転生したらTSして翼生えてて、おまけに実験体だった   作:マゲルヌ

18 / 34
17話 作戦のためのあれやこれや

▽月×日

 

 現在、“神の塔”と呼ばれる場所を目指し、オラクルベリーからさらに半島を南下中。ここはすでに敵の勢力圏に近いため少数精鋭のみでの強行軍だが、俺たちのパーティがいれば何の問題もない。

 さっさと“ラーの鏡”とやらをゲットして、偽女王一派をブッ飛ばしてやるぜ!

 

 

 

 

 ――ヘンリーたちはこれまで街や村の防備を固めたり、王都から逃げてきた人たちを保護したり、逆にこちらからスパイを送り込んだりといろいろな活動を行ってきた。しかし、問題が二つほどあって最終段階が手詰まりになっていたらしい。

 

 まず単純に、どうやって奴らを倒すのかということ。

 ここの兵士たちの練度は高く、オラクルベリーで擬態していた魔物程度なら余裕で倒せると思うが、問題は女王の周りの側近魔族たちだった。

 奴らは戦線の活動が本格的になった頃に派遣されてきた上位個体で、その強さは偽女王よりずっと上だ。あいにく現状の戦力では奴らに勝つのは難しく、今まで討伐が先送りとなっていたのだ。

 

 そこへ今回、俺とリュカという新戦力が登場した。ヘンリーの見立てでは、女王の側近の力量はジャミやゴンズと同程度ということなので、今の俺たちなら余裕で倒せるだろう。

 7年前もジャミ単独ならば俺だけでも殺れたと思うし、さらに今はあの頃よりずっと強くなっている(※通常状態でも上級魔法使用可)。その上リュカもかなり戦えるようになっているので複数体相手でも問題なく倒せるだろう。一つ目の問題はこれでクリアである。

 

 

 では後は何が問題なのかというと――『偽女王が魔族だ』という事実を国民に向けて周知する必要がある、ということだった。そのためにはただ単純に偽者を殺すだけでは駄目だ。……仮にヤツを倒したとき死体が魔物形態に戻れば問題ないが、人間に擬態したまま死んでしまえば、我々はたちまち女王殺害の凶悪犯罪者となってしまう。

 ゆえに女王の正体を、言い逃れができない状況で暴き出す必要があった。そのために必要なものが、最近になって所在が分かった神代の遺物――真実の姿を映し出す“ラーの鏡”である。

 今度の国民集会の際に大勢の前で女王の正体を晒し、同時にヘンリーが生きていたことを明かして、このクーデターが正当なものであることを知らしめる。

 

 そしてできれば、本物の王妃とデール王子を救出してその場に連れて来られればベストなのだが……。

 

 実は王妃だけでなく、ヘンリーの弟・デールも偽物に入れ替わっている可能性が高い。潜入している工作員の情報だと、女王が即位してしばらくはデールが苦言を呈することも多かったのだが、あるときそれがピタリと止んだらしい。おそらく彼を邪魔に思った偽女王が、デールのことも捕らえて替え玉を用意したのだろう。

 定期的に姿を写し取る必要があるため、おそらく両名ともまだ殺されてはいないと思うが、それもいつまで続くか分からない。ゆえに二人を見つけて救出することも本作戦の重要目標である。

 

 

 

 ……正直、元凶であるあの女まで助けるのはかなり、…………かなーり気が進まないが。

 作戦をより確実に成功させるには本物の女王が必要なことも確かだ。

 二度とヘンリーたちに逆らわず、かつ馬車馬のごとく一生国のために働き続けるというなら、ギリギリセーフで許してやろう。

 

 

 

 …………もし断ったら、偽者と同じように首を捩じ切ってやる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

▽月□日

 

