転生特典が動体視力?これ、無理ぞ   作:マスターBT

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予定ではフェイカーとの戦闘まで行くはずだった。


友になった二人の事件簿3

 オルガマリーちゃんをベッドに寝かせ、近くの椅子に座る。些か、乱暴な手で気絶させた彼女の顔は、未だに零した涙で濡れていた。一体、何が目的で彼女の従者を殺したんだ犯人は。涙を拭いながら、犯人の目的に対して思考を回すが、オルガマリーちゃんにも被害者であるトリシャさんにも、俺は今日出会ったばかり。碌に会話もしていない人物の繋がりなんて、全く分からない。

 

「……ん……」

 

 眠っていたオルガマリーちゃんの目がゆっくりと開かれていく。最初は、頭も動いておらずボーッとした顔をしていたが、やがて状況を理解しトリシャさんが死んだ事を思い出したのか、目に涙を浮かべ怯えた顔で俺を見る。

 

「ヒッ……あ、貴方は……」

 

「俺は君に何もしないよ。さっきは、手荒ですまなかった」

 

 可能な限り、声を優しくし頭を下げる。暫く、無言でオルガマリーちゃんに頭を下げる時間が続き、決心をした彼女が口を開いた。

 

「顔を上げてちょうだい。貴方に私を害する気がないのは分かったから」

 

 その言葉を聞き、俺は頭を上げる。視界に映る彼女は自らの手で溢れかけていた涙を拭っており、目元を僅かに赤くしながらも怯えを押し殺し、気丈に振る舞っていた。……強い子だな君は。

 

「その様子を見る限り、全部覚えているんだね?」

 

「……えぇ。トリシャが殺され、検死も何もせずただ泣き噦る私を貴方が、気絶させて連れてきた。そして、トリシャを殺した犯人が私を殺すかもしれないから、ずっと側に居てくれた。違う?」

 

「この短時間でよく分かるね。でも、君がトリシャさんを検死出来なかった事を悔やむ必要はない。そっちはウェ……ロードエルメロイII世が引き継いだだろうし、何より君は大切な従者を失ったんだ。冷静に行動できないのは当然だよ」

 

 大切な人が死んでるのを目撃して、冷静に動ける人間は決して多くない。そんなのは、俺や切嗣の様に心を殺すことが身近にありそれを生業としてきた人間くらいだ。そんなの目の前にいる12歳ぐらいの少女が出来て良い芸当ではない。

 

「本当は私がやるべきだったのよ!!犯人が残した痕跡が、すぐに消える様なものだったら私しか検死するタイミングはなかった!それに、魔術師が身近な人1人失ったぐらいで取り乱してたら、失格よ……そうよ……私は魔術師失格だからお父様にも……」

 

 徐々に声を窄めていきながらオルガマリーちゃんは、自分を責める。ただでさえ、傷つきボロボロな心を自らの手で更に傷付けていく。

 

「俺は魔術を扱えないから、多分きっと君の悩みの殆どは理解できない」

 

「……何よ。理解できないから私に何も言うなって言いたいの?」

 

「違う。魔術師からは縁遠い俺は、君のその大切な人を失ったことに対する悲しみも、その時に自分が何も出来なかった悔しさも理解できる。俺にもそういう経験があるからな。そしてその感情は魔術師として失格なのかもしれないけど、人として失ってはいけないものだ。君は、いずれ時計塔のロードとして人の上に立つ人間だ。きっと、君の元には多くの人が集まるだろう。その中には、悩みを抱えた人間だって居るはずだ。そんな人間に何かを言う時に自分の痛みすら分からなくなった人間に何が言える?」

 

「それは……でも……」

 

 第四次聖杯戦争で、俺は己の無力さを知った。たかが10歳程度の子供に何が出来たのかと問われれば、何も出来なくて当然なのだがアイリスフィールを失い、切嗣は願いを叶える事も出来ずただ静かに息を引き取った。もし、俺がもっと何か出来ていればと悔やみ続けている。だからこそ、今、オルガマリーちゃんが感じている無力感や悔しさは理解できた。

 

「オルガマリー・アニムスフィア」

 

「ッッ……何よ」

 

「もし、君がトリシャさんの死の真相を突き止めたいのなら、俺やエルメロイII世を頼ってくれ。俺は荒事が得意だし、エルメロイII世は知っての通り数々の事件を解決している。きっと、君の力になるだろう」

 

 そう言うと驚いた様に俺の顔を見るオルガマリーちゃん。余程、俺の言葉が予想外だったのだろう。

 

「なんで……出会ったばかりの人にそこまで入れ込むのよ?」

 

「なんでってそりゃ、君が子供で俺は大人だからだ。未来ある子供の助けをするのは、当たり前だろう?」

 

 まぁ、本当は君にイリヤの姿を重ねてしまったのもあるんだけど。それでも放った言葉に嘘偽りはない。次代を担う子供は大切だし、オルガマリーちゃんの様に溜め込んでしまう子なら特に、大人の手助けが必要だと俺は思う。

 

「……」

 

 俺の返事を聞いて黙り込んでしまったオルガマリーちゃん。どうしたものか……とりあえず、目を覚ました事だしウェイバーの奴を呼んでくるか。俺は椅子から立ち上がり、エルメロイII世を呼んでくると彼女に伝えて部屋の外へ向かう。扉に手を掛けたところで後ろから消え入る様な声で話しかけられた。

 

「手伝いの件……考えておくわ」

 

「ん。今はそれで十分」

 

