転生したらTSして翼生えてて、おまけに実験体だった   作:マゲルヌ

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24話 ちゃんと主張しないとダメ

(左ページの続き)

 

 シリアスがブッ壊れると同時に俺たちの腰も砕けそうになったが、当然敵は待ってはくれない。合成獣(キメラ)らしく悍ましい叫び声とともに突進してきたのを、慌てて散開して躱す。

 

 同時に謎ライオンの様子を改めて観察してみた。

 既知の生物であんな種は見たことはなく、全長も10メートル超えと自然界のライオンではありえない大きさ。さらにはいろいろな生物の部位が雑多に組み合わさった歪な身体。

 十中八九、どこぞの研究所で生まれた合成獣だろう。

 そしてそんなモンを創り出せるヤツなんて、俺の知る限り心当たりは一人しかない。

 

 

 

 ………………。

 

 ――あのマッド野郎めッ! 適当に作った製造物をこんなところに不法投棄してやがった!! 本当にヒトが困ることしかしやがらねえ!!

 

 無関係だと思っていた案件が思い切り関係者の仕業だった。

 別に俺のせいというわけではないのだが、仮に俺の存在がヤツの創作意欲を刺激したのだとすれば、やはり責任の一端くらいは感じるわけで……。

 改めて腹を括り、我々はこの哀れな後輩?を成仏させてやることにした。

 

 この合成獣、サイズは大きいしそれなりの攻撃力はあったが、全体としての戦闘力はさほどでもない。動きは遅いし、全体的に脆いし、呪文なども一切使ってこない。俺が昔倒したグロ系合成獣の方が素早い分まだ強かったレベルだ。

 猪みたいに突っ込んでくるのをヒラリヒラリと交わしながら、避けざま急所へ何度も刃を叩き込む。コドランとピエールの援護のもと、リュカと交代で何回か攻撃を繰り返している内に、あっけなくライオン合成獣は地に伏せた。

 

 よっしゃ、今回はシリアス展開にもならずに楽勝だったぜー!――と、皆でハイタッチ。

 

 

 と、気を抜いたのがいけなかった。 

 死んだと思っていた合成獣は突然首を持ち上げると、最後の力を振り絞るように雄叫びを一声。今度こそヤツの目からは光が消え、同時に、洞窟のそこかしこから獣たちの唸り声が多重奏のように響いてきた。

 ――ボスの仇を取るべく部下がこの部屋に殺到してきた……わけではない。

 連中は何かに取り憑かれたように洞窟の外へと駆け出していった。

 

 そう……この合成獣は単体としての戦闘力ではなく、同型モンスターを操る司令塔として特化した個体だったのだ。

 慌てて外に飛び出ると、洞窟内だけでなくここら一帯の獣型モンスター(※おそらくこいつらも合成獣)が一斉に移動を開始していた。向かう先は当然カボチ村、そしてその先にあるポートセルミの街だ。あのライオンめ、最後に人間を道連れにしようと部下に捨て身の突撃を命じやがった。

 

 慌てて皆とともに群れを追いかけたが、如何せん数が多過ぎる!

 俺が上空からベギラゴンを、リュカが地上からバギクロスを、ピエールはイオ、コドランは火炎の息で追撃するも、敵の範囲が広すぎて中々数が減らない。このままでは街や村がいくつも潰されてしまう。

 

 ――ここはリスクを負ってでも“覚醒”を使うしかないか!?

 

 リュカの咎める視線を感じながら(※半覚醒の方だから!)、俺が覚悟を決めようとした…………次の瞬間だった。

 

 なんと逃げる大軍勢の前方から、これまた大規模な獣の群れが現れたのだ。彼らは暴走する軍団に突っ込むと手当たり次第に攻撃を加え始めた。

 上空から見下ろしていると二つの軍団の違いがよく分かる。合成獣たちが強制的に従わされて正気を失っているのに対し、彼らは理性の光を宿したまま集団として完璧に統率されていた。

 

 間違っても無軌道に暴れる野獣の群れではない。調査中にバッタリ会ってすぐに逃げていた獣は、実は彼らの部隊だったというわけだ。

 そして、“部隊”と言うからには当然隊長がいる。

 森の中で何度も感じた、敵意も殺意もない観察するような……それでいてどこか懐かしい視線。

 

 息せき切って駆け付けたリュカの目の前に、群れを割って現れた大型四足獣。

 顔付きはだいぶ厳つくなってしまったが、リュカを前にしたときのフニャリとした笑顔は全く変わっていない。赤色のリボンが結ばれた首元に手を添えながら、リュカは本当に嬉しそうに涙を流した。

 

「プックル……無事でいてくれて、本当にありがとう……!」

「ガウッ!」

 

 ご主人様と従者は、今度こそ8年ぶりの再会を果たしたのである。

 

 

 

 

 

 

 

 ……え、俺? 当然のごとく手を噛まれましたけど?

