転生特典が動体視力?これ、無理ぞ   作:マスターBT

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予告通り雪の妖精登場回!
さてさて、どうなる事か。


届かない想い

「聖杯戦争がどの様なものかは衛宮影辰より聞いているか?」

 

「あ、あぁ。なんでも叶えるって言う願望器を巡る戦いだろう?英霊を召喚して7人のマスターで行う……殺し合い」

 

 士郎が正義の味方を目指すと言った時から、俺は聖杯戦争に関する説明をしていた。いずれ起きる避けては通れないものだと思っていたからだ。まさか10年という短さで再開されるとは思わなかったが。けど、そのお陰で士郎は聖杯戦争に関して無知ではない。

 

「その通りだ。衛宮士郎、お前はセイバーのマスターに相違ないか?」

 

 此処で士郎が拒否したら俺に令呪を押し付けようとか考えてそうな顔してんな言峰綺礼。残念だが、うちの弟はそんなに甘ちゃんじゃないぞ。士郎の方を見るとちょうど向こうも俺を見ており視線が交わった。

 

「兄貴……俺は」

 

「兄貴としてはお前に関わっては欲しくない。けど、好きにしろ。お前に命を賭ける理由があるのなら俺は止めない」

 

 令呪が聖杯によって与えられた時点でもう手遅れなところもあるが、兄貴として可愛い弟が死地に行くのは好ましくない。だが、この聖杯戦争であいつが正義の味方としての在り方を求めているというのなら止められない。

 俺の返事を聞いて覚悟が決まったのか士郎は真っ直ぐ言峰綺礼を見る。その顔を見て、奴は言峰綺礼という人物をよく知る者でなければ気が付かないほどほんの僅かに口角を上げる。はぁ、愉悦を見出したか?おそらく、士郎の中に切嗣を見たか。

 

「俺はセイバーのマスターとしてこの聖杯戦争に参加する」

 

「ふっ、承った。脱落する事があれば教会に来ると良い。脱落したマスターを匿うのも教会の役目だからな」

 

「んじゃ、俺も帰るかね。報告は済ましたし」

 

 椅子から立ち上がり、身体を伸ばす。その際、柱の裏にいたギルガメッシュと視線が合う。笑みを浮かべる彼に対しお辞儀をして士郎と合流する。

 

「衛宮影辰」

 

「なに?」

 

「お前の苦難楽しみにしているぞ」

 

「ハハッ、くたばれ」

 

 返事と共に親指を下に向ける。それに対し、肩を竦める言峰綺礼。

 

「貴方、アレに何か言われてんじゃないでしょうね?」

 

「辛辣ぅ。そんなに信用ない俺?」

 

 刺々しい言葉に軽く返す。凛ちゃんと俺は同じ師匠を持つ為、割と顔を合わす機会がある。しかし、凛ちゃんは魔術中心。俺は体術オンリーである為肩を並べて言峰綺礼を師匠と仰いだ事はない。が、それ故に言峰綺礼と同類に思われてる節がある。確かに使いっ走りを良くしてるけどこんな愉悦激辛麻婆と一緒にしてほしくない。

 

「まぁ良いわ。衛宮くん共々敵になるなら相手してあげる」

 

 ……んー、聖杯戦争を舐めてないかこの子?まぁ、実力は確かにあるし俺には使えない魔術を使える凄い子なんだろうけど、殺し合いだって事分かってるのかな。仕方ない、趣味じゃないけど少しばかり教えてあげるか。

 凛ちゃんを見ながら、自らの意識を切り替える。瞬間、溢れ出した殺気に凛ちゃんがビクリと震え、士郎が俺から距離を取る。

 

「……どうした?少しばかり、殺気を出しただけだぞ。先が思いやられるな、遠坂凛」

 

「ッッ……なんなのよやる気?」

 

 漸く構えた凛ちゃんを見て、殺気を霧散させる。距離をとった士郎がほっと胸を撫で下ろすのが見えた。

 

「なに、ちょっとした警告だよ。前回参加者として、聖杯戦争が甘くないって教えとこうと思ってね」

 

 たかが日本の一地方で行われる程度の魔術儀式と侮って、軽んじるのなら結構。だが、相手となり得る者全てを己より格下と見定める慢心は不味い。どんなに魔術の才能があろうがこの聖杯戦争ではあっさりと命を落とす。魔術師としての腕前だけで勝負が決まるのなら、前回の聖杯戦争はケイネスが勝利者だろう。