 あとはウェイバーの奴に任せよう。部屋を出て、不審な人物や気配がしない事を確かめた俺は、ウェイバーが居るであろう事件現場へと足を運ぶ。どうやら、一通り確認は終わった様で俺が入るとウェイバーは、カラボー神父と話をしていた。

 

「オルガマリーちゃんが目を覚ましたぞ」

 

「分かった私達も向かうとしよう。お前はどうする?」

 

「俺は少し知り合いと話す時間を貰おうかな」

 

 そう言って俺はカラボー神父を見る。彼も俺の視線に気がつき、無言で頷いてくれた。

 

「……お前の人脈が末恐ろしいよ」

 

「お前も大概だと思うぞ。って、早く行ってやれ。確認はしてきたが、時間をかけ過ぎると彼女の身が危ない」

 

「そうだな」

 

 ウェイバー達が部屋を出ていき、この部屋には俺とカラボー神父、そして、化野の合計3人となった。……いや、出てけよ化野。視線で訴えれば綺麗な笑みで返された。この野郎……

 

「お久しぶりです。カラボーさん」

 

「息災か?影辰くん」

 

「はい。その節はお世話になりました」

 

 カラボーさんには、2年前と出会っている。言峰から1週間の間、特別講師を用意したと言われその時の相手がカラボーさんだったのだ。高齢ではあるはずなのだが、そんなのを感じさせない動きと熟達された武を存分に味合わせてくれた。

 

「そう畏まるな。頼まれたから手伝っただけに過ぎん」

 

「相変わらず謙虚ですね。ところで、この列車に乗られたのはやはり?」

 

「あぁ。この魔眼を摘出する為だ。まさか、こんな事件に巻き込まれるとは思っていなかったよ。あの少女の様子はどうかね?」

 

「強い子ですよあの子は。俺を見て、一度は泣きましたがそれでも気丈に振る舞っています。少々溜め込むきらいがありますが、自分なりにガス抜きはしておきました。しかし……カラボーさんでもトリシャさんを殺した犯人は分かりませんでしたか」

 

 此処でウェイバーと話していた辺り、カラボーさんの魔眼、過去を見る能力でも犯人は分からなかったのだろう。

 

「あぁ。ロードの話を聞く限り、トリシャ・フェローズは未来視の魔眼を持っていた様だが、抵抗する素振りもなく殺されている辺り、犯人は過去からも未来からも見えない存在らしい」

 

「なるほど……」

 

 過去視でも、未来視でも見えない犯人……駄目だ、魔眼も魔術もよく知らん俺が幾ら考えても無駄だろう。とは言え、そんな不可視の犯人がまた行動を起こさないとは限らない。俺は兎も角、ウェイバー達に被害が出るのは避けたいな。

 

「化野さん、1つ質問しても良いですか?」

 

「えぇ。構いませんよ、私にお答えできる事であればですけど」

 

 ニコニコと笑みを浮かべながら答える化野。なーんか、この人苦手というかなんというか。謀略とか大好物でしょこの人。もうそういうのはお腹いっぱいなんで可能ならお関わり合いにはなりたくないけど、ウェイバーが接してる以上逃げれないんだよなぁ。

 

「魔眼ってのは、その眼鏡みたいに対策する術がありますよね?そんな感じで、過去視や未来視で見ることになる光景を誤魔化したり改変したりするそんな魔術や道具ってあったりするんですかね?」

 

「……不可能と言い切るのは難しいですね。魔眼はそれ単品で魔術回路を有するもの。視るだけで、本来詠唱が必要な魔術の代わりやそれ以上の結果を起こせる特殊な魔術刻印の様なものと思って頂ければお分かりになるかと。明らかに魔術とはかけ離れていますが、手間を掛ければ同じ現象を魔術で起こす事も可能でしょう。その為、卓越した魔術師であれば衛宮さんが言った魔眼すら騙し切る何かがあるかもしれませんね」 

 

 なるほど……こいつがアッサリと簡単に教える辺り今回の犯人はこの手法を使った訳ではないのだろう。もちろん、卓越した魔術師であれば誤魔化す事も可能と言った事にも嘘偽りはないだろう。こちらを値踏みする様な視線……直接的な犯人が化野や化野の手下ではないにしろ何か目的があるのは確かか。こんなのを毎回、考える職場にいるのかウェイバーの奴、凄いな。俺だったら半日で胃がやられそうだ。

 

「なるほど……教えてくださりありがとうございます。参考になりましたよ化野さん」

 

「それは良かったです」

 

「はぁ……では、俺はこれで失礼します。カラボーさん」

 

「そうか。くれぐれも気を抜くなよ」

 

「はい」

 

 俺が部屋を出ると化野も一緒に部屋を出てきた。思わず顔を顰めると、笑みを浮かべたまま立ち去っていく。さてと……夕方までする事ないなウェイバーの部屋にでも行くか。そう思い、俺が部屋に戻るとそこにウェイバーは居らず、グレイちゃんからオルガマリーちゃんの為に部屋を用意する様に車掌に頼んでくると外に出た様だ。あいつ、護衛される気ある???

 

「まぁ良いや。じゃあ、ちょっと時間あるしチェスでもする?オルガマリーちゃん」

 

「……どうせ、嫌だと言っても聞かないでしょう貴方」

 

「ご名答。じゃあ、時間潰しに一局」

 

 そんな感じで夕方になるまで俺は、オルガマリーちゃんとチェスに興じた。戦績?全敗ですよ、いやぁ敵陣に入った駒が悉く取られていくのはもう乾いた笑いしか出なかったよね。そんな感じで、時間を潰していると空はオレンジに染まった。さてと、お仕事の時間と行こうか。 




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