対魔忍者と極道兵器   作:不屈闘志

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Weapon 8 シマ荒らしチンピラ野郎

対魔忍と極道の歴史的な同盟が成されてから、一ヶ月後、東京キングダムの港の倉庫で、ある取り引きが行われていた。

 

薄暗く広い倉庫の中には、人が何人も入れるような大きいコンテナがいくつも置いてあり、地面には元々は平和的な物を取引していた名残りのように、手足が欠けた人形や錆び付いた金属バットなどが散乱している。そんな陰鬱とした場所に大声を上げる者達がいた。

 

「ようし、さっさと荷物をコンテナの中に積み入れろ!」

 

彼らは、武装したオークの集団と神魔組という極道達である。二つの集団は、散らばる玩具を蹴飛ばしながら、協力して巨大なトラックから品物を運んでいた。

 

そんななか、作業をしている者達から少し離れた場所で、互いの集団のリーダーらしき二人がいた。二人は、互いに知己の間柄らしく、愚痴を言い合っている。

 

「まったく、最近商売あがったりだぜ!関西に侵攻する直前だと思ったら、倉脇の馬鹿は失脚するわ!解体された岩鬼と山鬼が組んで盛り返すわ!品物を調達していた傘下の組は、皆殺しにあうわでよー!商品を集めるのが大変だったぜ!」

 

ガッ!

 

男は、足元の空気がほとんど抜けたサッカーボールを思い切り蹴飛ばした。

 

「ドグル!そっちはどうだ?」

 

問われたドグルというオークも不機嫌な顔で答える。

 

「若頭の方も大変だが、こっちも大変なんだぜ。噂では、取引先のリーアルは大根おろしにされちまうわ。口利きの矢崎も煎餅になるわでついてねーよ…大口の相手ともこの頃、連絡がつかねーし。」

 

十数年前、ドグルの兄『ビグ』は、対魔忍に逆らい殺されてしまった。それが切っ掛けでドグルは、対魔忍に服従し裏の世界の情報提供をする代わりに多少の商売を見逃す契約を結ぶ。しかし、最近では逆に見逃しの約束を利用し、多少の商売の範疇を越えた奴隷売買に手を染めていた。

 

「お互い大変だな…ん?なんだ?」

 

「逃げたぞ!」

「追え!」

「捕まえろ!」

 

品物を運んでいる者達の辺りが、にわかに騒がしくなる。愚痴を言い合っていた二人が、後ろを振り向くと…

 

「た、助けてぇっ!!!」

 

目隠しして縛っていた一個の品物が、必死に逃げているのが見えた。

 

「馬鹿野郎!逃がしてんじゃねぇ。」

 

ドグルが、逃がした配下のオーク達を怒鳴りながら品物を追う。

 

ドグル達と神魔組が取引きをしていたのは、ヤクザ特有の白い粉や武器ではない。

 

運んでいる品物は、人間の女性達であった。

 

神魔組の極道は、東京の繁華街で援助交際をしていた女学生、無理やり借金を背負わして夜逃げに見せかけた母子家庭の母娘、働き口を世話するといって連れてきた大陸の少女など、行方不明になったとしても、誰も不思議に思わない女性達を集めてオーク達に売っていたのだ。

 

ドグル達は、魔族ゆえに極道以上に闇のルートを知っている。故にコンテナに詰め込まれた商品である女性達は奴隷娼婦として、魔界の貴族達やヨミハラの娼館に売られる。しかし、その販売ルートはまだ扱いが良い方で、酷い時は媚薬のモルモットとして裏の研究所、または殺人嗜好家に売られることもあるのだ。

 

「ハァッ!ハァッ!グスッ…お母さん…」

 

必死に逃げているのは、夜逃げに見せかけて誘拐された母娘の娘の方だ。まだ中学に入ったばかりの少女は、運ばれている車内で、母親に口で目隠しと足の縄を解かれて、車外に出された隙に逃げ出したのだ。

 

走る少女は、誘拐されてから倉庫に着くギリギリまで目隠しをしており、ここが何処かもわからない。しかし、誘拐した連中にこのまま運ばれれば、確実に良くない場所に渡されるのは解る。少女は、自分の為に逃げるのではなく、まだ捕らわれている母親の為に誰か助けを呼ぼうと必死に走る。

 

(ここが何処かわからないけど、とにかくこの倉庫から出て、大通りにでも行けば沢山人がいるはず、そこで助けを呼べば…?!)

