見習い巫女2人   作:花見崎

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博麗霊夢

『オノレェ!キサマァ!』

 

 

 

辺りの空を沈む夕日がオレンジ色に染め上げた頃、人間のそれとは全くもって異質な叫び声が響き渡る

 

 

 

「残念ね、私はキサマじゃないの。霊夢よ、せめて冥土の土産にでも持っときなさい。三途の川渡りの話のタネにでもなるんじゃない?」

 

 

『イ、イヤダ。コンナトコロデシニタクナイ!イヤダァァァァァ!!』

 

 

 

「恨むならせいぜい人里を襲おうとした自身を恨んどきなさい。」

 

 

 

地に伏していた妖怪にトドメを指し、完全に死んだことを確かめると私は結界を解き、その場を離れ人里に向け、足を進め始める

 

 

 

「バレバレだからさっさと顔出しなさい鬱陶しい。」

 

 

 

と、声を投げかけてみるも何も返ってくることはない。

正直面倒なのでこのまま放置するのも手たけど今日は一段としつこい上にいつもと違うと勘が告げていた

 

 

 

「つれないわねぇ、霊夢ぅ。」

 

 

 

今回はあっさり引き下がって顔を出してきた

 

 

 

「別に、寺子屋中に突然連れてこられたとか怒ってるわけじゃないし。」

 

 

 

「そんなことよりどうしたのよ?いつもなら無遠慮にさっさと殺っちゃってるのに今日は大分伸ばしたじゃない。少しは人らしさが芽生えちゃった?」

 

 

 

ほんっとに人の話を聞かないヤツ。などと思いつつもわざわざ流れをぶった斬るのも面倒なのでここは喉元で飲み込む

 

 

 

「別に…ただの気まぐれよ。」

 

 

 

嘘では無かった、昨夜お母さんと紫が話していた内容がまだ頭の住みに残っていた

 

 

 

・・・・

 

 

 

『ねぇ…霊奈?』

 

 

 

昨夜たまたま夜中に目が覚めた私は、夜風に当たりたくて布団を抜け出した

 

 

 

いざ縁側に出てみるとお母さんが寝室としている部屋から明かりが漏れていて、中から話し声が聞こえてきた

 

 

 

『どうしたんですか?紫。また愚痴でもこぼしに来たんですか?』

 

 

 

『ちっ、違うわよ!』

 

 

 

『ふふっ、そうでしたね。紫は大妖怪ですもんね。これは失敬。』

 

 

 

昼間でもよく耳にする光景だった。普段大賢者の名にふさわしく振舞っているが、お母さんの前ではタジタジになってしまう

 

 

 

『むぅ…』

 

 

 

『それで?今日はどんな小言を言いに来たんですか?』

 

 

 

お母さんの独特な優しい雰囲気故の影響なのか、彼女を前にどんな大妖怪でも殺意を保つことは不可能と言ってもいい

 

 

そんな彼女だからこそ本来命を賭したバトルにしかなりえない巫女の仕事の一つである妖怪退治が和睦という平和的解決の手段に変わりつつあるのだろう

 

 

もちろん例外な血気盛んな妖怪だって居るが、お母さんとてヤワじゃない。大抵の妖怪は返り討ちに会うので問題は無い。

 

 

 

『小言って!私は貴方のことを思って!』

 

 

 

『・・・紫の言いたい事は分かる。貴方優しいからね。私が霊夢を愛するように、母が、いえ先代だけじゃない。私より先の時代で巫女を務めていた人達がそうであったように紫も、私達を…【博麗の巫女】を全員同じ1つの家族として愛してるんでしょう?私はそれだけで十分だから。』

 

 

 

『・・・だけどやっぱり言わせてもらうわ。霊奈

、貴方妖怪退治から一線を退きなさい。これ以上は貴方の身が持たないわ!』

 

 

 

私はその言葉に愕然としていた

 

 

 

お母さんは博麗の巫女の中でも少し違う。確かに皆が皆霊力の高さは高いが、お母さんだけはずば抜けて高い

 

 

 

それこそ歴代の中でも最強とまで呼ばれる初代を上回るほどだと昔霖之助さんに教えられたことがある

 

 

 

とはいえ、戦闘においてはからっきしで素手はもちろん、得物ですらてんでダメである。紫が言うには他の巫女たちと違って少し性質が異なってるらしいが、詳しいことは覚えていない。

 

 

 

『やっぱその話か…いつも言っているだろう?私は霊夢に自分と同じような道は辿って欲しくないって。そして私の夢でもある人と妖怪が手を繋ぎあえる未来。それを築くまでは世代交代する気なんて全く無いわ。例え、その結果で自分の身が滅ぼうとも…ね。』

 

 

 

『貴方は遺される霊夢の気持ちも考えないの?』

 

 

 

『もし、この先私達じゃどうしようもなくて、止むを得ず、私自身を犠牲にしなければならなくなった時。もし、そんな確定された未来が存在したら、紫ならどうする?』

 

 

 

『それは勿論どんな手を尽くしてでも止めるわよ。例えどんな理不尽でもこの世界は、この世界だけは消させはしない!』

 