 

「じゃあ、帰ろうか士郎」

 

「お、おう。さっきのは怖かったぞ」

 

「本気で殺す気かどうか分からないなんて士郎はまだまだだな」

 

 近くに来た士郎の頭を撫でながら凛ちゃんと一緒に教会の外に出る。言峰綺礼は見送るつもりの様で後ろに着いてきた。

 

「喜べ少年。お前の願いは漸く叶う」

 

「……」

 

 立ち去る士郎の背中に向けて言峰綺礼が呟く。正義の味方……まぁ、どんな在り方を士郎が選ぶかは知らないが確かにこの聖杯戦争で何かしらの形は掴めるだろう。平和な日本で生きているだけじゃ絶対に経験できない非日常をこれから味わうのだから。その果てに士郎がどんな理想を掲げるのかは分からない。分からないけど、どうか切嗣の様な悲しい在り方を選ばない事を俺は願う。

 無駄に長い教会の入り口まで戻ると誰かが立っていた。そう言えば、凛ちゃんの近くには何かしらの気配があるのに士郎の近くには感じなかったな。サーヴァントを此処に待たせていたのか。なんで?霊体化で付き添わせれば良いのに。

 

「待たせたなセイバー」

 

「いえ、話は終わりましたかシロウ」

 

 んん?すごく聞き覚えのある声が聞こえた様な……いやいや、まさかそんな同じ衛宮の名を持ってるからって召喚したサーヴァントまで同じだなんてそんな馬鹿な事はないでしょう。セイバーに該当するサーヴァント候補がこの世界にどれだけいると思ってるの?偶々、似たような声だってそうだよね?そうだと言ってよ。

 

「ん?そちらは………………………影辰?」

 

 黄色い雨合羽のフードを外しながら彼女は凛とした綺麗な声で俺の名を告げた。随分と溜めて呼んだが、彼女と顔を合わしたのは10年前。それだけの月日が経てば、顔立ちなどが変わってすぐに分からなくても当然だ。それでも俺だと気付けるのは、彼女と過ごした時間が偽物ではない証拠だろうか。驚愕に染まっている彼女の顔を見ながら俺は口を開く。

 

「久しぶりだなセイバー。俺の弟を頼むぞ」

 

 はっきりと言えば気まずいところもある。前回のランサー陣営を殺した時、俺とセイバーの関係はとても良いものと言えるものではなかったから。聖杯も切嗣の事も彼女に託したが、結末はあの災害だ。どうしてと思う部分もある。だが、それは過去のこと。もう既に終わった話だ。

 

「はい。シロウは私が必ず守ってみせます。その、随分と雰囲気が変わったので一瞬、気がつきませんでした」

 

「そりゃ10年も経ってるからな。まぁ、詳しい話は後だ後。とっとと帰ろうぜ」

 

 少し無理やりだがセイバーとの話を切って、俺は一人で歩き出す。全く、今日は驚いてばかりだ。少しぐらい覚悟を決める時間をくれってんだ。後ろでセイバーと士郎の間でしっかりとサーヴァントとマスターの関係を構築してるのを聞きながら歩く。

 しばらくして、何やら凛ちゃんと士郎が会話をしているがなんとも青春らしい甘さたっぷりの会話だ。俺みたいな年寄りは夜空でも見上げて邪魔をしないで……と思ったんだが。はぁぁ……今日はほんと忙しいな。

 

「話は「ねぇ、お話は終わり?」……はっ、嘘だろおい」

 

 二人に声をかけようとした瞬間、可愛らしい声に被せられる。振り返った先に居たのは、筋骨隆々の凄まじい存在感を放つサーヴァント。そして、ソレと非対称の小さく愛らしい姿をしている雪の妖精、いや、嘗ての遊び相手。

 

「初めまして私はイリヤスフィール。そして、久しぶりねカゲタツ。キリツグと二人、何もかも放り出して楽しかった?」

 

「……開幕、言ってくれるじゃないか。何をどう聞いているかわからないけど、俺も切嗣もお前を忘れた事は一度もないぞイリヤ」

 

「あら、嬉しいことを言ってくれるじゃない。お母様を見捨てて、私をあのお城に一人ぼっちにしてそこにいるシロウと仲良くやっている癖に」

 

