「フハハハハ!!足掻いてみせよ、雑種!」
黄金の波紋が開かれその数、実に100以上。それら全てを完璧に投影するには今の、衛宮士郎の技術では足りない。故に、ギルガメッシュが展開した宝具その全てに目を通し、その中からより優れた物を選び取り自身の背後に投影したがその数は、10にも満たない。彼一人では、圧倒的な物量の差の前に無様な屍を晒すだけだろう。
「セイバー!!」
「お任せを」
だが、彼は一人ではない。最優の騎士が駆ける。筋力ではない魔力の放出により地面を滑る様に、素早くギルガメッシュへと向かっていく。その迎撃に100の宝具の半分が使われるが、それらは全て不可視の聖剣に纏っていた風を解除することで、より圧倒的な速度に至ったセイバーには当たらない。ギルガメッシュの圧倒的な宝具による物量は、確かに強い。だが、鍛えられた技術ではない為に相手の行動を読み、放たれている訳ではない。故に接触より早く、ギルガメッシュの認識より速く駆け抜けてしまえば放たれた宝具はただ、地面に打ち捨てられるだけだ。
「はぁぁ!」
「ふっ、甘いわ!」
上から振り下ろされた聖剣はギルガメッシュが手に持つ二刀で受け止められる。直後、セイバーの聖剣からジェット機のエンジンの様な音を立てながら、吹き出す。本来のマスターである士郎ではとても賄えきれない魔力放出。それを可能にしているのには理由がある。
『セイバーさん。私が魔力供給を担当します。そうすれば、遠慮なく戦えますよね』
ライダーが敗北した日、彼女のマスターであった間桐兄妹は安全を求め、衛宮家に転がり込む事になった。兄である慎二は桜を聖杯戦争に関わらせたくなかったが、我儘を言うことを覚えた桜は想い人である士郎の力になりたいと隠さずに慎二に告げ、暫くの口論の後見事に了承させた。可能な限り妹の安全を守りたかった慎二は、過去に読んでいた書物の中から令呪に関する記述を思い出し、契約の分担を士郎と桜に教えたのだ。
そこからは話が早く進み、魔術を使えないが知識のある慎二と、魔術師として底知れぬ資質を持つ凛が令呪の仕組みを解き明かし、令呪を士郎に宿したまま魔力供給先を桜に見事変更させていたのだ。
「はぁぁぁぁ!!」
「くっ、流石に単純な力比べは分が悪いか」
違う霊基で呼ばれていれば真っ向から競い合う事も出来たかもしれないが、今のギルガメッシュでは魔力放出を行うセイバーの剣を受け止め続けるのは不可能だった。故に、真っ向から競い合う気などギルガメッシュには全くと言って良いほど無い。そもそも、二刀流は本来、攻めるより守りの方が優れているのだから。ぶつけ合っていた刀身を傾け、セイバーの剣を綺麗に受け流す。そこには、王ではなく戦士として培った確かな技量が存在していた。
逸された力が音を立ててギルガメッシュのすぐ横の地面を砕く。剣が逸され、生まれた隙間にギルガメッシュが蹴りを入れるが、籠手でそれを防ぎ両者の距離が互いの刀身の少し外へと離れた。
「この距離であれば、貴方が宝具を放つより早く私の剣が貴方を貫きます。英雄王」
「ふっ、その様な無粋な真似はせんよ。しかし、良いのか騎士王?お前のマスターは、我の宝具を凌ぐのすらやっとの様だが」
驚く事にセイバーと戦いながら、ギルガメッシュは残り50の宝具を士郎と慎二へと放っていた。セイバーがチラリと視線を向けると、切り傷を作りながらも立っている士郎とその後ろで、彼が投影した剣を持ち同じく切り傷が身体中にある慎二が立っていた。
「一度凌いだ事は評価しても良いが、足りんな。影辰は、倍の数を放たれてもなお無傷だったぞ。その手に小聖杯の器を抱えながらな。それがどうだ?贋作を作りながら、二人がかりでなお、傷を負っている。あと何度攻撃を防げる?」
今でも鮮明に思い出せるあの日の情景。ただの人間が、ボロボロになりながらも自らに一矢報いた勇姿。あの時間はギルガメッシュを存分に楽しませた。宝物庫の奥深に眠り、滅多に使わないエアを抜いたところからもそれは分かるだろう。だからこそ、あの男の弟という雑種には期待した。同様に自らも楽しませてくれるだろうと。だが、現実はどうだ?たった一度の攻撃を凌ぐのすらやっとではないか。
その落胆とも言える言葉と表情を見ながら士郎は笑みを浮かべた。開幕の一撃、それさえ防げればそれで良かったのだ。
「……体は剣で出来ている」
詠唱を開始しながら士郎は兄の言葉を思い出す。
