転生特典が動体視力?これ、無理ぞ   作:マスターBT

80 / 86
友になった二人の事件簿5

「起きなさい!いい加減、貴方達に何があったのか教えなさいよ」

 

「グェ!?」

 

「あわわ……オルガマリーさん、もう少し慎重に……」

 

 ソファでぐっすり眠っていた影辰さんがオルガマリーさんに引っ張られ、床に落下した。何度か呼びかけても起きませんでしたが、もう少し優しい起こし方があったのではないでしょうか……机に頭をぶつけてジタバタしていた影辰さんでしたが暫くしてのっそりと起き上がりました。

 

「ふわぁ……おはようみんな」

 

「おはようじゃないわよ全く……」

 

 影辰さんが寝ていた場所にオルガマリーさんが座り、拙とカウレスさんは影辰さんに促され、彼女の対面に座った。影辰さんはというと、立ったままカウレスさんの椅子に寄りかかっていた。疲れが抜けていないのなら拙達に譲らず、ご自身で座れば良いのに。

 

「気にしなくて良いよグレイちゃん。今この中で外敵に即、対処可能な人間が立ってるのは当然のことだから」

 

「え、えっと分かりました」

 

 考えている事がバレてしまいました。笑顔で手を振る影辰さんをオルガマリーさんが咳払いで注意し、話が始まった。拙達は、師匠と既に傷はありませんが影辰さんをあんな目にした下手人がサーヴァントである事を伝えました。聖杯戦争でもない場所でサーヴァントが姿を現している事にオルガマリーさんはとても驚いていました。

 

「そうなると益々無関係では居られないわね」

 

「え?」

 

「「サーヴァントが居るのなら召喚したマスターがいる」……ちょっと、言葉を被さないでくれる?」

 

「ハハッ、ごめんごめん。なんか言いたくなってね」

 

 オルガマリーさんと影辰さんが同時にマスターの存在を明かす。そうでした、召喚したサーヴァントにはマスターが魔力を注ぐ必要がある。そうしなければ、現代を生きる存在ではないサーヴァントは消えてしまう。

 

「そのマスターがトリシャを殺した犯人かもしれない……というか、貴方魔術師でもないのによく知ってるのね?」

 

「俺も聖杯戦争の関係者だったからな。というか、ウェイバーと知り合ったのがそこだ」

 

「え!?そうだったんですか!?」

 

 師匠からは古くからの友人とは聞いていましたが、同じ聖杯戦争の参加者だったとは……もしかして拙の顔を見た時に気まずそうに顔を逸らしたのと関係があるんでしょうか。

 

「魔術も使えない人間が?」

 

「ウェイバーと違ってマスター枠じゃないぞ。とあるマスターの道具として参加していただけさ。っと、俺の過去話は暇な時にいくらでもするよ、そんな事よりへファイスティオンに関してだが、奴のクラスは不明。真名に聞き覚えがある人はいるか?」

 

 誰も手をあげる人はいない。オルガマリーさんですら知らないとなると、無名に等しい英霊なのでしょうか。

 

「……征服王の臣下である事だけは確か。なら、盗まれた聖遺物もマスターが所持していると見て間違い無いだろう」

 

「なるほど。やっぱり、貴方達は魔眼を求めて列車に乗ったわけではないのね」

 

「あぁ」

 

 影辰さんが返事を返すと同時に外に視線を向けると、列車が大きく揺れる。拙は慌てて、ベッドで眠る師匠を支えに行く。揺れが落ち着くと同時に放送が入り、列車がアインナッシュの仔という場所に入った事を伝える。……何処なんでしょう?

 

「……グレイちゃん。これを渡しておく」

 

 近寄っていた影辰さんが黒い端末を拙に渡してくる。

 

「これは……通信機?」

 

「そうだ。通話ボタンを押すだけで、俺の持つ端末に繋がるように設定されている。何かあれば、すぐに連絡してくれ」

 

「わ、分かりました。何処かに行くんですか?」

 

「列車を再び調べ直す。状況が変わったのなら、このタイミングで何かを仕掛けるかもしれない。トリシャさんの殺害、列車の行き先変更……犯人はどうにもウェイバー個人を狙っているとは思えない。纏めて消せれば、満足なのか……何にしろ、不審な人物や仕掛けがないか調べてくる」

 

 そう言って彼は足速に部屋を出て行ってしまった。そのすぐ後にオルガマリーさんも自室に戻ると言い、拙とカウレスさんだけが部屋に残る事になりました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……外は極寒。序でに化け物も一緒か」

 

 視線の先で黒い木を焼き払おうとした魔術師3人が串刺しにされ、消えて行った。完全に列車は立ち往生……串刺しにされた魔術師以外に外に出ている者もいない。列車の外壁、視認可能な線路に爆薬の類もなしか。

 

「ウェイバーを狙ってる訳ではないのか?……そういや、へファイスティオンがウェイバーを呼んだのは個人的な興味がどうとか言っていたな。なら、何が目的だ。トリシャさんの魔眼を奪い、化け物の巣窟に列車を誘導」

 

 なら森そのものに狙いがあるのか?なら、少しばかり森の方に足を進めるか。ほんの少しばかり奥に進んだ直後だった。顔を傾けると黒い木がそこを抜けていった。はぁぁ……俺は別に何もしてないだろうに。聖杯戦争の泥にでも反応してるのか?ただ侵入しただけで、外敵扱いとは。死徒の仔というのも器が狭いな。

 

「いや、ただでさえ有利に立ち回れる相手に対して、更に追い込んでから攻めるお前の方が器が小さいと蔑むべきか?」

 

「勘違いして貰っては困るな。別に私はコイツらの味方という訳ではない。条件は同じさ」

 

「人間とサーヴァントの性能差を見なければな」

 

 灰錠を起動させ、構える。四方を取り囲むアインナッシュの仔に正面にはサーヴァントか。とんだ悪条件での戦いだなおい。即座に戦いは始まると思ったが、へファイスティオンは未だ武器を構えずこちらを真っ直ぐと見ている。なんだ、また魔眼でも使うつもりか?

