転生したらTSして翼生えてて、おまけに実験体だった   作:マゲルヌ

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33話 街や国を救ったとはいえ

 

○月×日

 

 …………。

 

 

 

 

 ………………。

 

 

 

 

 ……………………。

 

 

 

 

 気まずいッ!!

 

 理由はいろいろあるけれど、まず一つ目、性懲りもなく再び命を危険に晒してしまったことにすごく罪悪感!

 ラインハットでもかなり口酸っぱく言われたのに、今回もまた同じことをやらかしてしまった。

 状況的にあれ以外方法がなかったことも事実だが、だからといって開き直れるほど俺も厚顔ではない。しばらくは態度で反省を見せようと自戒しているところである。

 

 

 そして二つ目の気まずさ。

 一つ目とも関係あるのだが、これほどやらかしておいて、今回リュカがあまり怒っていないのだ。目覚めたら無限お説教タイムが始まると思っていたのに、逆にすっごい謝られてしまった。

『いつも苦労ばかりかけてきてごめんなさい』って、神妙な顔で何度も……。

 正直、普通に怒られるよりクるものがあった。

 俺の捨て身の行動がリュカにこんな顔をさせたのだと思うと、なんかいろいろ込み上げてきて、久しぶりに泣いてしまった。

 

 ……不覚だった。弟の身体にすがりついてワンワンと情けなく。

 また黒歴史が積み上がってしまって今とても気まずい。早いとこ忘れたい。

 

 

 

 

 最後に三つ目。これがある意味一番の気まずさなのだが……。

 

 ――今回の戦闘の後半について、ほとんど覚えていないのだ。

 

 天空の剣を使って一段上の力に目覚めたこと。

『ギガデイン』とかいうヤバイ呪文でブオーンを瀕死に追いこんだことまでは覚えている。

 ――が、リュカが駆け付けてくれて以降は、何か叫んだような記憶があるだけで、内容の方はさっぱり思い出せない。本人に聞いてもどうにも要領を得なかったし、なんか変なことでも口走ったのではないかとガクブルだ。

 

 

 

 ただなんか……そのときのことを思い出そうとすると、妙に胸の辺りが疼いて変な感覚になってしまう。

 その状態でリュカの顔を見るとさらに顔の辺りもムズムズして、熱くなるというか、あいつの眼を直視できないような感じがして、

 

 

 

 …………。

 

 

 ………………。

 

 

 あれ? これってアレじゃね?

 

 

 もしかして……

 

 

 なんというか……

 

 

 100パー無いとは思うが……

 

 

 これってひょっとして、恋 感情 な〆\/╲

 

 

 

 

 

 

 手元が狂った。

 

 今日はもう寝た方がいいな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

○月□日

 

 一晩で体調もだいぶ良くなり、今日はお見舞いに来てくれた人たちといろいろ話をした。(※今はルドマンさんの別荘で療養させてもらっている)

 みんな俺の身体についてかなり心配していたが、本当にもう問題はない。回復魔法と睡眠のおかげで大きな傷はほとんど治っている。

 

 ……だから、今日はもう魔が差したりはしない。

 姉弟間で……、その……アレとか、

 そんな血迷った感じのことを考えることもないのである。

 本当ったら本当である。

 

 

 

 お昼頃にはビアンカとフローラもお見舞いに来てくれた。当然のごとくビアンカからはお説教、フローラからもいろいろ苦言を呈された。

 もっと自分を大切にしてくださいうんぬんかんぬん、と。

 ここで『俺がやるしかなかったじゃん!』と突っぱねるほど子どもではない。状況がどうあれ心配させた事実は変わらないし、むしろリュカに怒られなかった分、かえって安心したくらいだ。今も変わらず面倒見の良い幼馴染と、新たな友達に感謝である。

 

 

 

 

 ………………。

 

