対魔忍者と極道兵器   作:不屈闘志

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第三章 極道兵器・誕生!
Weapon 6 極道兵器・誕生!


ノマドの要塞ビルが二度目の爆発を迎えていた頃、八津紫率いる対魔忍達とは別ルートで、要塞ビルに向かう高級車があった。

 

高級車の中には運転手の他、後部座席に二人の男女が乗っていた。一人は一目で多大な経験を積んできたと解る深い顔をしている、髭を生やした壮年の男性。もう一人は、長い髪を後に短く纏めている、匂い立つような色気とクールな美しさが両立した圧倒的な美貌を誇る三十代前半の女性。

 

男性の名は、山本信繁。対魔忍が所属する内務省公共安全調査第三部、『通称セクションスリー』の部長。山本自身は対魔忍ではないが、政府のトップとして知略と政治力を駆使し、対魔忍をサポートしている。

 

女性の名は、井河アサギ。天才的な剣術と体術、そして異能の忍法で最強と称される対魔忍。十数年前に結婚を機に対魔忍を引退しようとしていたが、婚約者を殺され戦いに復帰。現在は五車町にある対魔忍を育成する学園で、校長を務めて後進の指導に当たっている。だが、最強と謳われた実力は、少しも衰えていない。山本とは十年来の仕事の付き合いである。

 

二人は厳しい顔で一言も喋らず、なにかの書類に目を通していた。

 

数分後、山本が先に口を開く。

 

「迷惑な男が日本に帰って来たものだな。帰国したその日に、あのノマドの要塞ビルにテロ行為を行うとは…。幸運にもこの男のおかげで捕らえられた対魔忍の行方が解ったとはいえ、日本政府と対魔忍は、この男とは一切関係がないことを米連に伝えよう。実際に関係がないからな。」

 

二人が読んでいたのは、山本がわずかな時間で調べた将造の性格、犯罪履歴、戦闘記録等が記載されている書類であった。

 

アサギは、視線を書類から山本に移し、厳しい表情のまま答える。

 

「部長の言うとおり、日本政府と対魔忍は、この男、岩鬼将造とは一切関係がないわ。普通なら警察の出番でしょうね。」

 

しかし、アサギは厳しい表情から何かを決意した表情に変えた。

 

「けれど部長。この男は利用できるんじゃないかしら?私達は、今までオーク族の強い者には従う性質を利用して、多少の商売に目を瞑り、裏の情報提供をさせて来た。」

 

オークと言う単語を自ら口に出した瞬間、アサギの目付きが鋭くなる。

 

「けれど、今回の事件で大切な対魔忍の二人が、ゾクトの裏切りで、リーアルに捕らえられたことが解った!強い者に従順ということは、私達が劣勢に陥り、本当に情報が必要な時には、敵に容易く寝返るということ!ドグルを初めとするオーク族は、もう信用ならない!…故に新たなる裏に通じる者…いえ、それ以上の者が必要だわ。」

 

ドグルとは、将造に盾として使われたゾクトとはまた違う、対魔忍に情報提供をしているオーク族の一人である。アサギから情報提供の見返りに多少の闇の商売を許されていたが、最近では厳重に禁止していたはずの奴隷売買に積極的に手を出しているらしい。

 

「岩鬼をどうするつもりだ?」

 

山本は、訝しげにアサギを見る。

 

「岩鬼将造の経歴や性格がこの書類通りなら、敵に対しては恐ろしい程残酷だけど、仲間を裏切ったり、強い者に媚びへつらうことはないと思うわ。情報では、父親を殺された復讐と許嫁の救助のためにビルを襲撃、爆破をしたということらしい。元傭兵ならノマドは、軍事産業を中心とした巨大企業で、裏の顔も少なからず承知のはず。」

 

アサギの言うとおり、ノマドはどの地域の支社でも、警備が軍隊並みに厳重であることが知られている。故に毎年、無謀にも侵入した泥棒やスパイが、死亡するニュースが流れている。その中でも倉脇のビルは、特に厳重だった。

 

「だが、岩鬼は日本に帰国したばかりだぞ?後ろ楯もない鉄砲玉みたいなやつだ。」

 

「岩鬼は、西日本極道連盟会長の息子よ。配下を集めるために、そのコネを絶対に使うはず。それを私達が、少し後押しすればいい。東の極道のトップに立つ予定だった倉脇は、今回で失脚する可能性が高い。これは逆に東の極道を従わせるチャンスだわ。それを足掛かりにして、いずれはセンザキ、ヨミハラや東京キングダムをこの岩鬼に支配させる。矢崎とリーアルもいなくなることだしね。」

 

「なるほど、いつ裏切るか判らない裏の者と手を結ぶのではなく、こちらから立てた者に裏世界を支配させるのか。この日本の裏は、ノマドと中華連合に支配されているに等しい。岩鬼は性格上それを嫌うはず…。しかし、問題が有りすぎる。まず、大人しく我々と手を簡単に組むのか?何の力もない人間が裏の世界を支配できるか?そんな事がバレれば、ノマドのイングリッドや朧、海座が黙ってないだろう。何よりこの話は、すべて将造が生き残っていた場合に基づく話だぞ。」

