黄昏共の日常   作:東雲。

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「私は欲望のままにズブズブの共依存ENDを書きました」と書かれたプラカードを首から下げている

『陽務楽郎:「陽」は沈み』からの分岐ENDの想定です。こういうのはディプスロの領域だろうなぁと思ってはいるのですが、セルフ解釈違いは「楽玲でこれが見たい(リビドー)」に屈しました。


陽務楽郎:「陽」は永久(トコシエ)の宵へ[Another Ending]

九月。

長い夏休みが終わり、学生の本分を全うする時が訪れた。

必要なアイテムを鞄というインベントリに収め、セミファイナル地獄を乗り越え学校にたどり着き、いざ教室の扉を開けた俺は

 

「「「被疑者確保ォーーーーッッ!!!」」」

「一時撤退ッ!…バカな伏兵グワーッ!!!」

 

何故かクラスメイトに捕らえられた。解せぬ。

 

 

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椅子に強制的に座らせられ、肩を上から押さえつけられる。

…その気になれば力で負ける道理は無いのだが、無論そんな真似をする気はない。

 

俺は法治国家に生まれ法治国家の恩恵を受ける者だ。

それが言葉での解決の前に力に物言わせるわけにはいかない。

今はまだ対話の段階であるはず。

 

「被告陽務楽郎。申し開きはあるかね?」

「まず罪状を教えろ」

「反省の色無しか、処刑を執行する」

対話の段階では無いのかもしれない。

雑ピはその「意味不明な供述をするサイコキラーをテレビ越しに見るような目」をやめろ。

 

「夏休み中にお前が斎賀さんと2人で居るところを見たんだからな!」

「俺と斎賀さんに繋がりがあると思うか?他人の空似だろ」

「それはそうだ。だがあれは間違いなくお前だった!よって処刑の後問いただす」

「それ普通拷問って言わない?」

「うっせ!…そうやって余裕ぶっていられるのも今のうちだぞ?こちらには物的証拠があるからなぁ!…ちょっと待ってろよ」

 

雑ピは懐からスマホを取り出し何やら操作しだした。写真でも持ってるのか?

それは――

 

 

――()()()()()

 

 

「よしあった。これが証拠だ!」

「パスタが証拠なのか?」

「あ、これはその少し前に食った昼飯…じゃなくて、…あれ?」

「お?操作ミスで消したか?それとも、そんなの最初から無かったんじゃないのか?」

「そ、そんなはずは……!」

 

「さ・て・と」

 

異常事態に拘束の緩んだ隙を突いて立ち上がる。

まぁこいつらに俺を拘束する理由はもうあるまい。

証拠の無くなった俺以上に…眼の前で失態を犯した愚か者が此処に居る!

 

「虚偽の罪状で俺を拘束した罪が生まれちまったなぁ・・・?――ひっ捕らえろっ!」

「な、しまっグワーッ!」

 

形勢逆転、こちらのターンだ。

 

「わかっているだろうがこの場にいる全員が目撃者だ。――申し開きはあるか?」

「くっ…殺せ!」

「その姿勢やよし!片耳ピアス穴拡張の刑に処す!」

「なんでそうなるんだよ!くそ!離せ!せめて他の刑罰をっ…減刑を要求する!」

「ならばバランスを良くしてやろう。両耳のピアス穴に変更だ!」

「ギャーッ!ふざけんな()()()()ーっ!!」

 

「―――」

 

瞬間、意識が現実から遠ざかる。

だがあくまで瞬間。1秒も経たぬ内に現実に着地する。

 

「どうした陽務、立ちくらみか?」

…周りにはそう見えるのか。覚えておこう。

 

「…休み明けだからしょうがない」

クラスメイトの心配を軽く誤魔化して流す。あんまし印象に持たれても面倒だ。

 

尚処刑は直後に1限目の教師が教室に入ってきたことでお流れになった。チッ運のいい奴め

 

 

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SNSのメッセージ履歴(12時~13時頃)

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サンラク:斎賀さん、今日時間ある?

 

サイガ-0:どうしました?

 

サンラク:()()、お願いできるかな?

 

サイガ-0:わかりました。私も()()()()だったので。

 

サンラク:じゃあまとめて済ませようか

 

サイガ-0:そうですね。場所はどうしますか?今度は私の部屋にしますか?