 ……だからこれは、別に婚約話が嘘だったことに喜んで反応が柔らかになってるわけじゃないのです。

『リュカが幸せになれると思ったのに残念だなー』って気持ちがほとんどであって、『またいっしょに旅ができる!』などとウキウキしてるわけじゃないのです。

 水のリングを装備しているのも単に性能が良いからであって、特に他意なんかないので、変な勘繰りはしないように。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

○月☆日

 

 ラインハットから使者が来た。

 今回の騒ぎに際して、サラボナから救援要請を送っていたそうで、その後の安否確認や現地調査のために王様が人員を送ってくれたのだ。

 結局早々に解決してしまったため、ほとんど仕事はないのが申し訳ないところではあるが……。

 と思いきや、彼らにはもう一つ大切な用事があった。

 その相手は俺たちで、

 

 

 ――なんと! 結婚式の招待状をいただきました!

 

 

 結婚するのはヘンリー…………ではなく、なんと弟のデール王子だ。

 招待状を読んでびっくりした。

 顔見知りの年下男子が結婚するということもそうだけど、先に兄であるヘンリーからだと思っていたので二重にビックリだ。

 

 とりあえずいろいろ話も聞きたいので、明日使者さんに連れられてキメラの翼でラインハットを訪ねることになった。

 フローラもサラボナ代表として正式に招待されているらしい。(俺たちがヘンリーと知り合いと聞いて驚いていた)

 あと、『お友達枠で何人か連れて来て良いぞ』と手紙に書いてあったので、ビアンカにも声をかけておいた。

 

 俺たちが旅立ってからだいたい半年くらいになるのかな? 懐かしいと言うにはちょっと早いけれど、久しぶりに戦友たちに会えるのがとても楽しみだ。

 

 

 

 ……あと、ルーラの行き先にラインハットが加わるのも地味に助かった。

 これでいつでもあっちの大陸に戻れるぜ。

 後でサンタローズやアルカパも加えておこう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

○月▽日

 

 ラインハット王都に到着! 王族の結婚式が近いからか、いつも以上に多くの人でごった返して賑やかだった。

 にもかかわらず、俺たちは王城へフリーパス。順番待ちもなくあっさりヘンリーと会えてしまった。

『これがお友達特権かw』と冗談交じりに呟いたら、『俺の王族特権だ。早くお前たちに会いたいからな』と笑いながら返された。

 ……この人たらし王子め、思わず照れてしまったじゃないか。

 

 

 その後は近況報告。

 デール君の結婚は、俺たちが旅立った後くらいに決まっていたそうで、半年の準備期間を経てこの度ようやく開催の運びとなった。お相手はラインハットのとある貴族の娘さん。圧政時代も民のために尽くしてきた穏健な家で、デール君と結婚することには多少の政略的意図もあるようだ。

 本人たちの関係は良好らしいので、今後幸せな家庭を築いてくれることを願うばかりである。

 

 あと気になったのは、なぜデール君が先に結婚するのか、ということなのだが……。

 まず前提として、ヘンリーは王位を継ぐつもりはないらしい。長い間王都で踏ん張ってきたデールにこそ王になってもらいたくて、彼の子どもが生まれたら継承権も放棄するつもりだそうだ。(※自分たちのときのように揉めないように)

 そのため、結婚もしばらくするつもりはなく、デール君の王位継承者としての地位が盤石になった後、いいお相手がいれば考えても良いかな?―――というスタンスだそう。

 やっぱりコイツも、王族としていろいろ考えてるんだなぁと改めて感心させられた。

 

 

 しかし、ヘンリーのお相手か……。

 継承権を放棄するということは、王位に興味がない人で、かつ変な陰謀に巻き込まれないように大貴族ではない方が望ましい。(いっそ平民の方がいいか?)

 王にならなくても公務はあるだろうから、それに耐えられる健康な身体、淑女としての教養、ストレスに負けない精神力、何より、ヘンリー自身のことを大切に想ってくれる優しい心が欲しいところだ。

 

 う~ん、なかなかに難儀な条件………………

 

 

 

 

 

 いや、おるやん!?