「爺が邪魔しなきゃお前も此処に居た。俺も切嗣も、あの吹雪の中イリヤの元に向かっているんだ!信じてくれ」

 

「嘘。だって、キリツグは私とお母様を捨てたもの。だから、こうしてシロウとカゲタツを殺しにきたの」

 

 駄目だ。全く話が通じない。俺を見るイリヤの目に色はなく、ただ純粋に殺意をぶつけてきている。あのクソ爺何を吹き込みやがった。いや、考えるのは後だ。どうにかイリヤに話を聞いて貰わなければ。

 

「だからね、やっちゃえバーサーカー」

 

「ッッ、セイバー!!士郎を頼む!!」

 

 膨れ上がる殺気と存在感に弾かれる様に俺はセイバーに士郎を任せ、凛ちゃんと士郎より前に出る。俺までの間に存在している障害物として二人が殺されない様に。結果として、俺とバーサーカーの距離はかなり縮まる事となった。

 

「サーヴァントの前に飛び出すなんて死ににきたの?」

 

 振り下ろされる圧倒的なまでの暴力が俺に迫る。何もしなければ、このまま俺は挽肉となるだろう。だが、こちとら子供の身でサーヴァントの戦いに横槍を入れた男だぞ。大人になればこんな事も出来る。自身のスピードを一切落とす事なく、その暴力に突っ込む。こいつは常人より明らかに図体がデカイ。振り回している得物も雑な作りで大きい。こういう相手にはむしろ間合いを詰めた方が立ち回り易い。

 

「兄貴!?」

 

「ちょ、アーチャー!!」

 

 二人が何か騒いでいるが関係ない。俺はバーサーカーと一気に距離を詰めて、その勢いのままスライディング。バーサーカーの股の隙間を通り抜けた。勢いそのままに立ち上がり、背後で聞こえる凄まじい爆音を聞きながらイリヤへと駆け出す。

 

「ッッ!」

 

「イリヤ!!俺は──!」

 

 背後から膨れ上がる殺気に振り返る事なく、跳躍する。さっきまで自分の胴体があったところをバーサーカーの拳が通過していった。着地してすぐにバーサーカーが飛んでくる。聖書の紙片を走らせ、灰錠を起動。今度は、バーサーカーが振るった石斧の上に両手を置き距離を取る。だが、これによりイリヤとの距離は元に戻ってしまった。イリヤを庇う様に立つバーサーカーと睨み合う。

 

「はぁ……はぁ……」

 

 流石に残っている体力が少ない。一度殺されかけてから一日も経過していないのだから、当然だ。しかも今対面しているのはサーヴァントの中でも屈指の存在だろう。一瞬でも何かを間違えればその瞬間、俺は大地に咲く血の花に成り果てる。さっきも横凪ぎに振るわれた石斧に軽く手を置いただけで手首が逝かれた。再生する身でなければその時点でチェックメイトだ。あいつがイリヤを守ろうとしているからどうにか成立している戦い。

 

「影辰!」

 

 セイバーが俺の横に並び立つ。既に近くに士郎と凛ちゃんの姿はない。どうやら無事にこの場から遠ざけてくれた様だ。

 

「二人は離れたところに。アーチャーに護衛を頼んであります」

 

「助かる。つまり、この場はこの四人のみって事か。バーサーカーを任せても?」

 

「無論です。影辰は存分にイリヤスフィールと話を」

 

「あぁ。任せろ、死ぬなよセイバー」

 

「えぇ、貴方も」

 

 拳を互いにぶつけ構える。背中を預けるにはこれ以上とない相手だ。全てを信じて、俺はイリヤを見る。どうやら向こうもこちらの同じ方法を取る様でバーサーカーはその目を俺からセイバーに向けていた。イリヤと視線が交差する。

 

「バーサーカーの攻撃を避けて見せたのは驚いたけど、貴方は此処で殺すわカゲタツ」

 

「殺されねぇよ。俺がどれだけお前を大切に想ってたか分からせてやるから覚悟しろイリヤ」

 

 過去の因果が一つ、今此処にぶつかる。




気まずいと思いながらもセイバーの強さは信頼している影辰。この二人の蟠りも解決すると良いですね。
バーサーカーの攻撃に更に突っ込むとか狂ってんじゃないの?この男。

次回はどこまで行けるかな。ちょっと未定。

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