改めて人の姿に戻った俺が最初に取った行動は何か。
そうもちろん、
土下座である。
「本っ当にお見苦しいところをお見せしてしまい心から誠に申し訳ェーーーッ!!!!」
なぜか斎賀さんも土下座している。
「ここここちらこそでで出過ぎた真似をしてしまい深く、深くお詫びを………っ!!!」
いやなにこれクッッッッッッソ恥ずかしいが!?
同級生に怪物の姿晒してカウンセリングされて頭撫でられてボロ泣きとか別の意味でお日様の下歩けねーじゃねーーーーか!!!!
夏休み前日であることを神に感謝。複数の要因からとても衆目に晒せる内容ではない。
顔どころじゃなく全身が熱い。日が暮れて少し涼しさを感じる頃合いですよね?
一生に一度の平身低頭。伏した顔を決して上げない。なぜなら今は斎賀さんの顔を見て平静を保てないから。頭撫でられた感触思い出しちゃう。
「えっと…その、とりあえず、もう大丈夫なので…」
「そ、その、それはなによりで…」
この微妙な雰囲気が辛い。
話を変えよっか。気になっていた事もある。
顔を上げ正座の姿勢。斎賀さんも同じ姿勢を取ってる。
「ソウイヤァ↑!」
緊張で声裏返った。恥ポイント+10。
「さ、斎賀さんって部活動とかやってたり?」
「い、いえ!特には!」
そうなのか。じゃあこんな時間まで学校に残ってい何をしてたのやら。
図書室で勉強とかかな?優等生感あるし宿題を夏休み序盤にさくっと片付けるタイプなのかもしれない。
聞こうか聞くまいか迷ってると、教室のスピーカーから謎のBGM。次いでアナウンス。
『間もなく最終下校時刻となります。校内の学生は速やかに下校してください。繰り返します――』
それどころではなかった。
「やっべぇ!斎賀さん早く出ないと!」
「ふぇあ!?は、はゃい!」
大慌てで教室を飛び出し門へ向かい、なんとか脱出出来た。
最終下校時刻ってあんなBGMが鳴るんだ。しらなかったなぁ。
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しばらく帰り道を歩く。隣には斎賀さんがいるがお互い黙りこくって目も合わせない。
ラブクロックでもこういう二人きりの下校シーンがあったな。話しかけるタイミング次第では、分かれ道までに会話が終わらずピザに一歩近づく。こっちからの発言である程度調整が効く分他のイベントよりは難易度は低かったな。世の中にはこのシーンでどこまで話しかけるタイミングを遅らせられるかを検証している猛者がいるらしい。ようやるわ。
別に、まるでギャルゲーのイベントみたーいなんて浮かれているわけではない。斎賀さんは見ず知らずの俺に手を差し伸べてくれる、天使とか女神とかそういうアレであり、俺が斎賀さんに抱いてるのは純粋な感謝と尊敬の念である。こういう考え方は失礼にあたると自分を戒めよ。
「あ、私、こっちなので…」
交差点で斎賀さんが切り出す。ohマジカ。
…言いそびれていた事がある。
今を逃せば、きっと次は夏休み明けで。
クラスが違う以上、機会があるかどうかも怪しい。
「ではその、また…」
とどのつまり、言うなら今しかないってことだ。
「斎賀さん」
「ひゃい!?」
……そんなびっくりせんでも。
「その、言いそびれてた事があって。……ありがとう」
「ふぇ?」
さっきから斎賀さんの反応が一々ユニーク。俺を説き伏せた時とは別人のようだ。
「斎賀さんが止めてくれなかったら、俺は本当に…自殺してたと思う。だから、ありがとう。」
「俺を、人の世界に繋ぎ止めてくれて。俺を支えてくれたことに、心の底から感謝してる」
「さ、ささえ…つまり内助の功……ってちちち違います!」
「えっ違うの!?」
「あ、あああいえ違います!あいえ違いません!!えっと、えっと!?」
よくわからんが違わないらしい。…何が違うんだっけ?
「とにかく、お礼をさせてほしい。俺に出来ることならなんでも聞くよ」
「な、なななななんあなななななんでも!!?そそそそれってつつつまり、つま、つま…」
「つま?」
「妻っ!?いいいいえそんなだめ、ダメですいえダメじゃないです!で、でもその…わわわ私達にはまだ早いと言うかですね!」
「う、うん」
早いの…?何が…?
