転生したらTSして翼生えてて、おまけに実験体だった 作:マゲルヌ
○月×日
火山の攻略も無事終わりサラボナに帰還。釈然としない想いはあったものの、とりあえず一勝は一勝。程々の満足感とともに身体を休め、さあ次は“水のリング”探しに出発だ!
――と思いきや、待ち構えていたフローラに捕まってしまった。
お屋敷の自室に連れ込まれて、まずは無事だったことを喜ばれ、次にアンディの命を助けたことを感謝された。
そして最後に、危険な火山に行ったことを割とガチめに怒られた。
……そりゃあ一見すると戦えるようには見えないけど、実は俺ってかなり強いんだよ?
そう主張して魔法とか見せたら一応は納得してくれたけど、今度はなんで立候補したのか理由を問い質された。
――正直にわけを話したらメチャクチャ呆れられました……。
まるでアホな子どもを見るようなジト目。真面目なフローラにやられると変な扉が開きそうだった。
『やるならリュカにやってあげて。あいつ俺に対抗するためだけに立候補したから。“困った子ども度”で言えばアイツの方が上だから!』
もっと呆れた顔をされました。……なんで?
フローラは困ったように頬に手を添えると、とりあえず残りの水のリングも探すよう提案してきた。船を貸すので、リュカと仲直りがてら行ってきてほしい――と。
婿選びには消極的だったはずなのに、なぜに試験の続行を?
そう尋ねたところ、どうも危険過ぎる試験を行った父にご立腹らしい。
ついでに結婚についても腹を割って話したいので、その間はリング探しを継続してほしいそうだ。今切り上げようとすればそのことで言い争いになりそうなので、話し合いが終わるまで時間稼ぎがてら続行してほしい、と。
なるほど、そういうことなら任された。
控えめだったお嬢さまが自分の意思を主張できるようになったのだ。友人として最大限協力しよう。
……あわよくばその勢いで天空の盾も強請ってくれないかなぁ?――なんて企んでないよ?
○月▽日
ルドマンさんから船を借り、北へ向けて出発。今回は危険の少ないダンジョンなので、肩の力を抜いたノンビリした道行きだ。
柔らかな潮風を浴びながら優雅な船旅と洒落こむぜ。
と思っていたのに…………、気まずい!
甲板で
実のところ、当初のケンカ熱はほとんど冷めているので問題ないっちゃないのだが、正式に仲直りもしてないのでどうも話しかける切っ掛けが掴めない。
……というか結局、あいつはなんであんなに怒ってたんだろう?
安直に結婚を勧めたのがそんなに不快だったの?
それとも、恋愛というセンシティブな話題だからもっと配慮した方が良かったとか……?
う~ん。フローラを見習って、この旅でその辺りのことをちゃんと話し合った方が良いかもしれない。
○月□日
水門の鍵を開けてもらうべく山奥の村に到着。揶揄しているわけではなく、本当に名前もない『山奥の村』(村人自称)だった。
住民は自虐的に『なーんにもねえ村だ』なんて言うけれど、農産物は美味しいし温泉もあるし、きちんと整備すればちょっとした観光地になりそうな気もするんだけどなぁ。温泉が混浴なのも地味にポイント高い。
ただ、相変わらず俺の身体はうんともすんとも反応してくれない。
かつての情熱よ、早く戻ってきてくれー。
そしてリュカよ、裸の付き合いで仲直りしたかったのに今回も逃げおって。せっかく合法的にお姉さんたちと混浴できるのだからもっと素直になれば良いのに……。
やっぱりアイツ、恋愛的な何かを拗らせて潔癖になっているのかもしれない。
○月§日
――ビアンカッ、また会えたああああああーーーーッ!!!!
8年前に別れてそれっきりだった幼馴染と、ついに再会できたのである!! ダンカンおじさんの療養のため引っ越したとは聞いていたが、まさかこんなところで会えるとは……。ビアンカの方も顎をカクンと開けて驚いていた。
山奥の静かな環境が良かったのか、最近はダンカンさんの身体の調子も良く、ここ一週間ほどは家族三人で近場の町へ旅行に行っていたそうだ。
道中の護衛役はなんとビアンカ。幼少期に俺たちとレヌール城を冒険して以来、いざというときのためずっと一人で鍛え続けていたのだ。(メラミやベギラマまで使えて本当に驚いた!)
