対魔忍者と極道兵器   作:不屈闘志

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Weapon 9 用済みオーク野郎

ドグルと若頭は、コンテナの出口で笑う将造の顔を見た瞬間、彫刻になったかのように恐怖で体が固まったが…

 

「ほら、さっさと出なさい。殺すわよ…」

 

「「ヒィィィィ!!!」」

 

将造の隣にいる、ライトニングシューターをこちらに向けるゆきかぜを見たとたんに我先にとコンテナから出た。

 

外に出た二人が周りを見渡すと、そこは地下の駐車場らしき場所であった。目の前には、自分達を襲撃した六人が立っており、振り向くと自分達が、女性達を運ぶ為に用意したコンテナトラックがある。

 

「…………」

 

それらを見た若頭は、隣で驚くドグルを余所に、周りの情報を繋ぎ会わせて、助かる方法を探し始める。

 

(おそらく、ここは東京キングダムじゃなく東京の対魔忍のアジトの一つ。女どもは、とっくに他の対魔忍の手で解放されているな…。考えるべきは、なんで俺達を殺さずここまで運んだってことだ。多分、何かしらの取り引きがしたいんだろう…。生き残るには、そこを上手く突くしかない。)

 

考えるのを終えた若頭は、笑いながら一番身長が低いゆきかぜに詰め寄って来た。

 

「おう、嬢ちゃん。この神魔組若頭の俺に何かよ…『ベキャ!』おごぉ!」

 

ゆきかぜは、交渉を持ち掛けようとする若頭にいきなりストレートパンチを放った。若頭は、その一撃で吹き飛び仰向けに倒れるが、ゆきかぜは追撃するように馬乗りになり、連続で殴り続ける。

 

「この!この!この!このぉぉぉ!!!!」

 

バキッ!バキッ!バキッ!バキッ!

 

「ガハッ!止めッ!ゲハッ!グェッ!」

 

ゆきかぜの母親は、数年前の任務中に行方不明になり、ゆきかぜは、母親の行方を血眼で探している。数ヶ月前にリーアルに捕らわれた時も母親目撃の噂を流されて、正常な判断ができなくなったためだ。故にゆきかぜは、娘を救うため土下座をしてまで、身代わりになろうとする母親に対して、残酷で鬼畜な行為をしようとしたドグルと若頭が、心底許せなかった。

 

バキッ!バキッ!バキッ!…

 

何発も殴られ、虫の息となる若頭。

 

「これくらいで済むと思わ…?!」

 

ガシッ!

 

「もう止めい、ゆきかぜ。ぬしは、頭に血が昇り過ぎる。」

 

将造が、ゆきかぜの腕を掴んでいた。

 

「何?こいつはこれくらいじゃ足りないわ!」

 

「只の年上からのアドバイスじゃ。ゆきかぜ、人を殴るときは、もっとこう…余裕を持って…楽しんで殴るもんじゃっあ!!」

 

ゴッッ!!!!!

 

「ガハッ!」

 

将造の下段突きをくらった若頭は一撃で気絶した。将造が拳を除けると、鼻が潰れて前歯もすべてへし折られた無惨な顔が出てくる。

 

「おっと、もっと楽しむつもりが、相手が柔すぎて一回で気絶させてしもうたわい。わしもまだまだじゃのう!」

 

「ふんっ!次からは、もっと加減しなさいよねっ!」

 

将造とゆきかぜを側で見ていた凛子は、冷静に先程のやり取りを分析していた。

 

(もしや、頭に血が昇ったゆきかぜを諌めるためにああいった行動を取ったのだろうか?考えれば、初めて会ったときから、ゆきかぜを気にかけているようにも見える。)

 

凛子とゆきかぜは、二週間ほど前に将造と再開した。二人は、もっと早く助けてもらった礼をしたかったが、身体検査や肉体改造薬の除去、そして、何より心のケアに時間がかかってしまったのだ。

 

(将造さんと出会った時は、ゆきかぜも岩鬼さんといって殊勝な顔で救助の礼を言っていたな。達郎の話では、将造さんの左手と右足は、私達を助ける為に犠牲になったようなものだ。しかし、将造さんは満面の笑みで、逆に私達に改造のお礼を言ってきた。それだけではなく『わし達は、対魔忍ではないから敬語は無用』と言って、歯に衣着せぬ言い方で徐々にゆきかぜの調子は、戻っていった。もしかしたら、私達に罪悪感を抱かせない為だったかもしれない。)

 

