対魔忍者と極道兵器   作:不屈闘志

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Weapon 5 粘着ドローン野郎

要塞ビルから少し離れた別のビルの屋上で、東京キングダムに向かうノマドのヘリを見つめる者達がいた。

 

一人は、制服を着て茶色い髪を膝まで伸ばしている十代後半の美少女。もう一人は、ボブカットの赤い髪、金属製のマスクで目を隠し長いコートを纏った20代後半の女性。

 

二人は、要塞ビルの二回目の爆発後からこの離れたビルに降り立ち、矢崎の落下、倉脇の逃亡、そしてリーアルが殴られる場面を見ていた。そして、今は達郎が、ビルを下りる方法を必死に探している様子を観察している。

 

双眼鏡の中の必死な達郎を見ながら、ロング髪の少女が悔しそうに叫ぶ。

 

「くそっ!あれじゃあ、もう間に会わない!秋山さん…。」

 

少女の言葉を仮面の女は、厳しく諭す。

 

「絶対に行ってはダメよ、アスカ。私達は、偶然近くにいただけで何の装備もないのよ。それにあのビルは、二回目の爆発から、今すぐにでも倒壊してもおかしくないし、風神飛翔で最上階に行けたとしても、日常用のその手足では戦闘も心許ないし、四人同時に飛ぶことはできない。例え彼女達を助けられたとしても、ノマドのビル崩壊、国会議員の矢崎宗一とヨミハラの主リーアル殺害の関与が疑われれば、DSO(米連防衛科学研究室)の立場が危うくなってしまうわ。」

 

「わかってます、おぼ…所長。私も元対魔忍です。目的遂行の為なら非情な決断をすることには、躊躇しません……。」

 

アスカと呼ばれた少女は、悔しい胸の内を隠しながら気丈に答えた。

 

ゴゴゴコゴゴゴコ!!!!!

 

やがて、ゆっくりとビルが真横に倒れ始める。

 

「要塞ビルの最後ね。」

 

所長と呼ばれた仮面の女は、崩壊するビルを見ながらアスカの心中を軽くするかのように他の話題に移した。

 

「攻めていたのは誰だか知らないけど、対魔忍や米連、ましてや中華連合ではないことは確かね。秋山の弟くんは、それに巻き込まれた感じだわ。だとしたら一番恐ろしいのは、攻めたその後。後ろ楯がない者がノマドにあんな正面から喧嘩を売れば、生き残ったとしても、後で親族共々、殺されるだけでは済まない。だから、考えられるのは只の馬鹿か、すごい実力者かの二つね。私は、圧倒的に前者だと思うけど…どうしたのアスカ?」

 

仮面の女は、ずっと何も答えないアスカに疑問を持ち、心配そうに彼女を見た。すると視線の先の双眼鏡を覗くアスカは、仮面の女の予想と裏腹に悔しげな表情から驚きの表情に変わっていた。

 

「所長…もしかしたら、実は、その両方かも知れませんよ?ビルの壁面を見てください。」

 

「何?実力がある馬鹿ってこと?そんなヤツがいれば、裏世界の勢力図が書き変わるわね?ん…ビルの壁に…」

 

仮面の女が、渡された双眼鏡を覗くと崩壊していくビル壁に、何か人のような物体が横切った。急いで謎の物体を双眼鏡で追うと、それは壁を降りている五人の人間であった。崩壊していくビルの壁を降りる人間だけでも驚くべきことなのだが、さらに二人を驚かせたのは、その降り方、いや滑り方であった。

 

「な、何、あれは?!」

 

「あれは、馬鹿なのか、狂っているのかどっちなんでしょう?」

 

アスカは、先程とは違った嬉しさと興奮が混じった声で、仮面の女に問いかけた。

 

仮面の女が驚いたのは、謎のカンカン帽子の男が笑みを浮かべながら達郎、ゆきかぜ、凛子を、肩に担ぎ上げているところ…ではない。真に驚愕したのは、その男の足元。帽子の男は、痛みと苦しみで歪んだ顔のリーアルの上に乗り、サーフボードのようにビルを下降していたのだ。

 

 

 

 

ズザザザザザザザザ!!!!!

