転生したらTSして翼生えてて、おまけに実験体だった   作:マゲルヌ

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25話 親の心子知らず、弟の心姉知らず

○月×日

 

 ルラフェンの街を出発し、大陸中央の海沿いの道を南下中。

 順調な旅路過ぎて書くことがないので、穴埋めにみんなの装備品でも羅列しておこう。

 

 ルミナ :キラーピアス、モーニングスター、天空の剣(※緊急時のみ)

      みかわしのふく

      マジックシールド

      けがわのフード

 

 リュカ :パパスのつるぎ、やいばのブーメラン

      はがねのよろい

      オーガシールド(ゴンズ擬きから鹵獲したヤツ)

      てっかめん

 

 ピエール:はがねのつるぎ、くさりがま

      はがねのよろい

      てつのたて

      てっかめん

 

 コドラン:はがねのキバ

      カメのこうら

     (なし)

      かいがらぼうし

 

 プックル:はがねのキバ、てつのつめ

      てつのむねあて

     (なし)

      てつかぶと

 

 

 フッフッフ。どうだ、壮観なラインナップだろう?

 これもラインハットを出るときにヘンリーからいろいろ餞別を頂いたおかげだ。軍資金もたんまりくれたので、行く先々で最強装備を揃えることができた。リュカはかなり遠慮していたが、こういうときは素直に好意に甘えておくのがええのよ。命あっての物種なんだしここをケチってはいかん。いつかまとめて二人でドーンと恩返しに行こう!

 

 

 ……性懲りもなくちょっとだけカジノに行ったのはナイショね?

 超絶強い『キラーピアス』や、貴重な『エルフののみぐすり』が手に入ったし、結果オーライよ!

 

 

 

 

 

 

 

 

○月□日

 

 山あり谷あり森ありの街道を、悪路も魔物も問題なく突破していき、今日は旅のお宿で一泊だ。

 この世界でお馴染み……なぜか人里離れた山奥にポツンと存在する、どうやって経営が成り立っているのか謎の宿屋である。元々人通りが疎らな山中なのに加えて、魔物やらカルト宗教やらで物騒な昨今、果たして十分なお客が集まるのだろうか? 非常に心配だ。

 

 案の定、お客は俺たち以外には二人連れの女性客とその護衛の人だけだった。ある程度安全が確保されているとはいえ、この時代に女二人で歩きの長旅とは剛毅なことよ。

 さらに驚いたことに、このお二人、俺たちが世話になったあの海辺の修道院のシスターさんだった。

 花嫁修業のため修道院でお預かりしていたお嬢さんを、サラボナの実家まで送り届けた帰りだそうだ。見分を広めるために半年ほどかけてゆっくり世界を回りながら帰ったので、俺たちとは滞在期間が被らなかったみたい。

 

 仲間とともにお世話になったお礼を言うと、せっかくだからと食事をご一緒することになった。院長先生に礼儀作法を教えてもらったこととか、先輩たちといっしょにお務めに励んだこととか、諸々の近況を話すと大層喜んでもらえた。

 あと、後輩の方のシスターさんが『女の子はお淑やかな方が良いのかな?』と悩んでいたので、ちょっとアドバイスをすることに。

 今回は意外にもリュカが積極的で、中々に心に響く意見を述べてくれた。

 

 

 ――『努力して淑やかさを身に付けた女性は立派だと思います。でもだからと言って、『元気だからダメ』なんてことはないと思います。……少なくとも僕は、多少がさつなところがあったとしても、いっしょに泣いたり笑ったりしながら、楽しいことも悲しいことも共に分かち合ってくれるような……、そんな元気な女性(ひと)を好ましく思います。……個人の好みの話になって申し訳ないんですが』

 

 ……なにげにリュカの好みというか、恋愛観を聞いたのは初めてかもしれない。しかも結構具体的な感じだ。

 なんか、ちょっと嬉しくなった。奴隷生活が長かったからそういう情緒が育っているか不安だったのだが、ちゃんと恋愛にも興味が出てきているようで、姉としてとても安心した。

 そして、本心からの言葉だからこそシスターさんの心にも響いたのだろう。

 話を聞いた後、なんか彼女すごい良い笑顔になってくれたし……。一人の悩める女性を救えたのなら、姉としても大変誇らしいことだ。これからも真っ直ぐ誠実な男として育ってほしい。

 

 

 

 ――というわけでリュカよ、立派な弟として早速姉を助けてほしいんだが? ベテランシスターさんの淑女教育がめっちゃ厳しいんや……。

『結局エッチな女の子が一番モテるよ』っていう、男どもの本音(この世の真理)を教えてあげただけなのに、まさかあんなに怒られるとは。

 うぅ、教本の朗読が全然終わらないよぉ……。

 

 

 

 

 

 

 

 

○月☆日

 

 期せずして始まった旅の宿での淑女指導をなんとか切り抜け、

 山肌の洞窟もスイスイ通り抜け……、

 

 ついに辿り着きました、目的地のサラボナでございます!

