君が最初から周りの人に相談していればこんなに文章が長くなることはなかったんだよ!
外典はまだまだ続くよ!本編より長くなっちゃったよ!
我々は、安易に番外編に手を出すべきではなかった!
20210524 加筆修正
昼食を終えダイワスカーレットは教室に戻った。
気分はだいぶ落ち着いている。
席に着くなりウオッカと目があった。どうやら待ち構えていたらしい。若干、睨むような目つきだ。何かしただろうか。ああ、そう言えば。
「ウオッカ。さっきは怒鳴ったりしてごめんなさい。でもほら、顔色も良くなったでしょ? もう問題ないわ」
「良くなってねえよ」
「ああそう。どうでもいいわ」
ダイワスカーレットは努めて普段通りの口調でそう告げた。
だがウオッカには分かった。これはこいつの仮面だ。優等生の仮面と同じ、何かを覆い隠すためのもの。こいつはこの後の及んでまだ隠せると思ってる、隠そうとしている。ウオッカはそれがムカついた。ムカつく以外に他になんて言うんだ?
今も見ろ。いつものこいつなら反射的に言い返してくるのに、笑ったままだ。優等生の仮面まで着いてやがる。
ウオッカが腹を立てているのは何なのか。スカーレットの自分に対する煩わしげな態度か? 人の話を聞かないことか? 何やら隠し事をしていることか? それらの怒りはいったい何処から来る物なのか。
ウオッカには分からない。分からないなら、出来るのは気持ちに嘘をつかないことだけだ。
それからの顛末は以下の通りだ。
「そうだ、ねえウオッカ。私今日のトレーニング休むから。トレーナーに伝えておいてくれない?」
「は? ……理由は何だよ」
「生徒会の方でちょっと用事があるの」
「方って何だ、ちょっとって何だ。もっと具体的に言えよ」
「あんたに話す意味ある?」
「俺にはなくてもトレーナーにはあんだろ。そんなふわふわした理由で納得しろってか? ちっとは物考えて言えよ」
「なら納得しなくてもいいわ。伝えるだけ伝えてちょうだい」
「お前……、さっきからふざけんなよ」
「何であんたがキレてるわけ? 自分だってサボったりしてる癖に人には文句言うの? なにそれ、ダサすぎ」
「テメエ! いい加減にしろ!」
「わー! ちょっとストップストップ! ウオッカちゃんもスカーレットちゃんも落ち着こ? ね? ね?」
同じクラスのウマ娘が見かねて仲裁に入るも、加熱した二人は聞き入れない。
「いい加減にするのはアンタの方でしょ!? さっきからしつこいのよ!」
「俺はただ……! クソっ! もういい!」
「最初っからそうしなさいよね。あ、伝言だけは伝えといてよね」
「っせえな! 分かってるよこのボケ!」
「はあ!? ボケはアンタでしょこのノータリン!」
「先生きたよーー! はい終了ーー!」
終結を迎えたのは授業を受け持った教師が教室に入ってくる直前だった。
埒が開かないと無理やり二人の間に割って入ったウマ娘の活躍により一応の終わりを迎えた。
だが、荒れごとの残滓というのは尾を引く物だ。
「え、なにこの雰囲気。何かあった?」
授業担当の教員はそれ以上追求することはなかった。彼は、この類のことは担任の仕事だと割り切っていた。
授業の後も、合間も、控えめに言ってクラスの雰囲気は最悪だった。
ウオッカとダイワスカーレットが午後になってから一言も話していないのが原因だ。
ダイワスカーレットは休み時間にどこかへ行くことは無くなったが、代わりに鬼気迫る勢いで日直日誌を書き上げている。放課後すぐに行かねばならない場所があるとのことだ。また、ウオッカのことは無視している。
ウオッカもダイワスカーレットを視界に入れないようにしていた。また、彼女に対して露骨な舌打ちを隠さなくなった。
ダイワスカーレットは心配をかけないために。
ウオッカは相手を心配するあまり。
ただそれだけのはずだった。
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結局、険悪な雰囲気は放課後まで続いた。
今日は間が悪いことに、今日は授業が長く16時まで有る日だった。
ダイワスカーレットは放課後が近ずくにつれ焦りを増していた。
授業にも集中できず、ただただ焦っていた。嫌な予感が頭から離れなかったのだ。すなわち、目当ての人物が寮におらず、居場所も分からないこと。
頼むから杞憂に終わってほしい。だが、今朝から謎の記憶に悩まされているダイワスカーレットにとっては決して杞憂とは思えなかった。むしろ殆ど確信を持っていた。
シンボリルドルフへの約束、アグネスタキオンへの約束が今になって重圧になってきた。
そして、この約束を破ることになればアグネスタキオンは居なくなる。想像するだけでも得体の知れない恐怖感が競り上がって来る。
恐怖は焦りとなり、焦りは気まずさとなって席の周辺のウマ娘達に伝播していった。