 

「そうね。確かに死んでいる可能性の方が高いけど、もし生きていれば、今回のことで少なからず怪我を負うはず、それを・・・・・すれば、私達の話くらいは聞いてくれる枷となるでしょう。救済の皮を被った人権を無視する行為だから、最初は絶対に怒って暴れると思うけど」

 

「当たり前だ!勝手にそんなことをされて、怒らん奴は、絶対にこの世にいない!だが…わかった。一応、急いで準備しておこう。」

 

「そうして頂戴。」

 

山本が了承すると先程から、厳しい顔をしていたアサギは、少し表情を和らげ笑みを浮かべた。

 

その笑みを見た山本は、厳しい顔を崩さずに再度アサギに問う。

 

「アサギ、これを言ったら、君は怒るかもしれないが、許嫁を命をかけて救い出そうとする岩鬼と十数年前の自分を重ねてはいないだろうな?確かに境遇は似ているが、所詮、奴は只のチンピラだ。それを忘れないように。」

 

過去を抉るような問いにも関わらず、アサギは、笑みを浮かべたま答える。

 

「同情していたら、二人をロシアにでも高跳びさせるわ。私は、むしろ彼らに死ぬより酷いことをするのよ。それに今回の最優先事項は、捕らわれた対魔忍を救うこと。岩鬼の件は、そのおまけでしかないわ。」

 

「……考えたらそうだな。疑って済まない。」

 

そう言いながら山本は、アサギに少し頭を下げた。

 

「……」

 

アサギは、山本の謝罪を受け取った後、目を背けるようにずっと車外を見ていた。

 

 

 

すべてのドローンを殲滅した後、重傷だった将造含めた組員達は、早急に政府のVIPが通う病院に運びこまれた。

 

ゆきかぜと凛子は、魔界の色々な媚薬や改造薬を打ち込まれていた為、普通の医者ではなく、魔界の知識に長けた魔界医に診せなければならなかった。故に気絶をしていたが、急を要しない軽傷の達郎と共に、八津九朗、高坂静流と他の対魔忍を護衛に付け、対魔忍の本拠地である五車町に戻っていった。

 

拓三、三太郎は、軽傷だったため治療もすぐに終わり、着替えたなよ子と共に病院の待合室で、将造の手術が終わるのを待っていた。しかし、次々と他の組員達の手術が終了する報告を受ける中、肝心の将造の手術だけは、中々終わらず、遂に岩鬼組で最後の一人となっていた。

 

「うう、おせぇな!いったい何時間かかるんだよ~!!もう、五、六時間は経つぜ。」

 

病院の待合室で煙草を吸いながら、三太郎がイライラした声で呟く。窓を見れば、病院に運び込まれた時と違い、深い暗闇が広がっている。

 

「もう、ここまで来たらジタバタしたって仕方ねぇよ。」

 

イラつく三太郎に対して拓三は、落ち着いていた声で答える。しかし、いつもの笑みは鳴りを潜めて、緊張した面持ちだ。拓三も内心では、不安に押し潰されそうであり、もう山となった灰皿にさらに短くなった煙草を強く押し付けた。

 

「若の…手と足の骨は…グチャグチャだ。元通りになるのは…」

 

「お、おい!」

 

拓三の不吉な物言いに三太郎が青筋を立てる。

 

「将造…」

 

なよ子は、二人を諌めもせず、祈るように目を瞑っていた。

 

 

 

また一時間が経過した時、イライラと不安が遂に頂点に達した三太郎は、我慢できずに椅子から勢い良く立ち上がり、待合室の扉に向かって歩き始めた。

 

「くそっ!もう我慢できん!わしは、直接手術室の前で待つ。姐さんは、拓三とここに居て下さい!」

 

「ま、待つんだよ!三太郎!」

 

なよ子の止める声も聞かずに、勢い良く廊下に飛び出す三太郎。待合室の扉を締め周りを見渡すと、廊下には非常灯しか光がなく、ほぼ暗闇に包まれていた。

 

「くそ、真っ暗じゃ。手術室はどこ…」

 

「モヒカンさん、どこに行くの?」

 

「え?!」

 

いきなり背後の暗闇から声をかけられ、三太郎はビクリと背筋を震わす。三太郎が恐る恐る振り向くと、いつの間にか背後に少し笑みを浮かべ、可愛らしく小首を傾げた井河サクラが立っていた。

 

(嘘じゃ、いくら暗闇とはいえ…人がこんなに近くにいるのに気付かんなんて…ゲリラでも、こんなに上手く気配を隠せん…。)

 

三太郎は、サクラの問いに答えられぬ程驚いていた。月光も差さない闇に隠れたゲリラとも戦ったことがある三太郎が、背後とはいえ、廊下の薄暗闇のサクラの気配に気付けなかったからだ。

 

「アサギお姉ちゃんと山本部長にここで待っとくように言われたんでしょ?トイレなら、待合室に付いてた筈だよ?」

 