事実、将造は『助けた礼に手伝え』とはよく言うが、『お前らの為に大切な組員や手足が犠牲になった』とは一言も言わなかった。

 

(それに先程の母娘が、凌辱されようとした時もそうだ。)

 

二時間前、将造達は、神魔組の下部組織を襲撃している時、偶然この取り引きの情報を得た。取り引きはすでに行われているゆえに将造達は、急いで現場に駆けつけながら、急ごしらえの作戦を練った。それはまず、ゆきかぜが天井から奇襲を仕掛け、敵の目をゆきかぜに向けさせ、その隙を狙い他の者が、また奇襲を仕掛ける作戦だった。

 

しかし、ゆきかぜは、母娘が犯されかけるのを見て激昂し、他の者が配置に付くまでに突撃しようとした。それを見た将造は何も言わずに、ゆきかぜより先に自ら狙われやすい地上から一人で現れ、凌辱を止めたのだ。

 

(もしかしたら、自由に振る舞っているように見せて、すべて計算ずくで行動をしているのだろうか?)

 

 

 

 

「さあて、次はこのブサイクじゃっ!しかし、なんで二人して、○まの○ー見たく下半身を露出しとるんじゃ?訴えられても知らんぞい。」

 

「止めてよ!次から○ーさん見るたびにこいつらの汚い下半身思い出すでしょうが!」

 

将造とゆきかぜは、下らない会話をしながら、ドグルの方に近付いて行く。

 

二人を見て、次は自分が死ぬほど殴られる番だと感じたドグルは、二人に先制して土下座した。

 

「すいません!俺は、アサギの旦那から、情報提供の役目を仰せつかっているドグルです!これは何かの間違いではありませんか?俺達は、いつも有益な情報を…」

 

「ドグルいうんか、ぬしは?苦しうないから、面あげい…」

 

「はい…」

 

将造の言葉にドグルは、恐る恐る頭を上げる。

 

目の前には、まだ憤怒の顔をしているが、多少は落ち着いたゆきかぜが立っていた。

 

「まぁ単刀直入にいえば、あんた達はやり過ぎたってこと。アサギさんが言うには、多少の商売の中には人身売買は含まれていないそうよ。それから、あんた達をここに連れてきたのは、交渉とかじゃなくて、この…」

 

ゆきかぜが、満面の笑みの将造を見る。

 

「わしが倉庫で殺すのを止めさせたんじゃ。せっかく、今まで対魔忍の為に情報提供をしておいて、そのまま殺すのは忍びないからのぉ…じゃから、一つ軽い勝負をして決めようぜ!!」

 

「ヨッ、若!宇宙規模の懐の広さっ!」

 

「優しさは、マリアナ海溝より深いっ!」

 

三太郎と拓三が囃し立てる。

 

「しょ、勝負って、一体?」

 

明るい空気に反して、ドグルは怯えながら将造に問う。

 

すると将造は、左手を腹巻きに入れたまま、右手で元々倉庫に転がっていた野球の硬球を取り出した。

 

「なぁに、簡単じゃ。勝負内容は、野球。わしの今手にしとる『たま』を打ち返したら、ぬしの勝ち。三振や『たま』がストライクゾーンに三回入れば、わしの勝ち。タイマン勝負じゃから、ゴロでもぬしの勝ちにしちゃる。どうじゃ、簡単じゃろ?」

 

将造が、ルールを説明している最中に三太郎は、若頭の顔面から出た血で、壁にストライクゾーンを書く。

 

「そ、そんな簡単でいいのか?」

 

ドグルが周りの者を見渡すと、拓三と作業をしている三太郎は、ニヤニヤと笑っており、対魔忍の三人は、只厳しい顔をしてドグルを睨むのみであった。

 

(そうか!散々ビビらせた後で、俺に再度忠誠を誓わせるつもりなんだな!俺もかなり対魔忍に情報提供してきたから、まだアサギに使えると判断されたんだろう!)