「つ、つまり…ええと………」
うん。
「か、かんがえておきまひゅ…」
あ、はい。
斎賀さんの趣味とか全く知らないから任せてみたが…急に言われても出てこないか。そらそうよ。
「えーっと…じゃあ、連絡つくようにしとく?」
「っ!!!――――――――――」
なんてこったい。斎賀さんがフリーズした。
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ここに来るのは随分と久しぶりだ。
如何に奴が奴であっても、殺しかけてしまったことは事実だ。どんな顔すれば良いのか。普通は殺人未遂起こした相手とは二度と会わないと思います。
…悩んでいても始まらない。なるようになれだ。
特定のビルの特定の一室のドアを開ける。
「あ、ラクヨウ君久しぶりぃ。もう来ないのかと思ってたよぉ?」
ピンピンしているナッツクラッカーが俺を気さくに迎え入れる。その首筋に締められた跡は見られない。
「…元気そうだな、ナッ「そりゃあもう!」うおっ」
「手のかかる患者がいなくなったわけだしぃ?
無駄に回る舌。そのくせいつもの下ネタが足りない。いや無くなるなら余計な気疲れしなくて済むから助かるんだけども。
にしたって嘘下手すぎないか。もうちょっと上手く取り繕えよ。は?誰がブーメランだぶっ飛ばすぞ。
…まぁ、お前がそうしたいのなら乗っかるか。
申し訳程度の償いだ。
「さいで、今日はお前に………………頼みが……あって、来た………!」
「なんで頼み事するのにそんなに辛そうなの?」
「自分の胸に手ぇ当てて考えてみやがれ」
「私が胸でシてるところ見たいのぉ?」
こいつの頭はもう駄目だ。慣用句の引き出しまで全部下ネタで埋まってやがる。
「…それで、私に何を頼みに来たのかな?私にも出来ることと出来ないことがあるよぉ?」
どことなく…口調に冷たさというか距離を感じる。まぁ下手に執着されるよりは楽だしいいか。
「
「………、ぇへ?」
おっどうしたナッツクラッカー鳩がガトリング食らったような顔しやがって。
「今までずっと我慢してたんだが、そろそろクソゲーをやらないとこう…メンタルに支障をきたしそうでな」
「かといってダイブ中は無防備になるだろ?だからダイブ中の安全を確保できるような機能を付け加えたい。俺が考えたのは、自律的に行動する分身が作れたり、結界とか張れたり、ダイブ中の俺に知らせてくれたり、って感じ?もっと良いのがあればそれでも良いけど」
「えっと…い、良いの?自分の身体、大切なんじゃないのぉ?」
お前散々人の身体好きにしといてこっちが乗ったらヘタれるんかい。
だが無理も無い。一度はそれで…ああなっちまったし。
「…良いんだよ。よくよく考えりゃあ、この身体も案外便利だって気付いたんでな」
俺は今まで、このパッチワークの身体を毛嫌いしていた。
人に戻りたくて、これ以上改造されないように、されないようにと自分から何か注文をつけることなんてなかった。
だが、色々と吹っ切れた今の俺に、そんな拘りはもう無い。
人の身体にも、心にも余計な執着の無くなった俺にとっちゃ、この身体は超高性能なカスタマイズ機能を有した…それこそゲームのアバターみたいなもんだ。
快適なクソゲーマーライフの為に、俺に出来ることをする。必要とあらばお前の技術も使わせてもらう。
でもコイツに借り作りたくないから程々にしよう。
ナッツクラッカーを見やると、顔を伏せて身体を震わせている。風邪?
いやこいつが風邪引くとは思えないが。ほら、頭が…ね?
「で?出来るのか出来ねぇのか、どっちなんだよ」
「……うふふ。ふふふふふふふふふ。ふふふふえへへへへへ」
「気色悪い」
「んふぅっ!」
一際強く震える。悦ぶな変態。
「…ふふ、その目良いよぉ私の下腹部にキュンキュン来ちゃうねぇ!そこまで言うならぁ、徹底的に
「お前がトチったら言ってやるよ。その時は今度こそ二度と来ないがな」
「おっとぉ…それはマジで困っちゃう。じゃあ腕によりをかけて君の身体を隅から隅まで完膚なきまでにいじくり回してあげるからねぇ…?」
何故かいつもの気持ち悪さに戻ったナッツクラッカーに辟易しつつ、俺は施術室に向かった。
明日から夏休み。俺の輝かしいクソゲーマーとしての日々が、第二の幕が上がる。
記念すべき最初のクソゲーはもう決めている。ルーチン状態で俺を演じてた頃にロックロールで買ったクソゲー。
待ってろよ
「フェアリア・クロニクル・オンライン」
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俺は怪物でありながら、人の世界にしがみつこうとする異端者。
怪物の世界にも人の世界にも排斥される半端者。
一時の危機を脱したとはいえ、俺の怪物性は手ぐすね引いて俺が真の怪物に堕ちる瞬間を待ち望んでいるのだろう。
だから俺は自らを強く律しなければならない。
「俺は俺だって事を俺が一番知ってるからやっぱり俺は俺だ」と。
だが、今は同時にこうも思っている。
サンラクサン編は以上になります。
別のキャラクターで最低2話ほど投稿する予定ではありますが…気長にお待ち下さい。