三太郎の心中を知らずか、サクラは明るい声で問いかける。

 

「う、うるさいわい!わしは、若のところに行くんじゃ!」

 

サクラに構わず、三太郎は廊下の奥に進もうとする。その時、暗い廊下にサクラとは違う女性の声が響いた。

 

「何をしている!そこの部屋で待っているよう言われただろう!」

 

廊下の奥から怒り顔の八津紫が、こちらにやって来た。

 

「三太郎、どうしたんだい?!」

 

紫の声に待合室から、なよ子と拓三も廊下に出てくる。

 

「こいつらが、若の所に行かさんのじゃ。」

 

三太郎が対魔忍の二人を指差すが、紫は三人に毅然と答える。

 

「違う。岩鬼将造の手術は、まだ終わっていないだけだ。貴方達に手伝えることは何もない。だから止めている。」

 

「それでも、もうこんな部屋で待つのは限界じゃ!」

 

「そうだ、俺も若の所に行くぜ!」

 

三太郎の考えに遂に拓三も賛同し、二人は紫の横を走り抜けようとする。

 

しかし、

 

「二人とも、待て…」

 

紫は、自分の左右をそれぞれ通り抜けようとする二人の腕を素早く掴んだ。

 

「このまま、引きずってでも行かせて…え"?!」

 

「悪いが、若の恩人を傷つけたかねぇ!大人しく離してもら…なに?!」

 

三太郎と拓三は、驚きの目で紫を見た。二人は、紫を引き摺ってでも進もうとしていたのだが、自分より体重が軽そうな紫が、まるで巨大な岩のように動かない。

 

「「うぐぐぐぐぅぅぅっ…」」

 

二人は、次に傭兵だった頃の力を使い、思い切り腕を引っ張るが、それでも動かない。さらにそのまま、紫の指が万力の如く二人の腕を締め上げ始めた。

 

ミシミシミシミシ……!

 

「イタタタタ!こ、この女、なんちゅう力…まるでゴリラじゃ!」

 

「わ、わかったから、このオラウータン並の力を離してくれ!」

 

「誰がキングコングだっ!貴様らぁ!」

 

紫は、額に青筋を立てさらに力を入れる。

 

「「そんなこと言ってな…痛ダダダダッッ…!!!!!」」

 

「ちょっと、ムッちゃん!ゴリラとオラウータンって言ったんだよっ!」

 

「ほとんど一緒だろうがっ!!」

 

締め上げられた二人は、遂に白旗を挙げ床に腰を着いた。紫は、サクラになだめられ、もう二人が勝手に動かないのを確信すると締め上げている手をやっと離す。

 

「大丈夫?私達は、ノマドみたいな敵じゃない。傷付いた貴方達を護衛にするためにいるんだから。」

 

サクラが、笑顔で二人に手を差し伸べる。すると拓三だけは、その手に助けられながら立つもののサクラに疑問を投げ掛けた。

 

「あんたらが、俺達を守ってくれているのは何となくわかる。けれど、どうして俺達みたいなチンピラにこれだけ良くしてくれるんだ?」

 

「そ、それは……」

 

サクラが言い淀んだその時、新しい人物が廊下の奥から現れた。

 

「そこからの話は、岩鬼将造が揃ってからよ。」

 

「あ、あんたはあの時の?!」

 

なよ子が驚きの声をあげる。

 

そこには、複数の円盤形ドローンを不可思議な技で破壊した、井河アサギが立っていた。

 

「安心して、彼は今、麻酔で眠ってる。暴れるものだから、通常の二倍の薬を打ったらしいわ。」

 

「それで将造の手足は、どうなったんですか?」

 

なよ子がすがるような目で、アサギに問う。

 

「あれだけの大怪我よ。すべて元通りとは、いかないわ。あとは……」

 

アサギが、将造の手術のことをしゃべろうとした時、ふと窓の外に目を向けると駐車場に複数の車が止まっているのが見えた。

 

「紫…あの車は?」

 

「あの車は、今回の特殊な手術故に外部から呼んだ医者達の迎えの車です。乗っているのは、山本部長の信頼足る人物のはずですが?」

 

「おかしい…医者の数と比べて、車の台数が多すぎる。嫌な予感がする。私は、また岩鬼の護衛に戻…?!」

 

ズドォォォン!!!

 

心配するアサギの声を遮るような銃撃音が、病院に鳴り響いた。

 

 

 

 

長い時間、アサギは、地下で行われていた将造の手術の護衛をしていた。やがて手術が終わり、手術室から出てくる医者から、手術が成功したことを聞くとすぐになよ子達の元へ向かった。

 

しかし…アサギが、手術室を離れてすぐに地下である動きがあった。一階から降りてきた一人の女看護士が、待機所で休んでいた手術に携わった医者や他の看護士をメス一本で、すべて殺害したのだ。その手際は、アサギに不審な物音を聞こえさせない程、洗練されていた。

 

医者達をわずかな時間で殺し終えた女は、すぐに地上の迎えの車から、医者の格好をしているが、武器を持っている鋭い目付きした大量の男達を伴って、将造の元へと向かった。

 

(まさか、私が10年も前からこの病院でチャンスをうかがっていたことは、公務省の山本も気付いてはいまい。今はあのアサギ、サクラ、紫という対魔忍のトップ達がいるまたとない機会…今すぐ手術室に爆弾を仕掛けて、容態を確かめるため入室した三人を爆破する。例え、軽傷で済んだとしても、満身創痍のところを私達で止めを刺してやる…けれど、こんなに医者を呼んで、どんな手術をしたのかしら?)

