対魔忍者と極道兵器   作:不屈闘志

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第ニ章 突入!ノマド要塞!
Weapon 3 人売りオーク野郎


東京のやや郊外にある大企業ノマドの高層ビル。只の一般人の目には、高く立派なビルにしか映らないが、このビルこそ人魔結託した悪が渦巻く、悪しき建物なのだ。

 

要塞ビルには、様々な機能が配備されている。まず、顔認識機能に優れている監視カメラがあちこちに設置されており、部外者が禁止区域に入れば、すぐに警報機が鳴るようになっている。他にも毒ガスや催涙、煙幕といった兵器を無効化する空調機能、ビル上には上空から浸入しようとした対魔忍を撃墜したことがある強力なドローンが、何十機と旋回している。しかし、一番恐ろしいのは、米連最新の強化外骨格、オークや鬼族といった人外の傭兵などが常に常駐していることだろう。

 

島田の金融会社が破壊されて三十分後、ビル一階のホテルのような広い玄関ホールには、ノマドに属していると思われるスーツの者達が、百人以上たむろっていた。ソファーに座って新聞を拡げていたり、立ち話をしていたりとその様子は、一般企業の玄関ホールと変わらない。しかし、よく見れば彼らの目は鋭く、明らかに一般人ではない剣呑な雰囲気を放っている。彼らは、東の極道達であり、侵入者を排除する役目を命じられているのだ。そして、もう一つの役目は、特別ゲストを受付台の前で待つ矢崎宗一の警護である。

 

矢崎が受付台の前に立って数分後、二m近い隻眼の大男と顔が整った十代後半の少年が玄関から入ってきた。その二人は、迷わず受付台に向かって歩いていき、矢崎は笑顔でその者達を出迎えた。

 

「やぁやぁ、久し振りだね。秋山達郎君。」

 

その笑顔に反して、秋山達郎と呼ばれた少年は憎々しげな顔をする。

 

「矢崎…やはり、あの時偶然でも殺しておけば…ゆきかぜと凛子姉はどこだ!」

 

矢崎は、ノマドに与する魔界の者と密会しているところをゆきかぜ達に強襲され、顎を砕かれたことがある。普通ならその時に殺されるところであったが、民新党幹事長の絶大な権力ゆえ、後に起こる政治関係の問題を危惧され見逃されてしまう。しかし、矢崎は、この時のことを逆恨みし、ゆきかぜと凛子に復讐するため、弟のリーアルに協力を仰ぐ。そして、わざと対魔忍に行方不明であるゆきかぜの母親の噂を流し、リーアルが治める地下都市ヨミハラにゆきかぜと凛子を誘き寄せ、二人を捕縛したのだ。

 

二人をさらった矢崎に、怒りの表情で腕を振り上げた達郎だったが、後ろの大男がその腕を掴んだ。

 

「おっと、ここで暴れたら愛しのゆきかぜちゃんやお姉さんに会えなくなるぜ。」

 

「くそっ!」

 

達郎は、拳を悔しそうに修める。本来なら達郎は、対魔忍としてこの要塞ビルにゆきかぜと凛子が捕らえられていることを他の対魔忍に知らせるべきであった。しかし、ゾクトからの連絡で他の者に伝えれば二人の命はないと言われ、達郎は敵地に一人で来ざるを得なかったのだ。

 

達郎と共にビルに来訪した大男はゾクト、オーク族という人間とは違う魔界の種族で、人間の世界では御法度の奴隷売買をしている。元々は、その邪悪な商いを見逃してもらう換わりに対魔忍に協力をする情報提供者であった。しかし、実は陰で裏切っており、リーアルと共に二人をさらう手助けをした者である。

 

矢崎は、悔しそうな達郎の顔を見て、喜悦に満ちた表情になる。

 

(今夜のパーティーで、恋人と姉の処女を奪い取られるのをその目で見ていろ。そして、他人の股ぐらであえぐ二人を見ながら、お前もゲストの男色家に犯してもらう。そうすれば媚薬漬けの二人の心は、いとも簡単に折れるだろう。その後は、お前も娼夫として売り飛ばしてやる。)