 神の塔の扉を開くには神に仕える乙女の祈りが必要となる。

 ゆえにシスターに同行をお願いする必要があるため、今日は俺たちが世話になったあの修道院に立ち寄った。なんだかんだでここを立ってからもう一か月以上経つ。久しぶりにマリアと再会し、お互いに抱き合って喜んだ。(あいにくヨシュアは不在で会えなかった。残念)

 

 

 神の塔への同行者だが、なんとマリアが志願して着いて来てくれることになった。まだ彼女は正式に信徒になったわけではないが、毎日のお務めと祈りは欠かさず続けているので、扉を開く資格はあるだろうと院長先生がおっしゃった。

 その証拠に、なんとマリアはこのひと月で『ホイミ』と『スカラ』の呪文を習得したらしい。確か、神への祈りで神官の呪文を授かることがあると聞いたことがある。なるほど、確かにそれなら資格は十分だろう。

 それでもさすがに戦闘は未経験だろうから、俺たちがキッチリと守ってあげる必要がある。マリアには傷一つ付けずにちゃんとここまで送り届けてみせよう。

 明日からまたよろしくね!

 

 

 

 

 

 

 

 

(追記)

 初対面のマリアとヘンリーが、なにやら意味深な視線を交わし合っていた。

 これはまさか、互いに一目惚れして恋が始まってしまったのか!? 確かにお互い美男美女だし性格も優しいし、そうなっても不思議はないけれど。

 ……いやしかし会話内容は特にピンクな感じではなかったし、そういうアレではないのか?

 っていうかよく分からん内容だったぞ。

 

 

『……あなたも、なのですか?』

『……ああ。7年ほど前からだ』

『…………。まだ、ダメですからね?』

『ふふ、どうかな? それはあいつら次第だな』

『ッ! リュ、リュカさん! 頑張らなきゃダメですよ!』

『え……? 何を?』

『だ、だからそれはッ。……ああもうッ、もどかしい!』

 

 

 ……一体何の話なんだろう?

 とりあえず、ケンカしているわけではないっぽいので……いいのかな?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

▽月◎日

 

 修道院で一晩お世話になった翌日、神の塔へ向けて出発した。

 呪文を覚えたとはいえマリアは戦いとは縁遠かった一般の女性。ゆえにこの旅の最中は、我々が万全の布陣をしいて守ってあげなければならない。

 そう思っていた。

 

 

 

 

 

 思って……いたんだけど。

 

 

 

 

 

 ――俺の友達がめっちゃ強くなっていた件。

 

 修道院を出て最初の戦闘が起こったとき、『特訓の成果をお見せします!』と槍を持ったマリアが飛び出し、あっという間に“さんぞくウルフ”と“アウルベアー”を倒してしまった。

 ――あ、あの、そいつらこの辺じゃ結構強い方なんだけど、なんでどっちも一撃で倒せてるの?

 

 そう聞いたら彼女、曇りなき眼でこう言ったの……。

 

『ルミナさんやリュカさんのお話を聞いて、これまで自分がどれほど守られ、ぬくぬくと生きてきたか痛感しました……。ですがこれからは違います。自分の脚でしっかりと大地に根を張り、困難を打倒する力を身に付け、そしていつの日か、力なき人々をこの手で守ってあげたいのです!』

 

 ……そう。いろいろ迷っていた少女は、ついに自らの意志で道を決めたのだ。

 修道院で毎日厳しい修行に励み、世の平和と人々の幸福を祈り続け、そして成長したいつの日か、

 

 

 

 ――立派な“パラディン”となることを、彼女は決めたのだ!! (シスターじゃないんかい!)

 

 

 

『ルミナさんのように、強い女性になりたいのです!』

 

 しかも俺のせいだった!

 

『祈っているだけでは足りないんです。力と拳も必要です!』

 

 どこの求道者だよ! 一か月で進化しすぎだろ!?

 ア、アカン……。淑女の鑑だったマリアが、淑女(※物理)になってしまう。

 しかもその原因が俺とか……、ヨシュアに知られたらメッチャ怒られる!