 

 オラクルベリーやラインハット王都と並んで、この世界でも有数の大都市として栄えている街だ。王制ではなく商人たちによって街が運営されており、商業や工業が盛んで様々な商品が街に溢れている。

 

 久しぶりの大きな街だしみんなでいろいろ回ってみようかな?

 観光都市としても名高いし、どんな珍しいものがあるか楽しみだ。

 

 

 

 

 

 

(追記)

 

 いや、違うわ!

 こんなことしてる場合じゃなかった。何のために西大陸くんだりまでやってきたんだ。

 

 ――天空の盾だよ、天空の盾!

 旅の目的も忘れて今日一日食べ歩きを楽しんでしまったじゃないか。

 つーかリュカも止めてくれよ。なんでそんな眩しいものを眺める顔で見守ってたんだよ。……まあ楽しんでくれたなら姉も本望ですけど!

 

 

 そんなわけで、日が落ちてからようやく情報収集に乗り出した。

 その結果分かったことは――

 

・天空の盾を所有する富豪の名はルドマンさん。

・近々娘さんの婿を募集するという噂がある。

・火山地帯が近いので温泉が名物。

・山奥の村の農産物が高品質。

 という、あまり有用でもない情報ばかり。これで一体どうすりゃいいのだ。

 

 

 というか、ここまで来て今さらなんだが、大富豪が持っている貴重な盾をどうやってゲットすれば良いのだろう?

 

・お金で買い取る?

 → 相手は超絶お金持ち。そもそも家宝の武具を金で売ってくれるとも思えない。

 

・私勇者なんですけど、盾譲ってくれませんか?

 → 檻の付いた病院に入れられる。

 

・怪盗ルミーナ参上! 伝説の盾は頂いた!

 → いろんな意味で論外。

 

 

 ………………。

 

 とりあえず明日、ルドマンさんのお宅に行くだけ行ってみよう。

 大富豪がアポも無しに怪しい旅人と会ってくれるかは分からないが、まずは行動しないことには何も始まらない。

 為せば成る、為さねば成らぬ、エロいことも!

 さあ、明日は気合い入れて行くぞ!

 

 

 

 

 

 

 

 

○月Λ日

 

 ダメでした……。普通に会えませんでした。

 門番の人曰く、今は忙しいので時間が取れないとのこと。ただでさえ普段から仕事で多忙なのに、今は娘さんの結婚に関する諸々でさらに忙しいのだと。

 ……まあ穏便にお帰り頂くための方便かもしれんけど、どちらにせよ今の時点では盾を譲ってもらう算段もついてないため、無理に会っても仕方ない。

 

 そんなわけで本格的に困った。少なくとも現時点ではやれることがない。

 娘さんの結婚話が終わってルドマンさんの時間が空くまで待つか? 何か月かかるか分からんぞ。

 いっそここは後回しにして、先にテルパドールに向かうか?

 

 ……でも、結局はあっちでも同じ問題が付き纏うんよな。

 王家に伝わる伝説の兜を譲ってもらうとか、今回の件に輪をかけて無理難題だよ。

 ルドマンさんはまだ一個人だけどあっちは国家相手だもん。下手なこと言うとそれだけで不敬罪で首ポーンだ。

 

 う~ん、やっぱりまずは、こっちを頑張るしかないかなぁ……?

 どう思う、リュカ?

 

 

 

 

 

 

 

 

□月△日

 

 ――今日、俺は天使と出会った(8年ぶり2度目)

 

 天空の盾関連が手詰まりになり、気分転換がてら皆で街を散策していたときのこと、素晴らしい出来事がありました。

 飼い主の手を離れて逃げてきた犬――リリアンを捕まえたら、なんとその飼い主が超絶美人の女の子だったのだ! リリアンがすごい勢いで俺の顔面をベロベロしてきたので、そのまま動物王国のナントカさんばりにワシャワシャ抱き止めてやった次第だ。

 

 彼女の名はフリーダ。澄んだ大空のような青髪と瞳がとても美しい、育ちの良さそうな清楚系美少女である。それに加えて性格まで良いときた。犬を受け止めたことに丁寧に感謝を述べてくれた上、土で汚れた顔などをハンカチで拭き拭きしてくれたのだ。

 ……もうこれだけで好きになっちゃいそう。

 つーか男なら誰でも落ちてる。マリアで慣れていなかったら俺も危なかった。

 

 

 フリーダは見た目通り、良いトコのお嬢様だった。家の教育方針が厳しくて自由に出歩けず、生まれたこの街のことすらあまり知らなかったという。それで長年不満が溜まっていたところに、この度父親が何か勝手なことをしでかしたらしく、ついにプッツンして家を飛び出しちゃったらしい。(おまけで犬まで後をついてきちゃった)

