対魔忍者と極道兵器   作:不屈闘志

20 / 23
Weapon 20 裏切りサイボーグ野郎

「ぎゃあああぁぁっっっっ!!!!」

「熱いっ?! 熱いっ?! アジャァっっ!!!」

「水…みず…み…………ず…………」

 

阿鼻叫喚の叫び声響く龍門ビルの地下研究室で、スーツ姿の顔面が骸骨に似た、全身サイボーグの男が、掌の射出口から火を放っていた。

 

「ブラックの細胞を埋め込んでいると聞いていたのだが…全く期待外れだよ。」

 

そう呟くサイボーグ男は、火達磨で蠢く龍門配下達から、ブスブスと煙を上げて横たわっている大きい炭のような物に視線を移す。その大きい炭は、ハイグールの慣れの果てだった。サイボーグ男の両手から放つ、酸素バーナーのような高温の炎で、全身をくまなく炭化させられ絶命したのだ。

 

サイボーグ男の名は、『サイエント』。元は米連に所属していたサイボーグだが、殺人の快楽に目覚めてからノマドに下り、現在は沙無羅威幹部の一人である。

 

龍門配下とハイグールを焼き殺したサイエントは、人間大のカプセルを運ぶ他のサイボーグの部下達に指示を出すが…

 

「さっさと馬超を運び込んで…『死ねえ! サイエントッ!』ん?」

 

いきなり、柱の影から一人の龍門配下が現れ、銃弾を発射された。

 

ズドンッ! ズドンッ!

 

弾丸は、そのまま二発ともサイエントの額に命中する。

 

しかし…

 

「え、なんで…」

 

「ふぅ、まだネズミがいましたか…」

 

ゴォォォォッッッッッ!!!!!

 

「ギャアアアアッッッッッッ!!!!」

 

サイエントは、何事もないような顔で、即座に火炎放射で焼き殺した。

 

弾丸は、確かにサイエントの額に命中したはずであった。しかし、よく見れば、弾丸によって傷付けられた額が、ゆっくりとビデオの逆再生のように治っている。サイエントは、元はアスカとは別方向で、米連最新の粋を凝らして造られたサイボーグであり、両手から高温の炎を放つ機能を持ち、両足は時速三百キロで走り、何より恐ろしいのは、そのサイボーグの体は、隅々まで自己修復機能を持っていることである。

 

そして、すべての龍門配下達を焼き殺したサイエントに、配下のサイボーグと防護服を着た者が駆け寄る。

 

「サイエント様、無事、馬超を積み終わりました。」

 

「こっちもデータの抽出済んだぜ。」

 

「君たちは、沙無羅威の本部に戻りなさい。上階は、新入りの奴が頑張ってはいるが、黒龍と極道兵器相手では、ちと荷が思いだろねぇ。私は彼奴等を始末するよ。」

 

「「了解。」」

 

サイエント以外の者達は、すぐにその場から去って行った。

 

(岩鬼将造のあの拷問動画、あいつも私と同類だ…あぁ、出来れば倉脇如きに殺されないで欲しいよ。)

 

ギギギギギギ…

 

サイエントは、顎の接合部を軋ませるような奇妙な笑い方をしながら、ゆっくりと最上階へと繋がる階段を登っていった。

 

 

 

 

同時刻、公天と龍門幹部達は、怒りに震えていた。

 

「フュルストめ…あの時から既に裏切っていたか。しかも命より大切な俺の家族まで利用するとは…」

 

「黒龍、やはり本国の奴らは…」

 

「ああ、恐らくは龍門を切り捨てるため、一時的に『九龍会』か『海神』が、ノマドと組んだな。」

 

公天は、素早く頭を回転させて、今の状況を分析する。

 

(あいつらは、本国の命令でも俺達がただでは解体されないと予想して、地下の研究結果だけを持ち去り、皆殺しにするつもりなんだろう。しかし、仲間内の殺し合いは、信用を失う行為だ。故にあの持て余していた馬超をノマドに献上する代わりに、龍門殲滅を沙無羅威に頼んだんだ。ついでに極道兵器を巻き込んで、俺達もろとも殺すために。)

 

「俺達は、どうする?」

 

「お前たちは、新紅を連れて予備の研究所へ向かって爆弾を除去してくれ。俺は、極道兵器とサイエントを相手にする。グール達がいない今、奴らを相手に出来るのは俺だけだ。」

 

「任せてくれ! さぁ新紅さん、行きましょう!」

 

「兄さん…」

 

公天以外の龍門の者達は、急いで新紅を連れて後ろの扉から出ようとする。

 

しかし、その瞬間…

 

ズガァァァァァァッッッッン!!!!

