転生したらTSして翼生えてて、おまけに実験体だった   作:マゲルヌ

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34話 もっと波瀾万丈な人が隣にいるので

 

〇月×日

 

 長らくお世話になったサラボナの街を旅立ってから数週間。我々は南大陸の北端へ船で乗り付け、砂漠の大国“テルパドール”を目指して歩を進めているところである。

 かの国は伝説の武具の内の一つ――『天空の兜』を代々保管している、歴史と伝統溢れる由緒正しい王国だ。

 父さんから託された『天空の剣』、ルドマンさんから譲り受けた『天空の盾』に続いて、天空シリーズもこれでいよいよ三つ目。アイテムコンプリートまで後一歩といったところだ。

 ゆえに、俺としてもテンション上げて新大陸へと乗り込み、『砂漠横断なんざチョロいぜ!』と青空の下を意気揚々と行軍していた。

 

 

 

 

 ――の、だが。

 

 

 

 

 いやもう、暑い!

 

 超、暑い!!

 

 何日歩いても周りは見渡す限りの砂、砂、砂! 砂の海!

 オアシスどころか草木の一本すらも見えやしない!

 さらに襲い来るは、遮るもののない強烈な太陽光 & 地面からの容赦ない照り返し!

 相乗効果で気温はおそらく60℃以上!

 

 ……あかんよ、こんなんもう死んでしまう。

 いくら温暖化に慣れた元現代っ子って言ったって限度があるんよ。

 

 これでまだ景色が変化したり、何か珍しいものでも見られれば気分転換にもなるのだろうが……、本当に砂と空しかない。

 おかげでここ数日はず~っと、夜に歩いて、昼休んでの繰り返しだ。

 やれることと言ったら、耐熱テントの中でチビチビ水を飲みながら身体を休めることくらい。あまりの暑さにお腹と肩を捲って服の中を扇ぎまくる今日この頃である。

 

 あ゛あ゛あ゛ーー、テルパドールのお城はまだかー。

 翼のモコモコが熱くて鬱陶しいーー。

 コドラン、なんで冷気ブレスを使えないんだーー。

 

 

 

 

 

(追記)

 テントの中で服をパタパタさせていたら、リュカが近付いてきて無言で服の裾を抑えてきた。

 お母さんか。

 サラボナで正式に礼儀作法を学んだことで、がさつな動作が気になるのかもしれないが、この殺人的な暑さなのだから多少は許してほしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……ていうか、『自分が美人なのをもっと自覚して』とかいきなり言ってくるな。

 

 

 びっくりしちゃうだろ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

○月□日

 

 代わり映えのしない毎日で書くことがないので、ちょっと近況報告をば。

 

 テルパドールに着いて女王様と謁見が叶えば、ほぼ確定で『天空の兜』は手に入ると思う。ヘンリーの紹介状があれば門前払いされることはないだろうし、実物に触れさえすれば俺が有資格者であることは証明できる。

 最悪、『何か必要な機会があれば貸し出す』――という約束さえ取り付けられれば無理に譲ってもらう必要もないのだ。

 

 それよりも。

 問題があるとすればそれ以前……というか、天空装備そのものについてである。

 

 それは何かというと――

 ぶっちゃけた話、リュカが天空シリーズについて相当嫌がるようになっちゃった。

 元々持っていた天空の剣も、今回せっかく貰った天空の盾も、今は厳重に封をして荷物袋の奥底に仕舞ってある。運ぶのもリュカかプックルが交代で担当し、俺は布越しでも触れちゃダメ、という徹底ぶりだ。

 リュカのやつ、俺が人格変貌して死にかけたことが相当トラウマになっているらしく、『天空装備を戦闘で使うのはもう絶対禁止!』と厳命されてしまった。

 

 そりゃまあ自分としても、さすがにあんな危ないモノを何度も使いたいとは思わない。天空装備集めを続けているのだって、『魔界行きに必要かもしれないから一応』という程度の理由であって、使わずに済むならその方がありがたい。

 

 ……ホントに危険が迫れば、特にリュカの身が危ないときは躊躇なく使っちゃうと思うんだけど。

 リュカにもその辺り見抜かれているようで、すんごいジト目で睨まれた。

 そうならないためにも、素のままでもゲマに余裕で勝てるよう、より一層修行に励むことにする。

 差し当たっては腕立て伏せの負荷を上げるべく、リュカに上に乗ってくれるよう頼んでみよう。

 

 

 

 

 

 

 

(追記)

 なんか……前よりうまく力が入らんかった。

 

 砂漠の熱にあてられて夏バテ気味になったか?