 

サンラク:いや、当分は家はまずいかも。夏休みに俺達がいるところをクラスメイトに見られた

 

サイガ-0:()()()()()()()()()()()

 

サンラク:やめとこう。時折鬱陶しいけど良いやつだから

 

サイガ-0:陽務くんがそう言うのなら…。ではどこにしましょうか。

 

サンラク:図書館とかどうかな。最悪勉強会って事に出来るし。

 

サイガ-0:なるほど、ではそこにしましょう。

 

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放課後、私立図書館。

 

約一年前に大規模な改修を行い、国内屈指のハイテク図書館に生まれ変わっている。

机そのものが大規模なタッチパネルシステムを有しており、蔵書の全てを椅子から立たずに読むことが出来る。

わざわざ歩き回る必要もなく、各々が図書館でやりたいことに没頭できるこの場所は、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

そんな図書館の片隅、更に周囲の雑音から隔離するために設えられた個室で。

横に並んだ二脚の椅子に座って。

 

 

俺は、斎賀さんの首元に顔を埋めていた

 

 

今はここが一番良い。ここから上にずれても下にずれても、万が一誰かに見られた時に言い訳が立たない。

そういうのは……互いの部屋みたいな、本当に2人きりになれる場所でないと。

 

「今日は、どんな辛いことがありましたか?」

天使の囁きが頭上から聞こえてくる。

今の俺は斎賀さんの声に導かれるままの人形だ。

聞かれて答える。それだけの思考力があれば良い。

 

それだけしか、要らない。

 

「クラスメイトに………人でなしって……言われた………冗談だって………軽口だって………わかってる……。…けど………どうしても………考えちまう……………」

「俺は………俺だって………思ってる…けど……、他人……の目、には……そうは見えない……かも、しれない………」

「何度も…思った………その度に……大丈夫だって………言い聞かせて……」

 

斎賀さんが、俺の背中をゆっくりと撫でさする。それが、どこまでも心地よい。

 

「何度でも、言わせてください。陽務くんは、陽務くんです。陽務くんが不安に思っても、みんな、ちゃんとわかっていますから。貴方は、貴方だって」

自分でどれだけ言い聞かせても不安を拭いきれない言葉が、斎賀さんの言葉になることで、俺の不安と恐怖の全てを消し去ってくれる。これを救いと言わずしてなんと言おうか。

 

もっと救われたい、もっと忘れさせて欲しい。

しがみつき、縋り付く。

その動作で俺の意図を読み取ったのか、斎賀さんは空いた手で頭を撫でてくれる。

 

「だから、陽務くんは何も心配しなくて良いんです。また不安になったら、私がいくらでも抱きしめてあげます。言い聞かせてあげます。私が、貴方の心の拠り所になります。今は好きなだけ――私に甘えて良いんです」

彼女(天使)の肌が触れる度、彼女(女神)の声を聞く度に、マイナスの感情が溶け出しては消えていく。

後に残るのは確かな充足と安心。心の底から安らいで、彼女の腕に、優しさに、温もりに、俺の傷を委ねる。

 

とりとめもなく愚痴をこぼして、斎賀さんに頭を撫でられる。

時間にして…十数分くらいか。

 

「ありがとう、斎賀さん。暫くは…大丈夫だと思う。」

名残惜しいことこの上ないが、あまり待たせるのも悪い。

首元に埋めた顔を上げ、斎賀さんから身体を離す。

 

 

彼女の優しさに甘えて俺の傷を受け入れてもらうのなら、俺もまた、同様に。

 

 

「さ、今度は斎賀さんの番だよ。取引なんだから遠慮しないでね」

言いながら俺は左手をゆるく上げて、斎賀さんの――口元に近づける。

「で、では…失礼して」

ただ差し出すだけでは、斎賀さんはどうにも申し無さそうにして時間がかかってしまうが、取引であることを強調すると少し素直になってくれる。

ここまで含めて俺は斎賀さんに委ねているのだ。受け取ってもらわないと俺も困る。

 

 

()()()()()()。――ぁむ」

はぷ、と俺の指を咥える。

くすぐったいが、すぐにそれどころではなくなる。

 

最初は唇で触れるだけ

舌が指を舐め回し、こそばゆい感触に背筋が震える。

かぷかぷと歯が当たり始める。

まだ甘噛み。今のうちに腹をくくる。

 

俺の指を噛む強さは段々強さを増していき

痛みが走り始める。

 

がぶ、がり、ごり――()()()

 

「つっ!!」

 