 

「「「うぉぉぉぉっっっっっ!!!!!」」」

 

前の扉が爆発して、そこから三人の男が勢いよく転がりこんできた。

 

「ゲホッ! ゲホッ!」

 

「若、大丈夫っすか?!」

 

「やろ〜ぶっ殺してや……あん?」

 

手榴弾で吹き飛ばされた将造達であった。ノマドの傭兵達と戦っているうちに、公天達がいる部屋の前まで来ていたのだ。

 

「「「「「………………」」」」」

 

偶然、互いの目標と出会った将造と公天は、予想外の展開故に数秒間、見つめ合って沈黙するが…

 

「……ご、極道兵器だぁっ?!」

 

ジャキッ! ジャキッ! ジャキッ!

 

一人の配下の悲鳴を皮切りに公天含む龍門幹部達は、一斉に将造達に銃を向けた。

 

しかし…

 

ズガァァァァァァッッッッン!!!!

 

ガラガラガラガラ………!!!!!

 

「「「「「ぐわぁ?!」」」」」

 

今度は龍門幹部達の頭上で爆発が起き、公天達は新紅以外、天井の下敷きになった。

 

「に、兄さんっ!?」

 

「し、新紅…」

 

そして、落ちてきたのは、天井だけでは無い。

 

ズシィィッッン!!!

 

「「「な、なんだ?!」」」

 

将造の前に落ちてきた、いや、降り立ったのは、一人の男であった。その男は、坊主で丸眼鏡、両こめかみにはフランケンシュタインの怪物のようなボルトを付け、左手首は、大砲の砲身となったサイボーグであった。降り立ったサイボーグは、将造を見つけると、歯を剥き出しにしてニタリと笑う。

 

「久し振りじゃのう、将造…」

 

その声を聞いた瞬間、将造は目の前のサイボーグの正体が解った。

 

「ゴキブリヤクザの重介か…その体、少しは男を上げたようじゃのう。」

 

サイボーグの正体は、3ヶ月前、将造が要塞ビルで殺そうとしたが、機械化傭兵『ファウスト』によって逃げられた元岩鬼組幹部『倉脇重助』であった。

 

「ゴキブリはどっちじゃ…ノコノコとどこにも面出しおって。」

 

倉脇の名前を聞いた三太郎と拓三が驚くなか、当の倉脇の笑みが段々と怒りに変わっていく。

 

「今まで、良くも儂等の邪魔をしてくれたの!! ヌシのおかげで要塞ビルや海座どころか、わしの新しい上司である朧まで失脚させよってっ!」

 

喋るうちに怒りのボルテージが上がる倉脇と反比例に、将造は本当に楽しいと言わんばかりの笑顔になっていく。

 

「ほう! で、その○チガイ朧は、今どうなっとるんじゃっ?」

 

「朧の売女は、ブラック様の命令であれからずっとフュルスト特性の罰を受け取るっ!」

 

「ヒヒヒ、元上司に非道い言いようじゃのう!!」

 

「朧は、わしの体を治療するだけじゃなく、全身を勝手に改造したんじゃっ! 失脚した今、敬語何て使ってられるかっ! それよりもブラック様よ! あのお方は、ノマドの日本進出が後退しまくってお怒りじゃあっ!」

 

「そりゃ嬉しいのう! わしは人を怒らすのが趣味何じゃ! まぁ、ブラックのアホは、人じゃねぇから良いか! がはははは……!」

 

「今度は、そっちの思い通りにはさせんっ! おいっ!」

 

ガシャ!ガシャ!ガシャ!

