転生したらTSして翼生えてて、おまけに実験体だった   作:マゲルヌ

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15話 モンスターがいっぱいだ

○月△日

 

 現在、修道院からサンタローズを目指して北上中である。

 父さんが無事なら一度くらいは故郷に戻っているだろうし、住民に何か言伝を頼んでいるかもしれない。というか今もサンチョさんがいるかもしれないし、最悪二人ともいなくても、自宅に勇者の手がかりが残っている可能性もある。しばらく逗留して、父さんの日記やら資料やらいろいろ調べてみるつもりだ。

 

 その道中にある娯楽の街・オラクルベリーには明日辺り到着できるだろう。あそこはあらゆる人や物が集まる、北大陸随一の都市だ。いろいろと他では聞けない情報も集まってくるし、ここでちょっと勇者について情報収集してみるのもいいかもしれない。

 

 

 早くみんなと再会するためにも、明日からも真面目に頑張るぞ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

○月◎日

 

 ――カジノ! 超楽しいいいいいいーーーッ!!

 

 

 いやー、まいったね。初めて生で見るカジノに興味が湧いて、ちょっと試しに入ってみたら見事にハマってしまった。

 適当に買ったコインを適当にスロットにブッこんでたら、あれよあれよと10000枚まで増えちゃった。ビギナーズラックここに極まれり。これまでの人生いろいろと不幸に見舞われてきたが、ここに来てついに幸運の女神が微笑んでくれたらしい。今なら誰にも負ける気がしない! この勢いでジャンジャン稼いで、カジノの景品を全部制覇してやるぜ!

 景品には強力な武器・防具がいっぱい揃っているので、この先強大な敵と戦うことを考えれば、ここで装備を万全に整えておくのは悪くない。いや、むしろ積極的にやるべき方策だろう。つまりこのカジノ攻略は遊びではなく、世界平和のための尊い下積み作業に他ならないのだ!

 

 フフフ、見ていろよ? 溜め息吐いていたリュカの呆れ顔も、明日には尊敬100%の視線に変えてやるぜ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(朝帰り後、追記)

 

 やっぱり楽して一発当てようなんて良くないね。人間、真面目にコツコツ地道に頑張っていくのが一番よ。

 

 

 ……だからリュカ、その冷たい目線はやめてください。

 大丈夫、元本は割れてないから、安心して? ……許して?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

○月□日

 

 心機一転、今日は旅に必要な物を買い揃えた。(やいばのブーメラン、てつのよろい、てつかぶと、等々)

 その途中で、『モンスターじいさん』と名乗る変わり者の噂を聞いた。なんでもこの爺さん、街の中で魔物を飼い、なおかつペットのように手懐けているらしい。

 興味を持って会いに行ってみれば、なんと彼は魔物の邪気を祓い改心させる能力を持っているそうだ。そして彼曰く、リュカも同じ力を――いや、爺さん以上に強力な力を宿しているのだという。

 なるほど、キラーパンサーであるプックルと仲間になれたのもそういう理由だったのか。

 

 リュカの力は他の魔物にも有効らしく、キラーパンサー以外にも様々な種族を仲間にできる可能性があるそうだ。

 これはやってみる価値アリだ。『戦いは数』とも言うし、成功すれば戦力の増強にとても有用だろう。教えてくれた爺さんには感謝しなければ。

 

 

 

 

 

 

 ……だが、俺をモンスターと間違えやがったことはしばらく許さない。

『狂暴なハーピーが懐くとは大したものじゃ! これからも大切にしなされよ、少年』じゃねえわ! 誰が鳥頭だッ!

 

 

 ――リュカも嬉しそうに頷くんじゃない!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

○月Λ日

 

 おかしい、魔物が全然仲間にならない……。

 爺さんから聞いた方法――『殴り倒した後に優しく仲間に誘う』という、ヤクザもびっくりな勧誘方を朝からずっと試しているのだが、一向に懐く気配がない。

 

 肉体の強さを示すために素手でやっているし……。

 本人じゃないとダメかもしれないので、俺は手を出さないようにしているし……。

 当然殺しては意味がないので手加減もしているのだが……。

 

 爺さんの言う、『仲間になりたそうにこちらを見ている』現象なんてひとっつも起きない。みんなまるで、宇宙的恐怖に遭遇したように逃げていってしまうのである。

 一体どういうことやろか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

○月§日

 

 ……忘れてた。俺、“魔族絶対殺すマン”だった。

 

 そりゃ怖がってどんどん逃げていくはずだよ。俺の中にいるアレの怖さを、野生の本能で敏感に感じ取っていたのだろう。つまり、昨日一日の無駄骨は全て俺のせいってことだ。

 ……スマン、爺さん。バニーさんとの二人暮らしにイラっとしたのもあって、つい強めに抗議(物理)してしまった。後で菓子折り持って謝りに行かねば……。

 