 

ドグルは、将造の行動を前向きに考えた。

 

「よし、やってやる!俺も男だ。負けたらどうにでもしやがれ!」

 

「おお、そうか!じゃあ早速、そこの打席に立て!」

 

将造の言われるままドグルは、金属バットを渡されて、手書きのストライクゾーンの左前に立った。

 

「よし、達郎!撮影の準備じゃ!ドグルの生死を賭けた一世一代の晴れ舞台を録れ!」

 

「…わかりました。将造さん…。」

 

達郎は、ドグルに僅かな怒りの顔を向けながら、いつの間にか持ち込んだデジカメで撮影に入った。

 

「また、あいつ…もう何回めよ。」

 

「…………」

 

ゆきかぜと凛子は、撮影の指示を与える将造を呆れ顔で見る。

 

「もう一度聞くが、俺がお前の『球』を少しでも打ち返せば、命を助けてくれるんだな!」

 

将造の右手に持つ野球ボールを見ながら、ドグルは最後の確認をする。

 

「ああ、極道に二言はねぇ…指を賭けたっていいぜ。ぬしらもええのうっ!」

 

将造が、対魔忍三人にも確認する。

 

「俺は、将造さんがいいなら文句ありません。」

 

「私もだ…というか、この茶番をさっさと終わらせて欲しいのが本音だ。」

 

「私も文句ないわよ。将造の『たま』を少しでも打てたなら、対魔忍は、二度とあんたの商売にも口を出さないと誓ってもいいわ。」

 

対魔忍の三人の言葉を聞いて、ドグルは僅かに安堵した。

 

(極道達は、よくわからねぇが、少なくとも対魔忍の三人は、嘘を言ってないように聞こえるぜ。これからも俺は、生意気な女どもを数え切れないほど犯さなきゃいけねぇ。そして、いつかあのアサギも…)

 

ドグルの脳裏に今まで種族を問わず何十人と無理矢理犯してきた女性達がよぎる。

 

「来やがれェェェッッッ!!!!」

 

両手でバットを握りピッチャーの将造を睨みながら、ゾクトは叫ぶ。

 

「よぉぉし!わしの『たま』をくらいやがれぇぇ!!!!」

 

将造は、左手を腹巻きに入れたまま、ボールを大きく振り上げた。

 

しかし…

 

ピタッ…

 

右手をのボールを思い切り振り上げたまま、将造の動きが止まった。

 

(な、なんだ?タイミングを遅らすチェンジアップか?!)

 

ドグルが、チェンジアップを警戒した瞬間…

 

ズドン!!!!ビチャ…

 

ドグル自慢の一物が、根本から弾け飛んだ。

 

「ぎゃあああああッッッッッ!!!!!」

 

ドグルは、地下の駐車場全体に響く程の悲鳴を上げる。

 

将造は、ボールを右手で振りかぶったまま、左手で腹巻きからコルトパイソンを取り出し、ドグルの一物を銃撃したのだ。

 

「あちゃー…デッドボールじゃ!すまんのうドグル!」

 

わざとらしく帽子を脱ぎ、頭を下げる将造だが、少しも悪びれた顔をしていない。

 

ドクドクと股間から血を流しながら、ドグルはうずくまっている。

 

「な、なんで?その野球ボールを投げるんじゃ…」

 

死にそうな顔のドグルの問いに、将造が満面の笑みで答える。

 

「わしらは、ボールとは一言も言っとらんぜ。わしが持っとる『弾丸(たま)』と言っただけじゃ。」

 

「そ、そんな?!」

 

ドグルが絶望した顔で周りを見渡すと、岩鬼組、そして対魔忍達でさえ特に表情を変えたものはいなかった。

 

その中で偶然ドグルと目が合ったゆきかぜは、ゆっくりと口を開いた。

 

「言っとくけど将造は、さっきのことを事前に私達に話していたわけじゃないわよ。まだ出会ってから一ヶ月くらいだけど、絶対に普通のバッティング勝負なんかしないと思ってたし。あんたの股間の汚い物がなくなった原因は、あいつの理解不足ね。まぁ、流石に銃撃するとは私も思わなかったけど…」

 

ゆきかぜの言葉が終わるとドグルは、頭を地面に伏せ、必死に謝罪の言葉を述べ始めた。

 

「すいませんっ!もう、悪事は働きません!俺は、このまま魔界に帰って二度と人間の世界には来ない!それに股間の物もなくなって二度と女は犯せませんし!ですから命だけはどうか!」

 

ドグルは、立派な謝罪の言葉を吐くが、心の中では、逆のことを考えていた。

 

(この野郎!股間は、魔界医に治療してもらって、いつか絶対にてめェに復讐してやる!アサギには、こうやって見逃されたんだ。この土下座なら、どんなやつでも…)

 

「わかった!ドグル、頭を上げぇ!」

 

「!!」

 

一縷の望みを賭けたドグルが、喜び顔で顔を上げた瞬間…

 

ズドン!ズドン!ズドン!