 

そう倉脇が、呟くと破壊された扉から傭兵達が部屋になだれ込み、将造達に銃を向け、新紅を拘束した。

 

「クソォォッッ!!!! 新紅ッ!」

 

公天が必死に叫ぶが、天井に挟まれて何も出来ない。

 

倉脇は、新紅を傭兵達から受け取ると将造の目の前に連れて来た。

 

「将造、知っとると思うが、こいつは人間細菌爆弾じゃ。こいつがここで細菌をバラ撒けば、わしのようなサイボーグや完全防備のこいつら以外は、一分足らずで血を吹き出し死んじまう。」

 

倉脇は、細菌の説明をしながら、新紅の服を捲り、腹部の時限爆弾を将造に見せる。

 

「一度、データが欲しいのよ。こいつの細菌は強力じゃが、空気中じゃあまり長く生きられん上に潜伏期間が無く、すぐに発病しちまって、あまり拡大せんのが弱点じゃ。じゃから、どれだけ広まるか調べるために、程よい広さの龍門の支配地域が選ばれたんじゃ。龍門を疎ましく思っとった『海神』は、快く協力してくれたわい。」

 

そう言いながら、腹部のデジタル時計を操作すると、時間が急速に進み、残り時間が五分を切ってしまう。

 

「ああっ!?」

 

新紅が、自分の腹部を見て絶望の表情で悲鳴を上げた。

 

「これでもう逃げる時間もないわいっ! 将造、貴様ともこれでおさらばじゃ!」

 

倉脇は、勝ち誇った笑みを将造に向けるが、将造は、まだ小馬鹿にしたように笑っている。

 

「うだうだと抜かさんと殺るときは、早うやらんかい!! 一丁前に格好付けるのが重介、お前の悪い癖だ。」

 

その笑顔に再度、倉脇は、青筋を立てた。

 

「貴様には数え切れぬ程の怨みがあるんじゃっ! わしの日本制覇を打ち砕き、この体にしてくれた怨み全て晴らしてくれるど! 勿体なくてすぐに殺せるかぁぁ!!」

 

ドカァッ! 

 

倉脇は、新紅を離し、将造の顔を思い切り蹴り上げた。サイボーグの一撃故に将造は、堪らず空中に吹き飛ばされる。

 

「「若っ!?」」

 

「重介…貴様はまだ甘いぞ…」

 

しかし、将造は、空中で口から血を吹き出しながらも倉脇を睨んだ次の瞬間…

 

「わしは極道兵器やぞ!! 地獄に行き晒せぇっ!!」

 

ボボンッッッ! シュゴォォォォッッッッッ!!!

 

右足から三発のロケットランチャーを、倉脇に向かって勢いよく発射した。

 

「何ぃ!?」

 

ズドォォォォン!!!!

 

ロケットは倉脇に直撃し、倉脇は周りの傭兵を巻き込んで爆炎に包まれた。

 

爆発を笑顔で見届けた将造は、上手く床に着地して残りの傭兵達にも右膝を向ける。

 

「「「「うォォォォ???!!!」」」」

 

呆気に取られていた傭兵達は、急いで銃を向けるが、将造の方が一歩早い。

 

ズドォォォォン!!!!

 

「「「「「ギャァァァッッッッ!!!!!」」」」

 

断末魔の叫び声と共にこの部屋の残りの傭兵達が、部屋の一角ごと吹き飛んだ。

 

ババババババババババ!!!!!!!!!!

 

だが、今度は壁の破壊した穴から、へリコプターの音が聞こえて来る。

 

将造が音の出処に探すと、ビルの間に滞空している軍事ヘリが見える。傭兵達を運んで来たノマドの軍事ヘリだ。そして、将造がヘリを見付けたと同時にヘリの扉が開き、また傭兵が現れる。傭兵は、ヘリに設置してあるガドリングガンで、将造に狙いを付け始めた。

 

「見えたぞ! 極道兵器だっ! 死ね……え!?」

 

しかし、将造に弾丸を浴びせようとした瞬間、傭兵の額にいきなり赤い光の点が現れた。

 

「ロックオンじゃ…」

 

将造の右目から発射したセンサーライトだ。将造は、海座のビルで朧に右目を抉られてから、センサーライト付きの義眼を移植したのだ。その義眼は、左手と右足の武器と連動しており、一度ロックオンすれば、左手のマシンガンや、ロケットランチャーが自動で追尾してくるという恐ろしいものである。

 

「わしの目の光が届く所じゃ、貴様らにでかい面させねぇぇっっ!!!」

 

将造は、そう叫びながら再装填したロケットランチャーを軍事ヘリに発射する。

 

シュオオオオ!!!!!

