転生したらTSして翼生えてて、おまけに実験体だった 作:マゲルヌ
(左ページの続き)
混乱した俺たちが街の入り口で騒いでいると、衛兵と思しき者が駆け寄ってきた。
『しまった、オラクルベリーに続いてここでも捕まってしまう!?』と焦ったのも束の間……。意外にも彼は丁重に案内してくれた上、『久しぶりに来た方は大抵驚かれるんで、我々がこうやって説明してるんスよ』と“村が大きくなった理由”を解説してくれた。(※彼もラインハット解放戦線のメンバーらしく、ここの内情には詳しかった)
なんでもこれは、戦線の創始者が言い出したことらしい。
――『奴らはパパスさんを誘拐犯に仕立て上げた。ならその拠点であるサンタローズにも卑劣な真似をするかもしれない。守りを固める必要がある!』と言って、戦線のメンバーを派遣して防備を固めてくれたのだ。
そしたら案の定、ある日新女王の配下たちが攻めてきて、彼らは見事これを撃退した。その後も面子を潰された女王は襲撃を繰り返したが、戦線はその都度戦いながら村の防備を拡大(防壁とか堀とか)していき、いつしかサンタローズは、戦線の一大防衛拠点として発展していった――という流れだ。
この話を聞いたとき、俺は思わず背すじが凍った。もしかしたら知らない内にサンタローズが滅ぼされ、皆が殺されていたかもしれないのだ……。
ホント、リーダーの人には大感謝だわ。父さんのことを信じてくれて、さらに故郷まで守ってくれたんだから。しかも彼は住民の心情に配慮して、元々の村部分には大きく手を加えず残してくれていた。(※旧市街と新市街が綺麗に分かれている感じ)
懐かしい村の景観と我が家を見たときは、俺もリュカも思わず胸に込み上げるものがあった。
なので『ぜひお礼を言いたい』ということを兵士さんに伝えてみたら、『それは本人も喜ぶと思うっス! ぜひ抱き締めて感謝してあげてほしいっス!』と、近い内に会う機会を設けてくれることになった。
本当に面倒見良いな、この人。
故郷も含めてこんなに世話になったんだし、偽女王一派との戦いに俺らも何か協力できないかな?
◇月〇日
……ヘンリー、生きてたわ。
しかも戦線のリーダーもあいつだった。
生きてることが敵にバレたらまた狙われるから、噂通り死んだことにして身を隠していたんだって。わー、すごーい! びっくりーー!
…………。
………………。
……いや、しゃーないやん?
死んだと思ってたあいつが急に部屋の奥から出てきて、ふっつうに『よ、二人とも久しぶり!』なんて軽く言うんよ?
そりゃこっちはリアクションに困るよ。思わず二人して固まったよ。
……つーか軽く泣いちゃったよ!
もうホントさあッ! 死んだって聞かされたとき、こっちは割とガチで落ち込んだんだからああ。そりゃ生きててくれたのは嬉しいけど、あんまり心臓に悪いサプライズはやめてよおおお。
――と、ひとしきり文句を言い終わったところで、なんとか涙を拭いて再会の握手をした。ちゃんと体温を感じて、生きていることを実感してようやく一安心。
そこでもう一回泣きそうになったけど根性で堪えた。ヘンリーが笑いやがったので一発殴っておいた。反省しろ、この野郎。
その後、ヘンリーは軽い態度を収め、俺たちに7年前のお礼を言ってきた。命を助けてくれたこと、そして、父親と和解できたことについて。
いっしょに逃げてきた王様とは、その後も折を見て何度も語り合い、親子の蟠りは完全に無くなったそうだ。今は少し離れた場所で静養しているらしく、時間があるときにちょくちょく会いにいっているみたい。『こういう関係に戻れたのもお前たちのおかげだ』と照れくさそうに礼を言われれば、俺たちとしても頑張った甲斐があった。
そして次に、謝罪をされた。
父さんが自分のせいで生死不明になってしまったことについて。それなのに自分だけ父親と幸せな時間を過ごしていることについて、深々と頭を下げられた。そこにはヘンリーの、本心からの慚愧の念が感じられた。
なので俺は、真心を込めてもう一度頭をひっぱたいてやった。
『親子が幸せな時間を過ごすのに罪なんかあるか!』と怒鳴ったら、一瞬ポカンとしたけど、その後消え入るような声で『……ありがとう』って。
……ああ、もう……あんな風に泣きそうな顔で言われたらホント困る。リュカに助けを求めても、あいつも困ったように苦笑するし。
しゃーないから、兵士さんに言われたようにガバっと抱き締めてやった。『よく頑張った。故郷を救ってくれて本当にありがとう』って。
こういう真面目な空気は俺のガラじゃないけど、感謝しているのは本当だし、ヘンリーも少しは元気が出たようなので、まあ良しとしよう。
ただ、『……トム、グッジョブ』とは一体何のことだろう?
