もう潜れよって感じのハードルになってる気がするけど、僕頑張るよ。
今回は予想外に長くなったので前後編に分けます。おかしいね、第四次聖杯戦争はあっさり目でいく予定だったんだけどな……まぁ、ここは外せないかなって。
日が落ち、夜の帳が下りる。それはつまり、魔術師の時間が訪れたという事。昼間、セイバーと共にアイリスフィールに振り回された俺は一切の休憩なく、この時間を迎えてしまった。場所は冬木市郊外のコンテナターミナル。そう、キャスターを除く全てのサーヴァントが勢揃いする瞬間だ。既に切嗣、舞弥さんは所定の場所に着き、今頃スナイパーライフルのスコープでも覗いている頃だろう。
「これが英霊同士の戦いか……」
目の前で行われるセイバーとランサーの一騎討ちに思わず言葉を漏らす。アイリスフィールを庇う様に彼らとの間に入っている。ランサーがいきなりセイバーのマスターであると誤認しているアイリスフィールを狙えば、子供の肉盾等なんの意味も為さずに殺されるだろう。こればかりは、ランサーの気質に感謝するしかないと思う。不可視の聖剣を振るうセイバーの攻撃をランサーは、2本の槍を以て凌ぐ。しかし、受け身に甘んじているわけではない。セイバーの攻撃の隙間を縫い、2本の槍を差し込んでいく。
「影辰……貴方の目はあれを捉えきれる?」
アイリスフィールがいきなり質問してくる。耳に手を当てているところを見るに、切嗣からの通信だろう。子供の耳に合う小型通信機を切嗣が所有していなかった為、俺に直接連絡は来ない。
「捉えきれない事もないが……凌ぐだけの武術が未だ俺には無い」
もし、あそこに放り込まれれば何も出来ずに死ぬだろう。人とサーヴァントの差を再認識させられる。時折ブレはするが、この目ならどこを狙われているか、どの様な攻撃か見切る事はできる。そう、出来るだけなんだ。見えているだけでは意味がないとはこの事。
『戯れ合いはそこまでだランサー』
セイバーとランサーの距離が離れたタイミングで、突如ねっとりとしたイケボが響き渡る。ランサーのマスター、ケイネス・エルメロイ・アーチボルトの声だ。典型的な魔術師タイプのマスターであり、ランサー──ディルムッド・オディナに嫁を寝取られる()可哀想な人。まぁ、元々純粋な愛は育んでいないし、ランサーも呪いの所為だから仕方ないのかもしれないけど。
『これ以上勝負を長引かせるな。そこのセイバーは難敵だ。速やかに始末しろ、宝具の開帳を許す』
さて……どうしたものか。ランサーの宝具を俺は知っている。彼の持つ紅の槍、名は
それはつまり、俺が死ぬ確率が上がるという事。こちらの最大戦力が、不完全になるのは避けたい。しかし、原作改変なんてものをして俺の知る世界から離れられるのも困る。どちらもリスクがある行為だ。
「……アイリスフィールさん、何か魔術的なアイテム持ってませんか?投げられるもので」
どっちもリスクがある?そんなの俺にとって直接的な脅威が減る方を選ぶに決まってんだろ!どうせ切嗣が外道な事とかして自害するランサーの事なんか、知らないもんね!交渉とか大変になる気がするけど、許してな切嗣。
「えーと……ちょっと待っててね」
服をポンポンと叩いた後、針金を取り出し丸い形の何かに変えるアイリスフィール。アイテム無かったからって魔術でいきなり作らなくても。
「はい、これで良いかしら?」
渡されたものは針金で作られた小動物。多分、ハリネズミ的な何か。小さくてめっちゃ可愛い。これから自分がやろうとしている事を思うとすごい抵抗感があるが仕方ない。英霊には神秘を秘めた攻撃しか通用しない。つまり、魔術が使えない俺は何かしらの魔術アイテムを使わなければならない。
「ありがとうございます。これなら……」
「影辰、貴方何をするの?」
アイリスフィールが俺に尋ねてくる。質問と行動が逆じゃありませんかね?まぁ、そういう純粋なところに切嗣は救われたんだろうけど。正面を向き直せば既に、セイバーは
「そうか。その槍の秘密が解けてきたぞランサー、その紅い槍は魔力を絶つのだな」
セイバーが宝具の効果を見抜く。今のうちに少し場所を変えよう。
「少し、俺は場所を変えます。アイリスフィールさんは、此処を動かない様に」
「え?ちょっと、影辰!」
慌てるアイリスフィールを無視し、セイバーとランサーが戦ってる場所の少し斜め後ろに移動する。ランサーが俺を一瞥するが、ただの子供と思ったのかすぐに視線を外す。ほんと、騎士らしくてありがたいよランサー。セイバーが俺を咎める様な視線を向けてくるが努めて無視する。美形ってちょっと凄むだけでめっちゃ怖いのなんなんだろうね?