 

ドグルの頬を三発の将造の銃弾がかすめた。

 

「ヒィィィィ!!!!」

 

ドグルは頭を再度伏せた。

 

…………しかし、何秒経ってもそれ以上の銃撃の音が聞こえてこない。今度は恐る恐る頭を上げると、こちらに近づいてくる将造が見える。

 

(もしかして、許してくれたのか?)

 

将造は、ドグルの前に立つと背後の壁を指差した。

 

「ドグル…後ろを見ぃ…。」

 

振り向くと、ストライクゾーンの壁に三発の銃弾の痕がある。

 

「これでわしの勝ちじゃが、野球は表と裏がある。じゃから…」

 

ドグルは、震えながら視線を前に戻すといつの間にか拾ったのか、金属バットを頭上高く振り上げている将造がいた。その顔はこれからドグルを殺せることで、喜びに満ち溢れた顔をしている。そして…

 

「攻守交代じゃあッッ!!!!」

 

そう叫んで将造は、バットを思い切りドグルの肩に振り下ろした。

 

ベキャッ!!!

 

「ぎゃああああああ!!!!」

 

骨のへし折れる音が駐車場に響き、ドグルは床を転げ回った。

 

そんなドグルの様子を見て、将造は顔を三太郎に向ける。

 

「三太郎!今のは?」

 

三太郎は、わざとらしく腕を組みながら首をかしげて、渋い顔をする。

 

「うーん。ファウルですかねぇ?」

 

「ヒィィ!」

 

ドグルは、将造が三太郎と話している隙に逃げようとする。

 

しかし…

 

「じゃあ、こいつはどうじゃあッッ!!」

 

将造は、今度は逃げるドグルの背中をフルスイングする。

 

ドゴッ!!!!

 

「ガハアッッ!!!!」

 

ドグルは、三m程前に吹き飛んだ。

 

将造は、次に顔を拓三に向ける。

 

「拓三、これは?」

 

拓三は、指を『パチン』と鳴らしわざと悔しそうな顔をした。

 

「惜しい!またファウルです。」

 

「ツーストライクか…中々野球が上手いのうドグル!これは追い込まれてしまったわい!」

 

一方、残酷な将造の野球を見守るゆきかぜと凛子だが、二人の表情にはドグルに対する憐憫の情など一欠片もない。

 

(あんたが、あの母娘の言うことを少しでも聞いていたら、もっと早く楽に殺して上げたのに残念ね。)

 

(残酷だが、貴様はそれ以上のことを何の罪もない女性達に散々行ってきた。地獄に行く前の禊として受け入れるがいい。)

 

ドグルは、また素早く立ち上がるが、もうヨタヨタとして真っ直ぐに走ることができない。

 

「た、助けて…」

 

「これは悪球じゃのう…じゃが、わしは悪球打ちは得意なんじゃっ!!」

 

将造は、ドグルに追い付くとこれで最後と言わんばかりに頭を狙って、フルスイングの構えに入る。

 

「ヒィィィィ!!!」

 

「花は桜木!男は岩鬼ぃ!!!!」

 

グワァラゴワガキィーン !!!!!

 

ドグルの頭上半分が吹き飛び、脳漿が天井まで飛び散った。

 

ドタッ…

 

ドグルの体が崩れるのを見届けた将造は、動画を撮っている達郎に問う。

 

「今度はどうじゃ?達郎?」

 

達郎はデジカメの画面越しに、にこやかに将造に答えた。

 

「これは…ホームランです。将造さん。」

 

達郎の言葉に将造は、血濡れのバットを天にかざして勝利宣言をする。

 

「よし、わしの勝ちじゃあ!」

 

パチパチパチパチ!

 

「さすが、若!野球もメジャーリーグ級だ!」

 

「いい試合でした。ドグルもきっと泣きながら地獄で健闘を称えてますよ!」

 

「「…………はぁ~」」

 

三太郎、拓三が拍手を送るなか、ゆきかぜと凛子はため息をついて『何言ってんだ、白々しい』と言わんばかりの目を将造に向けていた。

 

彼女達の白い目した視線を一身に受けながら、将造は、次に未だに横たわっている神魔組の若頭に近付く。

 

「さぁて、次は長年に渡ってわしの日本(シマ)を荒らし続けた木っ端ヤクザじゃっ!疲れて寝とるなら、わしのこの睡眠薬でもっと安眠させたるわい!」

 

将造がバットを振り回しながら、若頭の前に立った瞬間…

 