 

 いよいよ冒険も佳境に入ろうかという時期になんという体たらくだ。

 

 気を引き締めねば……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

○月☆日

 

 長い砂漠行軍を終えて、本日ようやくテルパドールに到着した。お役所的なところで紹介状を提出して、今はお偉いさんからの返事待ちだ。

 それまでは暇なので、午後は皆で街の中を見物して回った。テルパドールは勇者の仲間が数百年前に興した国で、古い逸話や伝説がいろいろ残っている。ゆえに、勇者についていろいろ情報収集をしようという目的だ。

 現状では一応、俺が勇者的な立ち位置にいるわけだが、所詮は人造のパチモン勇者。本物がいればそっちに頑張っていただいた方が良いに決まっているし、何より、勇者なんて立場メンドクサ

 そんなわけで、学者や吟遊詩人、その他昔話に詳しそうな御老人らに話を聞いて勇者の手がかりを得ようとしたのだが……

 

 

 なんというか、どうにもあやふやな情報ばかりだった。

 

 曰く――

『勇者は世界に危機が迫ると現れる』とか、

『どこの誰なのか素性はよく分かっていない』とか、

『天空の民の血を引いていたらしい』とか(←これは俺にも当てはまるかも?)

『会心の一撃を100%出す秘技を持っていた』とか。(←嘘くせえ)

 

 さすがに数百年前ともなると資料もあまり残っておらず……、何より、勇者様当人が魔王討伐後に姿を消したそうで、残念なことに後の歴史書に出て来ることもほぼなかった。

 ただ、勇者とは直接関係ないが、テルパドールの女王さまには未来を読む力があると聞いた。この国の初代から受け継がれている不思議な力で、代々の重要な局面で国の命運を左右してきたらしい。その力でどうか一発、勇者様のことも見つけてもらいたいものだ。

 

 

 ……あと、ここでも謎のヒゲ戦士の話がチラホラ聞かれた。

 相変わらず各地で魔物退治をしているようで、彼が勇者様か?という声もちょっとだけあった。本当に彼が勇者ならばそれはそれでありがたい話だけど、やっぱり俺としては正体が父さんであることを推したいところ。

 最悪、勇者業は俺でも代わりをやれるけど、父さんは一人しかいないからな。

 

 早いとこ見つけてリュカと再会させてあげたいな。

 

 

 

 

 

 

 

 

○月▽日

 

 紹介状のおかげなのか、僅か一日で女王様との謁見が叶った。近衛兵っぽい人たちが宿まで迎えに来て、彼らの先導で丁重に王宮まで案内された。城の地下の庭園へと通され、いよいよお会いできたアイシス陛下。

 対面が叶った女王様は、噂通りとても美しい人だった。あまりに綺麗過ぎて、ナンパしようという気すら起こらないほどの神秘的美人。不思議な力をその身に宿しているのも納得できる神々しさよ。

 実際、その『見る力』も信頼に足るものであった。彼女はリュカに不思議な力を感じつつも、俺の方に勇者の適性があることを正確に見抜き、天空の兜を装備するよう勧めてきた。

 庭園から保管部屋まで案内されて、いざ、天空の兜とご対面!

 

 

 

 ――で、当然のごとく余裕で装備できて、めでたく(?)俺は勇者として認定され、あっさりと天空の兜を譲ってもらえた。

 ……国宝の武具をそんな簡単に渡していいんだろうか? 『勇者』に対する信仰が強過ぎてちょっと怖い。

 

 その後は城を挙げての歓迎式典が開かれそうになったが、それはなんとか辞退させていただいた。無駄に目立つのは本意ではないし、何より、俺が勇者である事実には割と厄ネタも絡んで来るからだ。

 お忘れかもしれないが、俺の過去ってちょっとアレだから……。

 

 訝る女王様に対して仕方なく背中の翼を出して見せ、過去のマッド研究所生活を掻い摘んで説明し、俺という存在はここだけの秘密にして欲しいと頼んでおいた。勇者の正体が『違法研究の実験体』だなんてさすがに外聞が悪すぎるからね。

 

『伝説の勇者発見!』という吉報の直後に、闇深女の暗い過去話。女王様の感情をジェットコースター並みに乱高下させてしまったようで、大変申し訳ない気分だった。

 

 

 

 

 

 

 

●月□日

 

 昨日に続いて今日もお城まで呼び出された。勇者や魔界について追加情報でも頂けるのかな?――と期待して伺ったのだが、ある意味それ以上の重大ネタがブッ込まれてきた。

 

 

 

 ――なんと!

 

 ――俺を造り出した研究所の連中、テルパドール王国の出身だったらしい!

 

 

 

 この国で勇者が神聖視されていることはすでに語ったが、数十年前にその思想が行き過ぎた結果、狂信的な集団が生まれたことがあったそうだ。そいつらは勇者という存在を崇拝する余り、それがいない今の世を不完全であるとみなし、自らの手で勇者を生み出そうと画策した。

 人間の身体に魔物の因子を埋め込んだり、外科的手術で頑強な肉体を造り出そうとしたり、魔力を過剰に注ぎ込んで魔法の才能を無理矢理目覚めさせようとしたり……。そんな非人道的な実験が数多く繰り返されたという。

 

 そう、まさしく俺を生み出したあの研究者どもと同じ考えだ。

 ……というか、あいつらの前身がズバリその団体だった。

 