 思いっきりマリアやん!

 さらにフローラとビアンカもいけるやん! 全員人柄は保証するで! どうや、ヘンリー!?

 

 ――と勧めてみたところ、その場の全員から頬っぺたを抓られた。

 

 解せぬ。

 我、病み上がりぞ?

 

 

 

 

 

 

 

 

Λ月○日

 

 ……数日後に控える式を前に、思いもよらぬ試練にブチ当たっていた。

 結婚式という、フォーマルの極致というべき大イベント。それも一般人ではなく大国の王子様の式だ。当然、出席者にはそれ相応の格式が求められる。普段着で出席などもっての外だ。

 

 

 つまりね?

 

 必要なわけですよ。

 

 

 ――メイクと! ドレスアップが!

 

 

 そんなわけで開催されたのは――ビアンカ、フローラ、マリアによる、ルミナちゃん着せ替え人形大会である。面白がったヘンリー協力のもと、城の衣裳部屋の一つを借り切り、一日がかりの組み上げ作業が行われた。(※余計なことしやがって、アホ王子!)

 

 そりゃね……もう十数年にもなる人生だし、自分の造形が並外れて良いことは自覚してますよ?

 でも、そんなにテンション上げて衣装選びするほどのことっスか?

 三人とも『あれが良いんじゃない?』『いや、これも良いですよ』って、リアルに100着以上の服をあてがわれてマジで疲れた。

 そして衣装の後はメイクについて、それはもう徹底的に教え込まれた。無駄に記憶力は良いのでなんとか基本のところは覚えられたけど、こんな複雑工程毎日やってるなんて、世の女性たちの美への執念がちょっと怖い。

 

 でも一番怖かったのは、『今まで化粧どころか肌ケアもしたことないよ?(※ほぼ自動で回復)』と告白したときの、みんなの真顔だった。

 

 ……マジでブオーン戦より震えた。光のないみんなの目コワイ。(メイドさん含む)

 今後、女性の前で美容について軽々しく触れないでおこうと思った。

 

 

 

 

 

 

 

 ……まあ、仕上がったドレス姿を見てリュカが『綺麗だよ』と言ってくれたのは、……嬉しい気がしなくもない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Λ月□日

 

 結婚式当日。

 国中から多くの来賓を招いての盛大な披露宴が催された。

 ハイソな空間ゆえ、パンピーの俺たちは隅っこで目立たず過ごす予定だったのに、まさかのド真ん前のメイン席に通されちゃった。親族(=王族)の隣辺り。

「ええの、コレ?」と思いながら、貴族たちに反感を買わないことを願いひたすら笑顔&祝福オーラ。

 リュカなんて、友人代表の挨拶まで仰せつかっていてとても驚いた。言われてみれば確かに、小さな頃にデール君とも何回も遊んだので幼馴染と言えなくもないのか。

 ヘンリーとのほほえま兄弟エピソードも交えた、とても良い挨拶だったと思う。

 

 

 良い式だった。

 新郎新婦どっちもいい笑顔で、政略だけではない絆を感じられる二人だった。

 

 ――『自分も将来あんな風になれたら良いな』と。

 

 挨拶するリュカの凛々しい顔を見て、そんなことを考えてい

 

 

 

 とにかく二人の幸せを願いたくなる、そんな良い式だった!

 ヘンリーやマリアも「うんうん」頷いていたし。

 ビアンカやフローラも「よしよし」と後方師匠面?だったし。

 ヨシュアも無言でグータッチポーズしていたし…………いや、これはよく分からんかったわ。

 

 

 とにかくデール君、これからも末永くお幸せに!

