転生特典が動体視力?これ、無理ぞ   作:マスターBT

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今回は、後書きも文なので先にこちらでいつものを。
感想・批判お待ちしています。


友人だからこそ

 その日は至って普通の日常だった。人目のない時間、秘密裏に行われる聖杯戦争の影なんて微塵も感じていなかった。生徒達も、教師達も与えられた時間をあるべき姿で受けていた。ただ、少しだけ違う事があるとするなら授業を今まで一度もサボった事のなかった親友の姿がなく、その妹も体調を崩したとかで休んでいる事だ。

 

「お見舞いの品、何が良いだろうか」

 

 そんな日常の当たり前を考えながら外を見た瞬間だった。視界の全てが真っ赤に染まった。まるで、血をばら撒いたが如く。それに驚いていると、教室にいる生徒や教師達が次々と倒れていく。そんな光景を見ていた青年も視界がぐらりと歪むが、全身の魔術回路を励起させ魔力を循環させる事で耐える。

 

「なんなんだ……一体。何が起きてる!?」

 

 焦る青年だが、一つ心当たりがある。聖杯戦争だ。この学校には、何かしらの刻印が至る所に刻まれており、何個かは同盟関係の彼女と破壊したがそれでも、全てを破壊する事は出来ていなかった。だが、まさか日中のしかもまだ大勢の人がいる学校で事が起きるとは考えもしていなかった。聖杯戦争は夜、人目のつかない場所でしか行われないと油断していた。確かに、神秘の秘匿の概念から目立つ時間帯を避けるのは当たり前だ。しかし、戦争がそんな賢いものである確証なんて存在していない。

 

「衛宮くん、無事!」

 

「遠坂!何が起きてるんだ!」

 

「結界が発動したのよ。しかも、かなり悪辣なものがね。早く、術者を見つけ出さないと最悪、みんな死ぬわ」

 

「なっ!?」

 

 起動した結界は結界内部の人間から魔力を強制的に汲み上げるもの。魔術の心得がある人間なら兎も角、ただの人間では抗うこともできずその魔力と共に命を吸われ尽くし死に至る。これはそういう類の結界だと遠坂は説明した。聖杯戦争に無関係な者達を巻き込む、そんな悪意ある行動を取れる術者に士郎は怒りを覚えた。

 

「遠坂、心当たりの場所とかあるか?」

 

「無いわ。この手の起動が厄介な結界は恐らく、術者の場所を固定する必要がない。ただ、離れすぎても効率が悪くなるから校内の何処かにはいる筈よ」

 

「分かった。虱潰しに探そう!」

 

「ちょ、衛宮くん!」

 

 士郎は言うや否や教室から走って出ていく。それを慌てて追いかける遠坂。二人は近くの教室から順番に一つ一つ見て行く。だが、何処を見ても倒れ伏す生徒や教師ばかりで術者を見つける事は出来ない。焦りだけが二人の心の中に蓄積して行く中、新たな異常が顔を出す。

 二人が一階に降りた時だった。霧の様なものが廊下に現れ、その中から骨で出来た兵が現れたのだ。身体から手に持つ武器まで、骨で構成されたその兵は二人を見ると、嘲笑う様にカタカタと音を立てると同時に二人を包囲する。いつの間にか廊下には、骨の兵が数えきれないほど現れていた。

 

「竜牙兵!?用意するのがめんどくさい触媒をたっぷり使ってくれたわね……」

 

「こうなったら令呪でセイバーを……」

 

 士郎が令呪を使おうとした瞬間、校門側の方から竜牙兵だったものが勢いよく吹き飛んできた。

 

「「は?」」

 

 二人が驚きで固まっている間にも、次々と竜牙兵が吹き飛び粉々になりながら他の竜牙兵と衝突して行く。二人を包囲していた竜牙兵達も校門の方を見る。破砕音を響かせながら音の発生源が現れる。白銅色の手甲を身に付け、警備員指定の服を着ている男──衛宮影辰。

 彼が現れると同時に他の竜牙兵が飛び掛かる様に襲いかかるがその全てが、一瞬のうちに粉々に成り果てた。色のない瞳をしていた影辰は士郎達を視界内に捉えると、平坦な声で話す。

 

「一階は全部見た。此処は俺に任せろ。お前らはお前らがやるべきことをやれ」

 

 自身の背後に現れた竜牙兵と正面から飛んできた竜牙兵を打ち砕く。彼が扱う八極拳の中でも、得意とするのが重心を落とし強力な一撃を叩き込むこと。自ら向かう事もなく、勝手に突っ込んでくる竜牙兵との相性はとても良かった。その場からほとんど動かず竜牙兵達を粉々にしていく。

 

「任せた兄貴!遠坂、上だ。上を見るぞ」

 

「え、えぇ。分かったわ」

 

 士郎達は階段を駆け上がっていく。追いかけようとした竜牙兵にはその背後から竜牙兵だったものが飛んでいき、動きが阻害される。後を追いたければこの男を殺すしかないと竜牙兵達の意識は一つとなる。

 

「来いよ。骨、警備員の恐ろしさたっぷり味わわせてやる」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 階段を駆け上がる。3階を見たが、やっぱり術者は居なかった。それならもう考えられる場所は屋上にしかない。遠坂と一緒に駆け上がってり、屋上の扉を勢いよく開け放つ。太陽の眩しい光に一瞬、顔を顰めるがそこには俺が最も居てほしくないと願っていた男が立っていた。

 

「思ったより速かったな。やぁ、気分はどうだい士郎?」

 

「あぁ。最悪だよ慎二」

 