 

「1つ、お前に聞きたい事がある」

 

「なんだ?」

 

「お前は我が王の背中に何を見た?」

 

 ……これはまた予想外な質問をされたものだな。とりあえず、警戒すべき相手の中からへファイスティオンを外し、思い出すは酒宴の最後に見たイスカンダルの宝具だ。

 

『王とはッ──誰よりも鮮烈に生き、諸人を魅せる姿を指す言葉!』

 

 切嗣の道具として生きている俺でもあの背を見た時は、胸に熱が宿りその背中の行き先に羨望を抱いた。数多の勇者の羨望を束ね、見果てぬ夢への駆け抜けた1人の王。同じ男として憧れる気持ちがない訳ではない。だが、それでも俺はあの王の背中に続く道は選ばなかった。

 

「呑まれるほどの夢を見た。間違いなく、あの王は人を率い魅了する力に満ちていた」

 

「だが、お前はあの男と違いその背に続くことはなかった」

 

「あぁ。既に俺には歩むべき道があった、例え道具として使い潰されようとも勝利に導かねばならない相手がいたその人を裏切る真似は出来ない。それに──」

 

 俺を刺し貫こうと四方から黒い木が迫る。それらを叩き落としたり、掴んで避ける。その際にへし折っておいた枝をへファイスティオンに向けて投げるが、当然短剣で弾かれる。

 

「──あの王の理想と俺の理想は合わない。それが一番大きな理由だ」

 

「ふっ──そうか」

 

 その返答を以って俺たちは同時に相手に向かって走り出す。邪魔をする黒い木を弾いたり、折ったり、雷を落としたりしながら俺たちの距離はゼロとなり、真っ直ぐ突き出した俺の手刀はへファイスティオンの喉元に。へファイスティオンの短剣は俺の心臓に突きつけられた。

 

 へファイスティオンは笑みを浮かべ、俺は変わらず無表情で睨み合った後、互いに命を奪う凶器を弾く。至近距離のこの状況であれば、へファイスティオンが短剣を振り直すより早く、俺の拳が霊核を砕く。だが、物事はそう上手く進まない。

 

「ッッ!?」

 

 身体が一瞬硬直する。魔眼による拘束だ、即座に動けるようになるがその隙に短剣は引き戻され、俺の頭蓋を真っ二つにしようと振り下ろされるのを蹴り飛ばす事で阻止する。追いかけながら足元の雪を片手でかき集めながら距離を詰め、再び魔眼が使われるより早く雪を投げる。

 

「視界潰しか。考えたな!だが、所詮は浅知恵だな」

 

 近寄れないように落雷が降り注ぎ、回避を強制させられる。それならと跳躍し、アインナッシュの仔を足場にする。勿論、その場で立ち止まるなどという愚を起こさず、次のアインナッシュの仔へと飛び移り、それを繰り返していく。

 

「私からの視線が通らない様にするのは良いが、どうやって攻撃をするつもりだ?」

 

 そう質問するへファイスティオンへとへし折った枝を次々に投げつけていく。当然、枝がヘファイスティオンを貫く事はない。

 

「さぁさぁ、次はどうする!!」

 

「そう急かすな。すぐに見せてやる」

 

 木から飛び出し、俺は本来何もないはずの空中で方向転換し、へファイスティオンへ向けて勢いよく落下していく。魔術師でもない人間が空中で切り返した事に不意を突かれたへファイスティオンは、短剣での迎撃ではなく雷を選んだ。空から雷が落ちると同時に、俺は懐から枝を俺より高い空中へと放り投げ、そこに雷を誘導する。

 

「その頭蓋、砕かせて貰うぞ。へファイスティオン!」

 

 振りかぶった拳に感触はなく、ただ雪の冷たさだけが伝わってきた。……霊体化。あのサーヴァントが進んでやった訳ではないな。恐らく、マスターの令呪か横知恵か。

 

「さてと……アインナッシュの仔に殺される前に戻るとするか……」

 

 空中で何本もの枝が折り重なっているのを見ながら急いでこの場を離れる。枝を折りまくって、キレるのを狙ったけどそれなり上手くいって良かったな。失敗したら、俺が串刺しにされてたけど。攻撃してくるアインナッシュの仔を避けながら列車に戻るとそこにグレイちゃんの姿はなかった。部屋にいた男に話を聞けばどうやら、カラボー神父達と共にアインナッシュの仔を退かすために霊脈巡りに向かったという。

 

「なるほど……つまり、二人きりって訳か」

 

「そうなりますね……」

 

「偽り続けるというのも面倒だろうに」

 

「……はい?」

 

 適当に座って持ってきた新聞を読む。今ここで争うつもりはないという意思表示だ。

 

「汚職政治家の記事だよ。さっき、目に入ってね」

 

「あぁ……なるほど」

 

 何にしろウェイバーが起きなければどうにもならないな。やがて、カラボー神父達の作戦が成功したのか列車が動き出す。何故かそのメンツの中に乗った直後には居なかった筈のメルヴィンがいる事に驚いたが、それよりもグレイちゃんがスノボーの要領で戻ってきたのが印象的だった。

 




感想・批判お待ちしています。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。