そしてリュカが、“微笑ましそうなのに眉間に皺”という謎の表情になっていたのもなんでだろう? ……思春期の男子とは難しいな。
◇月×日
昨日は結局、ヘンリーとの昔語りでほぼ徹夜してしまった。
なので今日は昼まで寝た後、骨休めにちょっと村を回ってきた。リュカと一緒に昔の知り合いを訪ね、『帰ってきたよ』と挨拶回り。道具屋の親方や武器屋のオヤジ、酒場のマスターやジェシカさん、教会の神父様やシスターと旧交を温めてきた。久しぶりの再会でもみんな笑顔で迎えてくれて、ようやく故郷に帰ってきたって感じがした。
結局村には父さんもサンチョさんもいなくて、そこだけはちょっとガッカリしたけど……。
皆に父さんのことで励まされたり、魔物を連れていることに驚かれたり、俺の成長ぶりにも驚かれたり、でも発言すると残念な目で見られたり……。昔と変わらぬ優しい反応にホッとする。
唯一のショックと言えば、初恋相手のシスターとジェシカさんが子持ちになっていたことくらいだけど……。ていうか、おい、マスターはともかく神父様は子ども作って良いんかい!
……良いらしい。なんと寛容な神様だろう
そして女性陣には俺まで結婚を勧められた。『子どもはいいよー』って言われて赤ちゃんを抱っこさせてもらって……、うん、確かにこれは可愛い(ほっぺたプニプニ)。いつかは自分も欲しいとは思う。
『――でもまだ生やす方法は見つけてないしなあ……。彼女をゲットする目処も立ってないし……』
なんてぼやいていたら、『アンタまだ諦めてなかったのッ?』とジェシカさんに呆れられた。皆も、『なんという無駄美人』、『それほどのモノを持ちながら……』、『リュカ、頑張れよ』などと、口々にツッコんでくれた。昔を思い出してもう一度ほっこりである。
……うん、やっぱり故郷って良いね。たくさん元気もらえた。
早く父さんたちを見つけて、今度は家族みんなで戻って来よう。
◇月Λ日
本日は懐かしい顔を発見。村の広場で子どもと遊ぶベラを見かけたので、ちょっと声をかけてきた。
『え? アンタまだ私たちのこと見えてるの? ……やっぱり、賢さの数値が……』とか言いやがったので、アームロックをかけてやった。
――泣いてワビを入れたので許してやった。
なんでもこいつ、今でもサンタローズにちょくちょく遊びに来ているらしい。昔より都会になって観光場所もできたから、暇潰しにはもってこいなんだとさ。……おかしい、立派な妖精になるための修行をしているはずなのに、“暇”とは一体?
だが、子どもたちの遊び相手になってあげている点は評価できる。
もしかしたら思考が同レベルなだけかもしれないが、世話してくれていることに変わりはない。なのでここは俺も、村の大人として協力してあげた。妖精が見えるピエールとコドランも呼んできて、みんなで楽しく鬼ごっこに勤しんだ。
久しぶりに童心に帰ることのできる、とても有意義な時間だった。
後日、『ルミナは見えない誰かと話す不思議ちゃん』という不名誉な噂が立っていてとてもへこんだ。
そしてリュカには、『昔からそんな感じだったよ?』と素で言われてもう一度へこんだorz
◇月△日
父さんの手記を漁っていたら、興味深い記述を発見した。どうやら父さんは昔、旅の途中で見つけた重要アイテムを洞窟の奥に隠したらしい。
そういえば時折、本来の入り口とは違うところから洞窟に入っていくことがあったな。当時は『何かエロいものでも隠しているのかな?』とワクワクしたもんだが、なるほど、勇者関連の何かだったのか。
ということで、入り口を管理している爺さまに頼んでそこに入らせてもらった。7年ぶりでも変わらず元気で安心したよ、じいちゃん。
そしてビックリ。
洞窟の奥にあったのは……なんとなんと!“天空の剣”だった!!