「そう怖い顔するなよ。これは聖杯戦争だぜ、使えるもの全部使ってるだけさ」

 

 ポケットに手を入れたまま笑みを浮かべる慎二。そこには微塵も自分が悪いとは思ってなさそうだった。馬鹿なことをしている親友を殴りたくなるが、その瞬間、慎二の横にサーヴァントが現れる。

 

「……そう。そういう事、あんたがこんな大結界出来るとは思ってなかったけど、そのサーヴァントが使ってるって訳ね」

 

「ご名答。流石は、遠坂の当主だな」

 

「本当は今すぐにでも、ぶん殴ってやりたいけど間桐くん、一つ聞きなさい」

 

「聞いてやるよ」

 

 サーヴァントを連れている余裕か慎二が遠坂の話を聞く姿勢を見せる。そして、遠坂は慎二にあの日、兄貴から聞いた事それから予測される聖杯が、万能の願望器等では無い可能性を急ぎ足で説明した。これで慎二が敵対を辞めてくれるそう思って、俺は慎二の方を見るがあいつはさっきまでと一切、変わらない顔をしていた。

 

「あっそう。でも、僕に叶えたい願いとかそういうの無いから。聖杯が手に入ればそれで良い」

 

「なっ──話を聞いてなかったのか慎二!聖杯は」

 

「悪いものかもしれないんだろ?聞いてたさ。けど、僕には引けない理由がある。例え、汚染されていようが聖杯は聖杯だ。僕は何としても聖杯を手に入れる。その為にこんな事をしているんだからね!」

 

 慎二が何処からともなく、本を取り出す。

 

「もう話し合いは終わりだ。大丈夫、殺しはしない。ただ、気絶した後に令呪を奪うだけさ。やれ、ライダー!!」

 

 慎二にも何か理由はある。けど、例えどんな理由であろうと無関係の人間を巻き込んで良いはずが無い。慎二はそんな事が分からない奴じゃなかった。だから、きっとこの行動には慎二なりの何かがあるのだろう。だけど!俺はそれを認められない。認めて良いはずがない。

 向かってくるライダーがやけにゆっくりに見える。頭は澄み渡り、何をするべきか即座に導き出せた。あぁ、これは聖杯戦争だ。これが聖杯戦争なんだ。俺は令呪が宿る左手に力を込め、全力で叫ぶ。

 

「来い!セイバー!!!!!」

 

 瞬間、俺の目の前が光り輝き彼女が現れる。令呪を用いる事で可能となる奇跡、瞬間移動。それによって現れたセイバーは、俺たちに向かってくるライダーを不可視の剣で吹き飛ばす。空中で、体勢を整えたライダーが慎二の横に着地した。

 

「……はっ」

 

 セイバーを見て、一瞬慎二が乾いた笑みと共に声を出した。自らを嘲笑う様な姿だった。

 

「シンジ」

 

「心配するなよライダー。僕の決意は何一つ変わってない。お前こそ、あっさり吹き飛ばされてくれるなよ?」

 

「無論です」

 

 顔を見合わせ頷き合うライダーと慎二。そんな二人を見ながら俺は遠坂より一歩前に出る。

 

「衛宮くん?」

 

「遠坂、今回は俺とセイバーに任せてくれ。友人として馬鹿した奴はぶん殴ってやらなきゃな」

 

「……分かったわ。でも、負けそうになったら手を出すからね」

 

「ありがとう。遠坂」

 

 更に一歩前に出て慎二の距離を詰め、セイバーと肩を並べる。

 

「遠慮なく行くからな慎二」

 

「ふん。来いよ、士郎」

 

 本を広げる慎二。思えば、しっかりとした慎二との喧嘩はこれが初めてかもしれない。いっつもどっちかが引くから喧嘩なんて事にはならなかった。けど、今回はどちらも引かない、引けない。

 

「慎二ぃぃ!!」  

 

「士郎ぅぅ!!」

 

 俺たちが叫ぶと同時にセイバーとライダーも戦いを始める。きっと、前代未聞だろう。聖杯戦争でただの喧嘩をする馬鹿二人は。




時間は少し、遡る

「なにこれ……凄く気持ち悪い……」

 校舎の壁に両手を当てながらゆっくりゆっくりと歩く。教室を見れば生徒も教師も皆んな、苦しそうに呻きながら倒れている。さっきまで、授業が行われていたのに。一体何が起きて……

「とりあえず……外に出て助けを……」

 はっきり言って私も倒れてしまいたいぐらいには気持ち悪い。こうしている間にもどんどん力が抜けていくし。でも、もし此処で倒れてはい、お終いとか嫌だ。まだやりたい事も食べたい物も沢山あるんだ。死んでたまるか……!

「……ん?」

 目の前で霧みたいなのが集まっていく。やがて、それは形を取る。全身骨で不気味な姿をした化け物。手には同じく骨で出来た剣みたいなものを持っているのが3体。それらは何故か私を敵と見ているのか瞳のない顔を向けて、近づいてくる。

「……あぁ、もう。最悪」

 私が一体なにをしたというのだろうか。あぁ、もう知らん。喧嘩なんてした事ないけど、全身に力なんて入らないけど──

「かかってこいや……!」

 私の言葉が分かるのか同時に3体が向かってくる。拳を構えて殴る準備をして──

「岸波!!」

 衛宮が鉄パイプで纏めて吹き飛ばしてしまった。私を守るように庇ってくれるその背中に安心感を抱く。当然、張り詰めた気が抜ける訳で……

「岸波!?おい、岸波!?」

 私を助けてくれたヒーローを見ながら意識を手放したのだった。
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