 幸いなことにテルパドール国民の大半は、勇者を尊重こそすれ常識的な考えを持っていたため、程なくして奴らは摘発され、実験施設も全て破壊されたそう。

 ゆえに、連中の野望もあのときに潰えたと判断されていたのだが、まさか生き残りがいて他の大陸で再起を図っていたとは……。

 

 昨日俺の過去話を聞いて女王様が難しい顔をしていたのは、このことを思い出していたからだった。(※事件そのものは先々代の頃の話で、アイシス様は伝聞でしか知らなかったらしい)

 慌てて過去の資料を引っ張り出して確認したところ、俺の証言と合致する内容が出るわ出るわ……。こりゃ本物だと確信して今日の呼び出しに至った次第だそうだ。まさしく今明かされる驚愕の事実である。

 

 

 ……ただまあ。

 俺としては、忘れた頃にこんな真実が降って湧いてどう反応して良いものやら、といった感じだ。驚きはしたもののそれだけで、テルパドールという国に対しても特に含むところはない。

 悪いのは実際に事を行った下手人の連中だし、そもそも先々代の頃の話でアイシス様に文句を言うのも筋違いだ。

 それに俺の復讐自体はあのときに完了している。研究所にいた連中は容赦なく皆殺しにしてやったし、そのこと自体にも微塵も後悔はない。後やることと言えば、あいつらに余計な知識を上乗せした上、俺のダチを実験体として売り払ったゲマ(クソ野郎)をブッ殺すことだけだ。

 

 そう言うと、アイシス様はちょっと心苦しそうな顔をしていたけど、最後には『できることがあれば協力します』と小さく微笑んでくれた。直接の関わりはないのにここまで気に病む辺り、本当に責任感の強い優しい人だ。結婚したい。

 

 

 

 

 

 

 

●月▽日

 

 昨日良い感じに話がまとまったと思ったら、なぜか今日もまたお呼び出し。

 再びの厄ネタの空気を警戒しつつ参内すると、またもや驚愕の情報。

 

 ――なんとウチの父さん、グランバニアの国王様だった!

 

 アイシス様からポーンと告げられた事実に再びポカーン。

 リュカも口あんぐりアゼーン。

 以前に父さんの出自について、『もしかしたらどこかの国の騎士だったのかも?』と推測したことはあるし、全く信じられないってわけではないのだけど……。さすがに一国のトップだったと聞かされれば驚愕もする。

 

 初日にアイシス様がちょっと驚いたような顔をしていたのは、『パパス』という名に覚えがあったからだった。

 というか、公務についている時代の『パパス王』とアイシス様は会ったことがあるそうで……。

 そのときの人相や人となりなどを聞いてみても、やはり『グランバニア王』=『父さん本人』で間違いないと思う。

 

 

 

 

 そっかー……、王族かー……。

 

 てことは、リュカは王子様になるわけかー。

 

 行方不明だった国王の息子が、10年以上の時を経て故郷へと戻ってくるわけだー。

 

 

 …………。

 

 

 ………………。

 

 

 なんかもう、今から厄介そうな予感をヒシヒシと感じている。継承問題で荒れまくったラインハットの例もあるし、先王の直系王子がいきなり帰って来るとか、いろいろ拗れたりしないかな?

 あの明朗快活な父さんが治めていた国だし、不穏な謀略などはないと期待したいところだが。

 

 

 

 ……たぶん、無理な気がするなぁ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

□月×日

 

 天空の兜GETという目的も無事達成し、本日、名残惜しくもテルパドール王都を後にした。女王様からは『また無事に会えることを願っております』と優しく激励をいただいた。

 アイシス様はこれから俺たちが向かうグランバニアについても調べてくれたのだが………、最近はテルパドールとも頻繁な交流はないようで、内情はよく分からないとのことだった。

 結局のところ、実際に現地まで行ってこの目で確かめてみるしかない。父さんの質実剛健さを培った祖国の気風に望みを託し、次の旅も穏やかに終われるよう願いたいところである。

 

 差し当たって今日のところは、自分のルーツを知って動揺しているであろう弟のメンタルケアをしてやることにする。一度にいろいろな事実を知ってあいつもちょっと参っているだろうし。

 最近は怒られたり慰められたり動揺させられたりばかりで姉の威厳の危機だったので、ここらで一発頼りになる姿を見せて挽回しよう。

 

 

 さあ弟よッ、我が腕の中で慰められるがいい!!

 

 

 

 

 

 

 ………………。

 

 

 

 

 

 

 ……………………。

 

 

 

 

 

 

 

(追記)

 

 なんか、すごい慈愛溢れる笑みで頭を撫で回されたんだが?

 

『もっと波瀾万丈な人が隣にいるからね』って、ほっぺをムニムニされたんだが?

 

 最終的に『これで十分回復するから』って笑顔でギュッとされたんだが?

 

 

 

……優しくハグされるのがなんか癖になりそうだったので、またやって欲しなんか知らんけど元気が出たんなら良し!

 また明日からもいっしょに頑張ろう!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……別に照れてなんかいないんだが?

 

 

 

 

 

 

 




※徐々にメロつき始めているTSオリ主ちゃん。今後の活躍にご期待ください。


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