そう――伝説の勇者の剣。物語の挿絵にも描かれているそのまんまの、使いづらそうなあの剣だったのだ! いや、なんだあの持ち手と刃先、くっそ邪魔なんだけど!
なぜこれが本物か分かったのかというと、リュカやピエールにはうまく扱えなかったからだ。持ち運ぶくらいはできるのだが、柄を握って振ろうとすると途端に重くなって地面にズズンと落ちる。少なくとも形だけ模して造ったレプリカの類ではないようだ。
………………。
えー、そして……。まあ予想はしてたけど。
はい、俺には簡単に振り回せました。普通の剣より多少扱いづらい感覚はあったけど、十分実戦で使えるくらいには素早く振れた。
くそぅ……、これで俺が“勇者的なナニカ”っていうのが完全に確定してしまったじゃないか。ワンチャン、ゲマの勘違いっていう可能性に期待していたのに、これで完璧に言い逃れができなくなった。こんな得体の知れない力、持ってても何もありがたくないのに。
……だがまあ、物は考えようか。
父さんの資料によると、リュカの母上殿は魔界に囚われていて、そこに行けるのは伝説の勇者だけらしい。つまり、俺ならばそれができるかもしれんということだ。
伝説の剣も半端にしか使いこなせないパチモン勇者だが、他の人よりはまだ可能性があるだろう。今後は残りの伝説の武具を探しつつ、それらを完全に使いこなせるように修行していく、という方向性で良いかな?
……父さんの手紙には、『無理をしてまで探さなくていい。自分たちの幸せを最優先にしてくれ』と書かれていたけど、俺だってそこまで恩知らずじゃないぞ?(※文字が震えていたし、きっと断腸の思いで書いたんだと思う……)
リュカの幸せのためにも母上殿との再会は不可欠だし、世話になった父さんへの恩返しにもなる。俺の全てを賭けてでも、絶対にマーサさんのことは見つけ出しちゃる!
◇月§日
『ビスタ港は俺たちの勢力圏だから、いつでも向こうへ渡れるぜ』とは今朝のヘンリーの談。
どうやら互いの認識に齟齬が発生していたようだ。ヘンリーのヤツ、俺たちが伝説の武具を求めてすぐ西大陸へ渡るものと思っていたらしい。
『いや、まだ行かないから。俺たちも偽女王と戦うのに協力するから』って返したら、ポカーンと口を開けておった。
いやいやいや……。
そりゃ本来の目的も大事だけどさ、さすがにこの状況で友達を放っては行かないよ。どんだけ薄情だと思われてんの。
ていうか村を助けてもらった恩もあるんだし、その分の働きくらいするってば。父さんといいヘンリーといい、ちょっと遠慮というか、過保護が過ぎるんじゃないか?
そしたらリュカまで、『う~ん。姉さんも一応女の子なんだし、戦いから遠ざけたいと思うのも仕方ないんじゃない?』とか言うし。えーい、どいつもこいつも、このナイスガイに向かって何を言ってやがるのかッ。
……こうなりゃ意地でも協力してやる。
ヘンリーを説き伏せた後、兵士さんたちに頼み込んで強引に戦線の臨時メンバーになってやった。『偽女王倒すまで俺たちは一蓮托生だからなッ? もう関係ないなんて言うんじゃないぞ、泣くぞ!』って指を突き付けた。
そしたらリュカとヘンリーめ、溜め息を吐きながらお互いに苦笑しやがった。……おいコラ、なんだその困った子どもを見るような眼は? こちとら一番年上なんやぞ。もっと敬え、思春期男子ども。
そして兵士さんたちも、なんでそんな面白いものを見るような顔になってんの!
部外者が強引にメンバーに加わってきたんだから、普通はもっと反感というか、値踏みするような視線を寄越すモンでしょ。なのになんであっさり受け入れてんの!
その親戚のおじさんみたいな生暖かい視線はなんなのよ、もう!