 

「ふ、浮上しろォッ!」

 

ガドリングで将造を狙っていた傭兵は、恐怖に染まった顔で、急いで操縦席に叫んだ。

 

ヘリは、命令通りに迫りくるロケットランチャーを避けよう五m程度急浮上する。しかし、一度ロックオンされたロケットは、そのままヘリコプターを追いかける。

 

「ウガァァァァァァッッ『ズドォォォォッッッッン!!!!!』」

 

ロケットはヘリに直撃し、傭兵の断末魔は、爆発でかき消された。そして、爆発したヘリは、炎を纏った部品が花火のように飛び散りながら墜落した。

 

僅かな時間でノマドの傭兵部隊を全滅させた将造は、次にそばで震える新紅に視線を移す。

 

「ヒィィィッッッ!!!」

 

「止めろォォォッッッ!!」

 

黒龍は、新紅を守護するように彼の前に立ち、将造に銃を向ける。ロケットの爆風で、黒龍に覆いかぶさっていた天井の瓦礫も吹き飛び、動けるようになったのだ。

 

「黒龍、お前の弟は、体が爆発する前に焼き殺さにゃあいけねぇんだよ。」

 

「弟は俺が助けるっ! 誰にも指一本触れさせんっ!」

 

公天は、頭から血を流しながらも将造に気丈に吠える。

 

「わからねえのか、弟を助けるのは不可能なんだよ。後、1、2分で弟の体は吹き飛ぶ。」

 

「うっ。」

 

将造は、突きつけられる銃にも構わずに公天に近づく。

 

「俺達民族は、家族の命が大切なのだ。自分の命を捨てても家族を見殺しにしない!」

 

「てめーふざけんじゃねえぞ! 人の国に来て散々悪さしてるくせによ!! 撃てるなら撃ってみやがれ!」

 

「うう‥‥‥」

 

「撃ってお前らに何があるんじゃ!! 爆発したら、お前もこの街に住む同胞もお陀仏やど!!」

 

将造は、いつの間にか公天の真ん前まで迫っており、彼の目を間近に見ながら真剣な顔で凄んだ。

 

「弟もそれだけは望まねえじゃろうが。」

 

「………………」

 

公天が、将造の真剣な言葉に、ゆっくりと銃を下ろそうとする。

 

しかし…その瞬間…

 

ガラガラガラガラッ!!!!!

 

「「「「「!?」」」」」」

 

「ぐおおおおおおっっっっ!!!!!!」

 

何者かが、いきなり瓦礫を押しのけて、将造の足元から現れた。

 

それは、爆発したはずの倉脇だった。頑丈なノマド最新のサイボーグ故に、爆炎の中でもしぶとく生き残ったのだ。しかし、所々人工皮膚が剥がれて、鋼鉄製の体が剥き出しになり、左足は吹き飛んでいる。

 

どんな殺気でも、普段ならすぐに気付くはずの将造達だったが、公天の説得に集中しきっており、偶然にも倉脇の奇襲を許してしまう。

 

「ぐぁっ!?」

 

「「若!?」」

 

公天、三太郎、拓三は吹き飛ばされ、将造は倉脇の改造された巨大な手で、胴体を丸ごと捕まえられてしまう。

 

「将造、勝負はこれからじゃ!」

 

そう言って倉脇は、右手で将造の胴体を握りしめる。

 

「てめぇ!?」

 

将造は、珍しく焦りに満ちた顔になり、すぐさま倉脇の顔面を銃撃する。

 

ギャン!ギャン!ギャン!…

 

だが、鋼鉄製の頭部は、弾丸を簡単に跳ね返す。

 

「将造! わしの体は鋼鉄製じゃ! おのれの兵器などオモチャじゃあ!! このまま捻り潰してくれるわ!」

 

ギュウッッッ!!!!

 

「ぐわぁっ!!!!」

 

倉脇は、胴体を更に締め上げ、将造は滅多に上げない悲鳴を上げる。

 

「やろうっ!」

 

「若を離せ!」

 

苦しむ将造を見て、三太郎と拓三は、倉脇を銃撃しようとするが…

 

「邪魔をするなぁ!」

 

ドガガガガガガガガ!!!!!!!