 

「うわぁぁぁっっ!!!」

「キャアァッッッ!!!」

「ぐうぅぅぅぅっ!!!」

 

対魔忍の三人は、悲鳴を挙げながらも将造のなすがままだった。日頃、特別な訓練を積んでいる対魔忍でも、人間をサーフボード代わりにして、倒壊してゆくビル壁を滑るという狂った訓練はしたことがない。故に、今は叫ぶことしかできない。

 

「あががががが…………!!!!!」

 

リーアルは、数分前の将造達を地獄の道連れにするという覚悟を決めた顔から、痛みと苦しみに満ちた惨めな顔に変貌していた。リーアルの体は、三人を担いでいる将造に思い切り踏みつけられており、四人分の体重でビル壁に押し付けられ、大根おろしのように体が削られていた。削られていく量が増えるに連れて、リーアルの顔がさらに歪んでいく。

 

「ヒョォーーー♪♪♪♪♪」

 

他の四人の心中を知ってか知らずか、当の将造は、緊張や真剣さ、絶望といった感情とは無縁の、死のスリルを存分に楽しむ狂気を孕んだ笑顔でビル壁を滑る。

 

「きたきたきたきたっっ!!!」

 

やがて将造達は、あと少しでビルの根元に到達しようとしていた。しかし、それと同時に難攻不落と言われたノマドの要塞ビルが、完全に倒れる瞬間が来る。

 

「将造さんっ!このままじゃ、瓦礫に突っ込んでしまう!」

 

達郎が叫ぶように、このままの速さで壁面を滑っていれば、将造達は勢いよく地面の鋭い瓦礫に突っ込み、さらにビルの崩壊に巻き込まれてしまうだろう。

 

すると将造は、左肩に乗せている達郎に力強い笑みを見せた。

 

「達郎、女共を頼んだぜ!これも首領(ドン)たる務めじゃっ!」

 

「え、それって?うわぁっ!?」

 

地上の瓦礫に突っ込む瞬間、ビルを滑ってきた勢いを達郎達だけでも相殺するように将造は、三人を空中に放り投げた。

 

「将造さーーーーん!!!!」

 

「うぉぉっーーーー!!!!」

 

空中に飛ばされた達郎は、滞空しながらも将造を急いで目で追う。すると将造が勢いを保ったまま、リーアルと共にビルの崩壊により発生した砂煙に飲まれていくのが見えた。

 

(くそっ!けれど、今は、こっちも!)

 

「二人とも捕まって!」

「「達郎!」」

 

達郎は思考を切り替え、同じく空中に投げられたゆきかぜと凛子を抱き締める。

 

(地面までは約6m!最上階から飛び降りるのに比べたら幾分ましだけど、このままでは良くて骨折、最悪の場合命を落とす。だったら!!)

 

そして、自分の命の限りの術をかける。

 

「うぉぉぉっ!!飛翔の術っっ!!!」

 

上昇気流のような風が三人を包んだ。

 

 

 

要塞ビルの倒壊後、砂煙も収まり、周囲が見渡せるようになると生き残った岩鬼組員達は、急いで将造を探し始めた。拓三や三太郎、そして、上着を着せられたなよ子も必死に探すが、表情には諦めと悲しみが見え隠れしていた。将造と共に激戦を潜り抜けてきた二人でさえ、あのビルの倒壊に巻き込まれれば、将造でもただではすまないと解っているからだ。

 

探し始めて数分後。組員達の一部が、ある場所で何かを見つけたかのようにざわつきはじめた。

 

「若を見つけたのかぁっーー?!」

 

拓三達が、急いで組員達をかき分けそこに駆けつける。すると其処にいたのは、将造ではなくゆきかぜと凛子を抱いて横たわっている達郎だった。

 

三人は、瓦礫で体が傷付いてはいるが、上下に胸が動いており気を失っているだけなのが拓三達でもわかった。

 