 

 

 

同時刻、パーティー会場にいるゲスト達は、大画面のスクリーンで写っている達郎と矢崎のやり取りをリアルタイムで観覧していた。誰も彼も醜悪な笑みを浮かべており、達郎に同情する者など、一人としていない。皆、ゆきかぜと凛子を凌辱し、達郎を絶望させることを楽しみにしているのだ。

 

そして、スクリーン下の壇上には、ゆきかぜ、凛子、なよ子が裸のままで磔にされている。そんな絶望的な状況に陥っていながらもなよ子は、ゆきかぜと凛子に声をかけていた

 

「大丈夫、あんたらの彼氏さんや私の許婿が力を合わせればこんなやつら、イチコロだよ。だから、もう少しの辛抱さ。」

 

唯一目隠しをしていないなよ子には、二人が何かクスリを打たれて、おかしな状態になっていることが解っていた。事実、二人は、なよ子のいうことに反応せずに、艶やかな吐息を漏らすのみである。しかし、なよ子は、そんな二人を励まし続ける。それはまるで、二人を通して自分自身を励ましているかのようだった。

 

 

 

「さぁ、もうすぐパーティーが始まってしまう。私が直々に案内しよう。ついてきなさ…?」

 

『ズンチャッ♪ズンズンチャッ♪~』

 

矢崎が、達郎とゾクトをパーティー会場に案内しようとしたその時、玄関から一人の男が入ってきた。ラッパーのように大きいラジカセを担いだモヒカンの男だ。モヒカン男は、ラジカセから大音量を響かせながら、達郎達を無視し、受付台の前に立った。

 

「お客様、本日はご招待された方しか、入場できませんが…」

 

「ああ、違う、違う。俺は、このビルの知り合いに会いに来ただけ!この会社に山崎っているでしょ?俺の知り合いなの!」

 

受付係が、コンピューターで社員を検索しても、山崎という者は出てこない。

 

「お客様、当社に山崎という者はおりませんが…」

 

「もう一度調べてよ。確かにいるはずなんだけど、山ちゃんが。」

 

そう受付に言いながらモヒカン男は、ポケットに手を入れた。その瞬間、ホール中の極道達が一斉に拳銃をモヒカン男に向ける。

 

ジャキッ!!!!!!!!!

 

「動くな!!」

 

「ちょっ…何?」

 

モヒカン男は、大きいラジカセを地面に落とし手を挙げた。それと同時にポケットからタバコとライターが漏れでる。

 

「何だ。タバコかよ…」

「脅かせやがって…」

「チッ!」

 

極道達は、拍子抜けした顔でまた配置に戻った。

 

「……わかったよ。もしかしたら、ノマドの違うビルだったかもしんない。邪魔したね。」

 

そう言ってモヒカン男は、玄関に向かって振り返ろうとした時、偶然ゾクトと目が合った。すると何を考えたのか、一般世界には知られていない、オークという亜人にも関わらず気軽に話しかけた。

 

「よう、そこのおっちゃん。良くできたブサイクなお面付けてるね。どこで売ってんの?ハロウィンで使って、女の子ビビらせたいんだけど。」

 

ビキッ!

 

ゾクトの額に青筋が浮かんだ。

 

元々、強い者には卑屈だが、弱い者には暴虐を尽くすのがオーク族の特徴である。故に自らの顔を馬鹿にされたゾクトは、オーク族の例に漏れず、モヒカン男を自分より弱者とみなし、いきなり殴り付けた。

 

ドガッ!

 

「あ痛っ。」

 

モヒカン男は、わざとらしく倒れた。

 

「この野郎!テメーの顔をお袋でも見分けがつかねぇように刻んでやるぜ!」

 

さらにゾクトは、思いきりモヒカン男を蹴飛ばした。

 

「あ痛たたっ!」

 

蹴られたモヒカン男は、そのままゴロゴロと玄関に向かって転がっていく。それを追って、ゾクトは更なる追撃を加えようとする。しかし、寝転がるモヒカン男の前に達郎が、両手を広げて立ち塞がった。

 

「無関係の人を傷つけるのはやめろ!これ以上は、対魔忍が許さない!」

 