『王様はめちゃくちゃに強い。ここにいる奴らが束になっても勝ち目は薄いだろう。けど、あの人には余りにも大きすぎる欠点がある』
兄貴が言った通りだった。無限にすら思える宝具は確かに強い。選りすぐりを投影したけど、全然保たずに体で受ける事も考慮しながら弾かなければならなかった。それでも、士郎と慎二はまだ生きている。あの英雄王の攻撃を受けてなお、五体満足で生きていた。
「血潮は鉄で、心は硝子。幾たびの戦場を超えて不敗。ただの一度も敗走はなく、ただの一度の勝利もなし」
何かを察知したギルガメッシュが宝具を放とうとするが、そこにすかさずセイバーが斬り込む。それに対処しなければならないギルガメッシュは、狙いを定めて士郎に向け宝具を放つ余裕はない。
「故に担い手はここに一人。剣の丘で鉄を鍛つ。ならば、その生涯の果てに意味は生まれ」
『あの王様は、絶対であるが故に慢心する。特に、評価に値しない雑種だと分かればな』
王の慢心を誘うために奥の手を先に使わず、一回攻撃を死ぬ気で凌ぐ必要があった。見事、策は通り今のギルガメッシュに士郎の固有結界の展開を阻止する余裕はない。
「この体は、無限の剣で出来ていた!!」
詠唱が完了し、士郎の心象世界が現実世界を塗り替える。どこまでも吹き抜ける雲一つない綺麗な青空、頬を撫でる風は優しくまるで、晴れた日の草原に立ってる様な気にすらなってくる。だが、地面には草木はなく代わりに無数の剣が突き刺さっていた。争いのない世界を望みながらも、現実はそう優しくないと理解した士郎の心象世界は、優しくけれど敵対者には容赦が無い。
「……ほぅ。固有結界か、面白いタネを仕込んだものだな雑種」
ギルガメッシュはいつの間にか自身の目の前にセイバーと並び立つ士郎を見る。白黒の二対の剣を握る士郎は圧のあるその視線を真っ直ぐ見つめ、セイバーと共に構える。サーヴァントと共に白兵戦を行うその姿にギルガメッシュは、真紅の瞳を細め興味深そうに見て気がつく。雑種が一人足りないと。
「慎二は向こうに置いてきた。俺一人じゃ、お前の攻撃を防げないかもしれないから連れてきただけだしな」
「そうか。まぁ良い。では、裁定の時だ。いくぞ、セイバー。そして、フェイカーよ」
ギルガメッシュが黄金の波紋を生成しながら、二刀を構える。セイバーと士郎を取り囲む様に展開された波紋から、宝具が顔を覗かせれば士郎の固有結界にある宝具達がどこからともなく、飛来しその全てを叩き落とす。贋作である士郎の宝具達は砕けていくが、ギルガメッシュの最も使い勝手のいい攻撃手段を完全に潰し、士郎とセイバーが左右から同時にギルガメッシュへと斬りかかる。
「……舐めるなよ。この我を」
息の合った同時攻撃という幾ら二刀流でも防ぎきれない連携攻撃。士郎の固有結界によって宝具の波状攻撃を防げなくなったギルガメッシュに、打つ手は無いかと思われた。だが、この程度で死んでいれば原初の英雄などと彼は呼ばれていない。新たに開かれた波紋から、勢いよく鎖が飛び出し士郎へと襲い掛かる。彼が信頼する宝具、天の鎖である。まるで意志を持っているかの如く、縦横無尽に動き回り士郎が弾いたとしてもまた舞い戻り襲い掛かる。
そこから視線を移し自身の首元にまで迫っていたセイバーの剣を二刀で器用に弾く。その一撃は先ほどより軽く、魔力放出をしていないのは士郎を気遣っての事のだろう。優しいが故にそれが隙となった。焼き回しの様に再びセイバーを蹴り、今度は自らセイバーに斬りかかるが、そこに士郎が自らの意思で動かした剣が何本も降り注ぎ、ギルガメッシュの動きを止める。
「はぁぁぁ!」
そして足を止めたギルガメッシュの元に天の鎖を掻い潜った士郎が斬りかかる。神性などカケラもない士郎に対しては天の鎖の動きも悪く、抜け出せた。だが、人間の筋力でサーヴァントの筋力に勝てる訳がなく降り注ぐ剣を避け続けるギルガメッシュの片手で、防がれ弾き飛ばされる。地面を転がりながら、士郎は空いた両手に再び白黒の剣──干将・莫耶を投影し、ギルガメッシュへと投擲する。当然、真正面から投げられたソレは簡単に弾かれる。
そして、空中で回転したまま不自然に停止し再びギルガメッシュへと襲い掛かる。4本の剣戟となって。
「セイバーぁぁぁ!!」