 

「待てえっ!!メスガキィ!!」

 

外を目指して走る少女のすぐ後ろから、ゾクトの怒鳴り声が迫る。

 

「ヒッ?!」

 

少女は、その恐怖の声に追い立てられるようにスピードを上げる。しかし、中学に入りたての少女と成人男性以上の体躯を持つオークでは、足の速さなど比べるべくもない。ゆえに…

 

ガシッ!

 

「捕まえたぞッ!ガキ!」

 

遂にゾクトに肩を捕まえられ、無理矢理地面に投げ飛ばされた。

 

「ガハッ!!」

 

少女は、硬いコンクリートに背中を思い切り打ち、一時的に呼吸困難に陥った。

 

「ヒュッ…ヒュッ…ヒュッ…」

 

浅い呼吸を繰り返す少女を見ても、少しも同情の目を向けないドグル。

 

「ったく…。手間取らせやがって、これはお仕置きが必要だなぁ…。」

 

ガチャガチャ…

 

少女を蔑んだ目で見るドグルは、おもむろにベルトを外しズボンを脱ごうとする。

 

「ヒィィィッッッ!!!」

 

ようやく呼吸困難から立ち直り始めた少女は、これから自分の身に起こることを予感し悲鳴を上げた。

 

「いいのかぁ、ドグルよぉ。お前が手を出しゃ、その子…色情欲になっちまうぜ?」

 

ドグルの後ろから、追い付いた神武組の若頭が声をかける。

 

オークという種族の精液や体液には媚薬の成分が含まれており、さらった女を巣に監禁し媚薬付けにして飼い慣らし、繁殖の道具にする。その媚薬は強力で、対魔忍でも抗えない者もいるくらいだ。

 

「なぁ~に。こいつは母親共々、娼館に売り飛ばす予定だから、少しくらい淫乱になったって構わしねぇよ。」

 

「こっちはもう金は受け取った後だし、好きにすればいいけどよ…ん?またかぁ?」

 

ドグルと若頭が再度後ろを振り向くと、三十代後半の女性が、必死にこちらに走ってくるのが見える。逃げた少女の母親だ。女性達を運んでいたオーク達を見ると、わざと縄を解いたのかニヤニヤ笑っている。

 

「また、あいつら逃がしやがって。この後のソープ奢ってやらねぇぞ。」

 

ゾクトも笑いながら愚痴る中、母親は倒れる少女の前で二人に土下座した。

 

「許して下さい!先に縄を解いたのは、私です!罰はすべて私が受けますから!どうか、娘だけはっ!」

 

目の前の母親の必死な直訴に、ドグルは腕を組みながら目を閉じて俯き、わざとらしく考える素振りをする。

 

「う~ん…どうしようかなぁ。俺も鬼じゃねえしなぁ。」

 

「実際、鬼族じゃなくてオーク族だしな。」

 

「変な突っ込み入れるんじゃねえ!よし、わかったぜ!」

 

ドグルは、母親の願いを聞き届けたように顔を上げた。それを見た母親の顔がわずかに明るくなる。

 

「で、では?」

 

期待に満ちた母親の顔を眺めるドグルは、ニタリと笑った。

 

「一人で犯されるのも、寂しいだろうから、母娘共々仲良く犯してやるぜっ!!!」

 

「そ、そんな?!」

 

ドグルの悪辣な言葉に母娘は、顔が真っ青になる。

 

彼女達の絶望した表情を見たドグルと若頭は、さらに悪鬼のような残酷な笑顔に変わった。

 

「若頭、今後の付き合いのために仲良く犯らないか?」

 