三太郎が達郎の襟元を持ち、達郎を無理矢理起こす。

 

「達郎、起きぃ!若は、どうなったんじゃ!?」

 

「馬鹿!三太郎、あまり揺らすんじゃないよ!一旦寝かせてやりな!」

 

なよ子が三太郎に声をかけると同時に達郎が目を覚ました。

 

「あ、あれ、俺生きてる?ハッ!?ゆきかぜと凛子姉は?」

 

「安心しな!あんたの女達は、隣で寝てるよ。達郎君、将造は一緒じゃないのかい?」

 

もう一度寝かせられた達郎は、必死な組員達から目を反らし、苦しそうに告げる。

 

「将造さんは…俺達だけでも助けるために、瓦礫に突っ込む瞬間、空中に投げてくれたんです。そして、そのまま崩壊に巻き込まれて…。」

 

辛そうな達郎の言葉で、組員達の間に沈黙が支配する。

 

そんな中、なよ子がゆっくりと口を開いた。

 

「……そうかい…けれど、あいつは、簡単に死ぬタマじゃないっ!多分、ここら辺に埋もれてるはずだよ!あんたら、早く探すよ!」

 

なよ子が組員に命令した瞬間だった。

 

ガラガラガラ……

 

達郎達が横たわっている場の十m先の瓦礫が、いきなり動き始めた。

 

「わ、若ぁ!」

 

急いで三太郎が喜びの声で近づく。しかし、

 

ウィィーン!

 

瓦礫から出てきたのは、将造と似ても似つかない蟻型の機械であった。

 

「こ、こいつは、なんじゃ?軍でもこんな物見たこたねぇ」

 

さらにその一体が出現したのを皮切りに倒壊したビルのあちこちから、蟻や、蜂、犬型の機械が、出現し始めた。

 

「な、何でこんな奴らがこんなに?」

 

軍にいたはずの拓三達でも知らないのは無理はない。これら、蟻、蜂、犬型の機械は、極秘裏に米連が、魔界の技術と人間界の技術を組み合わせた警備型のドローンである。部外者には容赦なく襲いかかるよう設定してあるので、パーティー会場の客が入らないような中間の階を警備していた。しかし、ビルが倒壊したことによって、地上に降りたった今、誰であろうと見境なく襲う恐怖のマシンと化していた。

 

「見て下さい!う、上からも!」

 

仰向けで横たわって、空を見ていた達郎が叫ぶ。

 

上空からは二種類の円盤型ドローンが、何十機も迫っていた。このドローンは、二種とも高性能の索敵能力を持ち、一種は、7.62mm機関銃を装備、もう一種は、飛行物に特攻しそのまま自爆をする機能を持つ。二種の円盤形ドローンは、上空から侵入しようとする対魔忍を撃ち落としたこともあり、空の守りの要であった。しかし、ビルの屋上を基点として、空を守るよう設定していたため、ビルが倒壊すると、それに応じてドローンも下りてきたのである。

 

「うぉぉぉぉ!若の弔い合戦じゃっ!!向かってくる奴は、全部ぶっ殺せ~!」

 

三太郎達は、怒りに任せて銃で必死に応戦し始めるが、

 

「ぐっ!」

「がはっ!」

「も、もう駄目じゃ……」

 

気力、体力、そして何より銃の弾が残り少なく、すぐに防戦一方で逃げることもできなくなっていった。

 

達郎も未だに気絶しているゆきかぜと凛子を守るため、傷付き疲れた体で立ち上がり、隠していた忍者刀や苦無で応戦する。しかし、空からも地面からも来る攻撃に次第に対処できなくなっていった。

 

(くそっ!もう術を使える力が残っていない。このままでは…はっ?!)

 

ヒューーーーー!!!!!

 

二人を守る達郎の死角に向かって、自爆型ドローンが、勢いよく突撃してきた。達郎はそれに気付くが、他のドローンが邪魔で対処が間に合わない。

 

(しまったっ!!!!)