 

 

『えぇ、貴方なら確実にそうするでしょうね。私だってそうですもの。だからこそ、私は人妖問わず手を繋げあえる世界を臨む為にも相手の話も聞かずに無闇に葬るのは気が引けるのよ…』

 

 

 

『博麗の巫女は常に中立でなければならない』

 

 

 

私が巫女になると決めた日、紫からこんな事を言われた

 

 

 

博麗の巫女は幻想郷のバランスと結界を保つのが大部分な仕事だと教えられた

 

 

 

人妖多種多様な種が入り交じるこの世界幻想郷において、この間を取り持つべき役は必須なのだ。それが自分達博麗の巫女なのだと。

 

 

 

『それでこの前逆襲にあいかけて死にかけたのは誰かしら?』

 

 

 

『言ったでしょ、せめて妖怪との向き合い方は自分で決めさせてと。たとえそのせいで寝首をかかれるような事になっても構わないって。』

 

 

 

気付けば掌を生ぬるい液体がつたってた。

 

 

 

初めて聞くお母さんの巫女に対する気持ちに知らず知らずの内に握りすぎて爪が入ってしまったのだろう。

 

 

 

巫女修行にも慣れてきた時、時たま紫から実践練習と称してお母さんの代わりとして妖怪を退治してきた

 

 

 

それを私はお母さんの負担が少しでも減らせると思って来たけど、今のを聞いて自信を失ってしまう

 

 

 

『・・・ねぇ紫。』

 

 

 

『珍しいじゃない、貴方から話題を振るなんて。』

 

 

 

『この世界はあちらの世界で忘れられたもの達が流れ着くって言ってたよね?』

 

 

 

『えぇ、残酷にもこの世界は全てを受け入れる。たとえ何であろうと、この世界で生き続けたいと思えばこの世界は腕を広げて受け入れるでしょうね。』

 

 

 

『妖怪は人の想像、恐怖、感謝。色々な感情が多くの何かによって表現するために創られたもの。言ってしまえば人が何かに対して何かしらの感情を抱かない又は忘れてしまえば妖怪は存在意義を無くしてしまう。』

 

 

 

 

『・・・』

 

 

 

 

『言ってしまえば妖怪達が幻想郷に来るのは生きるため。そして、彼らが人間達を襲ったり異変を起こしたりするのも人間たちから忘れられたくないため。そして、そんな彼らから人を守るために、襲う前に防止する為に彼らを退治するのが私達。』

 

 

 

お母さんは特に抑揚があるわけでもなく、淡々と語っていた。紫からは特に返事は聞こえない

 

 

 

『勿論だからといって人々が襲われていい理屈にはならない。けど、かと言って妖怪たちを端から否定して、全て悪と決めつけるのも早計じゃないかなって思うことがあるの。勿論妖怪が人間を襲うことはあってはならないこと。だから彼らが襲う以外で彼らが安心して生活できるようにしたいのよ。』

 

 

 

 

『・・・・』

 

 

 

しばらく誰からも声は出なかった

 

 

 

 

『・・・・ありがとう、初めて貴方の真意を知れた気がするわ。それじゃあ明日もよろしくね。』

 

 

 

 

と言った後、室内の気配は1つ消え、その数刻後明かりが消される

 

 

 

『・・・寝よう。』

 

 

 

寝室に戻る足取りは少し重かった

 

 

 

・・・・

 

 

 

 

あれから私は妖怪についてしばらく考えるようになった

 

 

 

本当に自分がやっていることはこの幻想郷の住人とっていい事になるのか

 

 

 

「まぁ、ちゃんと仕事果たしてくれたし戻っていいわ。」

 

 

 

「それじゃあ、私は寺子屋に戻るから。」

 

 

 

「・・・ごめんなさい。」

 

 

 

ギリギリ聞き取れるか聞き取れないかの声量で紫から謝罪の声が聞こえる

 

 

 

 

そして彼女はそのままスキマの中に潜って行った

 

 

 

 

結局その日も私の中のモヤモヤが晴れることは無かった

 

 

 

・・・・

「慧音ー?いるー?」

 

 

 

あの後人里に戻り、途中で放棄してしまった謝罪を慧音にするため、その足で寺子屋へと向かう

 

 

 

「霊夢!良かった!ちゃんと戻ってきてくれたか!」

 

 

 

 

 

寺子屋に入り、奥の部屋に居ると思われる慧音に声をかける

 

 

 

 

直ぐに慧音が少し焦ったような顔で私の元に掛けてくる

 

 

 

「仕事とはいえ無断で授業抜けてしまいごめんなさい。」

 

 

 

ここへ来た本来の目的である謝罪を告げる

 

 

 

「いや、いいんだ。君たち博麗の巫女の事は紫や霊奈や今までの巫女達からも任せられているんだ。お前が元気でいる姿を見るだけでも嬉しいのさ私は。」

 

 

 

「そ、そう…ありがとう。」

 

 

 

面と向かって感謝を言われるのは慣れず、ぎこちない返しになってしまった

 

 

 

 

「・・・なぁ霊夢。」

 

 

 

 

「何よ?」

 

 