未熟者と自他共に認める達郎であるが、対魔忍としての自覚は、ゆきかぜと凛子の影響で人一倍持っている。それ故にこんな時でも、無関係の人が傷つくのを見過ごすことが出来なかった。

 

「ゾクト、もう止めろ。これ以上はパーティーに遅れてしまう。」

 

矢崎も小さい面倒事を嫌がり、ゾクトを止める。

 

「ちッ!」

 

ゾクトは、暴行を止め舌打ちしながら、ゆっくりと振り返ろうとした…その時であった。

 

ジャリ、ジャリ、ジャリ…

 

ゾクトの耳に豪華な玄関ホールに似つかわしくない、草履の音が聞こえてきた。ゾクトは、思わず振り返るのを止め十数m先の玄関先を見る。

 

「?!」

 

そこにはカンカン帽子にサングラスをかけ、腹巻きに雪駄履き、口にはマッチ棒を咥えた男がいた。注目すべきは、M60機関銃を手に持ち、背中にはポンプアクション式の散弾銃とミニガンを一丁ずつ担いでいることだろう。

 

ゾクトは、その男を見た瞬間、全身が震え上がった。確かに男の手には、自分を一瞬で殺せる程の武器が握られている。しかし、体の芯からゾクトを震え上がらせたのは、四白眼の目元と口角を逆八の字に吊り上げ笑う、男の凶悪な表情だった。その顔は、数々の修羅場を潜り抜けないと纏えない殺気を放っている。

 

(こ、この人間はいったい?並みの人間、いや対魔忍でも、出せない殺気…。ま、まるで、あの最強の対魔忍を前にしているようだぜ。)

 

男の殺気にゾクトだけではなく、周囲の極道達もいすくめられてしまった。

 

達郎含めた周りの者達が注目するなか、男がモヒカン男に向かって口を開く。

 

「三太郎、どないしたんじゃ、その格好は?!」

 

「若ぁ~わし、なぁ~んもしとらんのに、こいつがしばきよるんじゃ!!」

 

さっきまで殴られていたはずの三太郎と呼ばれたモヒカン男が、元気そうに答えた。

 

「なあ~に~!?」

 

三太郎の言葉を聞いた男の表情は、笑顔から憤怒に変わり、玄関ホール全体に響く大声で怒鳴った。

 

「てめーら!!よくもうちの若い者をかわいがってくれたのう!!この岩鬼将造が落とし前を付けさせてもらうぜ!!!」

 

将造の大声で地蔵のように固まっていた極道達がやっと動く。

 

「こ、こ、こいつが将造だぁぁっーーーー!!!!撃てぇーーーーー!!!」

 

玄関ホール中の極道達が一斉に銃口を向けた。

 

しかし、将造は慌てずに腹巻きから取り出したあるスイッチを押した。すると先程、三太郎が受付台に落としてそのまま放置されていたラジオが、いきなり『ジャーーーン』と最大音量で鳴り響く。

 

「「「「?!」」」」

 

その音に将造を狙っていた極道達が、思わず将造を狙うのを止め音源のラジオに注目した。

 

「兄ちゃん伏せぇっ!!」

 

達郎もラジオに注目したが、三太郎に飛びかかられ頭を無理やり下げさせられた次の瞬間…

 

ズドォォォーーーーン!

 

ラジオは、大爆発を引き起こし、受付台周囲の極道達は、吹き飛んだ。そして、特殊な爆弾を内蔵していたのか、ラジオに注目していたほとんどの極道達の目に細かい破片が入り、ホールは目から血を流した極道達の苦しみの声で阿鼻叫喚の地獄と化す。

 

「ぎゃあぁぁぁっっ!!!!!」

「俺の目がぁぁぁっ!!!!!」

「あづぃ~~~~~!!!!!」

 

「うわぁーはっはっはっはっはっ……!!!!」

 

ズガガガガガガガガガ!!!!