 

ズドン!

 

円盤形ドローンが達郎に接触する瞬間、一つの弾丸がそれを撃ち落とした。

 

(いったい誰が…あれはまさか?!)

 

達郎が弾丸の出所を確認すると、十数m先の瓦礫の中から、拳銃を持つ手が生えていた。次の瞬間、手の主が、瓦礫を押し退け雄叫びと共に姿を表す。

 

「うおおぉぉっっ!!!!!」

 

ガラガラガラ!!!ドワォォッ!!!!

 

勢いよく瓦礫から出てきたのは、死んだと思われていた将造であった。足元には苦悶の表情をしたリーアルの死体が転がっている。将造は瓦礫にぶつかる瞬間、素早くリーアルをクッションにして、助かったのだ。

 

「へへへ、俺は、これくらいでくたばらねぇぜ~!」

 

「将造さん!良かった!生きて…え"?!その手足は?!」

 

達郎は、将造が生きていたことに喜ぶが、その姿を見た瞬間、声を失った。確かに将造は、リーアルを上手くクッションにしたが、それだけでは衝撃を完全に殺せなかったらしく、全身から血が吹き出て傷だらけであった。特に左腕と右脚は、手足の指があらぬ方向に曲がり、さらに前腕の骨と下腿の骨が、外から見えており重傷だった。

 

だが、将造は瓦礫の上から気丈にも、空、地面から迫るドローン軍団に吠える。

 

「うおお!!派手に行こうぜっ!!」

 

ズドン!ズドン!

 

まだ動く右手で、一機、二機と果敢にドローンを撃ち落とす将造だが、右脚が折れているため踏ん張りが効かない。

 

ズルズル……

 

「あら?あらららら~~~!!」

 

それ故に遂に瓦礫の上からバランスを崩し滑り落ちた。

 

「若!」

「将造!」

 

すぐに三太郎となよ子が駆け寄り、将造を抱き起こす。流石の将造も自分の力だけでは、もう起き上がれないほど傷付き披露困憊していた。

 

「ぶち殺す奴らは、どこじゃ?立たせろ。俺がカタをつけちゃる。」

 

「若、無茶だ!手足が明後日の方向に曲がってる!」

 

「アホンダラ!わしが死ぬまで喧嘩は終わらんのじゃ!」

 

ガラガラガラ!!!

 

将造が叫んだ瞬間、その声に呼ばれるかのようにまた瓦礫の下から、何かが出現し始めた。その何かを見て三太郎の顔が青ざめる。

 

「あ、あれは多脚戦車『キャンサー』?!倉脇の野郎…あんなものまで!」

 

キャンサーとは、最新の戦闘用AIにより高度な戦術支援を目的とした蟹に似た多脚戦車の俗称、いかなる状況にも対応できるという触れ込みで、主砲の二門と12.7mm重機関銃、7.62mm機関銃を搭載している。

瓦礫を押し退けて全身を表したキャンサーは、その自慢の多脚を使って将造に迫り来る。

 

ズドン!ズドン!

 

キィン!キィン!

 

キャンサーは、迎撃する将造のコルトパイソンの弾丸を楽に跳ね返した。

 

「ぐそっ!」

 

 

 

バキィィン!!!

 

「刀が?!」

 

一方、果敢に戦う達郎は、犬型ドローンに最後の武器である忍者刀が噛み砕かれてしまう。

 

「ハアッ!ハアッ! もう体が……」

 

既に体力と対魔粒子を使い果たし、気力だけで戦っていた達郎は、忍者刀を破壊されたのを切っ掛けに遂に限界を迎え膝をついた。

 

「達郎っ?!くそっ!こっちも弾がもうねぇ!」

 

拓三が、膝を着く達郎を見て叫ぶが、こちらも他の組員達と同じく体力、気力、そして弾数が限界だった。

 

左腕、右脚が重傷でなよ子に抱き抱えられる将造。体力、気力、対魔粒子が尽き、倒れる寸前の達郎。弾丸が尽き、直接、銃で殴って戦う三太郎、拓三、他の組員達。

 

そんな満身創痍の岩鬼組に止めを刺すべく、申し合わせたかのようにキャンサーと天地すべてのドローンが、一気に襲いかかる。

 

「うぉぉぉぉっっ!!わしは極道兵器やぞぉぉっっーー!!!!!!」

 

将造は、なよ子を背中に移動させ、残った左足で奮い立つ。そして、雄叫びを挙げながら、弾数少ないコルトパイソンを迫り来るキャンサーに向けて、特攻しようとした。

 

その時である。

 

ザシュ!!

