転生特典が動体視力?これ、無理ぞ   作:マスターBT

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事件簿編、最終回です!


それぞれの戦場へと

「ハックシュ!!……夜の列車上は流石に冷えるな」

 

 ガチャガチャと用意していた道具を指定された場所に仕掛けていく。そろそろ、真下ではウェイバーによる推理ショーが行われている頃合いだろう。それにしても魔眼オークション自体を時間稼ぎに利用するとはウェイバーの奴も性格が悪いなぁ。

 仕掛けが粗方終わると同時に通信機が起動し、ノイズの後小さくトントンっと2回音が鳴る。漸く合図が来たか。此処で待機されているのをバレない様に気配を断ち、列車の縁にぶら下がる。暫くして、列車が振動し穴が開き、へファイスティオンと犯人が下から現れ、破裂音と共に彼らに向かってネットが飛んでいく。

 

「チッ、なんだこれは!」

 

 防犯用のネットですよ。当然、サーヴァントを捕獲するほどの力はないけどね。でも、君が後生大事に抱えていたマスターはどうかな?飛び出したネットはへファイスティオンが斬り裂き、抱えていたマスターを下ろすがその位置はダメだ。

 

「なるほど……魔術師殺しの道具。君ですね?」

 

 防犯用のトリモチを落とし穴の様に仕掛けていたところに見事、マスターの足が着地し、その場から動けなくなった。ソレを確認してから縁から飛び上がり、聖遺物であるマントを回収し、距離を取った。その間も、マスターである男は薄ら笑みを浮かべたままだ。

 

「俺のことまで調べているとは。光栄ですね、Dr.ハートレス」

 

「ハッハッハ、聖杯戦争は大変面白かったからね」

 

 へファイスティオンがこちらに来るより早く下からウェイバーとグレイちゃんがやって来る。ほらよと回収した聖遺物を渡してやれば、嬉しそうに丁寧に懐へしまうウェイバー。今度は奪われるなよ。

 

「さて、このまま逃してくれると嬉しいんだけど?」

 

 トリモチから足を外したハートレス。ほんと、魔術って便利だな。あれ、簡単に外せない様に調合したヤツなんだけどな。

 

「フェイカー。お前に聞きたいことがある」

 

 ハートレスの言葉を無視し、へファイスティオンへ話しかけるウェイバー。あいつが語る内容は当然、俺が気がつくことはなかった訳だがへファイスティオンいや、フェイカーは征服王の影武者であり、その人生は初めからその為だけにあり名前も何も無いと言う。もし、切嗣が俺に名付けをしなければ彼女の様な存在になっていたのだろうか?……いや、今は考えることじゃないな。

 俺が考えている間にもウェイバーの推理は続いていき、その話はフェイカーが征服王の宝具に顔を出さなかった事を言及していく。一瞬で激昂したフェイカーを俺とグレイちゃんが受け止め、更に推理は続いていく。

 

「イスカンダルの軍勢に居なかった理由、それは貴女自身が王の軍勢を憎んで居たからだ!」

 

「それ以上、口を開くなメイガス!!」

 

「おっと、それ以上は進ませないぞ」

 

 蹴り飛ばされたグレイちゃんを片手で支えながら、フェイカーの剣に蹴りを合わせる。一瞬でも動きを止めればグレイちゃんが体勢を起こし、フェイカーへと斬りかかる。魔術を行使する気配があればグレイちゃんの持つ鎌がその魔力を喰らい、魔眼を使えば動きが鈍るものの完全に止まらない俺が、攻撃をする。そうして、ゆっくりとだが確実にフェイカーを追い詰めていくが、ハートレスの策が発動する。

 

「アインナッシュの仔……っと、カラボー神父交代してくれ!!」

 

 現れると同時に視界を埋め尽くすほどの枝が俺に襲いかかる。ほんと、器が狭いな死徒の落とし子!!フェイカーと戦った時に散々枝を折ったのを覚えている様で、絶えず動いていなければ凄まじい勢いで俺に襲いかかって来る。視界の端で、フェイカーとカラボー神父が戦っているのを確認しながら、俺はハートレスの方へと向かい、殴りかかる。

 

「おっと危ない危ない」

 

「チッ、避けんな」

 

 フラッとした動きで攻撃を避けたハートレス。使役者の関係なのか、それとも最初から俺しか襲う気がないのか枝はハートレスを襲わずに俺にのみ飛んでくる。

 

「おぉ、凄い凄い。まるでサーヴァントの如き、動きですねぇ」

 

 飛び出してきた枝を足場にして跳躍。空中で無防備な俺を貫こうとする枝を掴み、方向転換し別の枝を足場にハートレスの真横へと跳躍し、再び拳を放つが同じ様にフラッと避けられる。だが、一度見れば避けるのは織り込み済みだ。背後に回り込んだハートレスに対して、先ほどの拳を足場にしている枝に置き、軸して回し蹴りを放つが今度は、強化の魔術でも使ったのか細い腕で受け止められる。

 

「……」

 