 

将造は、目の前の地獄のような光景を見ながらも、歓喜の大笑いして、銃を渡した三太郎と共に敵へミニガンの弾丸を浴びせる。

 

「怯むな撃てーーーーー!」

 

先手を取られた極道達が、なんとか応戦し銃撃戦が始まるなか、ゾクト、矢崎、達郎の三名は…

 

「あがぁぁぁッッッ!!!!」

 

まずゾクトは、ラジオから離れていたので、直接の爆発からは免れていた。しかし、破片を免れるほどではなく、爆発時に玄関ホールを向いていたため、体の後面だけ針ネズミのように破片が刺さり、その痛みに転げ回っていた。

 

「ヒィィィッッッ!!!」

 

銃撃戦の中、一人だけ近くの階段に逃げた者がいる。国会議員の矢崎だ。矢崎は、三太郎が達郎へ向けた『伏せろ』という声に従い、偶然にも事なきを得たのである。

 

最後に達郎は、まだ頭を伏せたまま将造達の様子を伺っていた。

 

(誰だ?この鋭い目付きをした人は?半人前の俺でもこの人は、凄い修羅場を潜り抜けて来たことは解る。けれど、たった二人だけじゃ………!?)

 

目の前の将造という男を分析していた時、達郎の目に先程まで痛みで転げ回っていたはずのゾクトが、将造に向かって走って迫るのが見えた。将造は、他の者を銃撃するのに夢中で、迫るゾクトには気付いていない。

 

「こ、この野郎ォォ~~~!!!!」

 

「そこの帽子の人、危ない!」

 

達郎が、将造に向かって叫んだ瞬間…

 

ガッシャァッーーーーーン!!!

 

十トントラックが、玄関を突き破り勢いよく入って来る。そして…

 

キキッーー!!ドワォォッ!!!

 

「グェッ!」

 

ゾクトは鈍い音を響かせながら、入ってきたトラックに五mほど突き飛ばされた。

 

「「「ウォォォォッッッ!!!!ーーーー」」」

 

トラックから重火器を装備した岩鬼組の残党が、雄叫びと共に次々と飛び出し、轢いたゾクトを気にも止めずに将造に加勢する。

 

さらなる激しい銃撃戦が始まったなか、運転席に座っている常に笑顔の拓三が、将造に声をかける。

 

「ナイスタイミングですかね?若?」

 

拓三の笑顔に反して、将造は怒りの顔で拓三に詰め寄り、トラックで轢いたゾクトを指差す。

 

「馬鹿たれ、拓三。ちゃんと前を向いて運転せんかい!見ぃ!あのブサイク!」

 

ブサイクと言われたゾクトは、体をピクピクさせてわずかだが生きていた。

 

(もしかして、車で人を轢いたことに怒ってるのか?こんなに人を殺しまくっているのに?)

 

二人の会話を聞く達郎の頭に尤もな疑問が浮かぶ。しかし、そんな疑問は、怒り顔からまた凶悪な笑顔に戻った将造の台詞で吹き飛んだ。

 

「まだ、生きとるじゃろうが!次からは、運転中はよそ見せず、しっかりと前を見て、安全運転でどんな奴でも一撃で轢き殺すんじゃ!」

 

「すんません、若。次からはノマドの連中でしっかり練習して、ちゃんとジャストミートします。」

 

拓三も頭を掻きながら笑顔で答えた。そして、拓三との会話を終えた将造は、トラックから離れると、意外にも先程トラックで轢いたゾクトに向かって歩いて行く。

 

(そうか、止めを指すんだな…)

 

達郎は、将造の容赦のなさに感心する。

 

しかし、意外にも将造は、ゾクトの顔の側にしゃがみ、ゆっくりと話しかけた。

 

「ぬし、まだ生きとるんか?」

 

ゾクトが僅かながら、目と指を動かす。

 

「拓三にはああ言ったが、正直ぬしの体の耐久力は凄いと思うぜ…よし、気に入ったわい!」

 

将造は、ゾクトを肩にかけて持ち上げた。

 

ゾクトは、思わぬ幸運に瀕死ながらも笑顔を見せる。

 

(ゾクトを持ち上げるって、なんて馬鹿力なんだよ。いや、それよりもまさか、ゾクトを助けるのか?)