 

数多くの瓦礫からできる影から、唐突に黒い刃が生え、襲いかかる地上のドローンを刺し貫いた。

 

ズズズズズ……

 

さらにキャンサーの脚に地面から自然界では、あり得ない勢いで成長する植物が絡み付く。キャンサーは、脚を取られているのにも関わらず、その場で7.62mm機関銃を組員達に向けて発射しようとする。しかし、

 

ギュルルルル…ドガァッッ!!

 

明らかに投てき不可能なサイズの大斧が、地面すれすれを滑空し、キャンサーに深く突き刺さった。大穴を開けられたキャンサーは、煙を吹き上げながら、すべての機能が停止した。

 

「な、なんじゃ?これは?」

 

呆気に取られる将造達に対して、達郎は、喜びに溢れた顔になる。

 

「こ、これはまさか?!」

 

そして、キャンサーが行動停止したのを皮切りに何処からともなく様々な武器を持つ薄いスーツを着た集団が、無数のドローン軍団に襲いかかった。

 

その集団の中で長い髪を後ろに括った女性『八津紫』が、キャンサーに刺さった大斧を抜きながら、他の者に命令を下す。

 

「相手はドローンだ!雷遁系の者をサポートする陣で行けっ!」

 

「「「「了解!!」」」」

 

 

ある者は炎を放ち、ある者は電撃を走らせ、またある者は風の刃を投げ、無数にいたドローンが、次々と撃ち取られていく。

 

彼らは対魔忍。千年以上前から魔界の者から日本を守り、忍術という物理を越える現象を操る戦闘集団である。

 

「良かった、皆来てくれ…たんだ…うぁ…」

 

仲間の対魔忍達の活躍を見て安心した達郎は、遂に気絶し、地面に倒れかける。しかし、その体を癖毛のオレンジ髪の女性『井河さくら』と金髪のメガネをしている女性『高坂静流』が支えた。

 

「勝手に一人で飛び出したことは、後でお説教だけど、二人を守って良くここまで頑張ったね。ヨシヨシ♪」

 

「ごめんなさい…私と違って、貴方は、このビルに一人で立ち向かったのね。私もビルに向かえば、こんなに傷付かなくて済んだかもしれないのに…だから…」

 

ブブブブブブブブ……!!!

 

達郎をゆきかぜの隣にゆっくりと横たわらせた瞬間、二人に二匹の蜂形ドローンが襲いかかる。しかし、

 

グサッ!

バシィッ!

 

さくらは影から出した刃で、静流は植物の鞭で蜂形ドローンを一瞬で破壊した。そして、二人は、気絶している三人を背にして宣言する。

 

「「今度は、先生らしく私達が貴方達を守る!」」

 

 

一方、岩鬼組の面々は、いきなり現れた武装集団に唖然としていた。その中で三太郎が、将造に問う。

 

「わ、若、こいつらは一体?」

 

「わからんが、此方を襲う気は無いようじゃ。達郎が、時々言うとった大麻人?というやつか…ん?!」

 

唖然とする他の者と違い、将造が鋭い目付きで集団を観察しながら答えた時、その目に一台の高級車が、凄いスピードでこちらに近づいて来るのが見えた。

 

『!』

 

すると戦っていた円盤形ドローンのほとんどが、その高級車に向かっていく。どうやら円盤形ドローンは、素早く動く物を優先して襲うらしく、このままではあの車は、機関銃で蜂の巣もしくは、自爆で破壊されるだろう。