 明日からはなんとかマリアを説き伏せて、できるだけ後衛に回ってもらうことにしよう。

 

 

 

 

 …………ちょっとだけ、父さんの気持ちが分かったかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

▽月○日

 

 神の塔へ到着。みんなで気を引き締めてダンジョン攻略開始である。

 マリアの祈りは何の問題もなく受理され、塔の入り口は見事に開かれた。

 一階はまるまるワンフロアぶち抜きの広い空間。中央には綺麗な庭園があって、ダンジョンというよりちょっとした観光施設のようだった。

 

 そしてビックリ。なんと庭園に父さん(だいぶ若い)と一人の女性の姿があった。身体が透けていたのですぐに幻とわかったが……。

 神の塔は『魂の記憶が宿る場所』とも言われるそうで、こうして昔の出来事の幻影が見えることがあるらしい。

 なるほど、父さんもかつてここに来たことがあるのかもしれない。すると隣の美人さんがマーサさんかな? 静かで綺麗な庭園で二人きりでデートを楽しんでいたのか。『なかなかやるじゃん、父さん』と思うと同時に、ちょっと鼻の奥がツンとした。

 初めて見る母親の姿にリュカもちょっと切なそうで、二人してしんみり……。

 

 

 しかし、弟の前で姉が情けない姿を見せるわけにもいかぬ。俺は誤魔化すように塔の上を見上げた。

 

 そしたら内部が最上階まで全部吹き抜けになっているのが見えた。

 

 

 ……。

 

 …………。

 

 ………………。

 

 

 

 これ……俺が一気に飛んでって、ラーの鏡取って来れば良いんじゃね?

 

 

 

 ……。

 

 …………。

 

 ………………。

 

 

 ――神の塔攻略は5分で終了した。

 

 

 

 

 マリアが頬を膨らませていた。『むぅ。ルミナさんとダンジョン攻略したかったのに……』って。

 あまりの可愛さに死ぬかと思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

▽月§日

 

 修道院まで戻ったらヨシュアがいた。ちょうど今日、用事が終わって帰ってきたそうだ。

 本来なら再会の喜びを表明するところだが、俺のせいでマリアが淑女(強)になってしまっていてちょっと気まずい。

 

 ――と思っていたら、意外なことにヨシュアはマリアの変化を知っていた。

 ていうか、槍の手ほどきをしているのがヨシュアだった。このひと月、お務め以外の時間は朝から晩までみっちり訓練漬けだったらしい。

 なるほど、そりゃあれだけ強くなるはずだわ。…………いや、それでもひと月でアレは天才過ぎるけど。

 

 ヨシュアもそれは感じていたようだ。最近はいろいろ物騒だし、逞しくなってくれるのは良いことだと思って軽く指導したが、まさか妹があれほどの才覚を持っているとは予想外だった模様。『うかうかしているとすぐに追い抜かれそうだ。俺も改めて鍛え直さないと……』と、焦った顔して語っていた。

 

 リュカが『女きょうだいが強いと大変だよね。分かるよ……』としみじみ頷いていた。

 何を共感しとるんだ、お前は。

 

 

 そしてヨシュアよ、『アレよりはまだ常識の範囲内』とはどういう意味だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

☆月○日

 

 無事ラーの鏡も手に入って、再びサンタローズまで戻ってきた我々。

 

 しかし、なぜだかマリアまで一緒に着いてきていた。

『あの旅だけじゃ全く恩を返せていません。ていうか、アレじゃいろいろと不完全燃焼ですッ。このまま偽女王討伐まで協力します!』って鼻息荒く宣言している。

 ヨシュアも一応付き添いで来ているが、妹のはっちゃけ行動を止める様子もない。

 おい、どういうことだ、お前結構な過保護だったろ。妹がこのままバーサーカーになっちゃってもええんか? 『……こっち方面ならまだ良いかな』ってどういうこと?

