転生特典が動体視力?これ、無理ぞ   作:マスターBT

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主に言峰綺礼との絡み。それと現在の主人公の特異性がちょっと明らかに。
まぁ、霊薬飲んで泥浴びた奴が普通の人間な訳がないよね。


幕間:いつか至る境地

 戦闘において最も重要なものは何か?俺はそう聞かれたら、一撃の破壊力と答える。特に俺の様に遠距離武器をまともに扱えず、己の肉体以外の手段を持ち合わせていない者は。

 

「チィ、化け物が……」

 

「どうした?来ないのか?」

 

 俺が知りうる限りの化け物──言峰綺礼が拳を突き出した形で笑みを浮かべる。肉体は出来上がっているからと組み手をする事になったのだが、やはり俺とアイツの差を大きく感じる事となった。組手開始から一時間、まともに一撃を当てられていない。後ろに下がりながら、奴の拳を弾いた右手をチラリと見る。攻撃を弾き、逸らしただけで直撃はしていないというのに俺の手は痺れていた。何度か手を閉じたり開いたり繰り返せば無くなるものだが、あの拳をまともに食らっていたらと思うと背中に冷たいものが流れる。

 

「ただの組み手だろうに。殺す気か?」

 

「ふむ、そこからか」

 

 スッと戦闘態勢を解き、腕を組む言峰綺礼。俺も一旦、構えを解き腰に手を当てながら次の言葉を待つ。

 

「今のお前は肉体のみ完成している。これ以上、鍛えても余分なものがつくだけで意味はない。精々、それを維持する為のトレーニングを行うだけだ。さて、衛宮影辰。野球選手が肉体のみを鍛えあげればホームランが打てるか?陸上選手がフォームを完璧にしたからと大会で優勝できるか?」

 

「……あぁ、そういう。圧倒的に経験不足だからその経験を埋めるという訳か」

 

 言峰綺礼の例え話に俺がそう答えるとそうだと満足そうに頷く。直後、なんの予備動作もなく言峰綺礼の指から小石が飛ばされる。それを難なく掴み取り地面に叩きつける。

 

「いきなりなんだ!?」

 

「鍛えたお前の目であれば、例え銃弾に匹敵する速度であろうと捉える事が出来るだろう。恐らくサーヴァントの攻撃とて見切る目は上等だが、それだけではなんの意味もない。見えているものを理解し、行動の最適解を導き出し相手を破壊する。それがお前の目指すべき地点だ」

 

 再び目の前で言峰綺礼が構える。同時に鏡合わせの様に俺も構える。向けられる殺気はとても、ただの組み手とは思えない代物。気を抜き、油断すれば俺の命を持って行く。そういう気持ちがはっきりと伝わってくるほどだ。

 

「無論」

 

 瞬きの間に距離を詰められる。この野郎、使わないと事前に言ってた縮地を使いやがった。心臓目掛けて放たれる拳に対し、掌底を合わせる。ゴキっと嫌な音を立ててお互いの腕が弾かれる。お陰で心臓を潰されなくて済んだ。

 

「ッッ〜〜!!」

 

 いや、イテェ!!明らかに変な方向を向いてる掌を押さえながら痛みを堪える俺を愉しげに見てる言峰綺礼。被害を受けてるのは俺だけか。ああくそっ、この野郎趣味を満たしてんじゃねぇ!!立ち上がり、右脚を大きく振り上げ振り落とす。

 

「こんの野郎が!!」

 

「ふっ」

 

 両腕をクロスさせ、完全に受け止める言峰綺礼。そのまま競り合うなんて愚かな事はせずに、片足で跳躍して距離を取る。チラリと視線を手に落とし、元の形に戻り普段通り動く様になった掌の動きを確かめる。うん、ほんと常識から外れてるなこの身体。

 

「相手が言った事を素直に信じるその愚かさも叩き直さねばならんがね。さて、少しばかり休憩だ。その手も休ませねばならん」

 

 そう言って教会に用意されている椅子に座る言峰綺礼。さて、これは素直に休憩と見るべきか。チラリと言峰綺礼を見れば、聖書を読み始めている。それならまぁ、休めるか。言峰綺礼の隣へ少し間を開けて座る。無言で差し出された手に再生している手を乗せると何度か触られた後に解放される。

 

「ギルガメッシュから与えられた霊薬と聖杯の泥の結果が、その再生力とはな。私もお前もアレには随分と狂わされている様だ」

 

「ちょっと気持ち悪いけど、お陰でお前の鍛錬についていけるんだからタチが悪い」

 

「魔術回路を有していないというのにそこいらの魔術師以上の魔力をその身に宿す。ふっ、魔術協会からしたらホルマリン漬けにしてでも欲しがりそうな研究材料だ。いっそ、なってみるかね?」

 

「はっ!誰が。少なくとも士郎が大きくなるまでは冬木から離れる気はない」

 

 背もたれに背中を預けて聖母像を見上げる。神という奴はなんて残酷なものなのだろうか。俺みたいなただの一般人にこんな不条理を与え、言峰綺礼の様な破綻者を生み出す。いつも天上の世界から此方を見るだけで救いもしない神に存在価値ってあるのかね。

 

「……言峰綺礼」

 

「分かっているとも」

 

 黒鍵を投擲する言峰綺礼と、聖書の紙片を身に付けているグローブに走らせ灰錠を起動させる俺。そのまま、言峰綺礼が投げた黒鍵とは真反対に跳躍しソレを殴りつける。目的は一瞬で達成された。

 

『『ァァァァァ……』』

 