「いいねぇ。丁度この女の土下座を見て、ムラムラしてたところよ。」

 

若頭もドグルと同じようにズボンを脱ぎ出し、やがて二人は、母娘に見せつけるように股間の一物を外気に晒した。明るく陽気に会話を交わす二人だが、行うことはどす黒い鬼畜の諸行に他ならない。

 

「お、お母さん…」

 

「目を閉じていなさい…」

 

二人の会話を聞く母娘は、目を閉じてお互いを抱きしめる。

 

「安心しろ。母娘共々、天国に連れていってやるぜ。」

 

「逃走しなけりゃ、こんなことにはならなかったのに残念だぜ♪」

 

ドグルと若頭の手が、ゆっくりと母娘に近づいてくる。

 

母娘は、数秒後に自分達に襲いかかる残酷な運命を予感し震えながらも、お互いを離すまいとさらに強く抱きしめあった。

 

そして、ドグルと若頭の手が震える母娘に触れる瞬間…

 

『おのれら~誰に断ってわしのシマで、勝手晒しとるんじゃ~!』

 

薄暗い倉庫で、怒りの感情がこもるドスの効いた男の声が響いた。

 

「「だ、誰だ?!」」

 

ドグルと若頭が、母娘から手を引っ込めて声の主を探す。

 

ジャリ、ジャリ、ジャリ…

 

すると出口の暗闇から、草履の音が聞こえてきた。倉庫にいるすべての者が、音のする方向に注目すると、暗闇からゆっくりとカンカン帽子にサングラスをかけ、腹巻きに雪駄履き、口にはマッチ棒を咥えた男が現れた。

 

「「「「「?!」」」」」

 

いきなり現れた帽子男を見て、オークと神魔組どころか、犯される寸前の母娘も驚く。

 

「うぅぅ…」

 

ボリボリボリボリ…

 

当の帽子男は、そんな視線を何処吹く風で受け流し、右手で自分の股間をボリボリかきながら、ドグルと若頭に近づいてくる。

 

「な、なんだ?てめーは?」

 

怪しい帽子男を警戒する神魔組若頭の護衛が、急いでSPのようにドグルと若頭の前に立つ。

 

「ああん?」

 

帽子男は立ち止まり、殺気を込めた視線で二人を守る護衛達を睨む。

 

「ぅ……」

 

尋常ではない殺気に、一瞬、護衛達は気押される。しかし、後ろに若頭がいるため、無様な姿を見せることが出来ない。故に気力を振り絞りながら拳銃を取り出し、帽子男に怒声を浴びせ始めた。

 

「どこのチンピラだ?!俺達をここを仕切る神魔組と知ってやっているのかぁっ?!」

 

帽子男は、複数の拳銃を向けられても表情を少しも変えなかった。

 

「耳が遠いボケ共じゃのう…わしのシマで勝手さらすな言うとるじゃろ。わかったら、女どもと武器と銭を置いてけ。インキンうつすど…」

 

そう言うと帽子男は、股間を掻いている右手を前に突き出した。そのふざけた行為に護衛達は、青筋を立てる。

 

「ふざけんな!ここら周辺は、政府が東京キングダムを廃棄してからずっと神魔組が、ノマドや龍門にも負けずに治めてきたんだ!」

 

「アホすぎて話にならんわい。この際だから、テメーら木っ端ヤクザにも教えといてやる。わしのシマはここだけじゃねぇ…」

 

帽子男は、大きく息を吸い込こみ…

 

「日本全部が、わしのシマじゃあァァァァッッッ!!!!」

 

倉庫の外まで聞こえるほどの大声で宣言した。

 

「あ、あ、頭おかしいのかテメェッ

ー!!!」

 

帽子男の滅茶苦茶な理屈に周囲が呆気に取られるなか、一人の護衛が怒り心頭で、帽子男の額に銃口を向けた。

 

それを見た帽子男は、弾丸から額を防御するように左手のひらを顔の前に出す。

 

「それで防御してるつもりかよっ!死ねぇっ!」

 

ズドン!