 

「うわ!?」

 

「畜生っ!」

 

倉脇の胴体の鳩尾から飛び出したガドリングガンで邪魔され、将造を助けることが出来ない。

 

「貴様らは、爆発ショーの観客だ! 大人しく見物してい…!?」

 

倉脇は、三太郎達の方を向いて怒鳴った時、突如将造を握っているはずの右手に違和感を感じた。

 

「うぎぎぎ……」

 

将造は、胴体を丸ごと掴まれながらも、倉脇の胴体に足を掛けて、腕全体を全身で引っ張っていた。

 

「何を血迷う取る、無駄な足掻きは止め!!」

 

倉脇は、将造の最後の足掻きだと思いせせら笑った。

 

しかし…

 

ミシッ! バキッ!

 

「!?」

 

「うごごごご!!!」

 

人の力では壊せないはずの機械化された右肩が、バキバキと悲鳴を上げ始めた。

 

「これがわしの秘密兵器…」

 

「な、止めろォォォッッッ!!!」

 

倉脇は、急いで左手の砲身を将造に向ける。

 

「馬鹿力じゃあっ!!!」

 

バキャアッ!!!!

 

しかし、倉脇が発射するよりも早く、将造が右腕をを根本からもぎ取り、地面に落ちて自由になる。

 

「ぐおお!」

 

倉脇は、片手片脚になりながらも、将造を狙おうとするが、新紅が倉脇の片脚にしがみつく。

 

「早く撃って! もう時間がない!」

 

必死な形相で新紅は、将造に向かって叫んだ。

 

「火炎放射じゃあっ!!!」

 

将造は、新紅が倉脇を止めている隙に、近くに転がっている火炎放射器に飛びつこうとする。

 

だが、将造よりも早く火炎放射器を拾って新紅に向ける者がいた。

 

「この街には、まだ同胞が沢山いる…」

 

覚悟を決めた凄まじい顔をした公天であった。

 

「兄さん、はやく…」

 

新紅は、涙を流しながらも兄に笑いかける。

 

ゴォォォォォォォォォ!!!!!!!

 

そして、公天の持つ火炎放射器から放たれた凄まじい炎が、倉脇と新紅を包み込んだ。もし、龍門ビルを外から観察している者がいたなら、その炎は、ビルの壁から吹き出すプロミネンスのように見えたことだろう。

 

「ぐわぁぁぁぁぁ…へへへ、俺は死なん!!!! もっと強力になって帰って来るぜ〜~〜~~」

 

しかし、倉脇は、凄まじい炎に包まれながらも大声をあげて笑う。

 

ズドォォ……ン!!!

 

そして、倉脇と新紅は、ビルの一角を巻き込んで爆発した。

 

「…………」

 

二人が爆発して、煙と炎が包むなか、仲間を守るためだとはいえ、大切な弟を自ら殺した公天は、手と膝を付いて何も喋らず項垂れていた。

 

龍門幹部、三太郎、拓三は、声をかけられずに静かに公天の様子を見ている。

 

「……終わったようじゃのう。」

 

しかし、誰も何も喋らないなか、その場を仕切り直すように将造が一言呟いた瞬間…

 

ギギギギギギギギ…

 

「いえ、まだ終わってはいませんよ。」

 

「「「「「「!?」」」」」」

 

古い機械が軋むような音と静かで落ち着いた声が響いた。

 

将造達と公天達は、急いで声の方向に目を向ける。

 

すると視線の先には、紳士服を来た鉄の骸骨のような顔をした一人のサイボーグが立っていた。

 

「サイエント…殺人鬼『サイエント』だ!」

 

龍門配下の一人が叫ぶ。

 

「おい、サイエントって、誰じゃ…」

 

将造が不思議そうな顔で、叫んだ男に問う。

 

「元は、只の金持ちだったんだが、殺された娘の復讐の為に己の全財産を注ぎ込んで、自らサイボーグになった男だ。けれど、そのまま殺人の快楽に目覚めちまって、復讐が済んだ後も殺人鬼に成っちまったんだ…」

 

龍門配下の説明が終わると同時に、サイエントはゴキリと首を曲げ将造の方を向いた。

 

「倉脇め、やはりあいつは出来損ないだったな。いや、それよりも会いたかったよ、岩鬼将造。私と同じ趣味を持つ者よ。」

 

「同じ趣味じゃと? ホウ…じゃあぬしもわしと同じ募金活動とボランティアが趣味なんか?」

 

そう言って将造は、小馬鹿にしたようにサイエントに笑いかける。

 