ギルガメッシュに簡単に防がれ、地面を転がりながら士郎は最初に投影した干将・莫耶を投擲していたのだ。そして、互いに引き寄せる性質を持つこの剣は、もちろん後から投げられた干将・莫耶とも引き寄せる。結果として、左右からギルガメッシュを挟む様に干将・莫耶は互いを引き寄せていた。そこに背後からセイバーが斬りかかり、正面からは士郎が別の剣を投影し斬りかかるという合計四方向からの攻撃だ。
「「はぁぁぁぁ!!」」
今度こそ届くという確信を持ってセイバーと士郎はギルガメッシュへと走る。
その、連携を、策を、決死の覚悟を、原初の英雄は賞賛し、それでも届かぬ輝きがこの世界にはあると示す。
「ふっ、フハハハハハ!!大した策だ。だがな、騎士王にフェイカー。素直に貴様らにこの首をくれてやるほど我は甘くないぞ?」
ーー起きよ、エアーー
ギルガメッシュを中心に赤い渦が全てを飲み込んでいく。飛来していた4本の干将・莫耶は渦にあたると同時に粉々に砕け散り、やがてその渦は士郎とセイバーを飲み込もうとしていた。魔力放出で、あり得ない挙動をしながらセイバーが士郎を抱き抱えギルガメッシュから離れる。そして、ギルガメッシュを中心に世界は壊れていく。
「乖離剣エア。まさか、一度の聖杯戦争で二度も抜く時がくるとはな。流石の我も予想していなかったぞ」
渦の中から士郎をもってしても鑑定できない宝具を手にしたギルガメッシュが現れる。身に纏っていた黄金の鎧を上半身だけ解除し、その美しい肉体を顕にしていた。
「ッッ!!セイバー、令呪をもって命じる、宝具を放て!!」
「良い選択ですシロウ!」
目の前の英雄王から感じる圧倒的な重圧感から士郎は令呪を使って、セイバーに宝具の使用を命じる。そうしなければ死ぬと、本能が教えていたからだ。それでも全身の震えは止まらない。濃密すぎる死の気配が士郎を包んでいた。そんな士郎を安心させる様に、黄金の輝きが顕現する。
かつて、その輝きを一人のホムンクルスはこう表現した。
『輝ける彼の剣こそは
過去・現在・未来を通じ戦場に散ってゆく全ての兵たちが今際の際に懐く、哀しくも尊き夢』
正しくその通りだ。悲しくも尊きこの輝きは絶望の中でこそ、その真価を発揮する。相対する渦に向けてセイバーは、両手で聖剣を掴み天へと掲げる。
「
それに応じる様にギルガメッシュが、エアを構える。今なお、士郎の固有結界を破壊しながらうねる赤い渦が一点へと収束していく。正しく世界を斬り裂くその渦は、圧倒的な破壊力をもって聖剣の輝きへと放たれる。
「
安心感すら覚える輝きと全てを飲み込み破壊する渦が両者の中央でぶつかり合う。その余波はただでさえ、崩壊していた士郎の固有結界をさらに壊していく。そして、固有結界が消失すると同時に、圧倒的なエネルギーは、爆ぜて両者を吹き飛ばした。消えていく固有結界が放出されたエネルギーの何割かを受け持ったが、抑えきれないエネルギーは、現実世界で放出され大空洞の一部を崩落させた。この程度で済んだだけマシだと言えるだろう。
「ぐっ……」
セイバーが膝をつく。規格外の威力を誇る宝具のぶつかり合いは、僅かにギルガメッシュが勝利し打ち消せなかった余波がセイバーを襲ったのだ。魔力消費の激しい宝具を使ったことで、減った魔力を急ぎ桜から吸収し、傷を治すセイバー。しかし、幾ら桜と言えど、全て賄うのは難しく後一度、全力で撃てるかどうかと言った具合だ。
「「セイバー!!」」
膝をつくセイバーに士郎と、そして崩落と共に落ちてきたアーチャーが声をかけると、同時にギルガメッシュが立っていた方向から数えきれないほど沢山の宝具が顔を覗かせ、放たれる。上半身に僅かばかりの傷があるギルガメッシュが、全てを終わらせようと圧倒的な物量でセイバー達を押し潰そうとしていたのだ。
「「
先ず、先んじて走り出していた士郎がセイバーの前に立ち、4枚の花弁が展開される。次にアーチャーが、大きく一枚の花弁を展開し、自身のマスターである凛、かつての友人慎二、そして先ほどまで敵対していたキャスター陣営を護る。放たれた宝具群は、花弁に当たると激しく火花を散らしやがて、勢いを無くし地面に散らばっていく。
「くそっ……」
一枚、また一枚と士郎の盾が散っていく。投影という技術の練度において、士郎はアーチャーには遠く及ばない。故に、ランクの高い宝具が衝突すれば容易くヒビが入り、やがて壊されてしまう。だが、諦めてなるものか。背後には自分の相棒がいるんだ、手が届く人を護るのが衛宮士郎の理想だろう!