 

狙いを定めた極道は、丸腰の帽子男を容赦なく銃撃した。予想なら撃った弾丸は、左手と額を貫通して、帽子男の脳漿を飛び散らせているはずだった。

 

しかし…

 

「え、な、なんで?」

 

帽子男は、死んではいなかった。それどころか、弾丸を受けた生身である左手のひらが少しも傷ついておらず、逆に弾丸が砕けてパラパラと地面に落ちる。

 

驚愕する周囲をよそに帽子男は、額にかざした左手首に齧りついた。

 

「てめ~ら、この岩鬼将造を…」

 

すると左腕が肘先から外れ、中から太い銃身が現れる。

 

「なめんじゃねぇぞぉ!!!」

 

ズガガガガガガガ!!!!!

 

「ぎゃっ!!!!」

「ごばっ!!!!」

「がぁっ!!!!」

 

ドグルと若頭を守っていた護衛達は、帽子男の左腕の中から現れたマシンガンに銃撃され、断末魔を上げながら吹き飛んだ。

 

「「ヒィィィィ!!!」」

 

死んでゆく護衛達を目の前にしたドグルと若頭は、悲鳴を上げてズボンを地面に置いたまま下半身丸出しで近くのコンテナの影に逃げ込んだ。

 

「相手は一人だ!若頭を守れっ!」

 

「こっちも銃撃しろっ!」

 

次々とオークと極道達が、自分達のリーダーを守ろうと慌てて将造に銃口を向ける。

 

自分を取り囲む敵の様子を見た将造は、天井に叫んだ。

 

「今じゃっ!ゆきかぜっ!!」

 

ズキュン!ズキュン!ズキュン!…

 

将造の合図と共に暗い天井から、電気を帯びた弾丸がいくつも降り注いだ。

 

「?!」

 

ほとんどのオークと極道は、将造に注目して反応が遅れ、気づいた時にはその身に弾丸を受け体が爆発する。

 

「いぐっ!」

「じゃがっ!」

「べあぁ!」

 

「ヤクザが、私に命令しないでっ!」

 

天井から赤いリボンのツインテールをしたライトニングシューターという二丁拳銃を操る褐色の少女がいる。対魔忍の水城ゆきかぜだ。

 

「くそ!天井からもだ!」

 

思わぬ天井からの襲撃に倉庫の中が、さらに混乱しだした。

 

「音をたてるなよ…」

 

「ああ…」

 

混乱の最中、味方から離れてコンテナの影で敵を観察する二人の極道がいた。二人は、銃撃の及ばない場所で冷静に分析し始めるが…

 

「多分、あいつは岩鬼組の…」

 

「もうひとりは、雷撃の対魔…」

 

ザシュ!ザシュ!

 

同じく天井に隠れていたモヒカンで丸眼鏡のサングラス男のナイフに頭頂から顎を貫かれ、お互いに台詞を最後まで言うことなく絶命した。岩鬼組の三太郎だ。

 

「キャアアアアアッッッ!!!」

 

一方、弾丸が飛び交うなか、犯される寸前だった母娘は、母が娘を覆い被さる形で地面に伏せていた。

 

銃撃しながら二人の様子を見た将造は、再度天井に叫ぶ。

 

「凛子っ!この親子を避難させぇ!邪魔じゃ!」

 

「言われなくともっ!」

 

凛とした声が響くと、日本刀を持ち長い髪を後ろに纏めた少女が、天井から母娘の目の前に降りて来た。対魔忍の秋山凛子だ。

 

「やはり、対魔忍かぁ!」

 

すべての銃口が、将造から凛子に向く。しかし、凛子は落ち着いて母娘に声をかける。

 

「大丈夫ですか?」

 

「あ、貴方も頭を下げないと弾丸が…」

 

「心配ご無用です。空間跳躍の術…」

 

凛子が呟くと、母娘と凛子の周りに透明な泡のようなものが浮かび始める。

 

「死ねぇ、対魔忍!」

 

ズドン!ズドン!ズドン!