 更に力を込めてハートレスの腕を弾く。そのまま、殴る行動をフェイントにもう片方の手で懐から、コルトパイソンを取り出して放つ。轟音と共に放たれた弾丸は相変わらず、目標を貫く事は無かったが今まで接近戦しか見せていなかった男が遠距離武器を用いた事に驚いたのか薄ら笑みを辞めているハートレス。

 

「こいつは、トリシャさん、カラボー神父。そして、オルガマリーちゃんの分だ!!纏めて受け取りやがれ!!!!」

 

 気に食わない面に今まで届かなかった俺の拳が深々と突き刺さり、ハートレスを殴り飛ばす。ただの人間ならアレで首が折れる筈だが、結界か何かしらの魔術を施していた様で何かを砕く音はしたが、骨を折った感触は一切しなかった。

 

「ッッ……しかも、反撃までしてきたか」

 

「大丈夫か影辰!」

 

「これぐらい大丈夫だ!!だが、仕留め損った!!」

 

 脇腹を抉られたが既に再生は始まっている。放っておいても問題はない。だが、ハートレスを仕留める事は叶わなかった。追撃に行こうとしたが、枝が進路を塞ぐ。ああもう、めんどくさいなと思った直後だった。空から無数の流星が降り注ぎ、アインナッシュの仔を焼いていく。耳を澄ませば、オルガマリーちゃんが詠唱する声が聞こえて来る。何処が失格だよ、いい魔術使えるんじゃないか。

 

「二の矢の頃合いだな!」

 

 全く、こういう時は活き活きとしてるんだからこいつは。魔眼蒐集列車が、凄まじい勢いで変形していき、先頭車輌が砲門の形になる。いやいや、なんか世界観違くね?って言いたくなる光景だな。直後、アインナッシュの仔本体に向けて、濃密な魔力が放たれ名状し難い悲鳴と共にアインナッシュの仔が完全に消えていった。

 

「酷いな。何という興醒めな結末だ」

 

「ただの殺人鬼に上等な結果が与えられると思ったか?」

 

「それを君が言うかね。第四次聖杯戦争において、そこのロードの先代。ケイネス・エルメロイ・アーチボルトを殺した君が」

 

 後ろでグレイちゃんが息を呑む音が聞こえた。そういえば彼女には教えていなかったな。ケイネスを殺したコルトパイソンに視線を一度落とし、懐にしまう。今更、動揺などない。そもそも、目的の為に人を殺した俺にそんな権利はない。

 

「聖杯戦争は文字通り、戦争だ。そしてそれは、ケイネス・エルメロイ・アーチボルトも了承して参加していた筈だ。命を奪いに来てるんだ奪われもするだろうよ。だが、その覚悟もない人間を殺したお前は俺以上に屑だよ」

 

 俺がそう言うとハートレスは一瞬真顔になった後、再び薄ら笑みを浮かべ背を向け、フェイカーに帰る様に促す。だが、ウェイバーに散々煽られた彼女はそれを拒否。何かを放つ気配を見せ、それをグレイちゃんが阻止すると同時にカラボー神父とグレイちゃんの動きが止まる……っと不味い!

 

「カラボー神父!!」

 

「邪魔をするなぁぁ!!」

 

 カラボー神父に向けて蹴りを放つフェイカーとの間に割って入り自らを盾にする。右腕が嫌な音を立てて曲がってはいけない方向に曲がっていくが、その痛みを無視しフェイカーを弾き飛ばす。魔眼の支配は続いている様で後ろの二人が動き出す気配はない。

 

「……気色の悪い身体だな」

 

「はっ、もう慣れたわ」

 

 時間を巻き戻す様にゴキゴキと音を立てて折れた腕が元の形に戻る。フェイカーに向かって真っ直ぐと駆け出し、互いに拳を交える。魔術や剣を使っていたから体術は得意ではないかと思っていたが、フェイカーには体術の心得もある様で的確に俺の攻撃を潰して来る。顔面を狙い放った拳は下から、かち上げられ、狙いをズラされ、懐への侵入を許してしまう。肺に向かって掌底が放たれ、俺は呼吸が一瞬出来なくなるが、反撃として肘を頭頂部に落とし、追撃を防ぐ。

 

 迫り上がってきた血を地面に吐き捨てながら、腰を落とした右ストレートをフェイカーに向けて放つ。彼女はそれを跳躍しながら避け俺に雷撃を落とす。雷を纏うのが見えていた俺はそれを横に転がりながら避け、地面に落ちていた石を拾い投げる。着地と同時に飛んでくる石をフェイカーは、一部食らいながらも俺の顔面を殴り飛ばす。当たる直前に自ら引くことでダメージを最小限に抑え、追撃しようと構え俺はそれを止める。

 

「熱くなりすぎたな、フェイカー!」

 

「なっ!?」

 

 彼女の目は既にグレイちゃんとカラボー神父を見ていない。背後から、カラボー神父が黒鍵を投擲するが、フェイカーはそれを避け代わりに黒鍵は俺に向かって飛んでくる。好都合だな、三本の黒鍵を掴み取り、流れる様にフェイカーに向けて投げる。片手を盾にする事で直撃を避けるが、避けるルートを限定されたフェイカーの着地地点にはグレイちゃんが待機しており、大きく斜めに鎌によって斬られる。霊核には届いていないがダメージは今までで一番大きいだろう。

