅威の幹部にして、フュルストの側近の一人。裏の世界からは、『不明の魔女』と恐れられている、凛子を邪魔しているのは、彼女の能力『黒き奔流』である。

 

「ククク…今日が岩鬼組と龍門、最後の日だぁ!」

 

その手に持つ本から、怪生物とニールセンに魔力を送る、頭頂部が禿げた太り気味で宣教師のような服を着た男、魔科医『フュルスト』が大きな声で宣言した。




対魔忍RPGの一番新しいイベントで、オロバスとシームルグが好みのキャラクターに変わっていて、次回に殺す予定でしたが、迷っています。


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