 

複数の弾丸が、凛子を襲う。しかし、弾丸は泡に飲み込まれ、次々と消えていく。

 

「な、魔術か?もっと、弾丸を…ぎゃん!」

 

ズガガガガガガガ!!!!!

 

「バカたれ!相手は、こっちじゃ!」

 

 

凛子の忍術に驚き隙を見せた敵を、将造は次々と銃撃していった。

 

「畜生!!この奴隷売買は、対魔忍のお墨付きだったんじゃねえのかよぉ!!」

 

倉庫の外の港にいるオーク達は、次々と殺される仲間達を見て、極道達が乗ってきたトラックに残りの女性達を積んで逃げようとする。

 

「オラァ!!奴隷どもっ!速くトラックに戻…」

 

ターーン!!!

 

ドサッ!

 

女性達をどやしつけるオークの一人が、頭に穴を開けて崩れ落ちた。

 

「ヒィィッッ!狙撃だ!もう、女どもは置いてバラバラに逃げるぞッ!」

 

固まっていたオーク達が、四方に別れて逃げようとした瞬間…

 

ビュオオオオッッ!!!

 

それを逃がさんとするように一陣の激しい旋風が、オーク達を包み込んだ。オーク達は、たまらずバランスを崩し次々と倒れこむ。

 

「な、なんだ?この風は?!ちくし…」

 

ターーン!!!ターーン!!!ター…

 

風が止んだ瞬間、狙撃者はその隙を逃さず、オーク達を次々と狙撃して全滅させていった。

 

パァン!

 

港のオーク達が全滅してすぐに倉庫の屋根から、手のひらを叩き会う音がした。そこには、迷彩服を着て狙撃銃を持つ常に笑みの男とどことなく凛子に似た顔立ちの少年がいた。岩鬼組の拓三と対魔忍の秋山達郎だ。

 

「ヨッシャ!ナイスアシストだぜ!達郎!」

 

「拓三さんこそ!一発も外さないなんてすごいですよ!後は俺に任せて下さい!」

 

「ああ、行ってこい!今度は俺がアシストしてやる。」

 

達郎は、倉庫の屋根から飛び降り、混乱してへたりこんでいる女性達を保護しに走って行った。拓三は、その救助を邪魔させまいと達郎の周りをスコープで見張る。

 

一方、倉庫のオークと極道達は、水平から将造、上からはゆきかぜ、隠れるコンテナの影は拓三と母娘を避難させた凛子によって、次々と撃ち取られていった。

 

「うわぁーはっはっはっはっ!!!」

 

敵の飛び散る内蔵や手足を見ながら、将造は本当に楽しいと言わんばかりの大笑いをして、残りの敵を銃撃してゆく。

 

しかし…

 

ドカァァァッッッ!!!!

 

その笑い声を遮るかのように駐車場側の閉まってあるシャッターが破れ、巨大なコンテナトラックが現れた。運転席にはオークが乗っており、目に怨みの炎と共に将造を写している。

 

「死ねぇ、将造!!」

 

将造に突っ込むトラックを天井から確認したゆきかぜは、ライトニングシューターをトラックに向ける。実際にゆきかぜのライトニングシューターならエンジン部に当たれば、一撃でトラックを爆発させることができるだろう。

 

「ほっといてもいいけど、一応は助けてもらった礼もあるしね。」

 

ゆきかぜは、引き金を引こうとするが、

 

「待たんかい!ゆきかぜっ!こいつは、わしがやる。」

 

将造が一喝する。

 

「ふんっ…」

 

ゆきかぜが言うとおりに銃を下げるなか、トラックは後二十mと迫る。しかし、将造は全く恐れる様子もなく、正面に立ち右膝を向けた。

 

「特殊な防弾ガラスでできてるから、マシンガンは効かないぜぇ!」

 

運転席のオークは、将造の妙な行動を気にも止めず容赦なく突っ込む。

 

そんな調子に乗っているオークの笑顔を見た将造は、それ以上の凶悪な笑顔になった。

 

「わしは極道兵器じゃあ!わしの目の黒いうちは、日本は勝手させねえぜぇ!!」

 

ドカッ!ドカッ!ドカッ!