 

達郎が、不安げな顔になった次の瞬間、近くの柱に隠れていた極道が飛び出してきた。手には拳銃が握られており、有無を言わさず将造に向けて発砲する。

 

「死ねっ!将造!!」

 

ズドン!

 

「ガハッ!」

 

ホールにまた、新しい悲鳴が響いた。しかし、その声の主は将造ではなく…。

 

「な、何で…ゲフッ!」

 

ゾクトの体に爆発の傷やトラックによる轢傷ではない、銃撃による新しい傷ができていた。将造は、ゾクトを盾にして弾丸を防いだのだ。

 

「アホたれ!こっちには見てくれは最悪じゃが、爆発でもトラックでも壊れん頑丈な盾があるんじゃ。どんどん撃ってこんかい!!!」

 

ズドン!

 

「ぎゃん!」

 

そう叫びながら将造は、ゾクトを片手で担いだまま、先程の極道を腹巻きから出したコルトパイソンで撃ち殺した。

 

「畜生っ!構うな!撃て撃てぇ!」

 

ズドン!ズドン!ズドン!

 

次々と柱に隠れていた極道達が銃撃するが…

 

「ゲフッ!ガフッ!ゴフッ!」

 

「うわぁーはっはっはっはっはっ…!!!!わしの無敵の盾は、そんなもんじゃ貫けんわい!」

 

将造は、襲いかかる弾丸のすべてをゾクトの体で防ぎ、さらに敵へと突っ込んで行った。

 

(この将造って人。ゾクトを人間として気に入ったんじゃなくて、銃弾を防ぐ盾として気に入ったのか…)

 

達郎は、恐ろしさのあまり身震いした。

 

 

 

一方、将造が作り出した阿鼻叫喚の地獄をスクリーン越しに見ていた倉脇は、唖然としていた。

 

(な、何であんな火力がある武器を将造達が持っとるんじゃ!)

 

「どうしたんだい倉脇?顔が青白くなってるよ?」

 

青くなる倉脇に対して、なよ子の顔は、逆に活気を帯びてくる。

 

同じくスクリーンの惨状を見ているリーアルは、急いで兄である矢崎に電話をかける。

 

「兄さん、早くここに戻れ!」

 

『あいつらメチャクチャだ!!今二階だが、エレベーターが全部、上階に止まって降りてくるのに時間がかかる!!!』

 

「だったら、二階のトイレでやり過ごせ。あいつらもまさか誰もいないトイレまで銃撃しないはずだ。」

 

『わ、わかった。』

 

電話を切ったリーアルが、血相を変えて倉脇に詰め寄る。

 

「倉脇さん、大丈夫なんでしょうな?!」

 

「なァに、所詮東の極道達は、捨て駒ですわ。二階には、最強の対魔忍でも突破するのが難しいやつらが、わんさかいるんで安心してください。」

 

倉脇は、焦っている心中を悟られまいと自身満々の表情を作り、リーアルを安心させるように告げた。

 

(幸いパーティーに招待したVIP達は、これもアトラクションの一つとして楽しんどる。将造、二階でお前はおしまいじゃ。)

 

 

 

 

「よし、これで一階のやつらは皆殺し完了じゃ!次行くぞ!三太郎!」

 

将造は、無数の弾で重くなり、いつの間にか死体となったゾクトを用済みとばかりに投げ捨て、先に進もうとする。

 

「ま、待ってくれ!」

 

進撃する将造を呼び止める者がいた。先程の銃撃戦でずっと伏せていた達郎である。

 

「おう、兄ちゃん!さっきは、声をかけてくれてありがとよ。しかし、早くこのビルから逃げた方がいいぜ!お礼は、またいつかさせてもらうけぇ。」

 

「俺も将造さんと一緒に連れて行ってくれ!」

 

いきなりの達郎の言葉に将造と三太郎は、お互い顔を見合わした。そして、先に三太郎が、口を開く。

 

「止めときなよ、兄ちゃん。こっから先は、もっとヤバいヤツが出てくるに違いないんだから。さっき俺を庇ってくれたことは尊敬するけど、はっきり言って…若?」

 