ここにゆきかぜや静流がいたら、将造を『またこいつ…』という呆れた顔をしていたに違いない。しかし、サイエントは、また『ギギギギギギ』といういう機械音を響かせながら笑った。

 

「私がここに来た理由は、ただ一つ、殺人を至高の趣味とするもの同志、気が済むまで殺し合うことだ…」

 

その気持ち悪い言葉に、将造は露骨に嫌な顔をする。

 

「わしは別にぬしみたいな変態とは会いたくねえ。」

 

「ハハハ、君が配信してくれた拷問動画を一目見た時から、私は君にぞっこんだよ。何を隠そう、手足を縛った相手を二人でジャイアントスイングしあって、頭をぶつけさせて勝負する人間ベイブレードの再生回数の三分の一は、私が視聴したんだよ。そんな残酷な君だからこそ、殺し合いたいんだ。」

 

自分が熱を上げている芸能人に初めて会ったファンのように、興奮気味に喋るサイエントに、将造は苛つき始め左手のマシンガンを向ける。

 

「何を言う取る? 今から始まるのは、殺し合いなんかチンケなもんじゃねえ。わしが、てめぇみたいなムカつく奴を一方的にブチ殺して、断末魔上げさすだけじゃ!」

 

将造は怒鳴るが、当のサイエントは、まだ楽しそうにしている。

 

「フハハハハハ!! いや、そうかそうか。そんな趣味はないと恥ずかしがって逃げると思って、逃亡先の岩鬼組の支配地域を潰したのに無駄になってしまったね。」

 

その言葉を聞いた三太郎と拓三の顔色が、さっと変わった。

 

「ん。知らなかったのかい? 君達が人間爆弾を追っていた頃、神魔組やマッスル団のビル、更に海座から奪った臨海新都心には、フュルストと四天王、つまり、沙無羅威が総力を上げて攻めていたんだよ。そのために人間爆弾をわざと逃して、探索の為に対魔忍や組員の人員を割かせていたのさ。今回の作戦は、龍門の壊滅はおまけで、本当は岩鬼組の支配地域を殲滅するのが目的だったんだ。」

 

「じ、じゃあ俺達は…」

 

「まんまと術中に嵌まったってことか?」

 

「………」

 

二人の顔が絶望に染まった。

 

サイエントは、そんな二人を無視して顔を俯き加減で表情が読めない将造に向き直る。

 

「岩鬼組の支配地域を潰したフュルストと四天王は、今頃こちらに向かっているはずだ。早くしないと二人で存分に楽しむ時間が無くなってしまう。さあ…『フュルストや四天王は来ないわよ。』…誰だ?」

 

早口で将造にまくし立てるサイエントの台詞を邪魔するかのように、一人の少女の声がその場に響いた。

 

声の出処をサイエントが探す中、火炎放射器の爆発で抉れた階下から、金色の髪を大きい白いリボンでツインテールにして、露出の激しい水着のような白い対魔スーツを来た少女が勢いよく現れた。

 

その少女を見て三太郎と拓三は、驚き叫ぶ。

 

「「き、きららちゃんっ!」」

 

対魔忍の『鬼崎きらら』だ。

 

「気安く下の名前で呼ぶなっ! っじゃない…サイエント、岩鬼組を攻めていた沙無羅威の連中は、もう全滅したわよ。」

 

今度は、サイエントの機械化された顔の表情が、僅かに変わった。

 

「馬鹿を言っちゃいけない。シームルグやオロバスはともかく、あの『魔界サムライ』のニールセンや『魔科医』のフュルストが、ただのヤクザ如きに負けるはずがないでしょう。」

 

きららとサイエントのやり取りを聞いた将造が、俯き気味だった顔を上げる。その表情は、相手が上手く罠に嵌まって嬉しくてしょうがない顔をしていた。

 

「そうか、あいつらが間に合ったか。 のぉサイエント、そんなに気になるんじゃったら電話してみぃ。それくらいなら、待ってやるぜ。」

 

「………」

 

ニールセンは、将造の言葉を聞き、すぐさま胸元から携帯を取り出して、フュルストや四天王達に連絡を取る。

 

『おかけになった電話番号は、電波がとどかないところにあるか、電源が入っていな…』

 

しかし、誰も電話に出ないところか、呼び出し音さえ鳴った者はいなかった。

 

「ば、馬鹿な…」

 