 

そう叫んだ瞬間、右膝のズボンを突き破り、小型ミサイルが発射された。三つのミサイルは、勢いよくトラックに吸い込まれてゆく。

 

トラックを操縦するオークは、笑顔から恐怖の顔に変わった。

 

「え、あれは、アンドロイドレッ……ぎゃあああッ!!」

 

ドガァァァッッッン!!!!!

 

ミサイルはすべてトラックに着弾し、倉庫を半壊させる程の大爆発を引き起こした。

 

 

 

 

(い…いったい、何が起こっているんだ…ドグル?)

 

(解らねぇ…幸いコンテナは、丈夫で沢山ある。このまま隠れていようぜ。対魔忍達も逃げたと思うはずだ。)

 

ドグルと神魔組の若頭は、激しい銃撃戦に紛れて、一つのコンテナに隠れていた。

 

「やっぱり、携帯は繋がらねえのか?」

 

「ああ、コンテナが頑丈なのはいいが、分厚すぎて繋がらねえ…くそ、組の者に連絡できれば…」

 

コンテナは、銃撃や爆発を防ぐほど分厚く頑丈だったが、それ故に携帯電話の電波までも遮断し、若頭は助けを呼ぶことが出来ずにいた。

 

やがて周りの銃撃音が止み、メラメラとした炎の音しか聞こえなくなる。

 

「終わったか?」

 

「少し覗いてみるかって…え"?!」

 

ガチャガチャ!

 

ドグルが扉を開けようとするが、外から鍵をかけられたのか開かない。

 

「どうした?!」

 

「と、閉じ込められ…うわぁ?!」

 

ガチッ!ウィーン!

 

二人はバランスを崩し倒れこむ。機械で隠れているコンテナが持ち上げられ、どこかへ運ばれているのだ。

 

「あ、あいつら。俺達をどうする気だ?」

 

コンテナはまたどこかに降ろされ、すぐに地面を走る振動に代わり、二人は恐れおおのく。二人は何者かが、自分達がコンテナに入っていることを承知で、どこかに運んでいることを悟ったのだ。

 

「「・・・・・・・・」」

 

移動して十数分間、二人は無言だった。しかし、遂に若頭がこの絶望的な状況に耐えきれず口を開いた。

 

「てめぇのせいだ…」

 

「あ"?!」

 

若頭の言葉にドグルが青筋を浮かべる。

 

「てめえらが、対魔忍に口利きしてもらって、商売を保証してもらってるって言うから、今まで信用してたんだぞ!ホラ吹きやがって!」

 

「お前らこそ、あいつはノマドの要塞ビルを爆破した岩鬼将造じゃねぇか!お前ら極道が、岩鬼組に目を付けられただけだろうが!」

 

一時間前までは、和やかな空気で話していた二人だが、所詮仕事上の付き合いであるといわんばかりに剣呑な雰囲気に変わる。

 

「てめェ!神魔組嘗めてると沈めるぞ!ごらぁ!」

 

「やってみやがれ!皆殺しにしてやる!」

 

二人は、自分達が下半身丸出しの情けない姿であることを忘れて、殴り合おうとしたその時…

 

ガチガチ!

 

「「?!」」

 

争う二人の耳にコンテナを開ける音が聞こえてきた。争っているうちにいつの間にか、目的地に着いたらしい。

 

二人は争うのを止め、今開かれんとする扉に注目する。可能性は低いが、対魔忍達が去った後で、部下が極秘に自分達を安全な所に運んでいただけかもしれない。二人は、その可能性に賭ける。そして、光の中から現れたのは…

 

「おう!喧嘩とは生きがいいのう♪魚も人間もこれくらい元気じゃないと、色々と料理のし甲斐がないわい!」

 

目元と口角が逆八の字に吊り上がる、魔界や極道の世界でも見たことがない程の殺気を放つ凶悪な笑顔だった。




ゲッターロボ・アークのエンディング、いいですね。
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