説得する三太郎を手で制して、将造が笑顔でも怒り顔でもない真剣な顔で、達郎に尋ねる。

 

「兄ちゃん、その必死な顔は女か?」

 

「は、はい。」

 

将造の言葉に図星を突かれた達郎は、恐る恐る頷いた。

 

「その女は、兄ちゃんの何じゃ?」

 

「はい。ゆきかぜと凛子姉は、俺の……」

 

達郎の脳裏に二人の思い出が駆け巡る。

 

「俺の…命よりも大切な人達です!俺は、その人達を取り戻すためここに来ました!どうか、お願いします!!」

 

達郎は、将造に深く頭を下げた。

 

「…兄ちゃん、名前は?」

 

「秋山達郎です。」

 

「よし、頭上げぇ!」

 

将造は、自分が背負っているポンプアクション式の散弾銃を頭を上げた達郎に放り投げた。慌てて受け取る達郎。

 

「よし、達郎!わしも許嫁拐われ取る。わしらは似た者同士じゃっ!一緒にノマドの連中をぶち殺しに行くぞっ!!」

 

「はいっ!」

 

岩鬼組に一時的だが、新しい組員が加わった。その後、岩鬼組は、二階に行く将造達とビルの柱に細工をする拓三達の二つの班に別れた。

 

 

 

将造が達郎を仲間にして数分後、二階のトイレに建て込もった矢崎は、段々と近付いてくる銃撃と悲鳴を聞いてガタガタと震えていた。

 

「な、何で私がこんなところで、こんな目に…本当なら、あのゆきかぜと凛子を犯しているところを…。そうだ、あの帽子の男が来て、すべてが狂ったんだ。うぅぅ……」

 

 

 

将造達は、二階に逃げた極道達を追撃していた。意外にも体勢を立て直した極道達は、統率がとれており、将造達は攻めあぐねるかと思われた。しかし、

 

「旋風の術!!」

 

ビュオオオオッッ!!!

 

窓が空いていないビル内で、激しい旋風が吹き、将造達を狙う極道の銃口が定まらない。

 

「な、何でビル内でこんな風が、くそっ狙いが!!」

 

ダダダダダダ!

 

「ぎゃあっっ!」

 

体勢を崩した極道を将造が容赦なくM60機関銃で撃ち殺した。

 

「凄い技を使うのぉ!達郎!こりゃ進むのが楽じゃわい!」

 

将造が、達郎を誉める。

 

元々の『旋風の術』という忍法は、一人前の対魔忍なら、刃のような風で敵をズタズタにする威力を持つ。未熟者の達郎では、激しいつむじ風で相手のバランスを崩す程の威力しかない。だが、その未熟な達郎の忍法が、このような密閉空間の銃撃戦において、最大限に発揮されていた。

 

対魔忍である達郎は、本来なら一般人の前では忍法を控えるべきなのだが、愛する二人を取り戻す使命に燃え、さらに命を失う戦場特有の興奮状態に陥っており、その考えはすっぽりと頭から抜け落ちていた。そして、達郎は、未熟な自分の忍法が、戦闘の役に立っているのが何より嬉しかったのだ。

 

やがて、将造達は、長い廊下を渡り終え、曲がり角につく。

 

「よし、これで二階は制覇じゃ~!」

 

しかし、先行する一人の岩鬼組組員が、将造達より先に廊下の曲がり角を曲がった瞬間、

 

ダダダダダダダダ!!!!!

 

「ぎゃあっっ!」

 

激しい銃撃音と組員の断末魔の声が響いた。

 

ズシン!ズシン!ズシン!ズシ……

 

「な、何だ?この足音は?!」

 

達郎が驚くなか、重厚な足音と共に曲がり角から現れたのは、鋼鉄の武装をした三人の人間だった。

 

今まで笑顔だった三太郎が、その者達を見た瞬間にビルに潜入して初めて狼狽えた顔に変わる。

 

「わ、若。あれはもしかして…米連の…」

 

「ああ、日本の『雷電』の型じゃねぇ。あれは、米連の最新式強化外骨格『アレクサンドル』じゃ。倉脇の奴、いいオモチャをコレクションしとるのう。面白くなってきたぜ!」

 