 人の形をしていた劣悪なソレは黒鍵と灰錠の効果により砂の様に崩れて消える。冬木の大災害以降、聖杯の泥に耐えきれずに死した人の中からゾンビの様に蠢く存在が現れていた。大半はそこにいる言峰綺礼に消されたが偶にこうして姿を現す。天敵であるはずの冬木教会に現れる理由は、俺や言峰綺礼の中にある泥に惹かれているのだとギルガメッシュが言っていた。

 

「後処理悪いんじゃないの?」

 

「あの状況から生き延びた人達に被害を出さなかっただけ褒めて欲しいものだ」

 

 両腕に装備された鎧甲に視線を落とす。俺の髪色と同じ白銅色のソレは不死の存在に対して効果を発揮する概念武装。通常の人間相手でも見た目通りの威力は約束されている。言峰綺礼が使う黒鍵は魔力を通す必要があるから、俺には扱えない。だが、この灰錠であるなら指定された聖書の紙片を触れさせれば即座に起動。嵩張らないいい武器になる。普段は、白銅色の手甲として装着している。うん、聖堂教会のアイテム超便利。

 

「それの扱いと悪霊の探知も上手くなったものだ」

 

「そう仕込まれたからな。しかし、良かったのか?俺は別に聖堂教会所属とかじゃないんだぞ?」

 

「なに、余っていたものを貸しているだけに過ぎん。気にするな」

 

 どういう理屈かは分からないが、灰錠は鎧甲から手甲に戻る。渡した本人が気にするなって言ってるなら良いか。椅子に座り、士郎が作ってくれた弁当を開く。中身は俺の好物である唐揚げをメインとしながら彩りで様々な野菜が入っており、別の器でデザートだろうかヨーグルトまで添えてあった。うん、流石は士郎だとても美味しそう。

 

「いただきます」

 

 時間が経ってもカリカリの食感を伝える唐揚げから溢れんばかりの肉汁が出てくる。にんにく醤油ベースに整えられた下味はとても美味しく、一個食べただけでご飯が進む。振り掛けも何もない純粋な白米だが、味の強い唐揚げと合わせるとこれでもかと美味い。そして、それを何度か繰り返すと流石に口の中が油っぽくなる。そういう時は付け合わせの野菜だ。瑞々しい野菜をさっぱりとしたレモンのドレッシングで食べると口の中が一気に清涼感に満たされる。しばらく野菜だけで良いのではと思えてくるレベルだ。きっと、鮮度の高い野菜を士郎が選んでくれたのだろう。

 

「ご馳走様……うん、士郎のご飯は美味い」

 

 一切、食事に対する飽きとかキツさを感じる事なく完食した。食後の腹ごなしに少し動くかと立ち上がり、教会の外に出る。綺麗な満月が夜空を彩っている星空を眺めながら歩いていると背後から声をかけられる。

 

「良い月ですね」

 

 この時間に相応しくない朗らかな子供の声だ。俺に霊薬を渡し、若返りの霊薬を飲み今は子供の姿をしている英雄王ギルガメッシュその人がいつの間にか背後に現れた。

 

「そうですね。ところで、俺なんかに何か用ですか王様?」

 

 振り向きながら彼にそう聞くと、何もかもを見通す真紅の瞳に楽しそうな色を浮かべて子供らしくない残酷な笑顔を浮かべて彼は宣言した。俺にとって最も好ましくなく、苦難の始まりの言葉を。

 

「そう遠くないですよ。聖杯戦争が始まるまで」

 

「は、早くないですか?」

 

「前回が小聖杯の破壊という前代未聞の結果ですからね。冬木の霊脈は衰えていませんし、前倒しみたいな事が起きても不思議じゃありませんよ。ボクという受肉を果たしたサーヴァント、貴方や綺礼の様に特殊な状態で前回を生き延びた人間。ふふっ、これは面白くなりそうですね。貴方もそう思いませんか?影辰」

 

 下を向いて深いため息を吐く。第五次聖杯戦争、始まるのか。どれくらいの時間が経てば始まるのかどうせこの場で聞いてもこの王様は答えないだろう。事前準備を許す様なそんなつまらない事をさせてくれるとは思えない。俺がどの様に抗うのか酒のツマミにもするのだろう。

 

「……思いませんよ。誰が死ぬかもしれない戦いを楽しみにすると思うんですか。あー、もう嫌だぁぁぁ……」

 

 この後、暫く警戒しながら日常を過ごすのだが聖杯戦争が始まる気配はなかった。そして、気を抜いた三年後に聖杯戦争は始まるのだった。無駄に早く知らせたの絶対、無駄に警戒する俺を楽しんでただろうギルガメッシュゥゥゥ!!!




第五次聖杯戦争時点での衛宮影辰のスペック
年齢:23
子供の時と変わらず白銅色の髪を一房後ろに纏めており、無駄なものを削ぎ落とした体格をしている。脱げば誰もが驚く肉体美を誇る。言峰綺礼曰く、体は完成しているとのこと。
霊薬と何故か聖杯の泥により、肉体の再生力が上がっており骨折程度であれば数分で完治する。アヴァロン程の再生力は無い。また、魔術回路は持たないがその身に宿る魔力は平凡な魔術師より多く、彼の魂を喰らえば例え退去寸前のサーヴァントであろうと、追加の1日を得る。霊薬の効果により、この世ならざる存在を探知することができ、修行の最中にそれらの対処方法も言峰綺礼から教わっている。なお、魔術回路はないので洗礼詠唱が使えず、灰錠で殴るだけである。

メイン武装は言峰綺礼より渡された概念武装である灰錠。拳の周辺を纏うだけの簡素な見た目だが、引き継がれたマジカル八極拳と合わせ、ただの人には十分すぎる程の武器となる。
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