「……や、止めてくれ!!!!」

 

気絶していたはずの若頭が、勢いよく上体を起こした。実は若頭は、ドグルと野球を始めた辺りから目が覚めており、逃げる機会を窺っていたのだ。しかし、ドグルの体で容赦なく野球をする将造の残酷さに恐怖で体が縮みきってしまい、今まで動けないでいた。

 

「ぬしが途中から、目が覚めていたことには気付いていたぜぇ!」

 

将造の凶悪な笑顔を間近に見て何も言えない若頭の頭目掛けて、将造はバットを振り上げる。しかし、次の瞬間、急になにかを思い付いた顔になり、バットを地面に置いた。

 

「そうじゃ!目覚ましついでに今まで録ったわしらの動画を見てもらって、感想をもらおうかの?やはり首領足るもの、第三者からの意見も聞かんとな!達郎、頼む。」

 

「わかりました。将造さん。」

 

「え?!」

 

若頭は、いきなりの場面展開に頭が追いつかず、達郎が見せるデジカメの動画を何も考えずに言われるまま視聴する。

 

そして…

 

「ヒィィィィ!!!!」

 

いくつかの動画のクライマックスだけを見た若頭は、恐怖の悲鳴を上げた。

 

若頭が見せられたのは、顔面にボーリング球をぶち当てて、どれだけ歯(ピン)を倒せるか競う『人間ボーリング』、頭以外を砂浜に埋めて、目隠しをしたまま、まさかりで頭を狙う『人間スイカ割り』、体を水に沈ませて空気を吸おうと出てきたところをバットで殴る『人間モグラ叩き』等である。

 

将造の標的にされたのは、ドグルが言っていた最近、連絡が取れなくなっていた大口の顧客達である。彼らは、殺人嗜好家や残酷な実験をしていた科学者、そして、拷問以上のプレイを行うサディストなど狂った者達だ。だが、動画の中の彼らは、凶悪な笑顔の将造にご自慢の人を苦しめる道具を逆に使われ、最後には普通の人間らしく泣き叫びながら許しを請うが、許されずにおもちゃにされて死んでいった。

 

「この動画をリーアルが管理しとったblogに上げようかと思うんじゃが、金取れるかのう?感想を聞かせてくれんか?」

 

将造が、笑いながら若頭に問う。

 

将造に倒されたリーアルは、かつてミスターXというユーザー名で調教した女性達のあられもない動画をblogに上げて金を稼いでおり、ゆきかぜと凛子も予定通り調教されていれば、そのblogに載せられるところであった。

 

しかし、ヨミハラでは街の主であるリーアルがいなくなった影響で、中華連合や他の組織に領地拡大のチャンスと判断され、抗争が起きてしまう。それに乗じて『高坂静流』率いる対魔忍達が娼館に無理矢理潜入し、顧客のデータを奪い、blogのパスを乗っ取り、ついでに凛子の持っていた愛刀『石切兼光』をも取り返したのだ。

 

若頭は、恐怖で歯をカチカチと鳴らせて将造の問いに答えない。恐怖に染まる若頭を見た将造は、より凶悪な笑顔になる。

 

「よし!それじゃあ。ぬしとは人間だるま落としを…」

 

ピリリリリリリリ!

 

「「「「「「?!」」」」」」

 

将造の言葉を遮るように若頭の胸元から、携帯の着信音が聞こえてきた。コンテナで遮断されていた電波が、外に出た故に届くようになっていたのだ。

 

将造は、若頭が携帯を取り出す前に素早く胸元からスマホを奪った。そして、着信音がなったと同時にゆきかぜ、凛子も近くに来ており、若頭以外の六人は、同時に画面の着信相手を見る。

 

「ん、誰じゃこれ?」

 

「さあ、外国人のマフィアからですかね?」

 

「知らねえな?」

 

将造、三太郎、拓三は画面の着信相手を見ても首を捻るだけであった。しかし、対魔忍のゆきかぜ、凛子、達郎は、その着信相手を見た瞬間、顔に大量の汗が吹き出る。

 

「凛子姉…こいつって?!」

 

「凛子先輩、まさか?!」

 

「ああ、こんなところでこんな大物の名が出るとは…」

 

凛子は、まだ首を捻っている将造達を無視して、若頭にすぐに対応するように指示を出し携帯を返した。

 

その携帯画面には、ローマ字で『Kaiser』と表示されていた。




ゆきかぜが将造のことを、何て呼ぶか少し悩みました。

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