 

 そして、あれよあれよという間に兄妹二人も戦線メンバーに加わってしまった。

 いやいや……、こんなに簡単にインしてええの? そりゃ俺たちからしたら信用できる二人だけど、ラインハット勢からしたら完全部外者でしょ? この大事な時期にこんな安易に途中加入させて良いものなのか……。

 

 

 → トムさん:『ルミナさんたちの紹介なら信用できるッス! 他のメンバーもみんな納得ッス!』

 

 

 ……な、なんなんだ、この俺たちへの無条件の信頼は。

 そこまで信じられるようなこと、何かしたか?

 逆にちょっと怖くなってきたんだけど……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

☆月□日

 

 戦力が整い、ラーの鏡も手に入り、近い内にいよいよ反攻作戦がスタートする。その前に今日は大詰めの作戦会議を行った。

 話し合いは御前会議形式で行われ、今回は王様も出席していた。この人とも直接顔を合わせるのは7年ぶりだ。昔より顔色は良くて一安心。

 会議の(しょ)(ぱな)、いきなり頭を下げてお礼言われたのはちょっと焦ったけど……。でもさすがは年の功か、過度な謝罪はされなかった。俺たちがそんなの望んでいないってことを分かってくれているのだろう。代わりに国が元通りになった暁には、父さんを探すのを全力で支援すると約束してくれた。

 

 ありがたい。個人と国とでは使える伝手の量が段違いだ。ぜひガンガン情報を集めていただきたい。

 さらには『このままラインハットに定住しても構わぬよ?』と優しく誘ってくれた。その際は生活費なども支援してくれるそうで、社交辞令とかじゃない、王様の本気の気遣いを感じられた。

 旅の目的があるからと二人で丁重にお断りしたけど、気持ちはとても嬉しい。友人の子どものためにここまで心を砕いてくれるなんて、ホントにええ人や、この人。……ヘンリー、大切にしなきゃいかんよ?

 

 

 

 

 作戦内容についてだが、やることは至ってシンプルだ。

 

・囚われのデール王子と王妃を探し出して救出する。

 ↓

・偽女王の傍に控える魔族たちを倒す。

 ↓

・国民の前で偽女王の正体を明かす。

 ↓

・ヘンリーが名乗りを上げ、王権奪還を宣言する。

 ↓

・城内に紛れ込んでいる魔物を掃討する。

 

 

 とまあこんな感じ。

 言葉にすると簡単だが、実際はいろいろな不確定要素があってかなり難しいだろう。デールたちの居場所とか、側近の力量とか、内部にいる魔物の数とか……、当日行き当たりばったりで決行するにはちょっと不安が残る。

 

 ゆえに、明日からしばらく俺が城内へ潜入する。工作員の手引きで働き手として入り込み、何日かかけて情報を集める予定だ。相手がジャミくらいの力量なら、気配を読まれないように周囲を嗅ぎまわる自信はある。

 その間に他の戦線メンバーにも秘密裏に城下に入ってもらい、中の俺たちとの連絡体制を確立。そして諸々の情報が集まったとき、いよいよ一斉に蜂起して作戦開始、連中を一網打尽にするという流れだ。

 俺たちが協力している以上、戦闘に関する不安要素は一切ない。つまりは勝ち確の作戦ってことだ。

 

 

 クックック、見ていろよ、魔族ども?

 お前たちが下等と蔑んだ人間たちの手で、一匹残らず地獄へ叩き込んでやるッ!

 馬の首を洗って待っていろ、フハーーッハッハッハッハ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ………………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……………………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(追記)

 

 ……ちょっと一言物申したいんだけど?

 

 俺は兵士とか、そういう職種で潜入する予定だったんだけど?

 

 こんな役柄だなんて全然聞いてないんだけど?

 

 ねえ、なんでお前そんな楽しそうな顔してんの? おいコラ、話聞け、この馬鹿王子!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 




あまり話が進んでいなくて申し訳ない。
次回、敵の本拠地に潜入します。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。