 

女は、ノマドの刺客達を連れて、将造が寝かされている手術室に入る。中には、体にシーツを掛けられ、酸素マスクを付けられた将造が寝ていた。

 

「ふん…よくもノマドの東京支部を破壊してくれたな。爆弾で殺してもいいが、お前は私が喉をかっ切って殺してやる…」

 

ジャキッ!

 

刺客の男の一人が、右手の甲から鋭い針を出現させ、寝ている将造の頸動脈目掛けて、容赦なく突き刺そうとしたその時…

 

カッ!ギロリ!

 

将造の目がいきなり開き、殺そうとする男を捉えた。

 

「信じられない!話では、二倍の全身麻酔で眠らせたはず!」

 

将造の覚醒に女は心底驚く。しかし、男の方は、驚きながらも左手で、将造の口を押さえ込んだ。

 

「うぐっ?!」

 

「まさか、殺気だけで麻酔から目覚めるとは驚いた!だが、もう遅い!これが貴様の見納めの景色だ!死ねぇぇッッ!」

 

男の針が、再度将造の頸動脈を貫こうとした瞬間…

 

ズガガガガ!!!

 

「がはっ?!」

 

将造の左側のシーツから、突き破り出た何かに、男は派手な音を響かせ、壁まで吹き飛ばされた。

 

「「「「な、なにい!」」」」

 

他の刺客達は、驚愕しながら将造のシーツから出た何かに注目する。

 

シーツから飛び出ていたのは、直径が厚いマシンガンの銃身だった。将造が、マシンガンを左手に持って撃ったのではない。マシンガンは、将造の肘の先から前腕の代わりに生えていた。

 

「うわぁ!な、なんじゃ?!」

 

撃った本人である将造も滅多に見せない驚きと焦りの表情で、まだ煙が出ている左腕の銃を見ている。

 

刺客達と将造が、お互いに呆気に取られ、一瞬の沈黙がその場を支配した。

 

「……くそ!」

 

その中で先に口火を切るように女が、小銃を将造に向ける。しかし…

 

ドガガガガガ!!!!

 

「がぁっ?!」

 

将造は、素早くマシンガンの弾丸で女を吹き飛ばした。そして、さらに襲いかかろうとする他の刺客達にも弾丸を浴びせる。

 

ズガガガガガガガガ!!!!!

 

「ぐぁっ?!」

「ぎゃっ!?」

「がはっ?!」

 

刺客達を次々と壁や扉、ガラスへと吹き飛ばす。しかし、人を殺すことに快楽を感じる将造のいつもの笑い声が聞こえてこない。代わりに聞こえてくるのは、泣き声であった。

 

「いでぇー?!いでーよぉっ?!」

 

何故なら、弾丸を撃つ度に将造でも、経験したことのない痛みが、銃と腕の接合部から襲いかかっていたからだ。 その激痛は、傭兵生活で痛みに慣れている筈の将造でも涙と鼻水を垂らし、泣き喚く程であった。

 

やがて、将造はすべての刺客を吹き飛ばし、息が整う時間ができると、段々気持ちが落ち着いてきた。

 

「こいつはいったい、なんの冗談なんだ!?うあ~たた……誰か、いねえのか!?」

 

痛みのあまりベッドから落ちて、泣きながら手術室を見渡すが、周りにいるのは倒れている刺客のみで、他には誰もいない。

 

「しょうがねぇ、まずはここを出るとす…?!」

 

ギギギギ…

 

将造が、手術室を出るため立ち上がろうとしたその時、撃ち殺したはずの女看護士が動き出した。それだけではない、女の顔下半分が変形し始め、鮫も真っ青の鋭く細い歯になり、顎も巨大になっていく。

 

ガチャ…ギギギ…ガガガガガガ……

 

さらに女の変形に注目していた将造の耳に奇妙な機械音が聞こえ始める。周りを見渡すと、手や足が吹き飛び死んだと思われた刺客達も、女と同じくゆっくりと動き始めていた。さらに彼らの体を良く見ると傷付いた肌の下から、金属が露出している。

 

この者達は、体の殆どが機械化された、ノマドのサイボーグ兵士である。頭を撃ち抜くか、体をバラバラに破壊しない限り、戦闘を続行することができるのだ。

 

「な、なんじゃ、こいつらは?!」

 

将造は、再度弾丸を浴びせようとするが、

 

ガチッ!ガチッ!