 

高級車は、円盤形ドローンの動きを察知したのか、その場で停止し、後部座席から一人の女性が下りてきた。その女性は、長く黒い髪を短く後に纏めて、政治家の秘書のようなキッチリとした服を着ており、何より氷のようなクールさを秘めた、圧倒的な美貌を誇っていた。

 

そして、女の動きを察知した円盤形ドローンは、狙いを更に車からその女に変え、一気に襲いかかった。

 

一連の様子を見ていた将造は、普段なら大声で逃げろとその女に叫んだだろう。しかし、女の落ち着き具合、隙がない目付き、そして、自分と同じく、何度も修羅場を潜ってきたオーラに気付き、何も叫べずにいた。

 

(何もんじゃ。あの女?あんな鋭い目付き、軍の中でも見たこたねぇ!)

 

将造達が注目する中、女はいきなり自らの服を掴み、一瞬で空へ脱ぎ捨てた。普通なら、下着姿になるところだが、女は、服の下から、他の対魔忍と同じく体の凹凸がくっきりと出る紫のスーツを着ており、さらに髪が下ろされて、右手に日本刀を握っていた。そして、襲いかかる円盤形ドローンに向かって叫ぶ。

 

「殺陣華!」

 

その瞬間、女の体から、何十体もの分身体が、一瞬で放たれ、円盤形ドローンに向かって行く。

 

ドガッ!ドカッ!ドガッ!ドガァァァ!

 

何十という円盤形ドローンは、女の分身体の攻撃により、すべて撃墜された。放たれた分身体は、すぐに消え、すべての円盤形ドローンの撃墜を確認した女は、油断を微塵も感じさせない顔で高級車の方に戻って行った。

 

「若、わしら知らず知らずのうちにポンを打ち込まれたんですかね?」

 

三太郎が、先程の女の戦闘を見て呟いた。

 

「わからんが、奴さん。わしらに何か用があるようじゃぞ?」

 

車の元に戻った女は、逆の後部座席から、一人の見るからに威厳がある壮年の男性を連れて、将造の元に向かって来た。

 

将造は、敵か味方か、まだ判らない集団に油断せず、傷だらけの体で身構える。

 

やがて、目の前に立った二人に将造は、殺気すら含む目線で、問いかけた。

 

「何者だ?てめーら?」

 

普通の人間なら、震えが止まらなくなる将造の殺気を、少しも臆せず二人は受け止めた。そして、壮年の男性が先に口を開く。

 

「私は『山本信繁』。内務省公共安全庁調査第三部、通称『セクションスリー』の部長をしている。噂に違わぬ暴れっぷりだな、岩鬼将造。事後処理に頭が痛くなる。」

 

山本という男が、顔をしかめながら言った。

 

将造は、次に先程、不可思議な術で円盤型ドローンを全て破壊した女を睨む。

 

「私は、この武器を持った集団、対魔忍の長『井河アサギ』。これから、貴方達に地獄を見せるかもしれない女よ…」

 

アサギと名乗る女は、落ち着いた冷たい声で将造達に宣言した。

 

 

 

 

そんな将造とアサギの邂逅を、達郎達が助かり、すっかり機嫌が良くなったアスカが観察していた。双眼鏡を覗いているアスカに仮面の女が声をかける。

 

「アサギは、あの狂人をどう料理するのかしらね。もう少し観察したいけど、ここを離れましょう、アスカ。アサギまで出て来たら、ここにいる私達も気付かれる可能性がある。思いがけない手助けも出来たことだしね。」

 

二人の周りには、壊れた円盤形ドローンが幾つも転がっていた。

 

「解りました、所長。アサギさん…また、いつか会いましょう。里に戻るときは、ブラックの首を手土産にします。」

 

二人は、そこから音もなく消えた。




やっと、もう一人の主人公を出せました。
アサギ3の小説版は、殺陣華と光陣華の合体技が出るので、いつかそれも出したいです。

次は、私が一番好きな将造の改造回。
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