そのおかげで、以前お母さんが急病で倒れたときは隣町の医者まで最速で診せに行くことができたって。『これもルミナのおかげよ。あなたに憧れてずっと修行してきたからね!』と満面の笑みで言われたのはさすがに照れた。
つーかこの子、この8年(そろそろ9年か?)で美人になり過ぎじゃね?
ただでさえ昔から可愛かったのに、そこへ大人の色気まで加わり、勝ち気系快活美女に成長しててもうヤバイ。
これから同じベッドで一晩思い出を語り合おうというのに……。果たして俺の理性は最後までもつのだろうか? 非常に心配だ、グフフフ。
……まあ、同じ部屋にリュカやプックルたちもいるから変なことにはなりようがないんだけど。
まだリュカとは微妙に気まずいが、さすがに一人だけ仲間外れにするわけにもいかん。ビアンカに間に入って話を振ってもらおう。
これを切っ掛けに元に戻れたら良いなあ……。
○月☆日
会えなかった間の出来事をビアンカに話して聞かせた。
妖精の国での大冒険や、ラインハットでのヘンリーとの勝負の日々、誘拐犯を撃退した話など、最初は静かに聞き入ってくれていたのだが……。
風向きが変わったのはゲマ襲来のところ。
父娘揃って痛めつけられ、
父さんは剣で貫かれて城から落とされ、
謎の意識に身体を乗っ取られて大暴れして、
結局最後は負けて敵の本拠地に連れ去られた。
――という怒涛の展開を話したところ大層驚かれた。『そこまでのことがあったなんて聞いてないわよ!?』って。
どうやらビアンカ、サンタローズに何度か行って俺たちのことを探してくれており、ある程度あの事件の流れは知っていたそうだ。(※情報源は解放戦線の人)
けれど魔族などの情報はさすがに末端の隊員は知らず、まさか俺たちが死にかけるような目にあったとは思っていなかったという。
ラインハットが魔族に牛耳られていたことも、最近ようやく解放されたことも、この前町に行ったとき初めて噂で知ったらしい。
で、俺たちが相当酷い目に遭ったことを察したビアンカは『その後何があったか包み隠さず話しなさい……!』とすわった目でおっしゃった。
当然断る度胸なんぞなかった俺は素直にゲロすることになった。
大神殿での実験の日々に始まり、ヨシュア・マリアとの出会い、命がけの脱出、久しぶりの帰郷、友との再会、魔族退治に協力、天空装備探して新大陸へ、プックルとの再会と合成獣騒ぎ。
そして最後に、なんで姉弟喧嘩しているのか聞かれたので、サラボナでの婿選びのことを素直に答えた。
――すんごい勢いで頭をグリグリされた。
『私の心を疲弊させてそんなに楽しいかああ!?』って鬼神のごとき迫力で折檻された。一体何が逆鱗に触れたのか分からなかったが、とりあえず怖かったので二人して土下座で謝った。
そして最終的に、なぜだかビアンカが水のリング探しについて来ることになった。
協力はありがたいし、いっしょにいられるのは嬉しいんだけど……、
その何かを含んだような意味深な笑みは何なのでしょうか?
非常に不安だ。
□月×日
川を遡ってさらに数日、『滝の洞窟』へ到着した。洞窟全体に激しい水の流れが張り巡らされており、足を踏み外せば濁流に飲まれて海まで一直線。名前に偽りなしの水系ダンジョンだ。
とはいえ、死の火山ほどの直接的な危険はないため、今回は魔物にだけ気を付けてのんべんだらりと探索を行えそうだ。
…………。
ゆえに、気にしなければいけないのは目下、こちらの方。
探索の休憩中、なにやらビアンカが真剣な顔でずーっといろいろ聞いてくる。
・どういう人がタイプなの?
・初デートはどこへ行きたい?
・リードしたい派? されたい派?
・結婚願望はあるの?
・式はどういうやり方が好み?
・子どもは何人くらい欲しい?
・ご両親との同居は……これは問題ないわね!
対面に座って、何か聞き出す度に真剣にメモ帳に書き込む。
おかしい……、思い出話に花を咲かせたいというお誘いだったはずなのに、いつの間にか取り調べみたいになっている。
しかも質問内容がところどころ意味不明。この前のおかしなテンションといい、ビアンカも何か悩みでも抱えているのだろうか?
まこと思春期とは難儀なものである。
□月▽日
ビアンカ記者、今日はリュカ氏へ質問攻め。
だいたいは昨日と似たような質問だったが、途中チラリとこっちを見たと思えば通路の端へ移り、俺に聞こえないようにひそひそインタビューを続けていた。
滝の音もあって会話は聞こえなかったが、ときおりリュカが驚いたり顔を赤くしたりしていたので、もしやセクシャルな質問でもしていたのかと勘繰ってしまう。
くっ、羨ましい……!