HR終了後、16:30、ダイワスカーレットは担任教師へ日直日誌を手早く提出して点検を受けると、あらかじめ荷物を纏めておいた荷物を引っ掴んだら挨拶もそこそこに飛び出していった。
クラスでダイワスカーレットと仲のいいウマ娘が、日中の事情もあり、この後の食事に誘ったが返答は無かった。
代わりに“あと90分“という謎めいた呟きと、追い詰められたような表情を見た。
ウオッカは去っていった
ダイワスカーレットの行先はトレーナー寮だ。
トレーナー寮は何棟かある。ダイワスカーレットはゴールドシップが言ったように、ポストを見て探していった。
やがて目当ての人物の名前。「広野」という苗字を見つけた。そして絶望した。いや、予感が的中したともいうべきか
何度もインターホンを鳴らしたが反応はない。
目的のトレーナーは寮に住んでいなかった。
正確には、部屋だけとっているが暮らしてはいないらしい。たまたま自室に荷物を取りに来ていた隣の部屋の住民が教えてくれたの。主に物置部屋として使っているらしい。
あーあ、ダメだったか。嫌な予感がしてたのよねー。はい、あと70分。
ダイワスカーレットは制服が汚れるのも気にせず寮の階段に腰掛け、途方に暮れていた。
「学園は休み、家にはいない。どーしろっていうのよ……」
独り言が溢れる。
「ポストだって言ったろスカーレット」
「っ! ゴールドシップ!? あんたなんでここに!?」
ダイワスカーレットは自分の独り言を拾った人物がいることに驚いた。それ以上に、札幌に帰ったはずのゴールドシップがまだいることに驚いた。
「あん? お前が呼んだからだろ? それよりさー聞いてくれよスカーレット、今電脳世界のニンジャと戦ってるんだけどこれがツエーのなんのって」
「あんたまたおちょくって……。まあいいわ、ちょっと手伝いなさい」
ダイワスカーレットはゴールドシップの存在に光明を得たような気がした。このトンチキなウマ娘なら、もしかして探し出せるかもしれない。
「ワリ、それ無理」
「はあ!?」
だが期待はにべもなく裏切られた。
「なあスカーレット、お前一人で抱え込んじゃダメだぜ。そのままじゃ沈んじまうぞ。あたしは不沈艦だから大丈夫だけどな!」
ゴールドシップは「スカーレットの真似ー、ブクブクブク」などと言いながら遊んでいる。
人を小馬鹿にした姿に、しかしダイワスカーレットは咎めることができない。それよりも聞き捨てならないことを言われたからだ。
「何言って、それにアタシは別に抱え込んでなんて。だってこれは、アタシの、問題だし……」
抱え込んでいると言っているようなものだった。
「自分の問題だったら相談もしちゃダメなのか? もう散々助けて貰ってるんだからいい加減素直になれよなー」
「それは……って何でアンタにそんなこと言われなくちゃいけないのよ! アタシはここまで自力で何とかやってきた! これからもそう! ……パパとママだって、アタシ一人で何とかしてみせるわ!」
ダイワスカーレットの夢の記憶はさらに鮮明化が進み、ほとんど現実と見分けが付かなくなっていた。
認識的に区別はついているが、それでも気を抜くとアグネスタキオンとトレーナーのことを実の家族と思いそうになる。
今だって無意識にパパ、ママと言っていた。
「そう思うのは勝手だ。でもな、あたしはニンジャだから大丈夫だけどお前は誰かに頼れ。そうそう、ウオッカにも宜しく言っとけよー、あいつお前のことメチャクチャ心配してっからさー」
「何よ……そんなの、言われなくても分かってるわよ……」
「あそ、んなら良いや。それじゃあゴルシちゃんは銀の鍵を探すのに忙しいからもう行くぜ。じゃあなー!」
こちらの反応を見もせずに、ゴールドシップは階段を降りて消えていった。
好き勝手に言いたい放題かまして、何なのよアイツは。
「だって仕方ないじゃない……アタシしかいないんだもの……助けてくれるなら、助けて欲しいわよ……パパ、ママ……」
ゴールドシップが示したようにポストにはヒントがあった。目的の人物の、外の住所が書かれている郵便物がはみ出ていたのだ。
ダイワスカーレットは、はみ出た郵便物を引き抜いて、書かれている住所を見ることが犯罪だとか、悪いことだとか、そんなことを考える余裕をなくしていた。
ただ、母親を助けるために、母親がいなくならないことだけを考えていた。
その母親がどちらのことを指しているのか自分でも分からなかった。
携帯の地図アプリで住所を確認する。思ったより近い。これならまだ間に合うか。
外の道路を走るなら靴を制服用の革靴から舗装道路用のものに変えなければ速度が出ない。衝撃による負担も、疲労も段違いだ。
だが、ママ居なくならないで、という思いだけで動いている今のダイワスカーレットは、荷物をその辺に投げ出すと着の身着のままで遮二無二駆け出していった。
もういやや
こんな険悪なダスカとウオッカは書きたくない
休暇が終わったのでスピード落ちます。