 で、すぐに帰るのもシャクだったので、この際日が暮れるまでは楽しんでしまおうと街をブラついていたところで俺たちと出会った。わお、アグレッシブお嬢様。

 

 ならばちょうど良いということでこちらからお誘いし、日暮れまでの間いっしょに街を見て回った。

 こんなときは自分の外身が女であることに感謝する。箱入りお嬢様も女どうしなら萎縮しないで済むし、万一家の者に見つかっても誘拐とかナンパを疑われなくて済むからな。

 

 

 さてと、明日も会う約束をしちゃったし、今日は早く寝るとしようか。

 どんなデートになるか今から楽しみだぜ~。(三人であってもデートと言い張る)

 

 

 

 

 

 

 

 

□月☆日

 

 急転直下! 緊急事態である!

 

 なんとフリーダちゃん……、実は『フリーダ』ではなく、『フローラ』だった!

 そう、あの大富豪ルドマンさんの一人娘だったのだ!

 

 一日デートを楽しんだ後の夕暮れ時、何かを言おうとモジモジしている彼女に、すわ『告白か!?』と期待して先を促したら、出てきたのはまさかのカミングアウト! この街では名前が知られ過ぎているので、咄嗟に偽名を名乗ってしまったそうな。

 そうまでして街に出て誰かといっしょに遊びたかった理由――それは父親の強引な婿探しが原因だった。旅の宿で会ったシスターさんが話していた、花嫁修業を終えたお嬢さん。それがなんとこのフローラ嬢であった。

 フローラ曰く――『どうせまた父は自分の話も聞かずに強引に相手を選ぶ。結婚したら今以上に縛られるかもしれない。だからせめて、最後に自分の意志で自由を謳歌してみたかった』と。

 

 

 ……またなんとも口出ししづらい家庭の問題だった。

 良い相手を選んでやりたい、という父親の想いも理解できるだけに批判もしづらい。俺もリュカも父子家庭みたいなもんだから、そういう“お父さんの気持ち”にすこぶる弱いのだ。フローラからルドマンさんの話を聞く限り、突っ走りがちだけど娘に対する想いは本物っぽいし、完全な独りよがりということもないだろう。

 

 一方でフローラの気持ちもまた理解できる。やはり自分の道は自分の意思で決めたいもの。結婚という一大事であればなおさらだ。

 一番良いのはきちんと話し合って結婚話を撤回してもらうことだが、心から『娘のため!』と思っているのなら、そう簡単に翻意は期待できないだろう。すでに大々的に募集もしてしまったことだし……。

 フローラ自身も今まで言い付けに従って生きてきたので、いきなり真っ向から反抗するのは難しい。下手すると勢いで押し切られてしまう恐れすらあるだろう。なんとも悩ましい問題だ。

 

 

 

 だが心配するなかれ!

 この灰色脳細胞はそんな諸々の問題を全て解決する、スペシャルアイデアを閃いてしまったのだ!

 フローラの不満と不安を解消し、ルドマン氏の想いも否定せず、ついでに俺たちにも益のある素晴らしい解決法!

 

 そう、すなわち……、

 

 

 

 ――フローラの結婚相手として、リュカが立候補してしまえば良いのだ!!(デデーン!)

 

 

 

 今日のデートで、リュカの優しい人柄や、頼りがいのあるところはフローラにも十分伝わったはず。二人の会話の感触も悪くなかった。リュカが結婚相手として立候補すれば、彼女の不安も大部分が解消されるだろう。

 ルドマンさんの親心に関しても問題ない。娘が結婚を受け入れてくれて、しかもそのお相手はリュカ(最高の男)なのだ。不満などあろうはずがない。

 そして俺は弟が幸せな家庭を持って安心できる。父さんや母上殿を探すことはもちろん大事な使命だが、だからと言って個人の幸せをおろそかにすることもない。フローラのような優しい女性がお嫁さんになってくれれば、リュカの人生はますます充実したものとなるだろう。

 

 そして最後におまけで天空の盾までついてくる!

 

 

 ……もう完璧である。一石四鳥か五鳥くらいの最高のアイデアだ。自分の才能が恐ろしくなってしまうな。

 では早速今晩の内にリュカに伝えて来よう。

 

 

 フフフ、大神殿でもラインハットでもカボチ村でも、いろいろ苦労したり危ない目にあったりしたけど、今回はあっさりと大勝利だぜ~~~!!

 

 

 

 

 

 

 

 …………。

 

 

 

 

 

 

 

 ………………。

 

 

 

 

 

 

 

 ……………………。

 

 

 

 

 

 

 

 

(追記)

 

 リュカと大喧嘩した。

 

 あの分からず屋バカチンめッ、もう口きいてやんない!

 

 

 

 

 

 

 

 

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