 

 

 ――というわけで、試しに俺が遠くへ退避してみたら、昨日までの反応が嘘のように魔物が懐いた。さっきまで殴り合っていたリュカに向けて、まるで古くからの親友のように身体を寄せている。

 俺がいないだけでこの落差よ……。そんなに怖かったのか。

 

 今回仲間になったのは、ドラゴンキッズとスライムナイトの二体。それぞれ『コドラン』、『ピエール』とリュカが名付けた。ご主人様からの最初の贈り物に、二人とも大喜びで大変微笑ましい。

 

 なので、『この勢いで俺も仲良くなれるやろ!』と近付いたら、お約束通りに失敗した。

 コドランには思い切り手を噛まれ。(お前もか……)

 そしてピエールは、挨拶の最中ずっと真っ青な顔で震えていた。

 ああ、理性で恐怖を我慢してくれたのね? さすがは紳士だ、どうもありがとう。……正直、その方がダメージありますけど。

 

 まあこればっかりは仕方ない。これから長い付き合いになるんだし、少しずつゆっくり慣れていってもらえば良いだろう。

 プックルだって最後の方には『ゴミ』から『置き物』くらいには扱いを変えてくれたんだし、こいつらもきっとなんとかなるはず。

 

 

 

 

 

 ――ってところで、オラクルベリーでの用事は今日で終わり。明日はいよいよサンタローズへ向けて出発だ。

 マスターやジェシカさん、道具屋の親方たち、7年経ってみんなどんな風に変わっているのか、 今からとても楽しみだ。

 

 では感動の再会を楽しみに、今日はこの辺でおやすみなさ~い!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 …………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ………………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……………………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

●月□日

 

 ……はい、来た。……分かってた。

 毎度のごとくパターン化していましたが、今回もついに来ましたよ。不穏な空気が来ましたよッ。

 

 今朝方宿を出ようとしたとき、俺らの部屋に鎧姿の連中が押し入ってきた。すわ『強盗か!?』と思いきや、なんと奴ら普通にオラクルベリーの兵士たちだった。『犯罪の疑いがあるので詰所まで同行しろ』だとさ。

 ――おいおい俺が何したってんだよ、ふざけんな!

 と一瞬思ったが、よくよく考えれば心当たりはないでもない。

 

・街でナンパした女の子が貴族令嬢だった件か?

・カジノでイカサマ客をブッ飛ばして、諸共出禁食らった件か?

・それとも、無許可で路上ライブ(アカペラ)やって小銭を稼いだことか?

・はたまた、因縁つけてきたチンピラから金を巻き上げたことか?

 

 ……こうして羅列してみると結構いろいろやってんな、俺。

 これらが理由ならば声高に『冤罪だ!』と主張もできず、リュカともども詰所まで連行されちゃった。道中での弟の呆れた視線が痛かったぜ。

 

 そして今は牢屋で執筆なう。

 まったく、これで何回目の牢屋だよ……。

 もはや実家みたいな安心感だよ、コンチクショウ。

 

 

 

 魔物といっしょだと因縁付けられそうだったので、ピエールたちは気付かれないように街の外へ逃がしておいた。

 気のせいかもしれんが、なんかあいつらも呆れていた気がする。

 

 …………気のせいだよね?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

●月△日

 

 わ・け・が・分・か・ら・んッ!!

 一晩待ちぼうけを食らい、ようやく今日になって取り調べみたいなのが始まったわけだが……、全然話が噛み合わない。

 

 まず第一声が、『お前は7年前、王子誘拐を企てた一味だな?』――だよ?

 ……いや、はあああッ!? 何言ってんのッ? お宅の王妃が義理の息子誘拐して殺そうとしたんでしょ!? 冤罪はやめてくださる!?

 って言っても全く取り合ってくれないし。

 さらには『お前たちが主犯のパパスに協力したことは調べが付いている! 諦めて白状しろ!』と来たもんだ。

 

 …………いや、もうね? 思わず首を捩じ切ってやろうかと思った。

 言うに事欠いてこいつら、父さんを犯人扱いしやがった。命がけでヘンリーたちを守って重傷を負った父さんを、口汚く侮辱しやがったのだ。

 もう勢いのまま、部屋の中の連中皆殺しにしてやろうかと思ったよ。

 

 

 

 ――だって兵士たち全員モンスターだったし……。

 

 

 

 勇者の技能なのかな? 擬態していたけど気配ですぐ分かった。詰所の中の兵士たち、結構な割合で魔物が混じっている。そして人間たちはそれに気付いていないっぽい。(態度があまりに普通過ぎる)