 

 

「その…何だ。霊奈は元気か?」

 

 

 

 

「どうしたのよ急に湿っぽくしちゃって。あんたらしくもない。んーまぁ元気してるわよ。」

 

 

 

「いやちょっと気になってな・・・」

 

 

 

「私なんかにわざわざ聞かなくても博麗神社まで出向いてくれば良いのに。お母さんも会いたがってたわよ。」

 

 

 

 

人里で寺子屋の先生を務めているとはいえ彼女とで半人半妖。ある程度の妖怪相手なら問題ないでしょうし。別に博麗神社に赴くくらい造作でもないはず。寺子屋だった年がら年中やってるわけでもあるまい

 

 

 

 

「・・・そうか…あいつが私を…嬉しいなぁ…」

 

 

 

 

ボソボソと呟いているけど生憎私には聞き取れない

 

 

 

「前から思ってたんだけどさ、アンタとお母さんって昔に何があったの?ただの教師と生徒とはまた違った雰囲気というかさ。」

 

 

 

 

「やはり気づかれるものか…」

 

 

 

 

慧音の顔がまた1層悲しげに映る

 

 

 

 

「別に言いたくないなら良いんだけどさ。」

 

 

 

 

「すまないな…」

 

 

 

 

「げげっもうこんな時間!早く帰らないとお母さん待たせちゃう!」

 

 

 

 

ふと外を見れば大分オレンジ色がかかっていた

 

 

 

「それじゃ霊夢、また次な!それと霊奈にもよろしく伝えといてくれないか!」

 

 

 

 

「それじゃ慧音先生さようならー!」

 

 

 

慧音に手を振りながら寺子屋を飛び出す

 

 

 

帰路に着きながら先の慧音を見てどこか既視感を覚えていた

 

 

 

結構昔から博麗の巫女と付き合いの長い妖怪達、主に紫や幽香、文は彼女について私と話したり、彼女と話す時でも時折先の慧音の様な悲しい顔をしていた。けどいくら考えても答えにはたどり着い様は無かった

 

 

 

・・・・

 

 

 

 

「・・・ねぇお母さん。」

 

 

 

「んー?どうしたの霊夢?」

 

 

 

今、私はお母さんと神社にある大浴場の露天風呂に入っていた

 

 

 

「どうしたのよ急に、いつもなら先に入ってるのに。」

 

 

 

場合によっては夜でも仕事として呼び出されるお母さんは基本夕暮れ時にお風呂を済ましている

 

 

 

そんなお母さんの代わりとして夕餉の支度や買い出し等を済ませるのは私のため、基本2人1緒にお風呂に入ることは滅多になくなってしまった

 

 

 

そんな中で寺子屋から帰ってきた娘を出迎えた母は開口一番こう言ったのだ

 

 

 

 

「どうだ霊夢!私とお風呂に入らないか!」

 

 

 

ご丁寧に2人分の着替えと桶や着替えを両手に持ち満面の笑みで娘の帰宅を待っていた

 

 

 

それで今に至るのだけど・・・

 

 

 

 

「うーん、やっぱ肌スベスベ!」

 

 

 

 

先からお母さんがお風呂の中で密着して肌を触ってくる

 

 

 

 

「ちょっ、お母さん!?」

 

 

 

「いいじゃない、こういうのは若い方がプニプニしてて可愛いんだから!」

 

 

 

「全く・・・まぁ別に構わないけどその前に…」

 

 

 

とりあえずお母さんを説得するのは諦めて、隠し撮りしようとしていたスケベ天狗は処しといた

 

 

 

 

「ねぇ霊夢?」

 

 

 

今までの抜けた感じはどこに置いてきたのか少しトーンの落ちた声でお母さんに呼ばれた

 

 

 

 

「どうしたの?お母さん。」

 

 

 

「昨日の紫との会話、聞いちゃってたよね?」

 

 

 

 

一瞬体がピクっと反応する

 

 

 

 

「・・ごめんなさい」

 

 

 

別に怒られるような勘もしないけど何故か聞いちゃいけなかったような雰囲気でつい謝ってしまう

 

 

 

 

「別に謝らなくていいの、ただ私の事幻滅しちゃったかなぁって…」

 

 

 

 

「そんなわけないでしょ。むしろ逆に申し訳なく感じたわ…」

 

 

 

 

「・・・そう、覚えてないのね。」

 

 

 

「ん?なんか言った?」

 

 

 

「いいえ、何もないわ!さ、流しっこしましょうよ!」

 

 

 

「良いわよ、自分で出来るからァ!」

 

 

 

「いいじゃない、いいじゃない、親は子供の背中流すのが好きなんだから!」

 

 

 

お母さんの声にどこか安心する私がいる

 

 

 

けど、巫女は代々短命だとも聞いている

 

 

 

別に私が短命なのは構わないけどお母さんと長く生きていけないのは悲しくなってしまう

 

 

 

 

それでも、今はこの幸せを噛み締めていきたいのだ

 

 

 

 

「(覚えてない…のね。嬉しいのやら悲しいのやら…でも、もしその時がきたら私は腹を決めなきゃいけない・・・)」

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