 

「ぐっ……」

 

 再度、魔眼を使用しようとするフェイカーだが、そこにウェイバーが何かを投げ込み魔眼は不発に終わる。

 

「王の影!例え、歴史から抹消されたとしてもその意味は消えないんだ!だからこそ、今私は此処にいる!」

 

 何でこいつはこう相手を煽るかな。フェイカーは、貨物室で見せた様に空に手を掲げて骨で出来た戦車を呼び寄せる。こうなってしまえば、俺やカラボー神父に出番はない。膝をついたウェイバーを支え、グレイちゃんの近くに立つ。

 

 黄金の光を纏い、詠唱を始めるグレイちゃん。そこにカラボー神父が近寄る。

 

「その槍には祈りが詰まっている。13の形に凝縮された祈りだ。耳を澄ましたまえ、槍の声に。古く誰かが祈った在り方に」

 

 ……あぁ、なるほど。あの槍はその為の武器か。ならば、俺からも一つ言える事があるだろう。

 

「為したい事を思い浮かべると良い。嘗ての持ち主もきっとそうした筈だ」

 

 そうなんだろう?セイバー。もし、見ているのならその槍に宿っているのなら、ほんの少しで良い。貴女と同じ、ただの少女であったグレイちゃんに力を貸してあげてくれ。

 

「拙は……師匠を守りたい!!」

 

 グレイちゃんの本心と共に手に持つ槍が輝き本来の形を取り戻す。俺には見えない槍に宿った13の祈りが、グレイちゃんに力を与え、顕現するは星を繋ぎ止めるとも謳われる嵐の錨。

 

最果てに輝ける槍(ロンゴミニアド)!!」

 

 黄金に輝く光の奔流は赤い雷光に一瞬の拮抗すら許す事なく、全てを飲み込んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「じゃあ、俺はそろそろ帰るわウェイバー」

 

「あぁ。世話になったな」

 

「友達の頼みだ。力貸してやらなきゃ嘘だろう」

 

 魔眼蒐集列車での戦いから、2日後。無事に聖遺物を取り返し、ウェイバー達を時計塔に送り届けた事で依頼完了とみなし、冬木に戻るため最後の挨拶をしていた。と言っても、特筆すべき事は何もない。

 

「無茶も程々にしろよ?俺と違って貧弱なんだからお前」

 

「煩い。お前が頑丈すぎるだけだ……死ぬなよ影辰」

 

 恐らく第五次聖杯戦争を案じての事だろう。いつになく真剣な顔で見てくるウェイバーに俺は勢いよく彼の背中を叩きながら答える。

 

「死なねぇよ。お前こそ、時計塔で戦っていくんだろ?暫くは手を貸せないからな?」

 

「ゲホッゲホッ……問題ない。聖杯戦争(そっち)はお前の戦場で時計塔(こっち)が私の戦場というだけの話だ。とうの昔に覚悟は出来ている、違うか?」

 

「はっ、そうだな。互いに戦い抜いていこう」

 

「あぁ」

 

 拳を突き出し軽く、ぶつけ合う。そのやり取りを最後に俺は荷物を持って、部屋を出る。ハートレスにフェイカー……色々と心配ではあるが俺にもやらなければならない事がある以上、ロンドンに居座る訳にもいかない。時計塔を出て、タクシーを乗り継ぎ空港に到着した俺の目の前に予想外の人物が現れる。綺麗な白髪の長髪に気の強そうな表情を浮かべた女性、オルガマリー・アニムスフィアだ。

 

「よくこの時間の飛行機に乗るって分かったね?」

 

「知り合いから教えて貰ったのよ。全く、お礼をすると言ったのに全然私に会いに来ないんだから。仕方ないからこっちから来てやったのよ感謝しなさい!」

 

 そういやそんな事も言ってたな……魔眼蒐集列車の後は色々と疲れてたから忘れてたよ。ごめんごめんと謝ると別に良いわと返される。

 

「と言ってもお礼なんて特に思いつかないのよね……だから、はいこれを渡しておくわ」

 

 そう言って差し出された紙には誰かの連絡先が書かれていた。深く考えるまでもない目の前の彼女のものだろう。

 

「貴方には貸しが沢山あるから、何か困った時は私が無償で力になってあげるわ。だから……その……連絡しなさいよね!」

 

 顔を真っ赤にしながらだけど、自分が思っている事を素直に口に出す様にしたんだな。まだ少し上から目線な気がするけど。俺は微笑みながら携帯を取り出し、彼女の連絡先を登録し、よろしくというメールを打っておく。

 

「これでよし。んじゃ、頑張ってねオルガマリーちゃん」

 

 飛行機の時間が近づいている為、彼女との会話を此処までにして頭を撫でてから立ち去る。後ろを見れば、オルガマリーちゃんが手を振っていたから見えなくなるまで振り返し、俺は飛行機に乗り込んだ。……さて、帰ろう。俺の居るべき場所へ。




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