 この事実が逆に俺を冷静にさせた。こりゃ明らかに異常事態だよ。さっさと皆殺しにして脱走しようかと思ったけど、ちょっと情報収集をした方がいいかもしれない。

 

 

 …………。

 

 あと、今までヘンリーのことを忘れていたのがちょっと罪悪感。あのときゲマ以外は全て殺したから安心していたのだが、この分だと平穏無事ではなかったのかもしれない。

 せめてあれからどうなったのかぐらいは知っておいてやらないと、再会したときにちょっと気まずい。

 

 つーことで、これよりスニーキングミッションを開始します。

 牢屋の天井をスパッと手刀で斬り落として、天井裏から気付かれないように脱出 & 盗み聞き行脚スタート~~。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

●月×日

 

 …………いろいろ新情報があり過ぎて、今はちょっと混乱中だ。

 でもまず最初に、一番重大な報告事項を述べておく。

 

 

 

 ――ヘンリーと王様は7年前に賊に殺され、今は王妃が女王として即位し、国を治めているらしい。

 …………たぶん二人は、魔族の手で殺されたんだと思う。

 

 

 ………………。

 

 

 うん、大丈夫。これくらいで動揺したりなんかしない。

 仲間と死に別れることなんて奴隷時代にもう何度も経験してきた。今さら珍しくもないことだ。大丈夫。大丈夫。

 

 それよりも今は、これからのことを考えないと。

 王妃が即位したという話だが、魔物が内部にいる状況から見てどう考えても偽物だろう。俺が殺したあいつの代わりに、後任の人員が送り込まれてきたのだろうか? ゲマの様子を見る限り、もうラインハットには興味がなくなったと思っていたのだが……。

 今は国名を『神聖ラインハット帝国』と改め、国内では重税・強制徴兵などの圧政を。そして国外に対しては、着々と侵略の準備を進めているらしい。大国を後ろから操り、人間社会を混乱させるのが狙いだろうか? 相変わらず陰湿な手を使いやがる。

 

 

 だがしかし、民衆の方もただやられるだけではない。

 圧政に反発した兵士たちが中心となって西の方へ逃亡し、『ラインハット解放戦線』というレジスタンスを結成して国と戦っているそうだ。今はだいたい、ライン川の関所の辺りで勢力圏が二分されている感じかな?

 一般の兵士が国を相手取って戦うだなんて、ヘンリーたちが殺されたことがよほど腹に据えかねたみたいだ。

 

 

 

 やっぱりあいつ、部下には結構慕われてたんだな。生きていれば本当に、良い王様になれたかもしれないのに。

 

 

 ……クソが、一体誰がやりやがった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

●月◇日

 

 知りたいこともだいたい知れたので、とっとと壁を蹴破って脱走した。もう指名手配されてるんだったら、今さら大人しく行動しても意味ないしね。

 他の部屋に捕まっていたリュカと合流して(※リュカも自分で牢を蹴破ってた。偉い!)、二人で兵士たちを殴り倒して脱出した。

 

 ただし、兵士はモンスターも含めて誰も殺していない。事情を知らない善良な兵も多いだろうし、リュカには人間と魔物の見極めができないから、とりあえずこの場では殺しは無し。

 代わりにヘンリーを殺した野郎だけは、草の根分けても探し出して八つ裂きにする予定だ。俺のダチに手を出したことを、骨の髄まで後悔させてから滅ぼしてやる……。

 

 

 ――とはいえ、ひとまずは当初の予定通りサンタローズまで行くことにする。下手人を見つけるにしても国と戦うにしても、まずは7年ぶりの故郷で少し骨を休めたい。

 久しぶりに長閑な村の空気に浸るのが、今からとても待ち遠しい。

 

 

 

 

 

 

 ……どうか村のみんなは、あの頃と変わらず元気でいてほしいな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 …………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ………………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……………………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ●月◎日

 

 …………こんなこともあるんじゃないかとは、心のどこかで思ってはいた。

 ヘンリーのことを知ったとき、当たり前のものが突然喪われることもあるんだって……、ガツンと思い知らされたから。

 

 

 

 でもさ。

 まさかこんなことになるなんて、予想できるわけないだろ?

 

 あの辺鄙で長閑な村が――

 何もないけれど、でも穏やかな空気が何よりも心地良かったあのサンタローズ村が――

 

 なんで、

 

 

 

 

 

 

 なんでッ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 なんでこんなに都会になってんのおおッ!? 懐かしさがゼロなんだけどおおおおッ!!

 

 

 西ラインハット王国首都、サンタローズ!?

 

 ラインハット解放戦線本部基地!?

 

 

 

 ――意味不明なんだけどッ!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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