強化外骨格とは、簡単に言えば現代版の鎧である。しかし、その分厚い外装は戦車並みで、さらに筋力をサポートする機能もあり、将造のような馬鹿力がなくとも重火器を何個も楽に携帯できるのだ。登場した当初は、『機動性で装甲車より劣り、運用性で歩兵に劣り、火力では戦車に劣る』などと揶揄されていたが、数回の実戦で悪評は一掃される。強化外骨格が本領を発揮するのは、このビル内のような狭小地での戦闘にある。さらに強化外骨格の開発は、世界で米連が頭一つ抜き出ているため、将造達の目の前にいるのは、世界最強の強化外骨格なのだ。

 

ダダダダダダダダ!

 

チュン!チュン!チュン!チュン!

 

将造達は、その三体の強化外骨格にミニガンやM60などの弾丸を浴びせるが、戦車並みの装甲にすべて跳ね返される。

 

「駄目だ。完全防弾だ!!」

 

「くそっ!旋風の術!」

 

ビュオオオオオオオオ!!!

 

達郎も旋風を起こすが、人の数倍の重量を持ち、筋力も機械でサポートされているアレクサンドルには、銃口の方向を変えることもバランスを崩させることもできない。

 

銃撃や忍法が効かずに焦る将造達に構わず、アレクサンドルの12.7mm重機関銃が容赦なく発射される。

 

ガガガガガガガガ!!!

 

「ぎゃあっっ!」

「ぐぁっ!」

「がはっ!」

 

将造達は、果敢に迎撃するが、自分達が持っている装備では歯が立たない。やがて、徐々に組員達を打ち取られ、次第に追い詰められていった。

 

そんな絶望的な状況のなか、何を考えたのか将造は、拓三に携帯で連絡をする。

 

「拓三!そっちはどうじゃ?」

 

拓三達は、ビル内の柱という柱に穴を開けて、何か大きい木箱を詰めていた。

 

『やれっていうならやりますが、若達が中にいるんじゃ……』

 

「構わねぇ!やれっ!お前を信じとる!」

 

『わかりました、みんな!ビルから出ろ!』

 

携帯を切った将造は、生き残った三太郎と達郎に叫ぶ。

 

「よし、わしらも避難じゃ!」

 

そう言って将造は、目の前のトイレに入って行った。慌てて三太郎と達郎もトイレに入る。

 

「将造さん!トイレじゃ逃げ場がないですよっ!」

 

「そうですよ、若。トイレじゃどん詰まりでっせ!」

 

「いいんじゃ!昔から便所は地震にゃ強いんじゃ!」

 

すでに閉まっていた個室の隣に三太郎と達郎と共に入った将造は、次にさっきと別の携帯に電話する。

 

『トゥルルルル…将造か…どうじゃ、わしのオモチャは?』

 

将造は、島田の携帯で倉脇に電話をかけたのだ。

 

「随分、楽しく遊ばせてもらってるぜ。けれど、オモチャは、いつか壊れるもんじゃ。」

 

『減らず口を叩きおって、例えアレクサンドルが壊れても、このビルの戦力をすべてお前の近くの階に集中させとる。悔しかったら、登ってこんかい!!!』

 

「一つだけ言っとくぜ、倉脇…」

 

『何じゃ?命乞いか?』

 

ズシン!ズシン!

 

トイレ前の廊下から、アレクサンドルの足音が聞こえてくる。

 

「将造さん!あいつらがやって来る!」

 

「若ぁ!!」

 

将造は、あの凶悪な笑顔になり、大声で携帯越しの倉脇に叫んだ。

 

「わしが登るんじゃのうて、貴様が降りてくるんじゃっ!!!!!!!!!!」

 

 

ドガァァァァァァァァァァッッッッッッ!!!!!!!!!

 

 

将造が叫んだ瞬間、拓三達が一階の柱に仕掛けた、木箱に入った爆弾がいっせいに爆発した。




将造達が持っている武器の種類が、専門外で難しいです。

追記
読者様のご厚意による情報提供により、原作準拠の武器に変更致しました。
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