 

「ふぁは?!」

 

弾切れである。

 

女は焦る将造の顔を見て、裂けた口でニタリと笑うと、治療して包帯が巻いている右足に歯を立てた。

 

「うわぁ!」

 

ビリビリビリビリ!

 

右膝のギプスと包帯が食い破られ、将造は悲鳴を上げる。女は悲鳴に構うことなく、将造の焦る顔を見ながらさらに膝に食らいついた。

 

ガキィッ!

 

「?!」

 

歯に固い感触が走る。歯先から異常を感じた女は視線を顔から膝に移すと、将造の右膝は上下に別れ、さらに上腿下面と下腿上面には鉄の穴があった。

 

「な……?!」

 

左手の銃のように、変わってしまった右足を見た将造が、驚きのあまり言葉を失った瞬間…

 

シュゴッ!

 

鉄の穴から小型のミサイルが、勢い良く発射された。その穴は、ミサイルの発射口であった。

 

ドゴォォォッッ!!!!!

 

銃撃でも平気であった女を含めた幾人の刺客達は、小型ミサイルを数発受け、悲鳴を上げる暇もなく爆散した。

 

「こ、こいつ!右足まで!退却だっ!」

 

手術室内の刺客達は、頑丈な体を持つ仲間が爆散するのを見て、我先に出口から逃げようとする。

 

「んぎぎぎぎっ!!」

 

それに気付いた将造は、涙や鼻水を撒き散らしながら、逃げる敵に右膝を向けた。

 

「「「「や、止めろォォ!!!」」」」

 

ズドォォォン!!!

 

逃亡しようとした刺客達は、再度発射された将造のミサイルで残らず爆散した。

 

「うがぁぁぁッッッ!」

 

手術室内の敵をすべて殺した将造は、左手と同じく右足の痛みに床をのたうち回った。しかし、手術室の外から怒声と足音が近づいてくる。将造は、痛みに耐えながら這うように手術室内にある小部屋に隠れた。

 

「くそ!一端、この部屋に避難…て、なんじゃ?!この部屋は?!」

 

将造は驚愕した。小部屋には、そこら中に火炎放射、ショットガン、バズーカといった武器が置いてある。しかし、注目すべきは種類の豊富さではない。その武器がすべて、少し特殊な形をしていた点だった。

 

「ま、まさか?」

 

将造は、自分の左腕の銃とその部屋に置いてある複数の武器を交互に見た。

 

 

 

 

一方、爆音を聞いたアサギ達は、急いで地下の手術室に向かっていた。しかし、地下に降りてすぐの廊下で他のサイボーグ兵士の銃撃により、曲がり角で足止めをくらっていた。

 

ダダダダダダダダダ!!!!!!

 

一騎当千であるアサギ達でも、狭く長い廊下で時間を置かずに銃撃してくるサイボーグ達に対しては、倒されないにしろ、一気には進めない。

 

「てめぇら、邪魔じゃ!」

 

「チキショー!これじゃ、若のところに行けねぇよ…」

 

拓三達もアサギ達に着いてきたはいいが、銃を持っておらず、今はアサギ達に頼るしかない状態だ。

 

「いくらノマドでも、動きが早すぎるわ…多分、以前から、ここに入り込んでいたのね。」

 

アサギがイラついた声で呟き、隠し持っていた苦無を投げる。

 

ガキィ!

 

苦無が見事に敵の頭の眉間に刺さった。しかし、相手は一瞬仰け反るのみで、何事も無かったかのようにまた銃撃をしてくる。相手は将造を襲った者と同じサイボーグ兵士である。故に頭部も体と同じく皮膚の下は、分厚い装甲に覆われており、只の銃や人が投げる苦無ごときでは、絶対に貫けない。

 

「くそっ!」

 

「ここは私に任せて下さいっ!」

 

アサギの焦った顔を見て紫が、廊下の中央に踊り出た。頭を防御しながら、集中する弾丸を体に受ける。案の定、銃弾の集中放火により、紫の体は無残にも皮が裂け、肉が抉れ、骨が叩き折られ始めた。

 

(くそ、病院内では大斧は、目立つゆえに車内に置いてきたのは、間違いだった。)

 

紫の様子を見ている拓三達は、悲鳴を上げる。

 

「ぎゃあああ!あんた自殺する気かぁ?!」

 

「こんな狭い廊下じゃ、若でも特攻せんぞ?!」

 

「馬鹿っ!何もそこまで…」

 

拓三達が叫ぶように普通の人間なら、この銃弾の中で特攻するのは、自殺行為である。しかし、紫の忍法は、不死覚醒という超再生能力だ。マシンガンやショットガンの弾くらいなら、その身に何発受けようとすぐに再生し、弾丸も排出される。今回も自らが盾になり、その間にアサギとサクラが敵を始末するはずであった。

 

しかし…

 

「アサギ様、私が銃弾をすべて受けきるので、後は…」

 

タターーーン!!!

 

ドタッ!