 

 なんで君まで親指立ててたのかは分からんけど。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Λ月☆日

 

 今も祝福ムード漂う幸せいっぱいのラインハット。

 けれど俺たちはそろそろ旅立たねばならぬ。

 

『サラボナでいろいろあって足を止めていたが、そろそろ当初の旅の目的、天空の武具&父さんの情報集めに戻らねば!』

 

 みんなでプチパーティをしているときにそう伝えたら、ヘンリーから有益情報をいただいた。

 今、世界の各地で、魔物に襲われる人々を助けてくれる謎の戦士がいるらしい。

 その人は筋骨隆々な大柄の男性で、凄まじい剣技で大型モンスターすら一蹴してしまう凄腕の剣士、おまけに怪我人を瞬時に癒す回復魔法の使い手でもあるそうだ。

 なぜか仮面を被っているため素顔は知られていないが、豊かな黒髪と立派な口髭を持つ壮年の男性だという話だった。

 

 

 

 ――これ、父さんで確定じゃあるまいか?

 

 早計に決め付けるのは良くないとは思うが、こんなに特徴が合致する人なんてそうそういないだろうし、可能性はかなり高いと思う。

 まさか半年でこんな具体的な情報を持ってきてもらえるなんて、ヘンリーには本当に足を向けて寝られない。

 

 おまけにこれから向かうテルパドールへの紹介状まで書いてくれたし。

 やー、ホント、持つべきものは太っ腹な友達ですね!

 重ね重ねありがとうございます、王子様!

 

 

 

 

 

 ……けどね、ヘンリーさんや?

 

 友達に大型船を一隻プレゼントするのは、ちょっとやり過ぎだと思うの。

 そりゃ自由に使える船があれば今後何かとありがたいけども……、そんな誕生日プレゼントみたいにポンと渡すもんじゃないからね?

 

 案の定、建造費を見せられてリュカといっしょに腰を抜かした。

 ちょっと見たことない桁数でリアルに手が震えたもん。

 

『もう造ってしまったから貰ってくれないと困る』と言われて仕方なく受け取ったけど……しばらくは眠れない夜が続きそうだ。

 

 

 

 とりあえず、盗まれないようにちゃんと鍵をかけておけばいいのかな?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

○月△日

 

 ルドマンさんに旅立ちの挨拶をするためサラボナへ戻ってきた。もう何か月もこの街で過ごしているから、なんだか第二の故郷みたいな感覚になってるな。

 長い間別荘に住まわせてくれたルドマンさんには本当に感謝である。

 本人に言ったら『君には返し切れない恩があるのだから、これくらいどうということはない』と苦笑なさっていたが……。

 リュカたちの嘘婚約に付き合ってくれたことも含めて、本当に器の大きい人だわ、この人は。

 

 

 

 

 

 ……うん、マジで器大きいんだよ、この人。

 

 

 

 というのも……なんかね?

 

 ルドマンさん……、家宝の『天空の盾』、俺たちにくれるらしいよ?

 理由は、街を救ってくれたお礼なんだってさ。

 

 その他にも、高価な装備品(水のはごろも、しんぴのよろい、ふうじんの盾etc)や貴重な道具類(さいごの鍵、世界樹の葉、祈りの指輪etc)まで渡されて、そして最後に旅の資金として1000万ゴールドPONとくれたのだ。

 どれもこれも自分からの感謝の気持ちだから、遠慮なく受け取ってくれ――って。

 

 わーい、やったぞ、リュカー。

 これでぼくたちもいっきにおおがねもちだぁー。

 

 

 

 …………。

 

 

 ………………。

 

 

 

 もおおお! 大富豪の感覚怖えぇよ!

 なんでお年玉みたいな感覚で札束ケースをダースで渡してくるの!? 

 フローラも当たり前の顔で微笑んでないで止めてよ!

 

『一度に持ち過ぎると危ないから、足りなくなったらまた言ってくださいね?』って、今の時点でもうガクブルだよ!

 

『ヘンリー殿には負けられん。今後も援助は任せろー』って、何に対抗してんですか!

 

 

 ヘンリーといい、ルドマンさんといい、恩に対するリターンがデカ過ぎる!

 パンピー相手にはもっと自重してください!

 

 

 

 

 

 

 

 

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