無視する俺に対して諦めたのか武器を構えながら鎧にしていた魔力を解くセイバー。あの槍が魔力を絶つのだから意味が無いと判断するのは分かるけど、もう一つの槍のこと忘れてんじゃないかなこの騎士王。何やら賞賛する様な会話が行われるが、俺からすればよくランサーは笑い出さなかったなって思う。ここまで綺麗に術中に嵌る英霊も珍しいんじゃないかな。
セイバーが
「もう一本、忘れてるぞ!!セイバー!!!!!」
ランサーが俺の方を見たのを確認。叫びながら、ランサーへ向けてハリネズミ的な何かを勢いよく投げる。場所を変えた理由は、セイバーの加速と共に起きる暴風を避けるためと、ちょうど取り出したもう一つの槍、それを握る左腕を狙うため。勢いよく飛んでいくハリネズミ的な何かはランサーの足元から飛び出した黄色の槍に握られる直前で、ぶつかる。それにより槍の軌道が僅かだが変わる。その程度の変化だが、一瞬のやり取りでは致命的だ。槍はセイバーの腕を切り裂き、セイバーの剣はランサーの腕を切り裂く。
「くっ……子供と無視した結果が手痛く返ってきたな」
ランサーが鋭い視線で睨みつけてくる。が、俺の視線はセイバーに向けられた。視線の先のセイバーは血こそ流しているが、両手でしっかりと聖剣を握っている。軌道を僅かにずらした事で、腱を斬られる事はなくセイバーがその武を振るうに問題はない様だ。あぁ……良かった。テクテクと戻ってきたハリネズミ的な何かを回収する。頑丈だね君?目は無いけど、なんかすごい非難めいた視線を向けられてる気がする。
「アイリスフィール、治癒を!」
「かけたわセイバー!」
呪いの効果で完治しないその腕。ぽたぽたと垂れる血が痛そうだ。ふぅと息を吐くと、ランサーが未だ俺を睨みつけていた。必殺の一撃を阻止されたのがよほど嫌だったのかな。
「セイバーの支援も俺の役目だ。一騎討ちに余計な邪魔をとか言わないでくれよランサー」
「ふっ、この程度で怒るほど俺は愚かではない。寧ろ、セイバーが引っかかった俺の宝具によく気づいたと褒めたいぐらいだ」
「寧ろ、アレに引っかかるセイバーがおかしいと思う。2本あるんだから、両方気をつけるのは当たり前でしょ」
「うぐ……影辰、もう少し言葉を選んでくれると」
ただの子供におかしいと言われるのは流石のセイバーも堪えるらしい。
「ははっ、それはそうだな。俺も綺麗に引っかかるものだと思ったからな」
「ランサー!」
こちらの会話に乗ってきたランサーの追撃によりセイバーが吠える。なんだか戦争の雰囲気ではなくなってきたところに、上空から落雷が落ち、戦場全体に響き渡るほどの大声が聞こえてくる。
「AAAALaLaLaLaLaie!!」
ライダーのサーヴァント、真名をイスカンダル。彼がマスターを引き連れ、戦場に現れた。うん、可哀想にウェイバーくん。戦場のど真ん中に連れて来られて絶賛涙目のウェイバーくんに同情しながら、戦況は次の段階へと進んでいく。
ライダーに邪魔されるとキレるけど、子供(影辰)の邪魔なら許してくれるランサーまじ紳士。ほんと、マスターが奥さん持ちじゃなければね……
次回は、王様集合からの何やかんやでお送りします(予定は未定)
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前書きでも書いたけど、みんなありがとね!