 

カン高い二つの銃声が響くと同時に、紫の後頭部から脳漿が、腹部から腸が飛び出し、仰向けに地面に倒れた。

 

「紫っ?!」

 

「ムッちゃん?!」

 

アサギが、急いで壁から手を伸ばし、紫を回収する。その途中で敵を見据えると一番遠くの廊下の角にライフル銃を持った者達がいた。

 

「い、言わんこっちゃねぇっ!」

 

「くそ、まだ若ぇのに!」

 

拓三と三太郎が、撃たれた紫を見て苦い顔で呟く。

 

「こ、この人、死んだのかい…」

 

傭兵である拓三と三太郎と違い、まだ人の死を見慣れていないなよ子が、額と腹に穴開く紫を見て、震えながらアサギに問うた。

 

「いえ、多分大丈夫よ。」

 

「え、でも額に…」

 

アサギの平然とした答えになよ子が狼狽えるなか、紫の額の傷が段々と塞がり、飛び出している腸も腹に収まり、最後に目に光が戻った。そして、何事も無かったようにムクリと起き上がる。

 

「「「え?!」」」

 

呆気にとられているなよ子達を無視し、紫は、アサギに喋りかける。

 

「アサギ様、あいつら私達のことを対策して攻めて来ています。アサギ様の術が使い辛い、狭い廊下での戦い、私の頭部と心臓を同時に狙うライフル銃、さらに、電球を割ってサクラの影遁の術を使おうと耐久力の高いサイボーグは、一撃では死なずに、影から出た瞬間を狙って仲間ごと銃弾を浴びせるでしょう。」

 

「どうしたら…こうしてる間にも岩鬼将造は…」

 

アサギは、悔しそうに作戦を考えるが、いい案が浮かばない。

 

「 何を言っているのか解らんが、ヤバい状況らしいな…」

 

「ああ、俺達も銃さえあれば…」

 

窮地に陥った三太郎、拓三と対魔忍達は、誰にも口に出さないが、ある考えが頭の中でちらついていた。それは、こんな大勢の敵に襲撃されれば、いくら将造でも、無事では済まない。ましてや左腕と右足に大怪我を負ってさらに、全身麻酔をしている状態では…という考えである。

 

「生きていて…将造…」

 

なよ子も他の五人と同じ残酷な結論に至っていた。しかし、自分の許婿の無事を願わずにいられない。故にいつものように気丈に振る舞えず、一筋の涙を溢した。

 

「!」

 

アサギは、偶然にもなよ子の涙を見た瞬間、一瞬だけ複雑な表情になる。そして、数秒間だけ、何かを考えるかのように目を閉じた後、サクラと紫に思いきった命令を下した。

 

「サクラ、紫、私が光陣華を連続で使って敵を一掃する。もし、私が敵を残して力を使い果たしたら、サポートを頼む。」

 

その命令の無謀さに二人は、必死に抗議の声を上げる。

 

「お姉ちゃん無茶だよ!相手は、人間より頑丈なサイボーグなんだよ!」

 

「サクラの言うとおりです。それよりも、もう一回私が盾になり敵に突っ込めば。」

 

「いや、いくら紫が気を付けていても、あのライフルを含む銃撃の中では、頭と心臓を同時に撃ち抜かれる可能性があるわ。それに早く行かないと、岩鬼将造の生きている可能性がどんどん低くなる。」

 

アサギが、二人が止めるのも聞かずに術を展開しようと一歩踏み込んだその時…

 

ズガガガガガガガ!

 

「「ぎゃん!」」

 

一番遠くの廊下の曲がり角にいるライフルを持った敵が、いきなり吹き飛んだ。何事が起こったのかと廊下に展開している敵も、一時銃撃を止め後ろを振り返る。アサギ達も異常に気付き、壁から少し顔を出して廊下の奥を見た。

 

敵味方が注目するなか、曲がり角の向こうから、敵の悲鳴、新しい銃撃音そして、野太い泣き叫ぶ声が近づいてきた。

 

「ま、まさかあの声は…なあ、拓三?」

 

「ああ、三太郎…。けど、泣いてる?」

 

数秒後、廊下の曲がり角から、鳴き声の主が現れた。

 

「ちくしょう…こいつは、ものすごく…いて~~~ぞ!」

 

それは左手に巨大なガドリングガンを装着し、鼻水を垂らし泣きながら敵を睨んでいる将造だった。

 

「「「「うおぉ?!」」」」

 

廊下に展開しているサイボーグ達は、一斉に銃を向けるが、それよりも早く将造の弾丸が彼らを襲う。

 

ズガガガガガガガ!!!!!