サイエントのあまり動かない機械仕掛けの顔が、誰でも表情が解るほど歪んでいく。

 

 

将造が、公天の部屋に転がり込んだ同時刻…

 

ゆきかぜは、元神魔組の支配地域で、空から急襲する沙無羅威四天王の一人『シームルグ』、その配下のアサシン達と激闘を繰り広げていた。

 

「こんないやらしい戦い方をして、恥だと思わないわけ!?」

 

「馬鹿め、小娘! これが戦術ってやつよっ!」

 

ゆきかぜが、卑怯と叫ぶのも無理もない。

 

シームルグとアサシン達は、ゆきかぜ本人を狙うのではなく、背後の負傷して動けない岩鬼組の組員達を狙いながら戦っていたのだ。それ故にゆきかぜは、ただでさえ苦手な空の相手とチームプレイで戦うアサシン達から、組員達を守りながら戦い、圧倒的な不利な状況に陥っていた。最初こそ、ゆきかぜを接待していた組員が、傷付いた仲間を守っていたが、長引く戦闘でアサシンの一撃を受け、半死半生で組員達と倒れている。

 

「み、水城さん…俺達のことは気にせず、戦ってください…」

 

「うるさいっ! こんな奴ら、これくらいのハンデがあって丁度いいのよ!」

 

倒れている組員の言うことに怒りながら、気丈に戦うゆきかぜであったが、言葉とは裏腹に胸中では、どう相手を攻略するべきか分からないでいた。

 

(クソッ! 空にライトニングシューターを撃っても躱されて、地上のアサシンを狙っても、その隙に、上空から毒の羽苦無で狙われちゃう。何より、私より後ろの動けない組員を狙っているから、攻めに転じるタイミングが少ない! どうしたら……)

 

攻めあぐねるゆきかぜが、一瞬だけ思考に囚われた瞬間…

 

ガバッ!

 

「ぎゃあ!」

 

「しまった!?」

 

シームルグは、ゆきかぜの一瞬の隙を突き、一人の組員を空に連れ去った。

 

「卑怯者っ!」

 

「悔しかったら、こいつごと撃ってみろ!」

 

ゆきかぜは、ライトニングシューターで撃墜しようとするが、シームルグは組員を盾にして撃つことが出来ない。

 

「さっさとその人を離しなさいよ!」

 

「じゃあ、離してやるぜっ! オラァ!」

 

「!?」

 

シームルグは、組員を思い切りゆきかぜに投げつけた。

 

「うわぁ!」

 

「危ないっ!」

 

ドシィッ!

 

ゆきかぜは、ライトニングシューターを放して組員を受け止める。が、そのまま勢い余って倒れてしまう。

 

「今だっ! 死ねぇ!」

 

その隙を逃さんとばかりにシームルグは、多くの羽苦無を思い切りゆきかぜに投げ付けた。

 

「!?」

 

ライトニングニングシューターを放し、しかも自分の体の上に傷付いた組員が乗っている状態では、迫り来る羽苦無を反撃することも避けることも出来ない。

 

(ごめん、達郎ォッ!!!!)

 

ゆきかぜは、心の中で達郎の名を叫び、目を閉じた。

 

「……………あれ?」

 

……………しかし、何秒経っても自分の体に痛みどころか痒みさえ起きない。恐る恐る薄目を開けると、ゆきかぜの目の前に青い龍の絵がある。

 

(何、これ?)

 

不思議に思ったゆきかぜが、目を大きく開けるとその絵の正体が解った。それは絵ではなく、入れ墨だった。目の前に背中一杯に龍の彫り物をしている男が、ゆきかぜを庇うように立っているのだ。更に男の周りを見ると、先程まで自分に迫っていた羽苦無は、全て地面に落とされている。

 

「貴様、何者だぁ!?」

 

いきなり現れた男に驚きながら、シームルグが空中で叫ぶ。

 

すると男は、光り輝く電磁ドスをシームルグに向けて、勢いよく口を開いた。

 

「極道連合 関東異次元一家 代貸 北斗の源ニじゃあっ!」




サイエントって、こんな性格だったかな…

今作に出てきた北斗の源ニは、『5001年ヤクザウォーズ』という作品からの、ゲストキャラクターです。

次の話は、他の石川賢先生の作品からも、ゲスト出演する予定です。ご期待下さい。かなり、マニアックですけど。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。