決定的な音とともに、俺の指が一本、斎賀さんのものになる。

激痛が弾けて脂汗が滲む。痛みへの耐性は血なまぐさい生活の中と、夏休みの間でかなり身についてはいるが、流石にどこ吹く風とまではいかない。

 

俺の指を食いちぎった斎賀さんは、骨ごとゴリゴリと噛み砕き、味わってから、喉を鳴らして嚥下する。

 

指一本程度じゃ斎賀さんは満たされない。次の指を差し出す。

また咥えて、舌で転がし、食いちぎり、よく噛んで味わって、飲み下す。

 

ここまでくると斎賀さんの頭の中は食欲に埋め尽くされ、俺への遠慮は殆ど消え失せる。

食事は一日三回が基本なのに、それを3日も開ければこうなるのもむべなるかな。むしろ腕一本じゃ少ないくらいだろう。

俺に出来ることは、痛みに耐えながら、血痕を残さぬよう気を配るだけだ。

 

指を一通り食べたら次は腕にかぶりつく(手は骨が多くて好かないらしい)。

前回から三日開いてる…今回は片腕だけで済むかな?再生には多少時間がかかるが、擬態すれば見た目だけは誤魔化せる。腕動かないけど。

一週間開いた時は危うく左半身が骨格標本になるところだった。

斎賀さん曰く俺の身体は「噛む度に味が変わって飽きない」らしい。まぁ「ぼくのかんがえたさいきょうのキメラ」みたいなもんだからね。

 

一心不乱に俺の腕を齧る斎賀さんを見ていると、激痛とは別に不思議と嬉しくなる。

俺は斎賀さんを必要としていて、斎賀さんは俺を必要としている。それを目に見える形で実感できるからだろうか。

 

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夏休み前日のあの日、俺は斎賀さんが怪物であることを知った。

俺とは経緯が異なり、生まれた時は人と変わらなかったそうだが、成長につれて徐々に変貌していったらしい。

姿形も俺と違い人間のままだが、内部構造が大きく異なるとか。

その際たるものが食事だ。

「生きた動物の肉」を身体が求めていると彼女は語る。味とかではなく、概念的な生命力?を直に摂取する事が出来る…らしい。吸血鬼の親戚なのだろうか。

 

そして、()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

この現代社会でまっとうに生きている間は、生きた動物にかぶりつく機会など皆無に等しい。

斎賀さんはここ数年間、満たせない飢餓に苛まれ続けてきた。

それこそ、鼠や野鳥を已む無く口にせざるを得なくなるほどに。

噛みちぎりこそしないものの、自分の指を噛んで飢えを紛らわそうとするほどに。

 

――友達が食料に見えてくるほどに。

 

なまじ生まれた時は人だったため、人としての倫理常識を身体に染み付かせている分たちが悪い。彼女の本能と心は、年を経て人外化が進むほどに乖離していった。

 

斎賀さんの告白を受けて、俺は深く、深く…()()()()()()()

俺がうんざりするほど味わってきた苦痛と全く同じものを抱える人が、俺以外にも居たという事実に。

その嘆き、その悲しみを俺は疑わなかった。

 

同じ傷を持つ者同士、他者には明かせぬ秘密を抱えた俺達は、孤独な世界で互いに支え合っていく為に約束を交わした。

 

俺が自分を見失いそうになったら、斎賀さんが俺を引き留める。

斎賀さんの本能的な欲求が高まった時は、俺が身体を提供する。

 

互いに甘えて、互いに赦して、互いに、底なし沼に嵌っていく。

そんな未来が見えていても、俺は目の前に降って湧いた救いに手を伸ばした。

斎賀さんもまた、同様に。

 

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止血するまでに溢れた血を、一滴も零さず飲み干した斎賀さんは、ようやく一息ついたらしい。『食事』の後は心なしか血色が良くなり、生気に満ちているように感じる。そのまんま俺から持っていったってことなんだろうか。

「あ、あの、ありがとうございます…。ごめんなさい…ごめんなさい……私、また、陽務くんを傷つけて……」

俺の左腕は肉がキレイに削げ落ちているが、断面は再生が始まりつつある。

骨の周りを除いて皮膚で覆われ、じっくりと目を凝らせば変化が分かる程度の速度で肉が作られている。少しの間腕が動かないが、そんなもの些細なことだ。

 

「大丈夫だって。俺が持ちかけた約束なんだから。腕だって半日くらいで治るし」

一ヶ月以上、何度も繰り返した事。そんなに気に病むことも無いと思うのだが。

 