 

「みんな壁に隠れて!」

 

アサギの声に五人が、壁に隠れる。

 

「うがが……ぎごがぎぐげご~~~!!!!」

 

将造は普段、拓三達に絶対に見せない涙と鼻水にまみれた顔で、痛みに耐えながら、敵を銃撃する。

 

弾丸が、数十センチ向こうの廊下を飛ぶ異常な状況下で、一人だけ冷静なアサギの声が、他の五人の耳に入ってきた。

 

「泣き叫ぶのも無理無いわ。手術したばかりの傷をハンマーで叩いているものだもの。死ぬ程痛いはずよ。」

 

「貴方…将造に何をしたのっ?」

 

なよ子が、驚愕の目でアサギを見る。

 

「ぎゃあ!」

「ぐげっ!」

「あがっ!」

 

やがて、後ろから急襲されたサイボーグ兵達は次々と撃ち殺され、遂に最後の一人となる。

 

「う、うわぁ?!た、助け、ぎゃあ!」

 

ズガガガガ……

 

将造は、強力なはずのサイボーグ兵士をわずかな時間ですべて倒してしまった。

 

敵の全滅を確認した拓三、三太郎、なよ子は、喜んで将造に急いで駆け寄るが、その変わり果てた姿に愕然とする。

 

「若、その体は?」

 

将造の左腕は、肘から先が巨大なガドリングガンに変わっており、右足は膝が上下に割れて、骨や肉ではなく、小型ミサイルの発射口が見える。

 

「貴方達、将造にどういう手術をしたんだい?!」

 

なよ子が、アサギに怒り顔で問い詰める。

 

アサギは、なよ子の刺すような雰囲気にたじろかず、毅然とした態度で四人に告げた。

 

「岩鬼将造の手足は、もう使い物にならなかったのよ。」

 

「だから、こんな身体にしちまったって言うのかい?!本人の断りもなく!」

 

「断ろうが関係ないわ…」

 

「そんな?!」

 

アサギは、なよ子達に声を張り上げて宣言する。

 

「極道なら命を張って生きているんでしょう?!手足の一本や二本でガタガタ言わないで!!!」

 

「てめぇ!」

 

「この女!」

 

三太郎と拓三も激昂する。

 

「こうするしかなかったのよ。」

 

その一言をアサギが、口から出した瞬間…

 

「うがぁ!!」

 

将造が、怒りを抑えきれないかのようにアサギにガドリングガンを突きつけた。

 

「ちょっと止めてっ!」

 

「貴様っ銃を下ろせ!」

 

サクラと紫は、忍者刀を将造に突きつける。

 

しかし、涙と鼻水まみれの将造は、それに怯まず、銃を突きつけたまま下ろさない。

 

鼻先に銃口を向けられていてるアサギも将造に怯まず、さらに言葉を続ける。

 

「貴方、すごいわね。普通の人間なら、あんな手術の後にこんなに暴れたら、死ぬ程の痛みでのたうち回るのに……」

 

「よ、よくも…こんな…」

 

 

 

 

 

将造が、アサギに銃を突きつけた同時刻、アメリカのノマド本社の最上階の部屋で、一人の男が秘書らしき女から報告を受けていた。

 

男の見た目は、40過ぎ辺り、体躯はスラッとした長身で銀髪のザンバラ髪に黒いビジネススーツを着ている。

 

女の方は、褐色の肌にピンク色のロングの美女で、大きく胸をはだけた黒いビジネススーツを着ている。

 

二人は見た目だけなら、只の人間と変わらない。しかし、二人とも対魔忍や魔界の住人が震えが止まらなくなるほどの、質も量も桁違いの圧倒的な妖気を放っていた。

 

男の名は、『エドウィン・ブラック』。米連を本拠地とする複業企業体ノマドの総帥。だが真の顔は、アサギ達と何度も戦いを繰り広げた強大な力を持つ吸血鬼で、数々の魔物達を従わせて魔界勢力の日本進出を図っている。

 

女の名は、『イングリッド』。ブラックの秘書兼護衛として側に使えており、ノマドの幹部の一人である。実力は、ノマド随一であり、魔界最強の代名詞である魔界騎士の称号を持つ。

 

ブラックは、ノマドの東京支部壊滅の報告をイングリッドから聞いていた。

 

「日本政府の発表では、ノマドに怨みを持つ者の自爆テロであり、犯人達はすでに爆発に巻き込まれ死亡している。身元を特定しようにも、崩落の影響により、死体は、著しく損傷し困難であるということです。しかし、調査によるとテロを引き起こした犯人は、まだ生きています。」

 

「ほう…その犯人のデータはあるか?」

 

イングリッドが、ブラックに岩鬼将造のプロフィールが記載してある書類を渡す。

 

「岩鬼は、捕らえていた許嫁と対魔忍を救うため、三十にも満たない人数でビルに突撃しました。そして、自らがビル内にいるのにも関わらず、二度の爆破を仕掛け、許嫁と対魔忍をすべて救い、尚且つ生還しています。」

 

ブラックは、イングリッドの報告を聞きながら、書類を読み、口角を半分つり上げて笑った。

 

「フフフ、あの東京支部は、本社と同じくらい警備が厳しいところだったのだが…対魔忍や魔界の住人でもない者が、ここまでやるとは驚きだ。例え、日本政府を脅しても、ビルの崩落の中で、生きている人間などいないと言われるのがオチだろう。実際に生きている者は、皆無なのだからな。」

 

「はい…ビル内のパーティーに参加していたノマドの者や我々が援助をしていた政府の者は、倉脇を除いて全員死亡。故に日本進出は、かなり遅れることとなります。」

 