子どもの頃から知っている可愛い女の子にエッチな話をしてもらえるなんて、我が弟ながらなんと恵まれた境遇なのだッ。
うーー……、なんか面白くない。
□月☆日
不埒なやつがいた。
洞窟を探索していた他の冒険者が、『女連れの軟弱男にリングを見つけられるかよ、HAHAHA』と馬鹿にしてきやがった。
イラっときたので『ウチの弟舐めんな!』と蹴っ飛ばしてやった。
そしたら久しぶりにリュカから宥められた。後ろから腕を回されて羽交い締めにされるしばらくぶりの感覚。……うんうん、やっぱりこれがないとね。リュカ成分を補充できないと生活に張り合いがなくなっちゃう。
これでほぼ仲直りはできたので、ムカつく男のこともまあ許してやることにした。
……だがそれで調子に乗ったのか、あの野郎去り際にビアンカの尻を触ろうとしやがった。
そしたらまあ、リュカがキレるキレる! さっきまでの穏やかさは何だったの!?って勢いで男の尻をけたぐり回す。
なんというか、ただの幼馴染に対する以上の反応だった気がする。
ビアンカもにんまり笑って嬉しそうにリュカの肩を叩いていたし。
これアレかな? 互いに満更でもないっていうヤツ? やっぱり幼馴染は鉄板ということなのか……!
………………。
……リュカ、俺がやられても怒ってくれたかな?
□月§日
野営の準備をしながらハタと思い出した。
――結局なんでリュカは怒っていたのか、という疑問を。
幸い仲直りもできたことだし、鍋の様子を見ながらそれとなく聞いてみることにした。何かあっても傍にビアンカもいるし、幼馴染パワーでやんわりとフォローしてくれるやろ。(他力本願)
で、聞いた結果、何やら小声でゴショゴショ呟いた後、最後に一言『……言いたくない』と。
う~ん、分からんッ。
表情もなんとも微妙なものだった。こう……海外で初めて見る未知の食べ物を噛んでいるとき――みたいな?
ビアンカの顔もなかなかに愉快なことになっていた。(なぜか)最初はワクワクしていたのに、発言の途中でだんだんシラーっとした目付きになっていき、最後は大きく肩を落としていた。
で、最近もうお馴染みになっているアレ。リュカを引き連れての
顔を引っ付けるくらいの至近距離で何やら真剣に長々と語り合っているのだ。
……いやまあ、幼馴染で仲が良いのはいいんだけどさぁぁ。
こう、毎回一人だけ放っとかれると……なんていうか、こう!
『んああああああ!』って気分になっちゃうんだよ!
うぅぅ、そろそろ仲間外れは寂しいよぅ。
慰めてくれるピエールとコドランだけが癒しだよぅ。
そしてプックルは笑うんじゃねえ、髭引っこ抜くぞ。
□月○日
はい、水のリングゲットー。
特に何の苦労もなく最下層で手に入れました。
え? 盛り上がらないって? 仕方ないじゃん、実際何の盛り上がりもないんだから。火山のときみたいな最低限のボスもいないし、何より、ビアンカに単独行動禁止されてるから勝負もできないし。
普通に見つけて普通に終了よ。
まあ単独行動禁止といっても、リュカとビアンカは度々二人で隅に移動してシッポリ(偏見)やってるから? 俺は一人で寂しい想いしてるんですけどね?
……つーかさあ、あの二人、旅の間で仲良くなり過ぎじゃね?
なんていうか……もしリュカが一人で試験に挑んでいたら、最終的に嫁候補になって人生の選択でもしそうな親密さ(?)。
くそぅ、俺だって幼馴染なのに、可愛い女の子を弟に独占されて大変遺憾である! このままじゃ鎮火した喧嘩熱が再び吹き上がってきそう。
この頭を冷やすためにも早いとこサラボナまで帰ろう。
予定通りフローラに結婚を断わってもらって、そんでルドマンさんから天空の盾をせしめることにしよう。
そうすれば天空装備シリーズは二つ目ゲット。
次は三つ目を目指してテルパドールへ出発だ。
まったくもって順調、順調! 我ら姉弟の覇道に敵は無しよ、ふはははは!
………………。
……………………。
●月×日
リュカがフローラと結婚することにくぁwせdrftgyふじこlpΔ♯×%&●♪$ッ!!!?