「うぉぉぉぉぉ!!」
展開された花弁が輝くと、新たに5枚目の花弁が展開される。それは、士郎の想いに応える様にギルガメッシュの宝具を受けてなお、傷一つ付かず士郎とセイバーを護る。それをアーチャーは笑みを浮かべ見ながら士郎へと指示を出す。
「衛宮士郎!」
「なんだ、アーチャー!!」
「死ぬ気で投影しろ!この宝具を全て、凌ぐのは私達でなければ不可能だ。分かるな!!」
「分かった!!けど、遠坂は平気なのか!!」
士郎はこの戦いに参加するにあたり、凛から魔力の供給を受けていた。その言葉に僅かに顔色を悪くしながら、凛は親指を立てて向ける。
「令呪をもって、命じるわアーチャー!!貴方の真髄を私に見せて!!」
「ーーふっ、了解した」
令呪の光が駆け抜けると同時に、アーチャーの背後に大量の宝具が投影され、一斉に射出され、ギルガメッシュの宝具と激突。花火の様に視界を埋め尽くすほどの爆発が起きる。だが、それでも無限とも呼べるギルガメッシュの宝具は再び攻撃を再開するだろう。その僅かな隙間を士郎の投影が駆け抜ける。士郎の優れた観察眼は、ギルガメッシュの宝具の射撃から、煙幕で見えなくても彼の位置を特定していた。そして、位置さえ分かれば的確に射抜くのが衛宮士郎という男だ。
「そこだ!」
「ぐっ……やるではないか。フェイカー!」
ギルガメッシュの右肩に士郎が投影した剣が刺さる。攻撃を受け、不満に満ちた顔でギルガメッシュが士郎を見る。そこには、彼に護られていた筈のセイバーが姿を消しており、それにいち早く気が付いたギルガメッシュは視線を走らせ天井から、斬りかかるセイバーを捉える。咄嗟にエアを起動させ、その風圧でセイバーを吹き飛ばす。ここまでしてもなお、一手、ギルガメッシュには届かない。
「む?」
ギルガメッシュは、反射的に自らに投げられた小瓶を斬り裂く。中身はなんて事のないただの水であった。正しく、水を差されたギルガメッシュは不機嫌そうに投げられた場所を見ると、この戦いであっても損なう事なく描かれている魔法陣の上に立つ慎二が居た。その雰囲気からヤケになった訳ではないのが分かる。
「一番大事な役目を、魔術師でもない僕に任せるってほんと、どうかしてるよね」
震えた手で祖父から渡された特別性の偽臣の書を開く。既に、召喚の術式は刻まれており魔力を流すだけで術式は起動するだろう。だが、その肝心な魔力を生成する術を慎二は持っていない。ならばどうするか?持っているものから借り受ければいい。何処からともなく、羽虫にしては大きな蟲が二匹、慎二の横に現れる。
「力を貸せ。刻印蟲」
間桐臓硯が与えた秘策の一つ、彼の本体に成り代わる事すら可能なほど成長した刻印蟲だ。その中でも、慎二に懐いた二匹は相性が良く慎二が手に持つ偽臣の書に触れると蓄えていた魔力を効率よく流し込む。これにより術式は完成し、足元の魔法陣が光り出す。何かしようとしている慎二をみすみす見逃すほど、ギルガメッシュは甘くない。宝具が彼に向けて放たれるが、それらは全てアーチャーと士郎によって叩き落とされる。
話は変わるが、キスはする場所によって意味が変わるという。分かりやすいところで言えば、唇は愛情。手の甲へのキスは敬愛など言った具合だ。では、あの日慎二がキスされた額の意味はと言うと、『祝福』だ。そして、祝福というのは古今東西様々な女神が、数多の勇者に施してきたものでもある。女神に祝福を受けるというのは名誉でもあり、呪いでもある。何故なら、勇者の行く末を女神はいつでも見ているという事なのだから。
そして、メドゥーサは神性こそ低いが立派な女神の一柱だ。なら、今この瞬間も慎二を見ているのではないだろうか?