「構わん、体の良いリストラだ。政府の者は、木っ端役人ばかりで、対魔忍どもに情報を漏らす可能性のあるやつばかりだ。生き残った倉脇の処遇は、朧に任せるとしよう。」

 

そして、笑みを浮かべながら、視線を書類からイングリッドに戻す。

 

「イングリッド、次に日本へ行けるのはいつだ?」

 

「…東京支部が崩壊したことで、他のノマドの支部に皺寄せが来ています。当分は、アメリカを離れることができないかと…」

 

笑顔だったブラックが、落胆した顔になり、肩をすくめて溜め息をつく。

 

「ふぅっ…ビジネスマンという仮面も辛いものだ。この岩鬼将造の始末は、私が行かずとも朧やフュルスト、海座が何とかするだろう。」

 

「そうですね。失礼ですが、ブラック様そろそろ、会議のお時間です。」

 

「そんな時間か…わかった。行こう…」

 

そう言って、ブラックは、岩鬼将造のプロフィールが書いてある書類をゴミ箱に捨て、イングリッドと共に部屋から出ていった。

 

ブラックは知らない。この時、岩鬼将造の評価を、人間としては、なかなかやるといったところで留めたことが、自らが滅びる第一歩となってしまったことを…

 

 

 

 

 

「よ、よくも…」

 

将造は、今にも弾丸を発射しそうな雰囲気だ。

 

「将造、やれ!やっちまえ!」

 

「若、そんな女、生かしとくこたない!」

 

「そうですよ!若!ぶっぱなしましょう!」

 

なよ子達は、将造を囃し立てる。

 

「お願い!銃を下ろして!私達は、敵じゃない!」

 

「止せっ!アサギ様を撃てば、貴様らを殺すぞ!!」

 

それに対して、サクラと紫は、将造に忍者刀を突き付け必死に将造を止める。

 

(やはり、こんな身体にして、怒らない奴はいないものね…ここで銃を撃つなら、無理矢理制圧し、拘束して落ち着かせてから話をするしかないわ。)

 

一瞬触発の雰囲気の中、遂にアサギが、隠している忍者刀を取り出そうとしたその時だった。ガドリングガンを突き付けている将造の憤怒の顔が、みるみる満面の笑顔に変わり、アサギ達が予想もしない言葉を吐いた。

 

「よくも…よくも…よくもこんな素晴らしい身体にしてくれたのう!最高じゃあっ!!」

 

「「「「「?!」」」」」

 

将造が放った言葉に三太郎、拓三、なよ子、サクラ、紫、そして先程まで冷静な顔をしていたアサギでさえも、呆気に取られた顔になる。

 

そんな五人の顔を気付いていないかのように将造は、興奮して喋り続ける。

 

「気に入ったぜ!この身体!わしにピッタシじゃあ!」

 

なよ子と三太郎は、満面の笑みで喋る将造に詰め寄った。

 

「何言ってるんだよ!将造!」

 

「若!頭も改造されちまったんですか?」

 

「バアタレ!そりゃまあ、最初に見たときはビックリしたぜ~~~へへへ…」

 

将造は、満足そうに銃となった左腕を撫でる。

 

「しかし、こいつの威力を見たじゃろう?こいつがあれば倉脇やあのフードの機械傭兵も一撃でぶち殺せるぜぇ!」

 

本心から喜んでいる将造を見て、改造を施した側である対魔忍の三人は、逆に複雑そうな顔になる。

 

「き、気に入ってくれて、良かったね…ムッちゃん…」

 

「そ、そうだな、サクラ。まさか私もこんなに喜んで貰えるとは思わなかった…」

 

「…ノマドを相手に戦うなら、これくらいでなくちゃ務まらないわ。自分の現状を早く受け入れ過ぎだけど…」

 

そして、興奮が最高潮に達した将造は、ガドリングガンを天井に向けて、発砲した。

 

「わしは史上最強の極道じゃあ~~!!!」

 

ズガガガガガガガ!!!!!

 

「止めろォォ!!!天井に発砲するなぁッ!!!」

「アダダダ……!!!」

「「若ぁ?!」」

「将造?!」

「あはははは……!!!」

 

紫の怒声が響き、将造が再度手術の痛みに泣き叫び、拓三、三太郎、なよ子の三人が狼狽え、サクラが大笑いをする。そんな騒がしい場で、アサギだけが遠い目をしていた。

 

(山本部長、私達が話した計画をこの男なら、やり遂げるかもしれないわ。けれど、また事後処理が増えたから宜しくね…)

 

 

 

 

同時刻、内務省でノマドのビル崩壊の後処理を徹夜でこなしていた山本に悪寒が走った。

 

(嫌な予感、いや、ものすごく面倒な事が起こった感じがする。)

 

数時間後、アサギから報告が入り、山本は頭を抱えることになる。

 

山本もブラックと同じくこの時は知らなかった。これから幾度となく、将造の起こした破天荒な事件で、数え切れない程自分の頭を抱えることになることを…




アサギ達の能力をどう攻略するか、考えていたら時間がかかってしまいました。

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