 

 HAHAHA、何年経っても変わってなくて安心したわ、この猫畜生めッ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

△月○日

 

 昨日は残敵の掃討に時間を取られてしまい、結局プックルと腰を据えて話せた(?)のは今日になってからだった。リュカの通訳のもと、あいつのこれまでの道程を聞いてみるとだいたいこんな感じ。

 

・ゲマとの戦い後、仕方なくサンタローズへ帰ることにしたが、残念ながらサンチョさんとは入れ違いに。誰かに話を聞こうにも当然会話はできず、それどころか野生の魔物と間違われて戦いになってしまうかもしれない。ゆえにしばらくの間野生で生きることを決意。

 

・修行を目的としたラインハット大陸を巡る旅を開始し、ときおり解放戦線の人たちを手助けしながら魔族たちを撃退。そして実力が付いた数年前にこの西大陸へ。(※アルカパの西から泳いだらしい。すげえ!)

 

・同じように修行を続けていたある日、“アレ”とその部下たち(※たぶんこいつらも合成獣)が人間の集落を襲うところにバッタリ遭遇。合成獣のことは知らなかったが、一目見てすぐにヤバイ存在だということは理解できた。

 

・プックルは争いに乱入して奴らを撃退。さらには森の中で襲われていた野生動物たちも助け、いつの間にか彼らのリーダー的立ち位置に……。以後、今日まで群れを率いて合成獣軍団と戦い続けてきた。

 カボチ村でまだ犠牲者が出ていないのは、プックルたちが密かに守っていたから。村人にとって彼らは害獣どころか、命を救ってくれる守り神であったのだ。

 

 ――以上が、キラーパンサー・プックルによる8年間の戦いの軌跡である!

 

 

 

 

 ………………。

 

 ウチで飼ってた猫が、いつの間にかヒーローになってた件。

 

 ……いや、冗談抜きですげえわ、コイツ。スピンオフ作品一作書けるくらいの活躍してた。しかも父さんの剣をちゃんと回収して手入れまでしているという、そつの無さよ。

 リュカはまた感激して頭をわしゃわしゃ撫でるし、ピエールとコドランも心なしかキラキラした目で先輩を見るし。

 

 そのまま始まる新旧仲間モンスターによる親睦会。プックルは昔から気難しいところがあったのでちょっと心配だったが、同じ主人に魅了された者どうしすぐに打ち解け合ってじゃれていた。

 それどころか、自分がいない間にリュカのサポートをしてくれてありがとう、と感謝までしていたようだ。

 先輩風を吹かせることもなく、主を守ってくれたことに本心から感謝する。なんと器の大きい成体(おとな)に成長したのだろうか。こいつとは馬が合わない俺でも素直に称賛である。

 

 

 

 なので大人になった記念として、そろそろ噛み癖も治してくれへんかなー?

 つーか、今の体躯でやられたら骨がいきそうなので、そろそろ本気でやめてもらいたいんやけどー?

 と、いうことを冷静に懇々と諭してやった。

 

 今の大人で冷静なプックルさんなら、きっと大らかな心で聞き入れてくれるはず……!

 

 

 

 ――返答は頭への丸かじりだった。

 

 うん、やっぱり全然大人になってなかったわ、コイツ。

 クソガキ駄猫や。なんか安心した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

△月Λ日

 

 カボチ村に帰還した。

 死傷者ゼロ、建造物被害なし、真相の解明と合成獣軍団の完全殲滅。

 最高の形で事件を解決しての凱旋である。

 

 

 

 ……なのに。

 

 

 それなのに!

 

 

 はーーッ! やっぱりアカンわ、田舎モンは!

 

 よりによって村を守っていたプックルを犯人と勘違いし、あまつさえ俺たちがグルになってマッチポンプしたとか言い出しやがった。

 しかも全く聞く耳持たねえ!

 なーにが『なーんにも言うな』だ。なーんにも考えてねえカラッポ頭で偉そうにしてんじゃねえわ!

 

 リュカは何も言わずに非難に耐えていた。プックルたちも主人を差し置いて勝手なことはしない。唸り声を上げて威嚇することすらしていなかった。

 ……分かっている。ここで頭に血が上って暴れてはいけない。強い力を持った者が、世界を救うべき勇者が、一般市民相手に暴力を振るうなどあってはならないのだ。

 

 

 だから。

 

 

 だから!

 

 

 

 

 俺はなーんの遠慮もなくスピニング・トーホールドをかけてやった。

 

 ……え? 世界を救うつもりもなければ、本物の勇者でもありませんけど?

