モルモット君
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助手兼モルモット君
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助手君
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旦那くん(やらかしたときはモルモット君)
アグネスタキオンはメジロ系列の研究機関で働いており、研究内容や立場もろもろのせいで割と忙しい。だが、研究は大事だがかわいい娘も大事なので、出来る限り在宅ワークを増やすようにしていた。
こういう時、自分で裁量権を持っているとやりやすい。米国で博士号を取るときに今までの研究成果を開示して、頂くものは頂いたとばかりにさっさと取得した経歴は伊達では無い。なにより実績もある。
やりにくい環境は経歴と実績で殴って変える。権利はもぎ取るものだ。
在宅ワークの経緯はともかく、今日はミーティングがある日だった。
旦那くんは担当しているウマ娘のレースに行っていて不在。夕方過ぎには帰ってくるだろう。それまでは、家には自分と娘の二人きりだ。
娘はウマ娘だった。ダイワスカーレットという名前を持っていた。
この娘が生まれてくるときは不思議なことに、検査で発覚する前からウマ娘だという確信があった。
お腹にいる第二子にはそういう勘が働かないので違うかもしれないが、それもまた良いだろう。どちらにせよ可愛い我が子であることに変わりは無いのだから。
アグネスタキオンは、自分が我が子を自然と愛せることに感謝していた。また、自分のもとに生まれてきてくれたことに感謝していた。
学生結婚し、学園を卒業後はすぐに留学。怒涛の勢いで博士号を取得した後、帰国して同居、うまぴょいして出産。地獄のイヤイヤ期を夫と二人で乗り越え、今に至る。小学校では無事に友達もできたようで何よりだ。気苦労も多いがそれも楽しみの一つ。こんなふうに考えるなんて、学生の頃の自分に伝えても信じないだろう。
今日はそんな可愛い我が子と一緒にお留守番だ。
本当は、ミーティングの予定があったので、ママ友(というかパパ友)の逸見さんの所で午前中だけ預かってもらう予定だった。しかし、あちらも急な予定が入ったとかで預かれなくなってしまったのだ。
自分もそうだが、皆休みの日なのに忙しいなと思う。
時折面倒を見てもらっているアグネスデジタルも今日は仕事だった。
ダメなものは仕方がない。
キャロットマンを見せれば大人しくしてくれるだろう。いや、ウマキュアだったか? 流行り物に疎くていけないな、と思った。こういうのは旦那くんの方が得意なのだ。
結論からいうと、テレビを見せて管理するというアグネスタキオンの目論見は外れた。
ダイワスカーレット(6歳)的には、今日はテレビの日では無くママと遊ぶ日だったからだ! ダイワスカーレット(6歳)はママ大好きっ子なのだ!
やはりというか案の定というか、ミーティングには集中できない。別に受け答えの質が下がる訳ではないのだが、探検と称してあっちこっちでガサガサしている姿を見ると怪我をするのではとヒヤヒヤする。
先程、台所に突入して皿を引っ張り出したときは流石に離席した。
好奇心があるのは自分の娘として誇らしいが、目につく所でやって欲しいのが本音だ。
それから、娘は2階に行きたいと言い出したので許可した。本棚や実験器具等の危険物や重量物がある部屋には鍵をかけてある。せいぜいが行けて寝室くらいなので、階段を登るときはしっかり手すりに捕まるようにと言い聞かせた。
これで集中できると席に戻ったのだが、暫くして娘が駆け寄ってきた。忙しなさに苦笑して、画面の向こうのメンバーに断りを入れると退席した。話し合うべき内容は丁度終わったので問題ない。
駆け寄ってきた娘は手に一枚の写真を持っていた。
「ママ! ママ! 見て見て! パパとママ!」
ダイワスカーレット(6歳)は手に持った写真をほらほらと揺らしている。
これでは見れないよ。
アグネスタキオンは娘を抱き上げ膝に乗せた。
「おやおや……、これは懐かしい。どこで見つけたんだい?」
「クローゼットの、パパの鞄の中! ね、ね、ママの髪短いのね! とってもかわいい!」
膝の上に乗せられたダイワスカーレット(6歳)は、写真をアグネスタキオンに渡すやいなや、顔を胸に押しつけ短い両腕を母親の背中に回した。ママ大好きのポーズだ。
アグネスタキオンは娘が持っていた写真を見た。これはURAファイナルズを優勝した後に研究室で撮ったものだ。今より髪も短く、青い若さがある。袖が長いな、と微笑んだ。
懐かしい。それほど昔でもないのだが、アグネスタキオンは自然と過去に想いを馳せていた。
今の旦那くん、カフェやシャカール、色んな人と出会い、駆け抜けたあの頃を。
チッチャイワスカーレット(6歳)
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7年後の色々デッカイワスカーレット(13歳)
「ここがトレセン学園。パパとママが出会った場所ね!」