「お前の力が必要だ。もう一度、力を貸してくれ!!メドゥーサ!!」
本来、一度敗退したサーヴァントが再び召喚される事はない。そもそも、召喚される席が埋まっているのだから。だが、此度の聖杯戦争はキャスターがルールを破った事で、本来のアサシンの枠が埋まっていない。その枠を利用し、慎二に最も縁が深い彼女を呼ぶ。それが間桐臓硯が慎二に託した秘策だ。本来なら、ハサンが呼ばれる筈だがその当たり前を諦めず足掻いてきた慎二の可能性と、メドゥーサとの縁が打ち破るのを期待した。
そうして、那由多の可能性の先から女神が応える。
「……全く、シンジは我儘ですね」
アーチャーと士郎が防ぎきれずに慎二の元に飛んできた宝具を鎖が弾く。慎二には聞き慣れた気だるげな声と共に。
「サーヴァント、アサシン。メドゥーサ、召喚に応じて参上しました。ご命令をマスター」
「ッッ……ああ!あの王様の動きを止めてくれ!!アサシン!」
ライダーではない為、学園で見せたあの宝具は使えない。だが、代わりにアサシンとして召喚された事で彼女が持つ最高峰の魔眼が完全に制御可能となり、指向性を持った石化の魔眼がギルガメッシュを襲う。
「
「既に敗退したサーヴァント風情が!!」
ギルガメッシュの対魔力を容易く突破し、ギルガメッシュの四肢が石化。完全に動かなくなる。サーヴァントも持たず、特別な力もない慎二だからこそギルガメッシュは、無意識の内に警戒すべき対象から外し、何故士郎が慎二を固有結界内部に取り込まなかったのか考えなかった。全てはこの一撃の為に。足りない一手を補う為に入念に準備された策だったのだ。
「後は任せたぞ、士郎!!」
「あぁ!令呪をもって命じる、セイバー!!ギルガメッシュを倒せ!!!」
エアの風圧で飛ばされていたセイバーが令呪を受け、ギルガメッシュに突撃する。その聖剣を黄金に輝かせながら。余裕が一切、無くなったギルガメッシュは、再びエアを起動させその風圧をもって何もかも吹き飛ばそうとするが、それを聖剣が斬り裂く。本来、膨大なエネルギーとして放たれるそれをセイバーは、聖剣に留まらせていたのだ。令呪とそして、神造兵装として造られたエクスカリバーの魔力を宿らせた剣戟はエアの風圧すら斬り裂き、ギルガメッシュを右から斜めに斬り裂いた。
「……クッ、フハハハ!!実に見事だ。よくこの我を踏破したな……騎士王よ」
「私だけの力ではありません。皆が死力を尽くしたからこそ、届いた一撃です英雄王」
背中合わせで二人の王は最期の問答をする。致命傷を受けてなお、地に伏す事のない英雄王は満足気に自らを超えた者達を見る。
「良い臣下を得たものだ……」
「臣下ではありません。かけがえのない友です」
「そうか。友か。ふっ、であれば我が破れるのも理解してやろう」
どこか儚気にそう呟いたあと、ギルガメッシュは天を見上げる。孔は開かれているが零れ落ちる泥は10年前より少ない。これでは、彼奴への褒美には足りぬなと思いながら、此度の現界で新しく出来た二人の臣下の行く末を気に掛ける。奴が生きるか、共に死ぬか。なんともまぁ、憐れな定めよなぁ。
「……ではな、騎士王。美しく可憐で、そして憐れな女よ、良い戦いであった」
ギルガメッシュは、満足そうに笑みを浮かべ終わりを迎えた。此処に、最古の英雄は打倒されたのだ。自らの死後、生きた者達の手によって。それは過去に名を残した英雄にとって、間違いなく最も尊い結果であっただろう。
次回はちょっとした幕間を投稿します。
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