「で、でも…っ」

斎賀さんがその手で顔を覆う。

「私、怖いんです…。陽務くんを、食べている間、私は私じゃ、なくなるんです…。ただ目の前の、肉…を、満足するまでっ、食べるだけの怪物…!」

「いつか私は、陽務くんを食べ尽くしてしまうかもしれない…陽務くんを、こ、殺、殺して、しまうかも…私、また、一人…」

「私、もう、陽務くんがいないと…だめなんです…陽務くんのことを、()()、あ、い、いえ…た、大切に…思って!陽務くんを失うことが、こんなに、怖いのに………私は陽務くんをっ…!うう、どうして、どうしてこんな、こんな身体に…っ!」

 

くぐもった、涙まじりの声だった。

俺が思うより、斎賀さんは自分の行いを深刻に考えていた……いや、違うな。俺の考えが足りていなかったんだ。

たった一人のパートナーを、自らの手で殺してしまうかも知れない恐怖。

何かの弾みで、一時の気の迷いで、永遠に失ってしまったとしたら。

後に残るのは、果てしない絶望、抑えきれない後悔、そして――血の涙を流して狂い叫ぶ一匹の怪物。

想像するだけで青ざめる。そりゃあ…こうもなる。

 

震える斎賀さんの身体を、まだ動く右腕で抱きしめる。不安な時はこれが一番。ソースは俺。

 

斎賀さんは、俺の身体を不必要に食べるような真似はしていない。本人はこう言うが、自制は出来ているのだ。

今後どうにもならなくなるようだったら、俺の身体をもっともっと弄くり回してしまえばいい。いくら食べてもなくならない、多大な再生力を手にすれば良い。

斎賀さんの心配は、杞憂に過ぎない。そう言ってあげないと。

 

「大丈夫。斎賀さんは、自分をコントロールできてるよ。俺が保障する」

「陽務、くん…」

「それに、斎賀さんがいないとダメなのは、俺も同じなんだ。もし斎賀さんが俺から離れたら、俺はもう俺を保てない」

「そんな、そんなことありえません…私は、陽務くんとずっと一緒にいた…いた…あ、えと今のはその…」

「そう言ってくれて嬉しい。俺も、同じ気持ちだから」

「ふびゃあ」

斎賀さんの体温が少し上がった。そういう能力でもあるのかな。

 

……

 

斎賀さんがそうしてくれたように、俺もまた斎賀さんの背中を落ち着くまで摩り続けた。

 

 

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俺達は、怪物でありながら、己の怪物性に恐怖する異端者。

人の世界にも怪物の世界にも居場所の無いあぶれ者。

だけど二人なら、新たな世界を作り出せる。

 

誰に迷惑を掛ける事もなく、誰に干渉される謂れもない、二人だけの世界。

 

此処には、痛みと悲しみを消し去る安寧がある。世界でただ一人の理解者が、心の傷を癒してくれる安息の地。

もうどこにも行くあてのない俺達が、やっと掴んだラストリゾート(最後の楽園)

 

この世界を守るためなら、俺はいくらでも人の道を外れよう。

必要なら、どこまででも怪物になってやる。誰であろうと暴力を振るってみせる。

 

もう俺に、それを躊躇う理由は無い。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()―――

 




仕方ない 一度幻覚 見たならば 書かずにおれぬ 物書きの性(辞世の句(約3週間振り2度目))

ここまでディープなことやっといてヒロインちゃんが恋愛面で告白出来てない辺りに、この関係の歪み具合が伝わったら良いなと思っております。



以下余談

言うまでもないが首元でも十二分に言い訳が立たない。むしろ何してるのかパッと見わからない分言い訳しづらそう。知らぬは本人ばかりなり。


ラストリゾート(Last Resort)
"「最後の手段」、「切り札」、「最後の拠り所」という意味で、他の手段が全て無くなり最後に残された手段のことである。 "(Wikipediaより引用)
ところでぇ…『Last』以外にも「ラスト」と発音する英単語は他にもありましてぇ…発音記号が違うので本場だと別物なんでしょうけどぉ…カタカナ表記にするとまぁ同じになっちゃうんですよぉ…
スペルは『Lust』なんですけどねぇ…?
いえ別に、決して、このラストリゾートには互いの傷を慰め合う以外の何かがあるなんて話ではないんですよ?ええ。
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