 そんな俺に品行方正に振舞う義務なんてあるわけないでしょ。良い子の弟と従魔たちが黙って耐えているなら、その憤りを代行してやるのが姉の責務なのだ。

 勝手なことばかり言う村長以下数名の足首をぐでんぐでんにしてやって、前金も含めて3000ゴールドを顔面に叩き返してやった。

 最後はなぜか、必死なリュカが俺から村人を守るという逆転現象が起きてしまったが、まあスッキリしたので良しとしよう。

 

 

 

 

(追記)

 村長の奥さんや表にいたお婆さんは、俺たちを信用して男どもに説教してくれた。いやー、感謝感謝ッス。

 やっぱり田舎はのどかで良いトコですね! また遊びに来ますわ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

△月☆日

 

 カボチ村を出て道なりに進み、『ルラフェン』に到着した。

 特に目ぼしいものがある街ではないが、とりあえずいつものごとく酒場へGO。

 ……いや、別にナンパ目的じゃないよ? 毎回必要な情報収集ルーチンなので。

 

・カボチ村はクソですね。        → だよな!(一部除く)

・世界のどこかに天空へ通じる塔がある。 → なんぞ、それ?

・神様はとっくの昔にいなくなった!   → 同感! 光の教団みたいなクソしかいねえ!

・ベネットじいさんの研究には材料が足りない。 → 誰やねん。

 

 う~ん、特に目ぼしい情報はなかったな。

 強いて言うなら『天空へ通じる塔』とやらか? もしかしたら勇者関連の建物かもしれないし、天空の装備があったりするのかも。一応覚えておこう。

 

 

 あと酒場のお姉ちゃんへのナンパはあえなく失敗した。

 ちょっとお高いお酒も頼んだのに……。営業トークにやられたぜ。

 

 

 

 

 

 

 

 

△月◎日

 

 今日は休養日。リュカたちは街へ買い出しに出かけて、俺は宿で一人ゴロゴロ。

 しかしなんか暇になったので庭先で呪文使って遊んでいた。

 バシルーラを自分に使ってトランポリンごっこ。たーのしー。

 

 そしたらなんか変な爺さんに絡まれた。

『そ、それは失われた古代呪文バシルーラ!? お前さんどこでそれを! も、もう一度見せてくれええッ!』

 

 なんか怖くなったので、望み通りバシルーラ(軽め)をかけてあげてお帰りいただいた。

 けれどすぐに戻ってきて『う~ん、すごいけど参考にはならんのう』ってガッカリ顔。いきなり冷静にならないで、怖い。

 

 謎の不審者・ベネット爺さんは、とある呪文を復活させようと頑張っている魔法研究者らしい。

 その呪文とは、バシルーラと同じく失われた古代呪文――『ルーラ』

 一度行った場所なら世界中どこへでも一瞬で行けちゃうという、高性能ブッ壊れ呪文である。運送業壊滅しちゃう!

 

 開発に協力してくれと頼まれたので、『ぜひともこちらから!』とオーケーした。

 フフフ、いつでもどこでも行けるってことは、みんなが寝静まった後、リュカに内緒でオラクルベリーのエッチなお店に行けるってことじゃないか! やばい、テンション上がってきた!

 

 開発に必要な植物『ルラムーン草』は、街から西の方に生えているらしいので、明日リュカたちには街で待ってもらって、ひとっ走り取りに行って来よう。

 

 ムフフ~、習得できるのが今から愉しみだぜ。

 

 

 

 

 

 

 

 

△月◇日

 

 ……単独行動を禁止されました。

 というか、俺がルーラを覚えるのを禁止されました。

 

 リュカ曰く、『姉さんがそんなの覚えたらナニに使うか丸わかりでしょ』って。くそう、さすがは弟。何も言ってないのに思考パターンを完全に把握されているorz

 ルラムーン草はみんなで取りに行くことになった。その間なんとかリュカを説得しようとあれこれ頑張ったが悉く跳ね返され……。結局ルーラはリュカが習得することと相成った。

 

 

 ……しかし朕は諦めきれぬ。

 女の子とくんずほぐれつの夢が捨てられぬ。

 ゆえに次善の策として弟に悪魔の提案をしてやった。

 

 あいつだってもう15歳。どんなに平静を取り繕ったところで、俺のこのシスターズ・アイは誤魔化せないのだ。姉弟の情に訴える小細工も交えながら、上目遣いでこう言ってやった!

 

 

『じゃあ……リュカもいっしょにオラクルベリーのお店行こ? 綺麗なお姉さんの身体に興味あるでしょ。私といっしょに初めての卒業しちゃお?』

 

 

 

 

 

 ――数秒後、すんごい勢いでこめかみをグリグリされた!

 

 

 

 

 ちくしょう、俺は諦めないッ。

 いつの日かきっとリュカの性癖(潜在能力)を目覚めさせ、姉弟で猥談を楽しんでみせるのだ!

 

 差し当たってはプレゼントするエロ本のジャンルを決めるため、弟の女の好みを把握しておこう。

 さあ、リュカよ。

 おっきいのとちっさいの、どっちが好きか白状するんだ!

 ちなみ俺はおっきいのが好きだ!(※ただし自分のは除く)

 

 

 

 

 

 

 

 

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